00:00昔々
00:12春も終わりに近くなって
00:16八丈島の山奥に山盤が入った
00:20山盤というのは山嵐や山火事を防ぐために
00:26山奥に小屋を作って盤をする人のことじゃった
00:30今年はふもとの村のゴンスケ爺さんが山盤として入った
00:36山奥で家族から一人だけ離れて暮らすというのは
00:41そりゃ寂しいことじゃった
00:45あげっ
00:57誰にも見らん
01:02幻だったか
01:04こりゃいかんわいい
01:07ここのとこ誰にもあっとらんからの
01:11人恋しさに耐えられなくなったゴンスケ爺さんは
01:20ふもとの村に残してきた孫息子の太郎坊のことを思い
01:25夏が過ぎて山を降りるときの土産にと
01:29木切れを削り
01:31矢広部を作るのじゃった
01:33やっ
01:34やっ
01:35やっ
01:36やっ
01:37やっ
01:38やっ
01:39じっちゃー
01:40やったやった
01:41おらばかったぞー
01:42じっちゃー
01:44ふふふ
01:47太郎坊
01:50楽しみにしてや
01:52そんな
01:58ある夜のことじゃった
02:01やった
02:04いっ
02:05いて
02:12ん?
02:14そこに居るのは誰じゃ?
02:16やっ
02:17やっ
02:18やっ
02:19やっ
02:20やっ
02:21なにする
02:23やっ
02:24やっ
02:25やっ
02:26やっ
02:27やっ
02:28こんな夜中にいたずらしよって
02:33承知せんじょう?
02:36まさか
02:37あれが話しにくくてんじか
02:42てんじとはここ八丈島に住むと言われる妖怪で
02:47夜小屋に一人でいたりすると
02:50シャシャシャシャッと笑いながら
02:52いろいろのいたずらをするというのじゃった
02:56そうしてその夜からてんじは毎晩ゴースケ爺さんの小屋に現れ
03:02シャシャシャシャシャッと笑いながらいたずらして逃げていくのじゃった
03:08なに solchen
03:10なに
03:13ちっと
03:14ちゃんと
03:16ちゃんと
03:17ちゃっ
03:18ちゃん
03:19alla
03:20いい加減にして
03:22と
03:24ん
03:26毎晩毎晩なってえやつだ
03:29ああ
03:31グオ
03:33思い immediate
03:35ヤジロベイがねぇ なんとゴンスケ爺さんが孫の太郎坊のために作ってやったヤジロベイまで
03:45天地に持って行かれたのじゃった
03:53を許さんぞ天地名
04:05次の夜 怒ったゴンスケ爺さんは眠らずに天地の来るのを待っておった
04:13すると
04:16あのもしじっちゃん
04:19きゅうったな 天地名今夜こそはとっつかまえてやる
04:27ん
04:29大娘さん 私となり村の名主の娘です
04:39父が山盤のあなた様にボタ持ち持っていくようにと申しますので 寂しい夜の山道を辛抱して一人で参りました
04:50どうぞ召し上がってください 名主の娘が
04:55そんな夜更けの山道を一人で おかしいな
05:06もうそうかいいそうかい 遠いところをご苦労じゃった
05:14なんじゃタケノの腕とは
05:16あっはい
05:18あっはぁ
05:21虫を踏んでねぇか
05:22うれっ
05:24わしのヤギロゲーを
05:26返し
05:27俺のもちゃ
05:28俺のもちゃ
05:29俺のもちゃ
05:30ん
05:31ん
05:33ん
05:34ん
05:36ん
05:37ん
05:38その夜
05:42ゴンスケ爺さんはこれで展示もやってこないだろうと
05:46すっかり安心するとしばらくぶりにゆっくりと眠ったのじゃった
05:51ところがその
05:54真夜中のこと
05:56見てよ
06:02見てよ
06:03見てよ
06:05見てよ
06:07見てよ
06:12見てよ
06:14見てよ
06:17じっちゃん
06:20オラの腕返してくれ
06:23現地名懲りもせずまた来よったか
06:27ん?
06:37おめえが展示か?
06:42あ、オラ展示じゃ
06:44じっちゃんお願いだからオラの腕返してくれる
06:49なんじゃまだ子供じゃねえか
07:02オラの腕返してくれたら
07:06オラ
07:07オラ
07:08これじっちゃんに返す
07:11そんな展示の姿を見ているうちゴンスケ爺さんは里に残してきた孫息子の太郎坊のことが思い浮かんできた
07:22ちっちゃん
07:24ちっちゃん
07:25まだ怒ってんのか
07:27ん?
07:29怒ってなんかいいね
07:31さあ
07:33腕を返すからこっちへ来い
07:35オッケー来い
07:52じゃあこの腕どうやってくっつけるんじゃ
07:56はいでくっつけるんじゃ
07:58は?はいで?
08:01ああはいでくっつけりゃすぐくっつく
08:04はいなら中に担当あるわな
08:07さあ中へ入れ
08:10腕は痛くねえか
08:13あいてえ
08:15ああそうかそうか
08:23ゴンスケ爺さんは展示の切られた腕に酒を吹きかけそれにいろりの肺を丁寧にふりかけた
08:34どうじゃ?
08:48大丈夫じゃ
08:49ほれこの通りちゃんとくっついてる
08:53やる
08:56ほれこのヤジロベおめえにやる
08:59え?これオラにくれるのか?
09:02ちっちゃ
09:05やっぱりこれ面白ぇよな
09:08やっぱりこれを申しねーよああああ あああああああああ
09:17ん
09:19ん
09:21ああああああ あああああああ
09:26デニー また遊びに行きなぁ
09:31そう言ってゴンスケ爺さんは
09:35シャッシャッシャッと笑いながら元気に山へ帰っていく天寺を見つめておった
09:41天寺の奴もこんな山の中で一人で寂しかったのかな
10:01それでああやって毎晩わしのところにいたずらをしにやってきたのかな
10:10あれ以来なぜか天寺はゴンスケ爺さんのところにはやってこなかったが
10:20夏も終わりのある日ゴンスケ爺さんは
10:26孫息子の太郎坊への土産のヤジロベを持って
10:31遺産でもらえと帰っていったということじゃ
10:35ご視聴ありがとうございました
10:43ご視聴ありがとうございました