00:00昔々 岡山のある村に不思議なお地蔵様がいらっしゃいました
00:21まんなり石でできた立派なお地蔵様の体が
00:31寒い冬の最中でもびっしょり汗をかいているのでした
00:38今日もこんなに汗をかいて
00:41まるで寒さなんかに負けるなと
00:46おらたちに教えてくださっているようじゃ
00:50もったいない
00:52そんな大きなくしゃみをして
00:59お地蔵様に笑われるがな
01:02このように村人たちは
01:09お地蔵様にとっても親しみを感じておりました
01:15やがて春になり
01:17縁日ともなると遠くの村々からも人々が大勢集まり
01:22大変なにじわいようでした
01:25ところがある年の夏のこと
01:31この辺り一帯は雨が一滴も降らずひどい日出りに見舞われました
01:37田んぼに流れる池の湧き水もすっかり枯れ果ててしまいました
01:43井戸の中にも一滴の水もなしじゃ
01:51お前もっと泣いて雨を降らせてくれんか
01:56この日出りに参っていたのは人間たちだけじゃありませんでした
02:09こんな暑さだったので
02:14村のおばあさんは汗かき地蔵様のことが心配になり
02:19山の上まで駆けつけました
02:22あれーまあやっぱり
02:29いくら汗かきのお地蔵様とは言っても
02:32こんな大汗じゃつろうもざんしょ
02:36ああ
02:37これでお地蔵様も少しは楽になるでしょう
02:43あれまあ
02:45村じゃひでりで水がないっていうのに
02:53こんな汗水流されて
02:56もったいないもったいないもったいない
02:59この時おばあさんはふと妙な考えが浮かんできました
03:08もったいないもったいない
03:20お地蔵様のお体のかけらをいただいていきます
03:25おばあさんはお地蔵様の石を持って帰ると
03:33干上がった井戸の中に投げ込んでみました
03:36やっぱり水が出た
03:58おばあさんが踊ったとお地蔵様の足のかけらから
04:03不思議なことに水が吹き出したのでした
04:06これもお地蔵様のおかげじゃ
04:13ありがとう
04:14ありがとう
04:15おばあさんは今度は干上がった池に
04:20もうひとかけらの石を置いてみました
04:23水じゃー
04:37田んぼに水じゃー
04:39まんまんと水をたたいた池から
04:43どんどんと田んぼの中に水が流れ込み
04:47村はひでりから救われたのでした
04:57そして翌年の春
05:00ちょうどその日は汗かき地蔵様の縁日で
05:04大勢の人々でにじわっておりました
05:07そうしてその頃向かいの山には
05:11殿様がお忍びで花火に来ておりました
05:15さてさていい眺めじゃーの
05:21ところであれはなんじゃ
05:23向かいの山に百姓どもが
05:26たんと集まっとるが
05:29はいあれは汗かき地蔵とやらに
05:34お参りしてるのでございます
05:36ふーんどこがそんなにありがたいんじゃ
05:39なんでも昨年は足のかけらから水を出し
05:45この村をひでりから救ったそうでございます
05:49ふーん妙地区林な地蔵じゃの
05:55そうじゃその地蔵の石で手洗い鉢を作れば
06:03いちいち水を入れんでも
06:05中から水が湧きてるということか
06:09やめてくれ
06:11あーもっていかんでくれ
06:14これはわしらの大切なお地蔵様なんじゃ
06:18やめてくれ
06:20というわけで
06:24さっそくお地蔵様を城に運び込み
06:27いやがる石区を無理やり連れてきて
06:30手洗い鉢を作らせることにしました
06:33何をぐずぐずしておる早くせぬか
06:40お地蔵様お許しください
06:44え
06:50え
06:52こうして
06:56もの静かな笑みを浮かべたまま
07:00いとも簡単に
07:02お地蔵様の首は転がり落ちたのでした
07:08その後はもう夢中で石区は掘り続けました
07:12それでは
07:15できた
07:18できた
07:24おおー
07:29おおー
07:31これはいい
07:33こーれはいい
07:34はっはっは
07:37まったくこれは便利な手洗い鉢じゃ
07:43そうじゃ江戸表に運んで諸国の殿方にも見てもらおう
07:54こんな不思議なものは日本国獣毒を探してみても見つからんぞ
08:07思いついたら矢も立てもたまらない殿様はお地蔵様の手洗い鉢を戦国船に乗せると
08:14はるばる江戸へと旅立って行きました
08:18これで殿のことは評判になりますぞ
08:28そういうことじゃ
08:31ところが船が円周なだに差し掛かった時
08:44空はにわかにかきくもり強い風が吹き始めました
08:48こ、こ、これは一体どうしたことじゃ
08:56そして風はますます強くなって行きました
09:01ただ、走ってくれーん
09:06その時今までに見たことも聞いたこともない大波が
09:11船に近づいてきました
09:13こうして
09:36すべてが海の底深くへと
09:40沈んで行ってしまいました
09:43ああ、こんな姿になって
09:56おいたわしや
09:58そうして汗かき地蔵様は首だけになって
10:05村へ戻ってきたのです
10:08それからずっと後のこと
10:17殿様の子孫が償いにと
10:21身代わりの地蔵様を村へ起こしました
10:25でも村人たちは首だけになった汗かき地蔵様を
10:32前にも増して一層大切にしたということです
10:39ご視聴ありがとうございました
10:41ご視聴ありがとうございました
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