00:00昔々の大昔
00:16神様が人間や生き物をお作りになったばかりのお話だ
00:30何でも初め夫婦は背中合わせにくっついて生まれたという話だった
00:52よし
00:53それじゃから夫婦は働くときも飯を食うときも
01:04夜寝るときもいつも一緒でとても幸せに暮らしておった
01:09ところがある夜
01:24なあお前
01:27何ですお前さん
01:31わしずっと以前からお前の顔を見たいと思ってたんじゃが
01:36と突然男が言い出した
01:39すると女も
01:40私もそう思ってました
01:43あんたの顔を見ながら話ができたらどんなに楽しいじゃろう
01:48お互いに同じことを思っていたのを知って
01:53背中合わせにくっついていた夫婦は
01:55急に互いの顔を見たくなって仕方がなくなったのじゃった
02:00どうじゃぞ
02:02わちらを作ってくれた神様に頼んでみては
02:05それはいい考えです
02:08神様に私たちの願いを叶えてくれるように
02:11頼んでみましょう
02:13うん
02:15うん
02:15早速二人は神様がいらっしゃるところへ出かけていったのじゃった
02:26神様お願いがございまーす
02:30出てきておくんなさーい
02:34出てきておくんなさーい
02:35なんじゃなどんな頼りどうじゃな
02:38わしたちは背中と背中がくっついちゃるんで
02:47顔を見ることもできるのでとても情けのうございます
02:51どうぞして背中割ってもろうって
02:55お互いがずーっと見えるようにしてくださいませ
02:59なに背中を割ってくれじゃと
03:02何卒お頼み申します
03:06目音というものは一心同体と言うて二人で一人じゃ
03:12それを背中を割って二人にせよというのじゃな
03:16崩壊せんじゃろうな
03:19と言ったと思うと途端に背中が割れたのじゃ
03:24わー
03:25背中が割れたー
03:28あんたー
03:31ところが男はあんまり喜んで飛んで跳ねて
03:35姿が見えんようになってしもうたのじゃった
03:39あんたー
03:44なんじゃろうね
03:46せっかくあんたの顔が見られることになったというのに
03:52残された女は今まで働くときも飯を食うときも
03:58夜寝るときもいつも一緒だった男がいなくなったので
04:02寂しくて仕方がなかった
04:04寂しいの
04:07二人で顔見合わせて話をしたかったのに
04:11そこで女は男を探しに旅に出たのじゃった
04:16山を登り川を渡ってあちこち探し回ったが
04:21男の行方はなかなかわからんかった
04:24あんたー
04:35どこにいるんじゃー
04:39どこにいるんじゃー
04:43いくら呼んでもこだわが帰ってくるばかりじゃった
04:49一方男の方はといえばやっぱり
04:58おっかー
05:02おっかー
05:06これもいくら呼んでも帰ってくるのはこだまばかり
05:11ああせっかく背中が割れて二人に慣れた中に
05:18わしゃ喜びすぎて場所思いようわからんところへ
05:21飛んできてしもた
05:23あの人に会えるのじゃろうか
05:42二人は歩いても歩いても相手がどうしても見つからんかった
05:56激しい雨の中
06:17女は丘の大きなカシの木の影へ駆け込んだのじゃった
06:22とそこへ男が反対側から駆け込んできた
06:26ああ一体どこへ行ったら会えるんじゃろう
06:34あれ何かこう懐かしい声が
06:38あの声は確かに
06:41誰かいるんじゃろうか
06:43声を聞いたような気がしたが
06:46それは空耳じゃったのかと二人は下にくれ
06:50再び別々の方向へ歩き出したのじゃった
06:53男は何日も何日も野山を歩き
07:04ある日のこと見慣れた景色のところへたどり着いた
07:08あれはオラの家じゃ
07:13オッカー
07:16オッカー
07:18じゃが死ぬほど会いたかったオッカーはいるはずもない
07:25オッカーもオラを探しに遠くへ行ってしまったに違いない
07:30ああどうしよう
07:33男はもうこれから先どこを探し回っていいかわからなくなって
07:41すっかり困り果てもう一度神様にお願いすることにした
07:46神様お願いがございまーす
07:52ございまーす
07:54なんじゃねー
07:55なんの頼みじゃ
07:58背中割ってもらってありがとうございましたが
08:02片一方はおらんことになったんで会うことができんようになりました
08:07なんとかしてくださいませ
08:09そりゃあ見ろだから言わんこっちゃあない
08:15はい私が喜びすぎたのはいかんかったのです
08:19どうか一つ最後のお願いでございます
08:22しょうがない奴だ
08:25それじゃあ愛という玉を与えてやるから
08:30これを頼りに尋ね回ってもう片一歩を見つけるばよい
08:35ああこれが愛の玉でございますか
08:41ありがとうございました
08:42寝音を結びつける最後の玉じゃ
08:47あとはわしわしだぞ
08:49男は神様に言われた通り
08:54愛の玉の力を頼りにあちこち探し歩いたのだったが
08:59それでもなかなか女を見つけ出すことはできんかった
09:03途方に暮れて峠に差し掛かるところまで歩いてきたとき
09:09雷が鳴り
09:11急に激しい雨が降りだした
09:14男があわせて雨宿りに飛び込んだところはなんと
09:23あの日知らずに二人がすれ違った
09:26歌詞の大木の下だった
09:29背中がくっついていたわしの女具は今頃どこにいるんだろう
09:36こんな愛の玉など何の役にも立ち合わせんじゃないか
09:41こんなもんしててしまえ
09:43あんた
09:51おっか
09:54この懐かしい背中の温かみ
09:58愛の玉は大きく二人を包み二人の心の中に残った
10:03会いたかったよ
10:05おっか
10:06会いたかったよ
10:08二人はいつまでも見つめ合いながら
10:14離れ離れになってどんなに寂しかったか
10:17どんなに探し歩いたかを語り合ったのじゃった
10:21それ以来夫婦っていうもんは
10:28昔くっついていた片割れと結ばれるものだというそうじゃ
10:34ご視聴ありがとうございました
10:48Hahaha
10:49先生
10:51there