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  • 2 週間前
Japanese folk tales
トランスクリプション
00:00昔、山並み連なる南合図の下郷というところに、
00:21鏡沼と呼ばれる静かな沼があった。
00:30この沼は、人里から遠く離れた深い山合いにあったので、
00:41人が滅多に近づくことができず、いつも眠るがごとく心身と静まり返っておった。
00:49そして、この沼の水辺には、滅多に見ることのできない、全身緑色をした小さなカエルたちが、
01:02周りの草むらや木々の上に数多く住みついておった。
01:07そんな山深い下郷の里に、
01:23なお大蔵という一人の漁師が、
01:26赤という名の一匹の犬と一緒に暮らしておった。
01:30この若い狩人は、
01:36熊とでも平気で一騎打ちをしかねないほどの豪のもので、
01:41鉄砲を使わせるとこの辺りでは、
01:44並ぶものもないほどの鉄砲の名人でもあった。
01:48明日の狩りのために、
02:11道具の手入れや玉作りをしていた大蔵が、
02:14ふと気がつくと、
02:17不思議なことに、
02:19まるで竹の茎のようにきれいな緑色をした小さなカエルが、
02:24路股の脇にポツンと座り込み、
02:28じっと大蔵を見つめておった。
02:33なんで、カエルが…
02:35大蔵はしばらくそのカエルを見つめ続けた。
02:44大蔵はしばらくそのカエルを見つめ続けた。
02:51大蔵はしばらくそのカエルを見つめ続けた。
02:57夜が明けると鹿狩りを思い立った大象は朝早くから愛犬の赤を引き連れると
03:11三本槍がたきへ向かって家を出た
03:19じゃがどうしたわけかその日に限って一匹の獲物にも出会わず
03:25鹿の姿を求めて歩き続けているうちに
03:29いつしか山の奥へと迷い込み
03:32ふと気がついてみると
03:35いつの間にか湧き入れた霧に巻かれた大象と赤は
03:39帰る道すらわからなくなっておった
03:51おー、ゆうべのカエルじゃ
03:54カエルの跳ね去った方に目を向けた大象は
04:05霧の晴れ間に何か光るものを見た
04:10それは、さざ波ひとつ立てずに青く澄みきったきれいな水をたたえた
04:24大きな静かな沼じゃった
04:27今まで見たこともない沼ではあったが
04:33霧の晴れるのを待つ間一休みしようと思い
04:37大木の寝方に腰を下ろした大象は
04:40歩き疲れたのか
04:42いつの間にかぐっすりと眠り込んでしまった
04:46どのくらい寝込んでおったか
05:00大象はふと何か異様な気配を感じて目を覚ました
05:05驚いたことに
05:13いつの間にか無数のカエルが
05:16大象や赤の周りはおろか
05:19大きな木の幹にまで
05:21まるで何かから逃げるように
05:24びっしりとたかっておった
05:27沼は相変わらず深い霧に立ち込められて
05:40音もなく静かに静まり返っておった
05:45がその時赤が突然激しくうなり始めた
05:50不気味な気配に沼の方を伺っていた大象は
06:01ゆっくりと流れ始めた霧の中に
06:04うっすらと浮かび上がる一つの影を見つけた
06:07何だろう
06:11それは美しい女の姿じゃった
06:22私の楽しみの邪魔をするんじゃないよ
06:29なんと
06:34どこから現れ出たのか
06:38その美しい女は水の上に佇みながら
06:43じっと大象を見つめておった
06:46化け物
06:48そう思った大象は
06:52とっさに銃を構えると
06:54引き金を絞った
06:56弾は確かに女の胸を貫いたはずなのに
07:02そう思った大象は
07:05再び狙いをつけると引き金を引いた
07:08陰陰とこだまする銃声が
07:13沼の霧の中に吸い込まれて消えた後に
07:17何事もなかったかのように水の上に佇む女の姿を見た
07:23大象は血の気も凍るような恐ろしさを感じた
07:29その時今まで静かに佇んでいた女の様子がふと変わり始めた
07:35雨にけぶる中で
07:49女の姿はいつの間にか一匹の白い雷蛇に変わっておる
07:55おおおおおおおおおおおお
08:00雷鳴とどろく中に鎌首を高く上がり身をくねらせる大蛇の青白い姿は凄まじく
08:08それは今にも大蔵を襲おうとするかのようにゆっくりと迫り始めた
08:14あまりの出来事に大蔵はなすすべもなくただ呆然とするだけじゃなかった
08:21その大蛇はまるでカエルを狙うがごとに大蔵に迫り続けた
08:38もうダメだ
08:56双角を決めた大蔵の前に大蛇は突然鎌首を落とし込み
09:04長々とその身を横たえた
09:07やはり大蔵の玉は的を外していなかったのじゃろう
09:18長々と足元に伸びていた大蛇はやがてゆっくりと水の中へ引き込まれるように沈み始めた
09:37沼の中へ沈み込んでいった大蛇はその後再びその姿を表すことはなかった
09:49この沼を餌場にするために住みついた大蛇を退治してもらおうとカエルたちが大蔵を招き寄せたのじゃろうか
10:04その後大蔵は二度とこの沼に近づきはしなかった
10:17そして鏡沼は今もカエルたちをその水辺に住まわせたまま
10:25美しい姿で南合図の山懐にひっそりと身を隠している
10:32このカエルは森青蛙と言われている

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