00:00ご視聴ありがとうございました
00:30ご視聴ありがとうございました
01:00ご視聴ありがとうございました
01:30この世ができたばかりの頃は夜も昼もなくって
01:34そりゃなんとも収まりの悪いもんであったそうな
01:40夜も昼もないから
01:44なんせいつ寝たらいいだか起きたらいいだかわかんねん
01:49顔洗うべーだって夜が明けるでねえから洗わねえ
01:55晩のご飯だって日が暮れねえんじゃいつ支度すればええもんだかちっともわかんねえ
02:03仕方ねえから勝手に腹減ったやつは食って
02:10眠たくなったやつは寝ていたそうじゃ
02:13ところがそのうちにそんなのんきなこと言っていられなくなったそうな
02:21それというのが最初のうちはぽやぽやと光っていたお天灯様は
02:29だんだん力がついてきてじりじりじりじりじりと熱くなってきたんじゃと
02:36まったくこれでは腰下ろして休むところもねえ
02:47あじじじじじ
02:49暑くて暑くてどうなってるんだ
03:10暑いだけじゃねえ眩しくて眩しくてよく眠れねえだ
03:17すんだすんだまったくだ
03:20せめてハンネムライだらけでもお天灯様隠してもらえねえかの
03:27隠してもらうって誰によ
03:32神様にだよ
03:35神様に?
03:36神様に?
03:38神様にだ
03:40うんだでっかいお盆のようなもんか
03:45風呂敷みたいなものでちょっくら見えなくしてもらったらええと思うがの
03:53腰巻きではだめかのう?
03:57まあ腰巻きとまでは言わねかったと思うけど
04:02人々は神様にせめて寝るときぐらいはお天灯様をちょっくら隠してもらえまいかとお願いした
04:11そんで神様はさっそく天井のさたおり姫に真っ黒い布を折らせて地上にかぶせることにしたそうじゃ
04:22はじめの頃は神様だってあんばいがわかんねえ
04:37地べたで動いている者たちの都合なんて考えないで
04:41待ったなしに頭の上からばっさり夜をかぶせちなかった
04:50うぼううううう
05:11それは確かに、涼しくはなるし、眠るにはよいし
05:18まあ、今までのことを思うと文句を言う筋合いのもんではないが
05:23何しろ、いつ何時夜になるかわからねえ
05:29おまけに山の上の方なんて夜の中に潜っちまう
05:36鹿など、角が引っかかってしまうし
05:41鳥など、夜中に寝ぼけてバサバサとふたとびばかりやったら
05:47夜に引っかかっちまって、そのまんま夜ごと片付けられちまって
05:53とうとう、帰ってこなかったっちゅう話だ
06:01人間だっていろいろ大変だ
06:04夜中にしょんべんたれべえと外に出たら、身の前が夜だ
06:09神様がくださった、ありがたい夜様に
06:13しょんべん引っかけては申し訳なかんべえと
06:17子供なんと自分ひとりじゃ持ち上げられねえから
06:21おっ母に頼んで、夜を持ち上げてもらって
06:25大急ぎでしょんべんしたりしたそうな
06:28それから、道歩いているうちに急に夜になったりすると
06:37ラオのこと大変だ
06:39どっちに行ったらよいなかわかるもんでねえ
06:43これにはみんな弱っちまったと
06:47うーん、むつかしいもんじゃの
06:54神様のなさることにケチつけるわけでねえだが
07:00うーん、でももちっとなんとかなるめかのう
07:10というわけで、生き物たちが集まっていろいろ相談したと
07:17そんで、カササギが羽が強くて姿も上品だからと
07:23みんなに頼まれて神様にお願いに行ったそうじゃ
07:28なになに、まだ何か用があるのか?
07:50はい、この間は夜を作ってくださって
07:56ありがとうございました、それで
08:00それでなんじゃ?
08:03それで、夜をかぶせてくださるときに
08:08ぺったり下までかぶせねえで
08:11せめて向こうの山見えるほどに、はい
08:14つまり夜、鳥が飛んでも夜にひっかからんねえぐれに
08:19頭からはなしてもらいてんで
08:22それからできらば
08:25まだあるのか?
08:27はい、できらば
08:30いっぺんにばっさりと夜をかぶせねえで
08:34空の一方の端の方からそろりそろりとひっぱってきて
08:40かぶせてもらうわけにもいかねえですか?
08:44さすれば、暗くなってきたなあと思ったら
08:48大急ぎで帰れば、鳥も獣も我が家に着くし
08:53朝だっていきなり夜をはがされ、目まつこともねえです
09:00ああ、なるほど、わかった、やってみる
09:04というわけで、それからというもの
09:11夜は東の方からそろりそろりと空にかぶさるし
09:16頭もつっかからぬようになったそうじゃ
09:21でも毎日同じ夜をつかっているうちに
09:25あっちこっち穴だらけになってしもうた
09:28それでも神様はもったいながって
09:32古い夜をそのままつかっとるそうじゃ
09:36天の川なんて言ってるが、ありゃあ、なんのことあねえ
09:42昔、向山に夜がおっかぶさったとき
09:47木の先っぽが突き刺さってできた穴目戸じゃそうな
09:54新品の夜か?
09:57そうじゃの、あることはあるのじゃよ
10:015月、6月の陽気のいいころ
10:04穴目戸ひとつねえ、とろとろするような真っ黒な
10:10ビロードのような夜が幾晩か続くときがあるね
10:15あれがまっさらな夜よ
10:18なに?あれや、雨もよいの晩だ?
10:23そうだね、ありゃあ、神様がホタル見物するのに
10:30新しい目どなしの夜をつかうんじゃよ