00:00昔々、九州は熊本、熊川での話じゃった。
00:24この川の流れは早く、真っ白なしぶきをあげて流れるさま、すさまじいばかりじゃった。
00:34そしてこの熊川は、このあたりの村人にとっては困りものじゃった。
00:41それというのも、山でできたものを下流の人吉の町まで運ぶ道筋には、早い流れと大きな岩が行く手を妨げているのじゃった。
00:53うわあああああ
01:00時には足場を失って転落し、激流に飲まれて命を落とす者も多かった。
01:08無事に、人吉の町へたどり着いた村人たちは、わずかな荷を店に下ろし、金に変え、生計を立てておった。
01:31村のしゅう、いつもいつもご苦労様じゃなあ、ゆっくりと休んでいってくだされや。
01:40そんな村人を見ていて、あきんどの林正盛はいつも気の毒に思っておった。
01:49なんとか、熊川を船で下ることはできぬものかいなあ。
01:57それから何年かして、正盛堂は、遺宿を頼り、熊川に船道を作る仕事に取り掛かった。
02:07岩を下る、川をさらい、川を整えていった。
02:13それを知って村人たちも駆けつけた。
02:16ところが、大瀬下というところまで来たとき、このあたりの人々が亀石と呼ぶ大岩にぶつかった。
02:27その亀石はその名の通り、大きなウミガメが川の中にドデンと座っているようで、その姿はまるで、これ以上は船道は作らせんぞ、と言わんばかりに立ちはだかっているのじゃった。
02:46そこで石区は大岩を立ち割ろうと、鷹を打ち込んだ。
02:53この亀石の固いこと。
02:57どこを叩いてもタガネも土も、跳ね返し、船道作りの作業はここで止まってしまった。
03:06それでも初めのうちは、日が変われば何とか良い工夫もあるじゃろうと考え、いろいろ工夫してタガネを打ち込んだが、亀石は固く、タガネは折れるばかりじゃった。
03:21そうこうしているうちに、日はどんどんと過ぎ、いつの間にか妙案が浮かばないまま2ヶ月ほどが経ってしまった。
03:30亀石を取り壊すなってことは無理な話じゃったかのう。
03:40どうだい、熊川に船を通すなんて無理なんじゃよ。
03:45こうして石区は一人また一人と逃げ出し、人手はどんどん減っていった。
03:56しかし、ここまで来て諦めるわけにはいかん。
04:02わしが諦めたら村人はどこになる。
04:05なんとか紙石を打ち砕く妙案は無いものじゃろうか。
04:26なんとか紙石を打ち砕く妙案は無いものじゃろうか。
04:45するとその時、雪の中に座り込む正森丼の背後のやぶに、一匹の白い狐が姿を現した。
04:57そしてじっと正森丼を見ているのじゃった。
05:02白い狐は神様のお使いとも聞く。
05:06今の正森丼にとっては何者にもすがりたい気持ちでいっぱいじゃった。
05:12おい狐丼、お前に神通力っていうもんがあるんならわしの苦労もわかるじゃろう。
05:20なんかよか知恵は無かろうか。
05:23じゃがじっと正森丼を見つめていた白狐は、またそのまま吉の中へ消えていった。
05:36その世のことじゃった。
05:42正森丼、正森丼。
05:47正森丼、なかなか難儀なことじゃの。
05:52お前の村人を思うところはようわかる。
05:57だが今までのやり方では亀石は動かぬぞ。
06:02そこでお前の今までの努力に免じて、亀石を取りのける方法を教えたげよ。
06:11よいか、あの亀石の上に枯れ木を積んで石を焼くのじゃ。
06:19すると石が割れる。
06:22どんな硬い石でも日々は弱いものだということじゃ。
06:27試してみることじゃ。
06:29わかったな。
06:31よいか、石を焼くのじゃぞ。
06:40正森は早速夜が明けるのを待ちかねて、夢枕に立った狐のお告げ通り、枯れ木を渦高く亀石の上に積み上げると火を放った。
06:53よいか、石を焼く。
07:02よいか、石を焼く。
07:08やがて枯れ木は燃え尽きた
07:35岩肌を覆っているまだ冷めやらぬ灰を
07:38医師区たちは急いで取り除いてみた
07:41するとどうじゃろう
07:45刺し子の硬い亀石の表面に
07:48縦横のひび割れが入っておった
07:53ありがたいありがたい
07:56やっぱり狐のお告げ通りじゃ
07:59皆の一緒
08:00これで岩を割ることができるぞ
08:04医師区たちはひび割れた岩肌のその上に
08:08枯れ木を積み上げた
08:10そして再び火を放ち
08:12もっと深い割れ目を作り
08:15岩を立ち割ることを繰り返すのじゃ
08:18そしていつしか日も谷合いに暮れようとする頃
08:30繰り返し焼かれた亀石の岩肌は
08:34無数の深いひび割れを作っておった
08:37岩肌の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の石の
09:07me
09:12ええええええ
09:25大大やったぞーやっ
09:31亀石が見事に真っ二つに割れた
09:36水柱を上げて石の塊が落ちた後
09:42半分ほどになった亀石が残って
09:45今まで流れを遮られていた水は
09:49緩やかに流れを変えていった
09:54それから船道作りは滞りなく成し遂げられ
09:58正盛丼はあの時の狐のお告げを大変ありがたがり
10:04屋敷内に稲荷神社を建てて狐をお祭りした
10:08そしてその後亀石を割ったということから
10:19残った石を亀割り石と呼ぶようになり
10:23熊川を通る船には船の観察に
10:27カメという字をつけて
10:29正盛丼と石区たちの苦心を忍んだということじゃ