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  • 2 か月前
Japanese folk tales
トランスクリプション
00:00昔々、今からおよそ800年の昔、
00:18授営2年のこと、瀬戸内の水島なだは、優しく冬の日に輝いておりました。
00:31しかしこの海には、ついさっきまできららかな鎧武者の幾百幾千という無黒が浮きつ沈みつしていたのでした。
00:48ご視聴ありがとうございました。
01:18それから幾百年から過ぎました。
01:23時の流れが戦いの生々しい思い出を拭い去ったかのように、水島なだはいつに変わらぬ優しさで輝いておりました。
01:37ある晩週のことでした。
01:40一隻の千石船が荷をたくさん積んで、水島なだを通りかかいました。
01:47日が西に沈むと、月もなく風もない。
01:52海はただ冷え冷えと暗く静まっておりました。
01:59二重八段の大きな穂もまるで、崩れた白い舌のようにしおれておりましたが、それでも船はゆっくりと水島なだを進んでおりました。
02:11静かな番だな。これなら寝とっても舵が取れら。
02:18油断するもんでね。こんな夜は坂潮が起こるぞ。
02:23ふんっ。年寄りは臆病でいけねえ。潮の流れは千穀ご承知よ。任しとけって。
02:32坂潮というのは、潮の流れに逆らう別の潮があって、それがぶつかるところにできる白い波のことでした。
02:44上水島と下水島の間に、名もない島が三つ四つどす黒く浮かんでおるところがあります。
02:57船がちょうどその島に差し掛かったときのことでした。
03:02な、な、なんだこれ。火事が取れねえぞ。
03:07坂潮に乗ったんじゃねえのか。
03:10そんなはずはねえ。
03:13なるほど、海は暗く静かなままでした。
03:20そのときどこからか。
03:40まるで海の底から湧き上がるように、うめき声が聞こえてきました。
03:49なんじゃ、あの声は。
03:53源平の船幽霊じゃねえか。
03:56なんじゃと。
03:58船幽霊じゃと。
04:00若いカジトリと年老いた船子は、船板に耳をつけて声を探しました。
04:09うなり声は確かに、尺を稼い。
04:14尺を稼い。
04:16そう言いながら、繰り返し黒いさざ波のように忍び寄ってくるのです。
04:22風さえありゃ、こんなところを一息に吹っ切れるんじゃが。
04:31船底で休んでいた他の船子たちも、何事かと甲板に上がってきましたが、気味の悪い声を目の当たりにすると、誰も彼もつま先から心臓へ、しびれが走り上がるようでした。
04:53くそぉ、そんなに尺が欲しけりゃ、くれてやら。
05:07やめろおい!
05:09赤鳥投げると船が沈むっていう言い伝えを知らんのか。
05:14きっしりすがる船子と船取りが、揉み合いになったその表紙に、
05:24船取りの手から尺が離れ、海に向かって落っこちていったのでした。
05:38う、う、でじゃ。
05:41すると、海のあちらこちらから、一本また一本と同じ尺を持った白い腕が、先を争うように伸びて、出てきました。
05:54みるみるあたり一人、何百、何千という尺を持った白い腕が、うぎりってしまったのにした。
06:06みるあたり、みるずつに、みるずつに・・・
06:20それは白い腕の疑いです
06:31白い腕は伸びたり縮んだりする
06:35そのたびに幾百の尺が汲む海水が
06:40夕立のように船になだれ込みます
06:43何枚だ何枚だ何枚だ
06:47何枚だ何枚だ
06:48何枚だ何枚だ
06:49何枚だ
07:11船を撃つ水音が
07:26とまるで戦いの響きのように
07:31とどろきました
07:41船子たちはみんなへさり込み
07:52中には教文を唱えるものを降りなかった
07:55海水は止めどなくなだれ落ち
07:58船はゆっくりと沈み始まった
08:11じいさん
08:12血でも違ったか
08:14船が沈むって時に
08:17尺の底なんかに抜いたりしてよ
08:19はぁ
08:21そこに抜けた尺を
08:41海に投げた
08:43不思議なことにさっと
08:45潮の引くように尺を持った
08:47白い腕が一歩二本と消えていったのでした
08:57はぁ
09:11じいさん
09:17どうして尺の底なんか
09:19そこの抜けた尺じゃ
09:21幽霊も水を汲めんじゃろうと思ったのじゃよ
09:25思ったのじゃよ
09:37それにしても
09:39戦いで死んだ人たちは
09:41よっぽど苦しかったんじゃな
09:43あんなに水を欲しがって
09:47これからここを通る時には
09:49供養に真水をいっぱい
09:51海に注いでやろうかの
09:53それが
10:05ええな
10:07八百年もの前に死んだ
10:11武者の霊は
10:13いまだ浮かばれずに
10:15この海に漂っておったのでしょう
10:19若い舵取りと年老いた船子は
10:22遠い過去をし

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