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  • 5 日前
Japanese folk tales
トランスクリプション
00:00昔、九州は宮崎の延岡に、大竹寺という寺があった。
00:14この寺の和尚は大層風変わりな和尚で、弟子も取らず気楽な一人暮らしで、
00:21寺の手入れなど何一つせず、昼寝ばかりして毎日を暮らしておった。
00:30だから、庭に落ち葉がどれだけ積もろうと、荒れるに任せ、一向に気にする気配もなかった。
00:39ある秋の夕暮れのことじゃった。
00:43一人の旅の小僧が、この寺に現れ、和尚に一夜の宿を寝ごうた。
00:50どれだけ歩いたのか、とても疲れている様子で和尚は、かわいそうに思い、一晩止めてやることにした。
01:00その晩、かゆをごっそうしてやると、よほど腹を空かせていたのか、小僧は、うまそうに何倍も何倍もおかわりをして食った。
01:13ずいぶん長旅のようじゃが、どこから来たのじゃな?
01:26それにどこへ行くつもりじゃね?
01:32そうか、言いたくなければ言わんでもよい。
01:45人にはそれぞれ言えないこともあるでな。
01:48その晩、和尚は、小僧を栗に寝かせてやった。
01:58な、なんと、あの落ち葉の積もるままにしておいた庭が、こんなにきれいな庭になっておる。
02:26しかし、誰が吐いてくれたのじゃ?
02:30和尚様、おはようございます。
02:34ふっ、お前が庭を吐いてくれたのか、これはすまんかった。
02:39しかし、こうもきれいに掃除されてみると、これからも掃除をせねばならぬようで、ちっと困った。
02:51和尚様、これから私をこの寺に置いていただけませんか?
02:57掃除でもなんでも私がやりますから、お願いいたします。
03:02そりゃあ、ありがたいが、この貧乏寺ではろくな手当てもやれんしな。
03:08お前に学問やお経を教えるのも臆病じゃしな。
03:13いえいえ、心配しないでください。私は旅を続けるのが嫌になったんです。ここでのんびり暮らしたいんです。
03:24おお、そっか。それではこの寺で暮らすがええよい。
03:28のんびり暮らしたいと言ったわりには、小僧はよく働いた。
03:37和尚様、朝ごはんの支度ができました。ごゆっくり召し上がってください。
03:43うん、これはおいしそうな精進料理ではないか。いただくぞ。
03:49おー、これはおいしい。今までこんなにおいしい朝ごはんは食ったことがないぞ。
04:05他にもご用がございますか?
04:09なに?他にも用を足してくれるというのか?
04:13うーん、そうじゃな。
04:14それじゃ一つ、山向こうの北方村のお寺に書状を届けてもらいたいが。
04:22はい、おやすい御用で。
04:25じゃが、ちょっと遠いぞ。片道よりはあるが。
04:29平気です。行ってまいります。
04:33この手紙をな、千徳寺へ届けてくれ。必ず返事をもらってくるように。
04:39はい、わかりました。
04:42それでは行ってまいります。
04:44あ、これこれ、小僧。
04:49道中気をつけて、おや?
04:53もう姿がない、すばしっこい小僧じゃ。
04:57おー、おいと、御将がいつものように、御経をあげた後、ごろりと横になっていると。
05:04おー、御将さま、いってまいりました。
05:10お、もう行ってきたのか。まだ昼前じゃが。
05:14はい、この通り、千徳寺様からのご返事でございます
05:20そ、そうか
05:21確かにこれは千徳寺のおひょうのじしゃ
05:27ご苦労であったな、ゆっくり休むがよい
05:33では私も昼寝がしとうございます、よろしいですか
05:37はい、とも
05:38小僧は実際よく昼寝をした
05:44用事を済ませてしまうと、秋の日差しの心地よい縁側で
05:50のんびりと寝転んでいるのが好きであった
05:53あ、おしょうさま
05:55しかし昼寝とは気持ちのいいもんですね
05:59生まれて今まで知りませんでした
06:02若い小僧のくせに、年寄りじみたことを言うのじゃった
06:08こうして毎日小僧は、てきぱきと寺の内外の掃除をし
06:17草ぼうぼうだったお墓もきっちりと吐き清め
06:20クモの巣だらけだったご本尊もピカピカに磨きあげ
06:25そして仕事が済むと、いつものように昼寝するのじゃった
06:30そして、日が経つにつれて、寺は道がいるようにきれいになったが
06:41おしょうはようやく、妙なことに気がついた
06:45というのは、小僧が毎日こまごまとした用事を片付けていくわりには
06:51働いているところを見たことがないのじゃった
06:54そういえば、千徳寺へ使いに行ったときも
06:59朝ごはんのあと、使いに出してから昼時にはもう帰っておった
07:06しかし、北方村までは大人の足でも日暮れに戻ってこられたら早いほうじゃ
07:14おしょうさま、何かご用ですか
07:18いやいや、ちょっとな
07:21どうやら風が出てきたようじゃと思うてな
07:25今晩あたり、強い風が吹くかもしれん
07:30そのようですね
07:31そして、その晩やはり強い風が吹いた
07:38この分では、庭の落ち葉もひどかろうな
07:44明日朝、早起きして吐いておきます
07:49おしょうは目を覚ました
07:54夜が明けかかっており、夕べの風は嘘のように止んでおった
08:01小僧はまだすやすや眠っている
08:07おしょうは小僧が起きて掃除にかかるのを辛抱強く待った
08:13やがて部屋に日が差し始めてから、小僧はやっと目を覚ました
08:22小僧はかまどをがらりとあけ、縁側にどっかりとあぐらをかいた
08:29ああ、あれは天狗の輪うちわじゃ
08:37そして、落ち葉でいっぱいになった庭に向かって仰ぎ始めた
08:44縁側に座っているのは、まぎれもない天狗じゃった
08:52天狗が葉打ち葉であおぐたびに、庭の落ち葉は竜巻のように天に残っていった
08:59お前、なんで小僧などになって、この寺にやってきたのかなぁ
09:20お前、なんで小僧などになって、この寺にやってきたのかなぁ
09:29ご覧になったのか
09:37私は主言の日々が嫌になり、和尚とのんびり暮らそうと思っていたが
09:45正体を知られては、それも叶えませぬ
09:51お世話になり申した
09:58お、お前!
10:04こうして天狗は寺を去っていった
10:08和尚は、なんとつまらぬことを言ってしまったことかと、後悔したそんな
10:20天狗であろうと、知らぬふりをしていれば、二人仲良く暮らせたものも達者でなぁ
10:29和尚はいつまでも手を合わせておった
10:37ご視聴ありがとうございました
10:38ご視聴ありがとうございました

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