00:00昔、備中の国に、常防の吉川という村があった
00:18ある日のこと、丘の上に村人たちが集まって、村に八幡様を建てようということになった
00:25こうしてみんな、心を一つにして、お金や御用木を出し合って建てるんじゃ
00:34心当たりにない立派なお宮にしようじゃないか、のうみんな
00:39そうじゃ、そうじゃ
00:40何様の言う通りじゃ
00:43それに立派なお宮を建てるには、大工もとびきり腕のいい人を頼まにゃの
00:51さあ、そうじゃ、そうじゃ、じたま、じたまの言う通りじゃ
00:56その自分、ひだには、ひだの匠と呼ばれる大工の名人がおったそうじゃ
01:07そのひだの匠というのは、どんな大きな家を建てるのにも、釘一本使わないで仕上げたという
01:14その噂を耳にした村人たちは、その名人、ひだの匠に仕事を頼むことにした
01:22名主からひだの匠が承知したと聞いて、村人たちは大喜び
01:29匠の来る日を心待ちにしておった
01:32ひだの匠と呼ばれるくらいの名人じゃから、きっと弟子も大勢連れてくるんじゃろうな
01:40名人のことじゃから、まあ、住人は連れてくるじゃろう
01:46馬鹿いい、大きなお宮を建てるんじゃぞ
01:49住人ぽっちでできめ、まあ、わしが考えるところ、千人は連れてくるな
01:56ああ、ほういい、千人文の人がこの名主様の家へ泊まったら、家が潰れてしまうがさ
02:03それもそうじゃ
02:05ふははははははははははははははははははは
02:13おっとっとっと、おー、あー、もう歩けねえ
02:18ひだの山奥から歩き移動してきたもんで、とんだ失礼をしました
02:24北村の名主さんの家はここじゃろうか
02:28名主様の家はここじゃが、ひだから来たと言うと
02:32おめえさまがひだの、匠かいの
02:35わしはただの道具担ぎじゃ、名人はあそこにおられるかたじゃ
02:42はあ?はあ?
02:44ふははは
02:46ふははは
02:48あの花を摘んでる人が
02:52よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー、よー
03:22お酒やごちそうを並べてもてなした。
03:26何分大きな仕事だけにお一人では大変ですな。
03:31近くの大工でも呼びましょうかな。
03:39いやいや、師匠一人でもう十分です。
03:43師匠はここのとこ鼻に夢中になっておりましてな。
03:47昨日も一日中野の花に見とれておってそばにいた蜜蜂に花の頭を刺されてもわからんほどでした。
04:02村人たちはますます呆れてしまったが仕方がないのでしばらく様子を見ることにした。
04:09そうして次の日、村人たちは日田の匠の仕事ぶりを見物しようと待っておったのじゃが、
04:18日田の匠は一向に仕事場へ出かける気配もなかった。
04:28おー見事。
04:33よし、決まった。
04:44弟子よ仕事にかかるぞ。
04:47下行政。
04:48へい、待っとりました。
04:53名主から日田の匠が仕事にかかると聞いた村人たちは、
04:58お宮を建てる敷地に集まって待っておった。
05:04一人でお宮が建てられるかな。
05:09まあ無理じゃろな。
05:10仕事を始めるにはまずこの材木を大工部屋に運ばにはならんの。
05:17まず一人で運ぶのは無理じゃな。
05:21お、来たぞ。
05:22おー。
05:23なんと、日田の匠が小屋に持ち込んだのは、
05:47小さな木の切れ端じゃった。
05:51村人たちはちょっとがっかりした。
06:07じゃが、村の長老は、
06:10何か思いもよらぬ出来事が起こりそうな気配を感じて、
06:14そっと小屋の中をうかがった。
06:16私が小屋に戻るために戻るために戻るために戻って、
06:19私は心の中をうかがった。
06:20はい
06:22ん
06:24ん
06:26ん
06:28ん
06:30ん
06:32ん
06:34ん
06:36ん
06:42ん
06:44ん
06:46ん
06:48ん
06:50ん
06:52ん
06:54ん
06:56ん
06:58ん
07:00ん
07:02ん
07:04ん
07:06ん
07:08ん
07:10ん
07:12ん
07:14ん
07:16ん
07:20ん
07:22ん
07:24ん
07:26ん
07:29なんじゃ今の
07:36なのじさまどうしたんじゃこの中に何があるんじゃ
07:43なんとも不思議な光景じゃ
08:00見たこともない小僧さんが一生懸命に働いているのじゃが
08:05その仕事の早いこと
08:08のこぎりでゴレキッと引いたかと思えば
08:11たちまち太いきれいな柱ができ
08:14のみをトントンと叩くと見事な穴が開く
08:18とても人間技とは思えないほどの早さで
08:23仕事が進んでいくのじゃった
08:25村人たちは恐れおののき
08:28小屋に近づくものがなかった
08:30村の長老だけは覗き続けた
08:34そして小僧の目や口が少しも動かないことに気がついた
08:41こうして仕事はびっくりするほどの速さで進められていった
08:50仕事にかかって3日目には土台の上に柱が立ち
08:555日目には胸上げが行われ
08:57そしてとうとう7日目には眩しいほど立派なお宮が出来上がってしまった
09:04そうして出来上がったお宮を村人たちが見たときには
09:10すでに日田の匠の姿はなく
09:13代わりに蓋が少し開けられた白木の箱がポツンと一つ置かれてあったそうな
09:20なんじゃのこの箱は
09:28んー
09:29こ、これは
09:30この木彫りの人形は小屋の中で働いておった不思議な構造
09:36そうじゃ
09:40日田の匠が仕事始めの日に木の切れ端から掘り上げたのが
09:47この人形だったのじゃ
09:50日田の匠はこの人形を作ってそれに仕事をさせたのじゃった
10:06村人たちはこの不思議な人形をうやうやしく箱に入れ
10:12厳重に釘を打ち付けて
10:14お宮の奥深く丁寧に収めた
10:18それ以来この箱の中を誰一人見たものはなく
10:23またこの箱のことを誰言うとなく
10:27赤津の箱
10:28というようになったということじゃ
10:32お宮の奥深く丁寧に収めた
10:38お宮の奥深く丁寧に収めた