00:00あ
00:02ああああああ
00:05ああああああ
00:12越後のクジラナミという町に玉屋の徳兵衛さんという人がおった この徳兵衛さん海のものを扱う飽きないをしておったらその頃の海にはクジラは塩を吹き上げてやってくる
00:28鮭は先を争って川を登ってくる 若目も天草もいくらでもあったという頃であったから玉屋の商売は面白いように繁盛した
00:39その上徳兵衛さんはどえらい働き者で朝はまだあたりが寝静まっている頃から起き出して 店の掃除を始め夜は夜でやれ日の始末は大丈夫か閉じまりはちゃんとしたかと
00:55確かめて歩いて床に入るのは店の者たちが夢の一つや二つを見ている頃であった そんな風にして1年365日休む日もなく徳兵衛さんが働き通して20年
01:12玉屋の寝台も増えるばかりでこのあたりきっての長者様になった
01:18白壁の土蔵に囲まれて玉屋も大棚の貫禄がついた 花のような若いお嫁さんをもらった
01:27ところがこうして寝台が増えれば増えるほど 徳兵衛さんの顔色が悪くなっていった
01:34それというのも
01:36はてしっぽしっぽと嫌な雨が降り出した
02:06が
02:09ちょっとしてこんな番には泥棒でも来るのじゃなかろうか
02:15そうしておられ何しろ蔵には大事な金銀がずっしりと詰まっておるんだからな
02:22徳兵衛さん気になりだしたらじっとしてはいられない せっかく入った床を抜け出して蔵の見回りに出た
02:33やれやれこの蔵も無事のようだ
02:52次は十二番蔵だ
02:55ここも大丈夫だ
02:57ここも大丈夫だ
03:13次は三十四番蔵だ
03:15こうして次々と蔵を見て回るのですが 何しろ玉屋の蔵は四十八もあるので容易なことではない
03:21これが最後の蔵だ
03:23これが最後の蔵だ
03:27いいえ
03:29いいえ
03:31いいえ
03:33多摩屋の蔵は48もあるので容易なことではない
03:43これが最後の蔵だ
03:55良かった良かった蔵はみんな無事なようだ
04:01ん?待てよ
04:04わしがここにいる間にひょっとして一番裏に泥棒が入ってやすまいか
04:10こうしてはおられんな
04:12一時米さんまた一番裏に走って次は二番裏
04:18そして三番裏と朝になるまでぐるぐると見て回る始末で
04:24月が照ったと言っては底を這い出し
04:27雪が降ったと言っては見回り
04:33風が吹いたと言っては気になって朝まで寝られない
04:42こんなわけで特兵衛さんの目は落ちくぼみ
04:45体はげっそりとして顔色は青くなってゆくばかり
04:51このままではわしの体が持たんかと言ってどうすればよかろう
05:02何しろ土壌の中には大切な金銀がどっしゃり詰まっておるから
05:09そうだ
05:14倉の中にしまっておくからいかんのだ
05:18それこそ泥棒に金銀のありかを教えているようなもんだからな
05:24どこかに隠せばいい
05:27さてどこがよかろう
05:33特兵衛さんは考えたあげく裏の竹矢部の椿の根元にありったけの金銀を埋めてしまった
05:46へえ
05:48これでいい
05:49こんなところに金銀が埋まっているとは誰も気がつくはずがない
05:54よかったよかったか
05:57しっかりと安心した特兵衛さん
06:02今までの疲れがどっと出てもう何をするのも大義になってぼんやりとしてしまった
06:10これはいかんな
06:20身体がヨレヨレに疲れきってしまっておる
06:25ゆっくりと養生するのが一番じゃ
06:29ミルに見かねた奥さんは店のものをつけて特兵衛さんを松の山に陶磁に行かせるように計らった
06:39特兵衛さんたちが陶磁場に来て半月ばかり経ったある世のこと
06:46と湯に浸かっていると外を歌ってゆくいい声が聞こえてきた
06:54たまやのつばき
06:56枝は広がね
06:59葉は広がね
07:01枝は広がね
07:02枝は広がね
07:04たまやの
07:06わしはつばきの根元に金銀を埋めたことがもう歌になって歌われるほどにしれ渡っているのか
07:13旦那様結構なことですな
07:16かまやが栄えていることがこんな山の中まで聞こえておりますがめでたいことですよ
07:23えっと旦那様
07:25旦那様待ってくださいよ
07:30国防ちゃんはその晩のうちに早かごを飛ばして鯨波へ急いだ
07:38広がね
07:55庭のつばきは歌に歌われていたように白がれの葉に小金の花を満開に咲かせて輝いていた
08:05お主権限のせいを吸い取るのか
08:10知らなんだ
08:12特兵衛さんは家の者に解放されてなんとか息を吹き返しはしたがそのまま床に着いたきり起き上がることはできなんだ
08:28つーつぱきはどうだな
08:33はぁ
08:35裏の竹籿のつばきだ
08:38つばきは別にどうもありませんが
08:42小金の花が
08:47最近のが
08:49日本が
08:54ただの椿で別に普通の花が咲いているだけです 何ただの椿に違いないか
09:03確かに白金の範囲 黄金の花が咲いている
09:10夢だったか 奥さんは徳兵衛さんが気が変になったと思って青くなった
09:18旦那様しっかりしてください
09:23よく聞き 実はなぁ
09:27裏の竹矢部の椿の根元にありたけぬ きゅんぎゅんをわしが埋めた
09:34もしわしが死んだらほんだる 誰にも言ってはならんぞ
09:43そう言い残すと徳兵衛さんは安心したように 息を引き取ってしもうた
09:52奥さんは徳兵衛さんの葬式を済ませると言いつけ通り 裏の椿の根元を掘ってみた
10:05しかし埋めてあるはずの金銀はどこに消えたのか 影も形も荒なんだ
10:14ご視聴ありがとうございました