00:00昔々ある村里へと続く道を
00:13忠二郎という名のナコード好きの一匹のネズミが
00:18急ぎ足で歩いておりました
00:30そして一軒の百姓屋を見つけると
00:40その名屋の脇の地面に開いた穴の中へと
00:44潜り込んでいきました
00:53その穴蔵の中にはあるネズミの一家が住んでおりました
00:57実は今日伺ったのは他でもない
01:03お前さんの娘の花子に嫁入り話を持ってきたんじゃ
01:08今回は私にとって99番目のナコード縁組で
01:14ぜひ成功させたいんじゃ
01:16という忠二郎の話によると
01:19相手は町の作り酒屋の蔵下に住む
01:22六郎という花子にぴったりの若者だということです
01:26そりゃまた願ってもね
01:30そんな酒蔵の下に住んどる一家なら
01:33暮らし向きだっていいじゃろうし
01:35ぜひその話進めてくだされ
01:37そりゃよかった
01:39それじゃ見合いがてら一度本人とその両親を
01:44ここへ案内してくることにしよう
01:46というわけで話はトントン拍子に進み
01:50そのめでたい知らせを伝えるために
01:53忠二郎は急ぎ町へと引き返すことにしました
01:56日もとっぷりと暮れた頃
02:11町に着いた忠二郎は
02:13急いで作り酒屋の蔵下に空いている
02:15ネズミの穴へと向かいました
02:18倉下の一家の住処はなるほど
02:40家具ちょうども立派なもので
02:42なかなかの暮らし向きでした
02:44忠二郎は田舎の一家での話の成り行きを
02:48早速伝えました
02:49まことに結構なお話
02:54ぜひお受けしたい
02:56どうじゃ六郎
02:58よろしくお願いいたします
03:01いやーよかったよかった
03:04これで私の99番目のなこども
03:07成功しそうですわ
03:09という具合に
03:10町でもトントンと話がまとまりました
03:13そしてその翌日
03:15早速忠二郎に伴われた
03:17町のネズミの一行は
03:19花子の家を目指して
03:21町を出発しました
03:23お、蝶々だ
03:30いい匂いじゃん
03:36ほんといい匂いだこと
03:40冷たくていい気持ちだ
03:46おー、気持ちよさそうじゃな
03:49六郎
03:49どれどれ
03:50では私も
03:51うー、こりゃ生き返ったような気分じゃ
03:57こうして町のネズミの一行は
03:59だんだんに様子を変えていくあたりの景色や風物に心和ませて
04:04歩いていくうちにいつしか
04:06花子の一家の住んでいる
04:08例のタクショウヤにたどり着きました
04:11そしてナコード役の忠二郎を間に
04:22片通りの挨拶も無事に済みました
04:25ここは風通しもよく静かでまことにいいお住まいですな
04:41いやいや、なんせ田舎なもんで
04:44それぐらいしか取り柄がないもんで
04:47お、飯の支度もできてきたようで
04:51田舎のことで口に合うかどうか
04:58まあ遠慮せず食ってみてくだされ
05:00出された料理はと見ると
05:06皿の上にはナッパや大根や人参、芋が
05:10丸ごと盛られてありました
05:12日頃町で食べているものと違って
05:17初めて口にする田舎の食べ物は
05:20思わず顔をしかめる代物でした
05:23でも田舎のネズミたちには
05:27今日の食べ物は大変なごちそうであったのです
05:31そして帰る道すがら
05:39川辺で一休みした時のことでした
05:42どうやった六郎
05:44花子は気に入ったか
05:47花子は気に入った
05:50でもあの料理のまずさがなんとも
05:53まったくだ
05:55あの食い物のまずさと言ったら話にならん
05:59だが何もお前があそこへ行くわけじゃない
06:04嫁に来てもらうんじゃからな
06:07食い物の心配は何もないわけだ
06:10それもそうだねおとっちゃん
06:13それから何日か経ったある夜のこと
06:17約束通り忠次郎に伴われた花子の一家は
06:21町へと出かけてきました
06:23どういこうぜ
06:31なんとも町というところは危なかしいところじゃ
06:49田舎と違って人や生き物の数が多いですからな
06:54こうして夜の町中で怖い思いを味わいながらも
07:06ようやくのことで酒蔵の下に開いた穴の中へ
07:09花子たち一家は潜り込みました
07:12狭い道じゃの
07:18どうしても町中になりますとな
07:21だいぶ暑いな
07:27町は込み入っていて風通しが悪いですからな
07:32こうしてなんとか一行は
07:35六郎の家に着くことができました
07:38そうして六郎の一家が花子たちのために用意した料理は
07:46さすがに町の酒蔵の下に住んでいる一家だけのことはあって
07:51それはそれは見事なものばかりでした
07:54うまい
08:05さあさあどうですか一杯
08:15これはまたいい匂い
08:18ところが突然部屋が激しく揺れ出しました
08:35何なんだこりゃ
08:36高倉に入る荷車の重みでちょっと響くようですが
08:44日々割れが近くなってきた
08:49ちょっと地盤が緩んだんですかな
08:54いやー
09:02花子だ
09:04花子花子
09:06大丈夫か
09:07お父さん
09:08いやー
09:10花子
09:11パンパパンパ
09:13いつものことだよ
09:22こうして町へ出かけた花子の一家は
09:28せっかくのごちそうも味わう暇もなく
09:31田舎へと逃げ帰ってきました
09:33そして次の日のこと中二郎は再び花子の家を訪れました
09:46どうやった六郎の家の感じは
09:52馬鹿ゆでにあんな武装なところへ可愛い娘を嫁になんぞやれるか
09:59やっぱり
10:02というわけで中二郎の九十九番目の名コードは失敗に終わってしまいました
10:11そしてその後も町の中二郎は相変わらずざわついた町の蔵の下で住み続け
10:22田舎のネズミは静かな百姓屋の下の穴蔵で暮らし続けたそうです
10:29まあ昔から住めば都っていうもんや