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  • 2 日前
Japanese folk tales
トランスクリプション
00:00昔々ある天気の良い五月節句の日のこと
00:27一人の若者が犬を連れて狩りへと出かけた
00:32お天道様はポカポカとしていい気分だし
00:39今日は一つ獲物をどっさりと仕留めて帰ってやろうと
00:43若者はいつも狩りをする山までやってきた
00:57ところがどうしたことか
01:03この日の森は気味の悪いほど静まり返って
01:08まるで山中の動物という動物が一夜にして消えてしまったように
01:14小鳥の羽音一つしない
01:16妙なことがあるもんだな
01:23若者はしばらく物音一つしない森を眺めていたが
01:30せっかく出てきたものだし
01:32もう少し進んでみようと山の奥へと入っていった
01:36湯けども湯けども
01:58森には一向に動物の気配がしない
02:02どのくらい歩いたものか
02:05ふと気がついてみると
02:07あたりはうっそうとした木が茂って
02:10日の光を遮っている
02:12知らぬ間に山奥深く踏み込んでいたのだ
02:17若者は今までこんなに深い山まで入ったことがなかったから
02:21道にでも迷っては大変だと引き返そうとした
02:25その時若者の目の前に
02:29うさぎが一匹飛び出してきた
02:31よし
02:32若者は急いで矢を継がえると
02:35弓を引き絞ってパッと矢を放った
02:39確かな手応えがあって
02:46若者はしめたとばかりに矢部の中へ走った
02:49その時
02:50にわかにあたりがざわめいて
02:57強い風が森を揺さぶった
02:59いきなり木の上から赤裸の大男が飛び出してきたかと思うと
03:13あっという間に若者の狙ったうさぎを口の中に放り込んでしまった
03:18黒衣とうさぎを飲み込んだ大男は
03:23ギラギラとよく光る目を若者に向けた
03:27見るとなんと大男の頭からは大きな角が2本突き出している
03:38若者はこれは話に聞いていた
03:41鬼というものに違いないと
03:43びっくり仰天して逃げ出した
03:46こんな恐ろしいものがいたのでは
03:54利口な動物たちが姿を現すわけがない
03:58若者はここで取って食われちゃたまらんと
04:01一目散にもっと来た道を走った
04:04バティー
04:07鬼は地鳴りのような声を上げて迫ってくる
04:12さあ若者はもう転げるように森の中を駆けた駆けた
04:18死に物狂いで走っても
04:36鬼の足の速いのにはかなうものではない
04:40みるみる若者は鬼に追いつかれて
04:44まるで岩のような手で今にも掴まれそうになった時だ
04:49石にけつまずいて若者はポーンと宙に放り出されてしまった
05:14どのくらいの時が過ぎたか
05:33若者が気がついてみると
05:37よもぎの草原に投げ出されていた
05:40遠くで若者の犬の鳴く声がする
05:44今しも犬が鬼に捕まって引き裂かれて食われるとしているところだ
05:59なんてことだ
06:02次は俺の番か
06:04情けない
06:05若者はすっかり力も抜けてしまって
06:11よもぎの腹に横たわっていた
06:13そのうち鬼は
06:15ゆっくりと若者の方にやってきた
06:18ところがよもぎの草原まで来ると
06:21急に何やらぶつぶつ口の中でつぶやき始めて
06:25草原に入るのをためらっている
06:28やがて鬼は
06:38よもぎの草原を遠巻きにぐるぐると回り始めた
06:42若者はしばらくの間
06:50鬼が何を騒いでいるのかわからなかったが
06:53だんだん鬼の目にはよもぎの草原が火の燃えているように見えるので
06:59それで鬼が怯えて近づけないでいることがわかった
07:03若者がじっとしていると鬼は諦めたのかよもぎを嫌ったのか
07:10どこかに姿を消してしまった
07:13若者はほっとして草原を抜け出すと駆け出した
07:17待てー
07:19するとどこからか鬼が飛び出してきてまた若者を追いかけてくる
07:25今度捕まればもう命はない
07:28若者はめくらめっぽを低い方を目指して走った
07:33待てー
07:36待てと言っても待って食われたんではたまったものではない
07:40若者はともかく里まで逃げようすればなんとかなるだろうと
07:44どんどんどんどん山を駆け下りた
07:48走って走って
08:00やっと村が見えるところまで逃げてきた
08:04はぁ
08:06湖を回れば俺の家だ
08:09そう思ったとたもまたも何かに足を取られて
08:13若者は湖のほとりの勝負の茂みにもんどり打って転め落ちてしまった
08:20ようようここまで逃げ延びてきたというのに
08:25間の悪いことだ
08:26これまでの命か
08:29若者が観念すると
08:36鬼は勝負の茂みを遠まきに回りながらブツブツと言っている
08:42刀がいっぱいだ
08:45どうもなら刀がいっぱい
08:48鬼の様子を眺めているうちに
08:53若者は勝負が鬼の目には刀に見えてそれで鬼が怖がって近づかないのだということが分かった
09:02よーし
09:05若者は勝負の株を引き抜くとそれを振りかざしながら歩き出した
09:14それ刀だぞ
09:18刀だぞ
09:20鬼は恐る恐る若者の後ろをつけてくるが
09:26一向に飛びかかってくる様子もない
09:28無事に家にたどり着いた若者は
09:33早速戸口に勝負をさすと
09:36村中の家にも勝負を分けてさして回った
09:40目が回る
09:42目が回る
09:45目が回る
09:48とうとう鬼は
10:01勝負が怖くて村に近づくこともできず
10:05すごすご山の方へと帰っていった
10:08それからというもの
10:19この村では毎年5月5日になると
10:24戸ごとに勝負を飾るようになったということだ
10:335月節句の昔話だった
10:36ドットハイ
10:38働いた
10:38ドットハイ

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