00:00昔、鎌倉街道が大層にぎわっていた頃の話だが
00:15二村山のふもとに、マゴロクと呼ばれる狐がおってな
00:22マゲトリのマゴロクとも言われておった
00:26このマゴロクはふもとの宿に、えわりくさったお侍がやってくると
00:32そういうお侍のマゲを鮮やかにとってしまうから
00:36村の衆には大層人気があった
00:39さて、そんなある日
00:41後から来る殿様の先駆けを務める一人の侍が宿場にやってきた
00:47ガハハハハ、キツネが侍のマゲをとる
00:55うんちょこざいな
00:57いかなあ、術かしらんが、たかがこれのたどいしれておるわ
01:03ガハハハハ、殿の行列の下見ついでに
01:09このわしが、一刀両断にしてくれるわ
01:19ガハハハハハハ
01:20というわけで翌日侍は威風堂々と峠を登って行った
01:28その日峠は気持ちの良い快晴で侍は大変気分が良かった
01:37侍がしばらく峠を登って行くと一軒の茶店があった
01:45お侍様どうぞ一服なさいませ
01:49なるほどお前が狐かうまく化けるもんだの
01:57はあ
01:58いやいや同じ馬鹿されるのであれば美しい娘に越したことはない
02:06お侍様からかわないでくださいまし
02:13まあよいしょんべんでもなんでも持ってこい
02:17まあ冗談ばっかり
02:20からの昔から狐が人をばかす手具だわ
02:32若い娘が死にそうなばあさんとそのばかきはつってよな
02:37ははははははは
02:40そ茶でございますが
02:45おうしょんべんが来たかよしよし飲んで使うはず
02:50うまい
02:58ところで娘このお茶店には別のしょんべんはないのか
03:05はあ
03:06これ昼間からなんじゃがそれぐりっとやりがつがしまってあるじゃろうが
03:16あお酒でございますか
03:20ちょっと見てまいります
03:27うーんそれにしてもおいおいしい娘に化けるもんじゃな
03:33あれでは騙されて曲げを取られる馬鹿もいるじゃろって
03:38ははははは
03:39お侍様
03:41なんじゃ
03:45どうぞ中へ
03:47あったかどれどれ
03:50ではごれん
03:52ほう山の中の茶店にしてはなかなかの作りじゃな
03:57何もございませんがどうぞ
04:00いいよいいよ
04:01わしはな
04:03これさえあれば他に何もいらんのじゃ
04:06どうぞ
04:07いやーうまい
04:16娘
04:17これはなんと申す酒じゃ
04:20お酒のことはよくわかりませんが地元ではキツネザクラと呼んでいるようでございます
04:28なるほどキツネザクラか
04:31ははははは
04:33まあよいってよいって
04:36ところで娘
04:38あいけません
04:40いけません
04:41お侍様
04:43ちっと物をたずねるだけじゃ
04:46何か
04:47拙者はな
04:49マゴロクという小悪なキツネを探しておる
04:52あああのキツネのことでございますか
04:56なんじゃではあるか
04:58はい
04:58噂は聞いております
05:01わしはお前が
05:03マゴロクと見たがそのかわいい尻には尻尾が生えておらんな
05:09まあやめてください
05:10恥ずかしい
05:12えはははは
05:13お酒とっていきます
05:15かわいいやつや
05:17あやつがキツネであれば
05:20負ける一本ぐらいやってもよいか
05:22あああああああ
05:24あははははははは
05:26ああ少々酔った
05:27キツネ退治もどうでもよくなったな
05:32うっ
05:34いい気持ちじゃ
05:38お侍様
05:40うーん
05:41お風呂が沸きました
05:43な、なに
05:44風呂、風呂
05:46風呂ってお前昼間から
05:50今日は珍しく峠を登る人もいないようですし
05:54汗でも流して
05:56ゆっくりしてください
05:59どうぞ奥へ
06:01ど、どうぞって突然降ると言われてる
06:06わしはかまわんが
06:08そなた
06:09田舎娘でよろしければお背中など流させていただきます
06:14な、な、なにおっしゃるもったいない
06:17それでは一風呂いただくことに
06:20いやあ、いや、これはいずにかたじけないありがたい
06:25というわけで
06:27侍は茶屋の奥で風呂に入ったんだそうな
06:32いやいや、世の中何が幸いに転じるかわからんものよな
06:38ああ、いい心持ちだ
06:41なに、殿の行列だってそうすぐに来るわけのものでもなし
06:47風呂上がりに若い娘の尺でもういっぱい
06:51今夜はここにお泊りになります
06:54なんじゃって
06:58結構、結構
07:00ところで娘はどうしたかな
07:03これ、娘、恥ずかしがることはないぞ
07:07苦しゅうな一行より
07:09一人、一人、一人
07:13ん?
07:15ん?
07:16あの声はもしや、殿の行列では
07:21おい娘、どこへ行ったんじゃ、これ
07:25拙者の着物
07:27おい娘、拙者の着物を、着物を持ってきてくれ
07:33そうこうするうちに、殿様の行列の声はどんどん近づいてきた
07:39下に、下に
07:43これ、娘
07:45うわっ
07:49こ、これは親子殿
07:52その方裸で何をやっておる?
07:56あ、お風呂に
07:59いえ、なに
08:00ちょ、ちょっといろいろありまして
08:02その方は殿の行列の下見であろう
08:06こんなところで何をしておると聞いておる
08:10はっ、つまり
08:11そのようでおだる
08:13これには深い訳がござ
08:18馬鹿者訳もヘチマもあるか
08:20殿の御命令をないがしろにしおって
08:23切腹せー
08:25切腹
08:27それだけはご勘弁を
08:30国元には妻もこもおります
08:33どうぞ、切腹だけはお許しを
08:37見苦しい、観念せー
08:40では、腰の者を拝見つかまつる
08:43こ、腰の者を
08:46さ、お出しめされい
08:49さ、それがその、どこへ行ったのか
08:53どこへって、まさかおぬし
08:57武士の魂よ、まさか
09:01いや、その、ここ、ここに娘が一人おりまして
09:05つまりその娘がさっき
09:07たわけ、何をぶつぶつ言っておる
09:11重ね重ねの伏し末、そこに直れ
09:15はぁはぁ
09:17殿に代わりこのわしが成敗して使わす
09:21覚悟されよ
09:23ありがたき幸せ
09:27ええええええええええええ
09:36んっ 何だ
09:40何だ
09:45どうなってるんだ
09:50曲げはない まさか
09:55この水たまりもしやあの風呂 まさか
10:02くやーしー マゴロクにやられた
10:07くやーしー くやーしー
10:14と この侍もまんまと曲げをとられてしもうた
10:20おまけにこの侍は着物も刀も マゴロクにとられてしもうたから
10:26裸で峠を降りたんじゃろう ちとかわいそうだ
10:32その後もマゴロクに曲げをとられる お侍は後を絶たなかったそうな
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