00:00お父ちゃんお母さん
00:13おらゴンタのお嫁さんになりてえだ
00:17どうかおらたち
00:19女王とになることを許してくだせえ
00:22とんでもねえ
00:25おはらは大事な一人娘じゃ
00:28貧乏人のゴンタのところへなぞ
00:31嫁に行かせるわけにはいかねえだよ
00:35女王とになることは絶対に許さ
00:39ええな
00:41昔道の区のある村に
00:48大白将の娘のお花と
00:51小白将のせがれのゴンタという若い二人がおって
00:55なんとか目音になりたいと思っておった
00:58じゃがお花の二親が大事な一人娘をよりによって
01:06村一番の貧乏人のところへ嫁にやるわけもなかった
01:10神様おら確かに貧乏者が一生懸命に働いてお花をきっと幸せにするだで
01:21どうかおらたちを目音にしてくだせえ
01:24お頼み申しますだ
01:26さあお花またお父様に叱られるで帰ってくれろ
01:33神様聞いてくれたかな
01:40あんまり無理なことを頼まんでほしいがのう
01:50そうこうするうち九月も末となった
01:57月が変われば国中の神様が出雲に集まって
02:02縁組を決める十月じゃった
02:05そうじゃ
02:06何を思ったか貧乏人のゴンタが大奮発して石破も焚いたのじゃった
02:13そして夜も更けたころ
02:20お花と誘い合わせて神様のところへ出かけていった
02:26神様今夜は特別な頼みがあるんじゃ
02:32神様どうか出雲へ行って
02:36おらたち二人が目音になれるよう頼んできてくだされ
02:42道中の弁当に少しじゃが
02:46ほれこれを
02:50よい返事を待っておりますね
02:53どうぞ
02:56ほら
02:59あの貧乏がなさぞ無理をしたんじゃろうな
03:16弱ったの
03:17わし出雲のような立派な社に行ったこともないし
03:22そうかと言ってお供えもらって願いを叶えてやらんでは
03:27神様として恥ずかしいし
03:30ほんとに弱ったの
03:32そうして神様は迷いを拭い切るようにお供えを一口口に放り込んだ
03:39さあなんとかせんやならなくなった
03:43残りの石半を担いら神様は
03:47重い足を引きずってこっとりこっとり
03:50遠い出雲へと出かけたのじゃった
03:53いくつもの山を越えいくつもの川を渡ったが
03:58出雲の国は遥か遠くじゃった
04:02こりゃどっかでひと休みせんことには
04:06出雲まで持たんな
04:08今まで道の区から遠くへ出たことのない神様は
04:15長い道中すっかり疲れてしまった
04:19それでも道の区の神様は
04:26またいくつもの山を越えいくつもの谷を越えて
04:30とうとう出雲に着いた
04:35出雲の八代まで来た道の区の神様は
04:39びっくりしてしもうた
04:43そこでは金や銀の玉や刀を
04:47土産を土産に持ってきた神様や
04:49立派な牛舎に米をいっぱい摘んできて
04:52それを土産だという神様たちが
04:55奥に自慢話に花を咲かせておった
04:58こりゃえらいところに来てしまっただな
05:04この食いかけの石半を土産に
05:08どういうわけにもいかんしな
05:13ああああ
05:15帰りたいな
05:17わしみたいにみっともない神様なんて他におらんで
05:23そうじゃこれをこうして腹のところに入れれば
05:28少しは貫力がつくじゃろうか
05:31あああ
05:33初めての神様ですね
05:35じきに御神儀が始まりますで
05:38は、はい、すぐに
05:42道の区の神様は受付役の神様に言われ
05:46仕方なく入っていった
05:49受付の横には他の神様方が持ってきた値上げ物が
05:53山のように積んであって
05:56道の区の神様は身の縮む思いでそこを通って
06:01一番下座の隅で縮こまった
06:04そうしていよいよ主役の出雲の神様が登場して
06:09縁結びの御神儀が始まった
06:15あああ
06:17大変お待たせ申したい今から
06:21本年度における縁結びの神儀を
06:29取り行いたいと思う次第でござる
06:36わしは文語の国の権限でござるが
06:41今年は15組ほど頼まれてきたで
06:45御神儀願いたい
06:47いずれも金持ちの若者や娘同士でござる
06:52御神儀殿それはあなたにお任せする
06:55あんなにたくさんの土産物を持たしてよこした家なら
06:59財産もあろうし
07:01それにあなたの仲立ちなら
07:04間違いなかろうって
07:08どうじゃな神様方
07:11いいでしょう
07:13いいでしょう
07:14いいでしょう
07:15わしは武蔵の国の八万でござるが
07:19八組ほど御神儀願いたい
07:22が一組だけ小百姓の息子と小百姓の娘がおるのじゃが
07:29それもよいではないか
07:32小百姓同士ならうまくいくじゃろ
07:35のう神様方よ
07:40こうして日本中の縁組を決めていくのだから
07:44寄り合いはずっと続いた
07:46道の句の神様は
07:48ゴンタとお花のことを今日言おうか
07:51明日こそはと思っているうちに
07:54日はどんどん経っていった
07:56はよいよ
08:01はよいよ
08:03はよいよ
08:04言わねば
08:05三組ほどお願いしたい
08:07もうすぐ終わってしまう
08:10それもよいよい
08:12ゴ
08:13ゴ
08:15ゴ
08:16これでもうないかな
08:18お、お花
08:20お、お
08:22なければ今年の分はこれにておしまいにする
08:27長い間ご苦労じゃった
08:29まずはめでたし、めでたし
08:32こ、こんな
08:35今年も終わったの
08:37ゴ
08:38先に失礼する
08:40あ、お、おー
08:42ゴー
08:44ゴー
08:45お花を目音にしてくだされー
08:49はぁ、それほどの大声で言われるなら間違いなかろうって
09:12ゴンタとお花とモースも目音にするがよろしいの
09:17みなさまが大声で聞いたのに
09:23道の句の神様はほっとしてその場へヘラヘラと座り込んで死に
09:31どうにかこうにか縁結びの仕事をやり遂げた道の句の神様は草深い祠へ帰っていった
09:43そして早速その夜お花の両親の夢枕に立った
09:51出雲の神様がゴンタとお花坊を目音にしてやれと言うてござったぞ
10:02ただちに目音にしてやらねばお前たちの家に災いが起こるであろう
10:10早速大声の通りにしました
10:16こうしてめでたくゴンタとお花は目音になった
10:26そうしてその後も道の句の神様に毎日毎日お参りして
10:33いつまでも仲良く暮らしたということじゃ