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  • 1 週間前
Japanese folk tales
トランスクリプション
00:00昔、エチゴの海に仲のいいクジラの夫婦が暮らしておった。
00:30おかみさんクジラのお腹には赤ん坊が育っており、旦那のクジラは生まれてくる日を楽しみにしながら、夫婦は幸せな毎日を過ごしておった。
00:45ところが、ある時から平和だったエチゴの海に暖房物のシャチがたびたび現れるようになった。
00:56そのシャチは、クジラの仲間の魚たちをすぎすぎに襲い始め、今まで静かだったエチゴの海を、長者顔に鳴らし始めた。
01:11荒々しいシャチの恐ろしさに、さすがのクジラもどうすることもできず、ただ逃げ惑うばかりじゃった。
01:20ねえ、あんた。こいつもいつもあの乱暴者から逃げ待ってるんじゃ。
01:28のんびりと子供を産むこともできやしないよ。
01:33それにもうそんなに早く泳ぐこともできないし、どうすりゃいいんだろう。
01:39おかみさんの言う通り、どうしたらいいものか、旦那のクジラもほとほと困ってしもた。
01:49そういえば前に噂で聞いたことがあるんじゃが、実はな、新州の柵というところに、小海という、そりゃあ静かな海があるというのじゃ。
02:09クジラの旦那は、昔仲間の魚から聞いたことのある、すかつの小海というところの話をおかみさんに聞かせた。
02:22どうじゃ、その小海とやらへ行って静かに暮らさんか。
02:26それはいい考えじゃ。さっそくその小海へ行って暮らすことにしよう。
02:33そうと決まれば、明日にでも出発じゃ。
02:36こうしてクジラの夫婦は、この物騒な越後の海を後にして、柵の小海へと旅立つことにした。
02:49旦那のクジラは、お腹の大きなおかみさんクジラをいたわりながら、長々と続く品の川を遡り始めた。
03:06品の川は、川幅も広く、流れも常にゆったりとしており、広い海で暮らしていたクジラの夫婦にとっても、大層楽な旅の始まりだった。
03:20映り変わる景色や、心地よい川の流れを楽しみながら、クジラの夫婦は、行く手にある柵の香味を胸に思い描きながら、のんびりと品の川を登っていった。
03:39じゃあが、品の川も品の国に入り、川の名前も四駒川と変わる頃になると、だんだんにそのすらさ形を変え始めた。
04:00あんた、流れが早すぎても、これ以上動けぬ。
04:10よーし、マットレイ、今助けてやるからな。
04:16緩やかだった流れは、だんだんと激しい流れへと変わっていき、時として押し戻されそうにだった。
04:23しかも、川が細くなりにつれて、川にかかる橋などもだんだん小さくなり、体の大きなクジラの夫婦には、舌をくぐり抜けることもできなくなってしまった。
04:40しかも、おかみさんは、みおもな体であったから、これを助ける旦那の苦労は一層大変じゃった。
04:47それでも、クジラの夫婦は、シャチのような乱暴者のいない静かな、のんびり暮らせる幸運に目指して、山の間を流れる四駒川を遡っていった。
05:02だが、さかのぼればさかのぼるほどに、川は浅くなり、川幅もますます狭くなってきた。
05:23クジラの夫婦は、お腹を川底にすりつけ、すりむきながらも、お互いに川をせきとめ泳ぎ、せきとめ泳ぎして、川をさかのぼっていく。
05:44ぐー、なんじゃありゃあ。
05:48そして、作の旗屋というところまでたどり着いたときのことじゃ。
05:53なん、なん、なんと、クジラが川を泳いできより。しかも、2頭も。
06:07おーい、クジラと言おう。
06:12おそろいで、どこまで行くんじゃ?
06:15わしらは、この先の小海という海まで行くんじゃ。
06:20小海?
06:23おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー、おー
06:53あまりの話につい笑ってしまったが実はな
06:59小海ってのは海じゃねえ
07:02村の名前だ
07:05村の名前
07:09ああそうじゃい
07:11この先どこまで行ったって海なんかねえよ
07:15小海っていう村はあるがな
07:23小海ってのは海の名前じゃなくて村の名前だったのか
07:29噂話って当てにならないもんじゃな
07:34長い間お互いに助け合いながら苦労を重ねてここまでやってきたのに
07:43百姓の話を聞いてがっくりと唸られるばかりだった
07:48こうして鯨の夫婦は元の越後の海へと帰っていくより仕方なかった
07:57そして越後の海に帰った鯨の夫婦を待っていたのがあの乱暴者のシャツだった
08:15このままシャツに食べられちゃうしかないのかね
08:31何を言うんじゃ
08:34お腹の若ん坊はどうなるんじゃ
08:37だって毎日毎日シャツに追われて逃げてばっかりじゃ安心して子供を産めやしない
08:45それにあんたもうすぐ生まれそうだよ
08:48どうしたらいいのかねえ
08:51よしこうなったら逃げてばかりはいないよ
09:04生まれてくる子供のためにもこの海からあの暖房物のシャツを追っ払ってやる
09:11あんた
09:13あんた
09:23我を忘れてものすごい勢いで鯨の旦那はシャツに向かって泳いだ
09:30そしてそのまま乱暴者のシャツに向かって泳いだ
09:39そう
09:59さすがのシャツに
10:01クジラのものすごいで Enough に恐れを成して
10:02クジラのものすごい天幕に恐れをなして
10:05越後の海を逃げ出してしまったそうな
10:09こうして乱暴者のシャチを追っ払った越後の海は
10:14再び静かな海に戻った
10:17クジラの旦那さんが楽しみにしておった赤ちゃんクジラも間もなく誕生した
10:25こうしてクジラの親子は静かな越後の海で
10:33仲間の魚たちといつまでも仲良く暮らしたということだ

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