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  • 1 週間前
Japanese folk tales
トランスクリプション
00:00昔、昔、八王子のあるお寺に
00:28しんぼちという体の大きな小坊主がおりました。
00:47さて、このしんぼち、いつの頃からか、夜になると毎晩どこかへ出かけるようになりました。
00:58いったいどこ行くんじゃろうの、毎晩毎晩。
01:13月が沈み、そして朝方になると帰ってくるのですが、
01:28しんぼちの体には、あちこちかすり傷がついていて、泥だらけになって帰ってくるのでした。
01:43そんなことが、毎日続くようになりおしょうさんが心配になって、ある朝、しんぼちに訳をたずねました。
02:04はい、おしょうさま。実は西の方のお屋敷にお招きを受け。
02:12なに?西の方じゃと?
02:16はい、西の方に、めんぼさまという方のお屋敷があって、私は毎晩ごしそうになったに、お話し相手をしたりしておりました。
02:28おしょうさまにはごしんぱいをおかけして、申し訳ありません。
02:37はて、西の方は山ばかりで、家など一軒もないはずじゃが。
02:44ところで、その体のかすり傷はどうしてできたんじゃ。
02:51ごめんなさい、おしょうさま。このわけだけは恥ずかしいので、言うわけにはまいりません。
03:00おしょうさんは、ますます不思議に思い、民部さまとはどのような人物か確かめようと考えました。
03:07そんなにお世話になっている人なら、ぜひお礼をしたい。
03:14その民部さまをぜひこのお寺にお呼びしなさい。
03:20はい、おしょうさま。
03:25あくる日の夜、しんぼちの案内で、民部さまがお供を連れてやってきました。
03:37ようこそ、いらっしゃいませ。
03:42しんぼちがいつもお世話になって。
03:45いえいえ、お招きいただいたのはこちらの方。
03:49ありがたき幸せでおじゃる。
03:57しんぼち殿にお世話になったのはこちらの方じゃ。
04:01このお方が西の方の民部さまです、おしょうさま。
04:12おしょうは礼を述べ、ごちそうを出しました。
04:18お酒も入り、えんもだんだん盛り上がって。
04:22お店のお世話になったの。
04:25おわりは一緒にお店の中、揺りやがって。
04:30おだしょーおやいやー、やっと、やーん、と、やーん、と、やあー、よっと。
04:34おやつ。
04:38おは、お、みごと、お、みごとじゃ。
04:44お、みごと、お、お、お、みごとでおじゃる。
04:49おじゃる。
04:51お互いにゲームを出し尽くして、やがて双方の力自慢の話になる。
04:58そうか。そうまで言うなら、どちらは強いか渡して相撲取ってみよう。
05:05願ってもないことじゃ、うちの新墓地の強さを思い知るがよい。
05:12たーたー、民部様と新墓地はお寺の庭で相撲を取ることになりました。
05:31はっけよい。
05:34残った。
05:41残った。
05:42ところがその民部様の強いこと。
05:46な、な、な、なんと。
05:48はっけよい。
05:51はっけよい。
05:52はっけよい。
05:57はっけよい。
05:58はっけよい。
06:00はっけよい。
06:03結局、何度やっても、新墓は散々、なげられるばかりで、一度も果てませんでした。
06:09どんなもんじゃ、コンコン。どんなもんじゃ、コン。コン。これは、これは、見事。見事じゃ。
06:24こうやって、縁は夜中まで続きましたが、朝が近づいた頃、民婦様は、お供の籠に乗って帰って行きました。
06:45お嬢様、全く面目ございません。
06:49分かっておる、しんぼじ。お前は毎晩西の館で、あの方と会わせて相撲を取っておったのじゃろ。
06:59へいへい、その通りです。おまけに、夕べのように一度も勝つことができず、それが恥ずかしくて隠しておりました。
07:09はっはっは、なにか、恥なもんか。お前が弱かったのではない。騙されていただけじゃ。
07:18騙されていた。
07:20外を見るがよい。
07:33これは、狐の毛じゃないか。
07:36分かったか、しんぼち。
07:39あの怪力は人間のものじゃない。
07:42相撲好きな狐の養実だったんじゃ。
07:46驚いたしんぼちは、夜になるのを待ちかねて、西の館へ急ぎました。
07:55和尚様のおっしゃる通りでございます
08:14お許しくだされ
08:16神墓地殿
08:17するとやっぱりあなた方は
08:22おっしゃる通り私どもは人間ではござらぬ
08:28この森に住む狐でござる
08:36わあわあ
08:38私は小さい頃から仲間と相撲ばかり取っていたのですが
08:43強すぎて相手がいなくなってしまった
08:47そこで仕方なく人間を相手にすることにしたのです
08:51そうその相手に選ばれたのがこの私
08:58申し訳ないとは思いながら姿を変え
09:02神墓地殿を騙してここまで通っていただいたわけでござる
09:08ところが
09:10ゆうべ和尚様に呼ばれて我を忘れて楽しく過ごすうちに
09:17私たちの正体をすっかり和尚様に見抜かれてしまっていたようです
09:24私たち狐にとってこんな恥ずかしいことはございません
09:28もうここには住めなくなりました
09:30これより川越の方へ逃げていきます
09:33そう言うと狐は姿を消しました
09:39あの立派な狐のお屋敷は跡形もなく消えて
09:49後には竹矢部がぼうぼうと揺れるばかり
09:54その狐が逃げていった先が川越の綿部稲荷様で
10:23別名相撲稲荷とも呼ばれています
10:26内身や擦り傷などによくご利益があると言われ
10:31癌をかけるときは相撲の絵馬を収めているそうです

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