00:00昔々 愛知県は天宮や富町
00:17平島あたりを流れるいかだ川の岸辺に 一本の松の木が立っておりました
00:30長い枝の先を風に鳴らし 暑い日盛りには涼しい木陰を作っていました
00:38鞘の宿まではもう一息じゃが 心で一服していくか
00:47ちょうどそこは七里の私と並行した 街道沿いでしたから
00:54どれほど多くの旅人がそう言って腰を下ろし 心を和ませたことでしょう
01:03あの裏腹減ったのう
01:12その街道脇には、旅人が松の木陰で休み、新しいわらじに履き替えていくためか、古いわらじがたくさん捨てられてありました。
01:42もったいねえことをするもんじゃ。まだちょっと直しや、使えるのにのう。
01:51いつの頃からか、ある若い男が松の木から少し離れた場所で、わらぞうりを作って旅人に売り、ささやかな商売を始めました。
02:05月日が経つにつれて、その小屋も若者の造りを売る姿も、ずっと昔からそうしてあったかのように、すっかりその地に溶け込んでいきました。
02:22そんなある夜、年の頃なら16匹の美しい娘が、わらじを買いに現れました。
02:40わらじ買い?
02:42はい。
02:42今日は全部売れちまってな。急いで作るから、ちょっと待ってておくれ。
02:52娘は手際よく余れていくわらじを、じーっと吸い込まれるように見ておりました。
03:01そしてわらじが出来上がると、それを受け取って帰って行きました。
03:12野良、お前はいい嫁さんもらったの。
03:19今の娘さんきれいじゃったの。
03:22おらの嫁さんになってくれんかの。
03:26ははははは。
03:28ははは。
03:29おらなんか誰も相手にしてくれんの。
03:34夢じゃあの。
03:36ははははは。
03:37ははは。
03:38ところが、その娘は毎晩、月が昇る頃になると、わらじを買いに現れるようになりました。
03:52わらじは一日履いて歩いたとて、破れるようなものではありません。
03:58それなのに娘は毎晩やってくるのです。
04:02若者はそんな娘のことが気になって、仕方がありませんでした。
04:09ご視聴ありがとうございました。
04:39ご視聴ありがとうございました。
05:09そして、娘が通い出して、数ヶ月が過ぎたある日のこと。
05:17若者は思い切って娘に尋ねてみました。
05:21おら、聞きたいことがあるんじゃ。
05:32おら、聞きたいことがあるんじゃ。
05:32おら、聞きたいことがあるんじゃ。
05:45おら、聞きたいことがあるんじゃ。
05:46おら、聞きたいことがあるんじゃ。
05:59うん それとも
06:02ただわらじが欲しくて通ってくるのか 本当のことを教えてくれや
06:16わらじ
06:19わらじで 船を作っているのです
06:28船?
06:39次の日 娘は太陽が沈む前に 若者の店に現れました
06:47おちろちろちろ
06:53今日はお別れに参りました
06:58よいこー!
07:01どこかへ行くのですか?
07:06私はずっと昔 対馬神社の
07:12おみよしという よしの船に乗って
07:17この地に流れ着いた 松なのです
07:23私は その松の
07:27聖なのです
07:29あの松の木が私です
07:331年ほど前から 橋の掛け替えのために 切られそうでしたから
07:39また 津島神社に帰ろうと思ったのです
07:43ばらじで船を作って
07:48はあああああ
07:50でも 少し遅すぎたようです
07:53はあ
07:59はあ
08:01はあ
08:03はあ
08:05おい
08:07おい
08:09はあ
08:11はあ
08:13はあ
08:15はあ
08:16あああ
08:40あああ
08:42松の木は音を立てて崩れ落ちました
08:50そしてその根元にはまるで松の木を他へ運ぶかのように
08:59わらじが船の形にしっかり結ばれておりました
09:12わらじでこんな大きなおみよしを作っておったのか
09:19若者は松の小枝を一本切って
09:29自分の小屋の脇に差し木し
09:32大切に育てることにしました
09:42ご視聴ありがとうございました
10:12その後松はしっかりと根づき
10:20今では雇み町でおみよしの松と呼ばれる大木となって
10:27ずっとずっと昔のようにそよ風の吹き通る木陰を作っているそうです
10:42ご視聴ありがとうございました