00:00昔々八丈島では東と西にそれぞれ大きな山があって
00:20その山と山の間を海からの強い風が吹き抜けていくのでした
00:27人々はできるだけこの風を避けて残りわずかな平地にしがみつくようにして住んでおりました
00:37ところがある年のこと風の吹き抜けるこの平地に
00:45安家というじいさんが小さな小屋を建てて住みつきました
00:49安家じいさんは東山の奥の村に住んでいたのですが
00:56一人息子と死に別れそれを機会に今まで住んでいた家を手放して
01:02畑に近いこの平地に降りてきたのでした
01:06せいがでるのはつまいもかや
01:12うまく育てばええんじゃが
01:14そうじゃのここらあたりの風はすごいでの
01:22それじゃあんまり無理せんでの
01:27ところでやすけじいさんは観音さんが
01:31うまく育てばええんじゃが
01:33そうじゃのここらあたりの風はすごいでの
01:37それじゃあんまり無理せんでの
01:39ところでやすけじいさんは観音様を深く信仰しておりました
02:01仕事を終えて帰ると真っ先に観音様に手を合わせるのが習わしでした
02:10ノン様今日1日無事に仕事をさせてものでありがとうございました
02:19みょうほうれんげ今日
02:22関西音防災訪問問問答えによ
02:28やすけじいさんは夜なべ仕事をする間もずっとお経を唱えておりました
02:40そんなある日のことでした
02:58やすけじいさんはおけを担いで
03:09やっとのことで家に帰りました
03:11大きな波の彼方から現れたのは風の神でした
03:31風の神は袋からどーっと風を吹かせ
03:52山と山の間の平地を駆け抜けていきました
04:01行く手に新しく建てた大きな屋敷が見えました
04:14な、なんやこれは
04:17わしの通り道にこんな大きな屋敷を建ておって
04:21吹き飛ばしてくれるわ
04:24どんな風が吹こうとわしが
04:29金に射止めをつけず建てた屋敷じゃ
04:32びくともせんわ
04:34このぐらいの風
04:40涼しいぐらいのもんよ
04:43これでどうも
04:48風の神はあらゆるものを吹き飛ばし
05:02風の道を一直線に進んでいきました
05:05ところが
05:06なんでじゃ
05:20どうしてわしの壁が戻ってくるんじゃ
05:24風の神がたまげて前方を伺うと
05:28そこには新しく建てた安家爺さんの家がありました
05:32どうぞ
05:37家が壊されませんように
05:40わしの通り道にまたもや勝手に家を建ておう
05:53うちは引きくれるわ
05:56なんとも不思議なことに
06:02風は家に跳ね返されてしまうのでした
06:06うううう〜
06:07戻ってくる
06:08くそ
06:14何ちゅうぞやじょ
06:21見てろよ
06:22今すぐはるかに吹き飛ばしてやるから
06:26怒った風の神はどんどんとやすけじいさんの小屋に向かって歩き出しました
06:47そうして風の神はこれでもかと毛布をやすけじいさんの家に吹きつけました
06:53どれぐらいの時が経ったでしょうか
07:09突然ピタリと風が止み外からは割れ金を鳴らすような鳴き声が響き渡ってきました
07:27えー通れないよここは風の神の通り道なんだよ
07:36塞がれては海に帰るんではないかわしはどうしたらいいんじゃ
07:43風の神様の通り道
07:46やすけや
07:48か、観音様が口を聞きました
07:53やすけや
07:55どうやらここはちょうど風の神様の通り道にあたっていたらしい
08:01私はお前の家を守っておったが
08:05風の道を塞いで風の神の行き場をなくすわけにはいきません
08:11この家を他に移して風の神を通してやりましょう
08:17観音様、何卒よろしくお願い申し上げます
08:23な、何がこの光は
08:32風の神様、あなたの道を塞いで申し訳ないことをしました
08:46はっはっ、か、観音様
08:50観音様は手を伸べると
08:55やすけじいさんの家を優しく手のひらに乗せました
09:01風の神様、さあ、どうぞお通りください
09:09いやー、さすがに観音様、慈悲深い
09:16それが観音様、失礼しやすい
09:21こうして風の神は大喜びで海に向かって吹き抜けてゆきました
09:29そうしてやすけじいさんの家は
09:38風の通らない静かな平らなところに移されました
09:43観音様、ありがとうございました
09:57こうしてやすけじいさんは風の強く吹かない
10:09新しい静かな平らな土地で元気に働くことができるようになりました
10:15このやすけじいさんの映ってきた静かな土地のことを
10:22せいずの平ら
10:24というようになったそうです
10:27その後も八丈島の人々は
10:31風の神様の通り道には
10:34決して家を建てることはなかったということです
10:39ご視聴ありがとうございました
10:45ご視聴ありがとうございました