00:00me
00:03me
00:05me
00:08ああああああ
00:12東カガノイがまだミノノクにカガノイ号と言っていた頃の話じゃ
00:20ある冬の差すような雨の降る寒い夜のことじゃ
00:27旅から旅を続ける修行の坊さんが道に迷い
00:32夜になってやっとのことでカガノイ号にたどり着いたそうな
00:40一軒一軒一夜の宿を求めて頼んでいたがみんなうさんくさがって
00:47どこの家も止めてはくれんかった
00:57どうしなさった
01:00これでは野宿するより他にないと思っていたところ一人のお百姓さんが通りかかった
01:07実は道に迷いまして宿もなくどこか野宿でもしようと歩いていたところでございます
01:16なるほどそれはお困りでしょう
01:22古い寺があるにはあるがひどいあれ寺でなも
01:27どういうわけかそこへとまった人で生きて帰ってきたものはおらんといいますでなも
01:37ちょっと遠いがなも
01:39山頂ほど行くと木曽川の包みに出る
01:44その包みをまた山頂ほど川に沿って下ると
01:49左手に寺が見えるその寺がそうなんじゃがいってみやすか
01:56お百姓から話を聞いた旅の坊さんは恐ろしかったがこの冷たい雨の中
02:03凍え死ぬよりはましと寺へ向かった
02:07気ぃつけてなも
02:16お百姓に教えられた通りに歩いていくと
02:20なるほどこれは荒れ果てた寺田ワイというお寺についた
02:26人のいる気配はなく雲の巣を払い栗に上がり込んだ
02:33実際寺の中は暗くて薄気味悪く
02:38旅の坊さんは食事もそこそこに済ませると
02:42本堂で夜の権行を始めた
02:45そのうち目の前のお灯明がふっと消えた
03:02今度はものすごい音がしたかと思うと
03:21天井の板がぽっかりと入って大入道が降りてきたそうな
03:27目も鼻も口も何もかも馬鹿でかい
03:40それはそれは大きな大入道
03:43すぐ後ろに座って
03:45その大きな鼻から出る生温かい息が
03:48ふっと首筋にかかるたびに
03:51背筋がぞーっと寒くなったそうな
03:55怖くて生きた心地もせず
04:00旅の坊さんは一層大声を上げてお経を上げた
04:04そうしてしばらく震えながらお経を唱えていると
04:19おれよー
04:24おれは初いけの恋だてんでいこうべしもおうか
04:30入れー
04:33大入道が中へ招き入れているようだが
04:41恐ろしくて目を開けてみることができる
04:45やがて化け物が通り過ぎると
04:47ペシャッと座る音がしたそうな
04:50またしばらくすると今度は崩れた壁穴より
04:59おれはおやぶのにわとりんぎつ足じゃ
05:10ていていこぶしはおるか
05:14バサバサという大きな音がしたかと思うと
05:23何やら大きなものが舞い降りてきた
05:26旅の坊さんはもう恐ろしくてただ震えるばかりじゃ
05:31しばらくするとまたまた外から
05:36障子を叩くものがある
05:40どういやー
05:43たたしゃー
05:45富田山の白狐じゃわいな
05:49聖手拳はおるか
05:52今度はずるずるっと気のずれの音をさせ
06:01こいつも旅の坊さんのすぐ前を通り過ぎると
06:05ずるずるっと座った
06:07こうして化け物たちは旅の坊さんを取り囲むように座った
06:15どうやって食べてやろう
06:33あんまりうまそうじゃないわ
06:36そうでもなかのってなかなか柔らかそうな頭しとるがな
06:42何枚だも何枚だも何枚だも何枚だも何枚だも何枚だも何枚だも
06:47早いとかあのお経をやめて食えんと食えんがな
06:51なんとお経を唱え続ければ食われずに済むのか
06:58そのこの間の坊主はおそがいやつだったな
07:03どなりあげられてあたしゃー
07:06びっくりしてしもたがな
07:09やっぱりおどなしくてガタガタ震えとるのがいいな
07:14なんとどなりつければなんとかなるのか
07:19しかしこの化け物に取り囲まれていたんでは
07:24そのうち化け物たちはもう我慢できなくなってきた
07:29迷いに迷った旅の坊さんは自問自答しだした
07:34怖くないでも怖い怖くないでも怖い怖くないでも怖い
07:44もう待って
07:49あたしゃ待って
07:51あー我慢でき
07:53怖くない怖くない怖くない
07:59もう我慢できぬ怖くぞ
08:05強くない、強くない 強くない
08:12わしは逃げんぞー
08:16gosh
08:25よし、行くぞ
08:28しまった 大純急帯の買いを売った
08:33やかましい
08:35化け物の分際で寺に上がり込み
08:38ましてや人間の命を奪うとは
08:41許しがたき者どもじゃ
08:43このわしが対峙してやるわ
08:47かー
08:49かー
08:50かー
08:51かー
08:51旅の坊さんの正面切った勢いに
09:01恐れをなしたか化け物たちはどこへともなく消えていってしまったそうな
09:06間もなく夜が明けてきた
09:09はぁ
09:11大牛堂の衣じゃ
09:16早速天井裏に上がり確かめてみると
09:20なんと大牛堂の着ていた衣の上に
09:25椿の小牧でできた大きな小槌があった
09:29ていていこぶしとはこの椿の小牧で作った小槌じゃった
09:36さては椿の木は古くなると妖怪に変化すると言われておったがやはり本当だったんじゃな
09:46そこで村人たちと一緒に小槌を焼き捨て
09:54蓮池では鎧兜に身を固めたような
09:59固い鱗の五尺に余る大きな鯉をやっつけた
10:03富田山では小牛ほどの白狐を追い出して成仏させ
10:09木曽川べりの竹やぶではダチョウのように大きな三本足の鶏を退治したそう
10:18こうして旅の坊さんはまた旅を続けたら
10:23それ以来この地方では椿の木で童魚を作ることはしなくなったそうじゃ
10:31ご視聴ありがとうございました