00:00昔伊勢に
00:11ヤヘという大変親切で
00:15世話好きの年寄りがおった
00:17どれだけ世話好きかというと
00:21よいしょ
00:21あー
00:24すまんすまん
00:30モグラの家はここにあったんか
00:32すまんことじゃったの
00:34しかしわしのここに大根の種を
00:36まかにゃならんしの
00:38よしよしわかったわかった
00:40まあここで我慢してくれや
00:43とまあこんな具合じゃった
00:49ついこないだも
00:50おい待ってくれ
00:55ヤヘの家に立ち寄った
00:58アキンドが忘れた財布を
01:00届けに後を追い
01:01走りに走ってやっと3日目に
01:04アキンドに追いついて
01:06無事財布を返したということじゃ
01:08こんなヤヘじゃったので
01:12村人たちは野良への行き帰り
01:15ヤヘのところに集まってきては
01:17茶などをご馳走になった
01:19そんなある夏の夜のこと
01:25ヤヘが寝ようとしていると
01:29おかかおきろ
01:38誰か来たぞ
01:39誰かいの今頃
01:41はいはいただいま
01:45誰かの
01:47どなたですか
01:51見ると見すぼらしい旅の
01:54老僧が今にも倒れそうな
01:56格好で立っておった
01:58諸国を回る旅の
02:00老僧目にございます
02:02ここまで歩いてきたんですが
02:05もう一歩も歩けなくなりました
02:08どまでもどこでも
02:09かまいません
02:10今夜人が乙女願いませんか
02:14そりゃ難儀なことで
02:17さっさっ
02:18汚いところですが
02:19入ってくださり
02:20さっさっさっさっ
02:21そうして気の毒に思った
02:26ヤヘは
02:27さっそくお坊さんに
02:29風呂に入ってもらった
02:31お坊さんに入ってもらった
02:44お坊さんに入ってもらった
02:47お坊さんに入ってもらった
02:50名前だ
02:52名前だ
02:53名前だ
02:54野兵とおかかが
02:58一生懸命おもてなししたので
03:00お坊さんはすっかり
03:02元気を取り戻した
03:03そして明くる朝
03:08大変ご厄介なりました
03:15お坊さんはどうしても
03:18今日お立ちになるのですか
03:19お坊さんも少しゆっくりして
03:21行かれたらどうですか
03:23いやいや
03:24これ以上ご厄介になるわけには
03:27親切は身に染みて感じりました
03:30これは私めのせめても
03:33能霊として納めください
03:35大変古くなってしまったもんで
03:38いやいやいや
03:39坊様の大切なものを
03:41いやいや
03:43それでは私の気がすみませぬ
03:46どうぞ納めください
03:49さて
03:57坊様のくれた掛け軸は
04:00それはそれは優雅で美しい
04:04観音様の絵巻物じゃった
04:07色はところどころはげておったが
04:10その気品のあるお姿は
04:13誰の目にも自然に拝みたくなるほどのものじゃった
04:19そうして今日一日もうだるような暑さが続き
04:37夜になっても昼間の暑さは収まらなかった
04:41村人たちは夏祭りの準備の寄り合いに
04:46夜へのところにやってきた
04:48いいやきたか
04:52えーこんな暑さにはかなわんよ
04:55まったくじゃ
04:56今年の夏はいつもより暑いわい
04:59はいはいお待ちどうさま
05:01さあさあ遠慮せんとたーんと
05:04やっとくれ
05:06へへおかみさんいつも悪いな
05:09何言ってんのさ水臭いよ
05:13さあみんなぐっとやれ
05:15えぐっとぐっと
05:17ところでや部屋の掛け軸はなんだ
05:21ゆうべ泊まってもらった
05:26旅のお坊さんにいただいたものじゃ
05:30おー立派なものじゃの
05:33うん立派じゃな
05:35観音様というのはそばで始めて見るが
05:39なんとまあ
05:40じゃあ美しか
05:42美しいか
05:44おーっとーそうじゃ
05:48わしらが飲む前に観音様にお酒をお供えしなけりゃ
05:53さてと今年の珍珠様の夏祭りの相談をすべ
06:13踊りじゃが今年は夜通しを踊るというのはどうじゃろうの
06:19こうして村の世話役たちは夏祭りの世話話を続けた
06:27前の日にゃ野良仕事は早めに引き上げて
06:32珍珠様の掃除をせねならんの
06:35それに上りや提灯の用意もしなけりゃならん
06:40おい五作
06:44何ボケっとしてるんじゃ
06:47さっきからじーっと見てるんじゃが
06:51観音様の顔に赤身が刺したみたいじゃ
06:58赤身など刺しとらんぞ
07:01おめぇ
07:02酔っ払ったんでねーか
07:04そうかな
07:05ちょっと酔っ払ったかの
07:07はははは
07:10こうして世話役たちの話は進んだ
07:13そうして酒も回り出した
07:16こりゃこりゃこりゃ
07:18こりゃこりゃ
07:21こーりゃこりゃ
07:25おかしいな
07:26確かさっきいっぱいじゃったはずじゃが
07:32あれまた亡くなっとる
07:43観音様のおみき飲んだの誰じゃ
07:47おいお前か
07:48バカこけ俺は飲まねえ
07:51おいどうしたか
07:53ああごさくおめだなあのおみき飲んだのは
07:57とんでもねえそんなことしたら罰が当たるよ
08:01どれ
08:03こりゃ惜しいんだぞ
08:07誰も飲まねえのに酒漬けのおみきがなくなっと
08:12ああ観音様の顔が赤くなって
08:23まことに不思議なことじゃった
08:27観音様の頬にほんのりと赤みがさしておった
08:32まままさか観音様が観音様がおみきを飲んだんじゃ
08:39まさかえほんとだほっぺたが真っ赤だ
08:43ほんのりと紅色に頬を染めた観音様のお顔は美しくそして優しかった
08:54なんと不思議なことじゃ
08:58なんと美しかことじゃ
09:02野兵たちはこの不思議な観音様にいつまでも手を合わせて見入った
09:08そして次の日野兵が観音様の掛け軸を収めようとすると
09:15薄紅色に染まっていた頬が冷めて
09:18いつの間にか元の色に戻っておった
09:21このことを聞いて続々と人が集まった
09:27いやいいよ
09:31こりゃおめえさんが世話好きで人の面倒見がいいから
09:36観音様もなんとなく面倒見てもらおうと
09:39おみきをいただくんじゃねえか
09:42おー観音様もよわしゃいしたぞ
09:48今日は村の衆も大勢拝みに来たし
09:53めでてえでもう一杯あげるべ
09:56ありがたやありがたや
10:02ありがたや
10:04ありがたや
10:05ありがたや
10:07こうしてこの掛け軸の観音様は
10:19お酒を飲むというので
10:22おみき観音と呼ばれるようになったそうな
10:25そしてこの観音様におみきをあげて
10:30それを分けていただくと
10:32誰でも健康になったそうだ
10:36ご視聴ありがとうございました
10:42ご視聴ありがとうございました