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  • 1 週間前
Japanese folk tales
トランスクリプション
00:00昔、日田の山奥に木こりの夫婦が住んでいました。
00:17めったに里へ出ることもなく、仲良く仕事に励んで暮らしておりましたが、
00:24どういうわけか二人の間には子供ができませんでした。
00:29ある日、女房が、
00:31なあ、子供があったらどんなにかよかろうなあ。
00:35そりゃあそうじゃ。子供の二人もおったら、わしも仕事に張りができるというもんじゃ。
00:42じゃが、こればっかりはどうにもならんでなあ。
00:45でも、おらたち長い間この山に置いてもらって、山の神様大事にしてきたんじゃで。
00:52山の神様にお頼み申したら、どんなもんじゃろうなあ。
00:57なんぞの表紙に聞いてもらえんこともないぞね。
01:02それもそうじゃ。神様の都合が悪うて聞いてもらえんでももともとじゃでなあ。
01:08よし、明日二人で山の神様にお頼みしてみよう。
01:13はい。
01:18次の日、澄み切った大空の下、二人は山の神様にお供え物を飾り、それはそれは一生懸命に拝みました。
01:29どうか山の神様は子供を二人ほどお恵んでくださり、わしも仕事に張りができますで、どうかお頼み申します。
01:41お頼み申します。
01:45二人は一心に山の神様に頼みました。
01:48するとそれからちょうど一年が過ぎたとき、女房に双子の女の子が生まれました。
01:56こりゃあ、でかしたでかした。
01:59めんこい娘じゃ、それも山の神様に頼んだ通り二人じゃ。
02:05ああ、これであんたも仕事に張りができてよかったの。
02:10ああ、山の神様にお礼言わにゃ。山の神様、ありがとうございます。
02:17無事に二人の子供を授かりまして、ありがとうございます。
02:23ところが、それから間もなく女房は産後の日立ちが悪く、かわいそうに二人の子供を残して死んでしまいました。
02:33なんだって、だって、わしこれから先、二人の娘をこうやって養ったらええんや。
02:57おいおい、そんなにいなかんでくれ。今、あけびをやるで。
03:03おれ、あけびの娘じゃ。
03:09泣くな、おれ、あけびです。
03:14おれ、米汁じゃ。
03:16木こりはすっかり途方に暮れてしまいました。
03:24仕事にも出られず、必死で赤子を育てていました。
03:29ある日、赤子たちがやっと寝ついたので、いつものように近くの茂みへ、あけびを取りに出かけました。
03:36すると。
03:38うーん
04:01山犬か
04:03羨ましい
04:05そうじゃ
04:08やま犬さん
04:28驚かんでわしの話を聞いてくれ
04:33と木こりは山犬にまるで人に話をするように今までの話をして聞かせました
04:41なあそんなわけでこの子たちは父が乗ってかわいそうなんじゃ
04:46頼むお前の父を分けてやってくれ
04:52この子たちが大きくなったらお前の子犬の嫁にしてやってもいい頼む
04:58よーしてくれたよーしてくれた
05:08よーしてくれたよーしてくれた
05:22よーしてくれた
05:32助かった
05:34また明日も頼むぞ
05:36なんじゃ
05:38一緒に来てくれるのか
05:42じゃがまだ嫁にやるには早いぞ
05:44ははははは
05:46こうして山犬の親子は木こりの小屋に住み着きました
05:54木こりも安心して山仕事に精を出し
05:57二人の赤子は母犬の父を飲み
06:01二匹の山犬の子と仲良く病気もせずにずんずん大きく育ちました
06:09娘たちは犬たちのこと
06:11赤、赤、と呼んで仲良く一緒に暮らしていました
06:17そうして娘たちも子犬も歩けるようになると
06:21母犬は山へそっと帰ってゆき
06:24そのまま二度と戻ってはきませんでした
06:26ただ子犬たちは娘のそばを離れようともせず
06:32ずっと一緒に暮らしておりました
06:36やがて双子の娘は山育ちとは思えぬほど美しい娘に育ちましたが
06:46犬の寿命は短く子犬はすっかり年をとり
06:50二匹とも一緒に死んでしまいました
06:54娘たちは赤を大事にしていましたからとても悲しみ
07:00墓はよく遊んだのりくらの見えるすすきの原の木の根元に作りました
07:06父親は母犬との約束を忘れたわけではありません
07:12この子たちが大きくなったらお前の子犬の嫁にしてやっても
07:18ええ頼む
07:24子犬たちも死んでしまったことだしと
07:28このことを娘たちには話しませんでした
07:34やがて娘たちはそれぞれ嫁に行きました
07:38それも里では立派な百姓屋の嫁になりました
07:44気立ての優しい嫁さんは夫の両親にもよく使え
07:50ためしく働くので近所でも評判の嫁さんでした
07:54娘は本当に幸せになったようでした
07:58ところが
08:08なぜか夫がだんだん顔色が青ざめ痩せてゆきます
08:14兄よおめどこぞ悪いでないのか
08:18ての顔色が悪いぞ
08:22何があったかわしに話してみ
08:27おっかわしゃ恐ろしくてどうもならんのじゃ
08:33何がそのように恐ろしいんじゃ
08:37おっか実はな
08:41おっか嫁さんのことじゃが
08:44それはようできた嫁さんじゃかな
08:47昼間のうちは別に何も変わりはねえんじゃが
08:51夜寝ようとするとな
08:54どこから入ってきたんじゃその犬
09:00え?犬?どこに犬なんかいるんです?
09:04今はお前の枕元に
09:06何を言いなさる犬なんかおるもんですか
09:10毎晩嫁さんの枕元に座っておるんじゃ
09:18私は恐ろしくてならんのじゃ
09:22そんな馬鹿な
09:24母親は嫁さんの枕元を確かめてみることにしました
09:30でも
09:36犬などどこにも見えませんでした
09:40しかし息子は日増しに痩せてゆき
09:43とうとう寝込んでしまいました
09:46さすがに嫁さんは暇を出されてしまいました
09:50そしてもう一人の娘も同じ理由で暇を出されてしまいました
09:56二人の娘は父親にこの話をすると
09:59父親は黙って二人を赤の墓に連れて行き
10:04母犬との約束の話をしました
10:07そりゃ夫がいけねえ
10:10なんで早く話してくれなんだ
10:13二人の娘は早速墓の前で
10:16赤との仮祝言をあげました
10:23それは澄んだ青い空の日で
10:28遠く見える乗り倉にはもう雪が来ておりました
10:37ご視聴ありがとうございました

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