00:00昔 九州の宮崎に三津山と四津山という山があった
00:20その近くに祖母山という山があって 麓の村にクエモンという漁師が住んでおった
00:28クエモンの鉄砲は一発狙えば獲物を外したことがなく 金材の漁師たちは名人として敬っておった
00:44クエモンはある日のこと いつものように犬の赤を連れて漁に出かけ 押し方の国見が丘というところまでやってきた
00:54わしは祖母のクエモンじゃ おぬしはどこの方じゃ
01:06なにクエモンじゃと
01:10ああ おぬしがクエモンだんか 噂はよう聞いとる
01:19一度その名人わざとやらを この目で見たいものと思っておったでの
01:25この漁師ゴロータも鉄砲を持たせると 一発の腕自慢で漁師仲間から一目置かれておった
01:34そうしてクエモンの噂が耳に入ると いつも鼻先で笑っておった
01:40そこで二人は腕試しをすることになった
01:46いたはず クマじゃ ちょうどいい 二頭おうる
01:53わしは右のクマ クエモン殿が左のクマじゃ
01:59さすがクエモン殿 見事じゃ
02:09ゴロータ殿もなかなかの腕前
02:20わしの玉は心臓に命中じゃ
02:24まあこんなところじゃ
02:27ところでクエモン殿はどこを寝ろうた
02:31わしはクマの尻の穴を寝ろうた
02:35尻の穴じゃと
02:38なーり あの丘から寝ろうてな
02:43岩に玉を跳ね返らせて クマの尻に命中させたのじゃ
02:49ぞうさないことじゃ
02:51はぁ
02:52獲物は傷つければ値打ちが下がる
02:55鉄砲打ちはそこまで読まんとな
02:59そんなことがあってからというもの クエモンの評判はますます高くなった
03:05ある日のことクエモンは獲物を追っているうちに
03:10ミツヤマに入り込んでおった
03:22しばらくミツヤマで漁をしようと決めた
03:26いまんじいか
03:45ヤマンジーか
04:12クエモンはヤマンジーが小屋に入ってきたら
04:15一発見舞ってやろうと身構えていたが
04:18クエモン話がある
04:23クエモンは鉄砲を脇に置いた
04:28妙があったらさっさと中に入れ
04:31するとヤマンジーは一歩も足で
04:35焚き火の前にドカッと座った
04:37その顔には三つ目が
04:40火のように赤く光っておった
04:43私はこの三つ山の主
04:53三つ山だろうじゃ
04:55分かっておる
04:57これを助けてくれ
05:02何情ヤマンジーともあるんが
05:05泣くとはみっともないぞ
05:07私は今まで三つ山の主として暮らしてきたが
05:13四つ山に住む四つ山太郎が
05:16私を殺してこの三つ山を寝ろうとおる
05:21そいつは目が四つあって
05:24わし体が大きうて力も強い
05:28どうしてもわしはかなわん
05:31と言って三つ山を四つ山とろ
05:35とられるわけにはいかん
05:38それでわしにどうしろと言うんじゃ
05:42九州一のその鉄砲の腕前で四つ山太郎倒してほしいんじゃ
05:51じゃあがヤマンジー同士の争いに
06:00わしのような人間が関わるというのはどうじゃろう
06:04ヤマンジーにはヤマンジーの掟というものがあるじゃろう
06:11起きてじゃと
06:13これは戦じゃ
06:15戦に起きてなどない
06:18戦か
06:19よしわかった
06:21じゃがわしとても一発で四つ山太郎を倒すことはできんぞ
06:29なに心配無用じゃ
06:32ヤマンジーにはこの目の間に小さな小分がある
06:37ここに命中させる
06:39四つ山太郎も一頃じゃ
06:42明日の晩四つ山太郎ここにおびき寄せるでな
06:47わしがクエモン頼むと言うたら鉄砲打ってくれ
06:53な
06:54頼んだぞ
06:56次の日は夕暮れから山が荒れだした
07:07そろそろヤマンジーどもは争い始めたな
07:18山が止まる
07:33山が止まる
07:37四ツ山太郎よ こっちじゃ こっちじゃ こっちじゃ 四ツ山太郎 こっちじゃ
08:07来たら
08:09うっ あのぼう
08:30やったぞ 四ツ山太郎が死んだ
08:37おおう
08:41クリオ 私の鉄砲にはもう弾は入っておらんが
08:47何?
08:48いささかわしも腹がへったでな
08:52用のすんだ者には死んでもらわにゃな
08:56測ったな
08:58鉄砲は名人かもしらんが お主も人がええわい
09:04弱い
09:06離せ
09:08離せ
09:10離せ
09:12離っとれよ
09:14離せ
09:16離さんか
09:18これから
09:20よし
09:22離せ
09:24離せ
09:34乙山太郎も最後は欲の化け物として死んでいった
09:48山んじい同士の欲の突っ張り合いじゃったか
09:57人の世と変わらぬ愛
09:59赤
10:09こうして三ツ山太郎も四ツ山太郎も両方とも死んでしまい
10:20主のいなくなった山を合わせて七つ山と呼ぶようになった
10:27これが宮崎は諸塚の七つ山だということじゃ