00:00ご視聴ありがとうございました
00:30昔
00:31宮城県気仙沼大島というところでの話でした
00:37浜吉親子は暗い浜道を歩いておりました
00:42息子の浜吉はもう眠くて眠くて仕方がありませんでした
00:47明日
00:51単語の節句だというのに
00:55人手の足りないこの島では人の家の田植えを手伝いに行ったり
01:01また手伝いに来てもらったりしなければなりませんでした
01:05浜吉親子も今朝早くから外浜まで手伝いに行って
01:10今その帰りでした
01:12息子の浜吉は疲れ切って
01:15もう今にも眠りそうでした
01:18お地蔵様のある辺りまで来た時のことです
01:27母親は何やら
01:29お地蔵様の辺りに人の気配を感じました
01:33このお地蔵様は導き地蔵と呼ばれ
01:38明日亡くなるという人が
01:40うまく天国へ導いてもらうため
01:43お地蔵様に挨拶に来ると言われていました
01:46お地蔵様の辺りに行って
02:16いました
02:17今年若い男の亡者が一人
02:21一瞬にお祈りをしているのでした
02:24母親は
02:29これを見てかわいそうに思いました
02:32一体どうして死ぬんだめ
02:34こんなに若いのに
02:37船の事故でもあるんだべか
02:38その時のことです
02:43はぁ
02:43男の祈りが終わるのを待っているかという
02:49今度は老婆が一人
02:51お地蔵様の前にやってきました
02:54あれは村で
02:57一番お年寄りのおばあさんだ
02:59この頃具合が悪いと聞いていたが
03:02とうとう
03:03亡くなるんだね
03:04ところが
03:13その次には幼いちのみを抱いた
03:16母親のような女が立っていました
03:19お産をして
03:20それで二人でも死んでしまうだめか
03:24なんてその後ろには
03:40まだ裏若い子供の亡者が立っており
03:42そしてその奥には何人も何人も
03:46大勢の亡者たちがうよぐよと
03:48立っているではありませんか
03:50さらによく見ると
04:03その亡者たちの間には
04:05馬や牛たちも立っていたのでした
04:08一体なぜ
04:10こんな大勢
04:12そして
04:20兄者たちは大勢を急いでいらっしゃ
04:23次から次からお地蔵様にお祈りしては
04:27そばに登っていくのです
04:38おっかあ
04:39一体何だべ
04:41あれ何しとるんだべな
04:45おーよしよし
04:47何でもない何でもない
04:49ただこっちおいで
04:50あの人たちは明日は亡くなってしまう
04:53かわいそうな人たちなんだよ
04:55今お地蔵様にこうしてご挨拶してるんだよ
04:59母親から
05:01そう言われても
05:02鎌吉には何のことだかよくわかりませんでした
05:07ただ
05:09そうしているうちにも
05:11亡者たちは次々に空に消えていき
05:14やがてあたりは何事もなかったかのように
05:17しーんと静まり返りました
05:24母親は真から恐ろしくなって
05:27浜吉の手を握りしめると急いでその場から逃げ出しました
05:32そして
05:36家に帰ると早速そのことを父親に報告しました
05:41はっはっはっはっはっはっはっはっはっは
05:44そんな馬鹿なことがあるものか
05:46お前たちどうせ狐にでも馬鹿されたんだべ
05:49父親は全く信用しませんでした
05:53ところで
06:03その次の日のことです
06:05ちょうどその日は5セックで
06:07しかも一年中で一番海の潮が低く大潮の日でもあったので
06:11浜辺は村中の親子連れでにぎわいました
06:15浜辺で海藻を拾ったりするのでした
06:19浜吉親子も浜吉があんまり行きたいというので
06:23浜辺やってきました
06:25母親は夕べのこともあって気が進まなかったのですが
06:29海藻が面白いほど撮れました
06:33本間に週が遠くまで引いたのは
06:59本当に何十年この方
07:02なかったことだと年寄りたちが話し合っていました
07:06その上もう塩がさしてくる時間だというのに
07:11全く塩がさしてこないのでした
07:13その時でした
07:26津波だ
07:27津波だ
07:31津波だ
07:36津波だ
07:38津波だ
07:56津波だ
07:58津波だ
08:01津波だ
08:05津波だ
08:08津波だ
08:10津波だ
08:13津波だ
08:17津波だ
08:19津波だ
08:21津波だ
08:25ああああああ
08:40本当に恐ろしい津波でした。山のように高い涙。地雷を立ててあっという間に浜に押し寄せてきたのでした。
08:55浜地雷は手を取り合って裏の松山へと逃げ込みました。それを追いかけるように津波はうなりをあげて、松山へと押し寄せてきました。
09:25浜岸親子。三人はしっかり抱き合ったまま、しばらくは身動きもできませんでした。
09:52やっぱり本当だったんだ。夕べのことはやっぱり本当だったんだ。
10:00逃げ遅れた多くの人々は亡くなりました。この時の津波で亡くなった人の数は61人だったと。今も村の駆けつけに残っています。それに牛と馬が6頭死んだそうです。
10:17浜岸と母親があの日見た亡者はみんな本当だったのです。みんな津波にさらわれて亡くなった人たちでした。
10:26今もこのご地蔵様は導き地蔵と呼ばれて、人々は花やお線香を絶やさないそうです。
10:36ご視聴ありがとうございました。
10:38ご視聴ありがとうございました。
10:42ご視聴ありがとうございました。