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  • 2 週間前
Japanese folk tales
トランスクリプション
00:00昔々、北栗の山奥に木こりの木助じいさんとばあさんが住んでおった。
00:20山のふもとじゃ、もう春がそこらいっぱいにあふれておるというのに、山奥じゃまだまだ深い雪に覆われておった。
00:34雪の降りしきる中、木助じいさんは山に火を切りに出かけ、遅くに帰って来る。
00:43山の天気はそんなことをお構いなしに、木助じいさんの帰る足を邪魔するように動くことがである。
00:55くそ、熊本の村じゃ、もう梅のつぼみもふくらんどるっちゅうになってこった。
01:02じいさんの家は山の中宿にある。そこではばあさんが一人で帰り終わっている。
01:13うーん、寒い。
01:16おかえりおじいさん。寒かろはよ、日にあたりぃな。
01:22うーん、寒い。もうじき春じゃっちゅうのに、今夜はやけに寒いな。
01:31まあ、この吹雪がやんだら春じゃね。
01:39春になったら、ふもとの村に嫁に行った娘がやってくる。
01:45それが楽しいじゃ。楽しいじゃ。たろしいじゃ。たしか、娘が嫁に行ったのは、ちょうど発雪のふったあとのころじゃった。
02:04あのか。色が白うてまるで雪のようじゃった。
02:16じいさんとおばあさんの間には、一人の娘がおった。
02:21娘は大変な起業よしじゃった。
02:24ふもとの村一番の働き者のところに、嫁に行くことになった。
02:30一人娘じゃったから、じいさんとばあさんは、嫁にやりとうはなかったのじゃが。
02:37ふもとの村じゃで、毎年春になったら、山登って、必ず二人のところを訪ねるという約束じゃった。
02:46それで、きつけじいさんとばあさんは、春が来るのを楽しみにしておるのじゃった。
03:00こんばんは。こんばんは。こんばんは。
03:11およおじいさん、今、誰やら声がしませんでしたか。
03:17またか。この吹雪の中。誰が訪ねてくるものか。
03:24それもそうじゃ。すっかり耳が遠くなっちゃった。
03:31こんばんは。ごめんください。
03:35本当じゃ、誰じゃろ。こんな晩に、たずねてくるのは。
03:41もしや、娘では。はいはい、ただいま。今、あけますよ。どうだった?
03:50はっ。はっ。娘。
03:56そこには、自分の娘と大変よく似た娘が立っておった。
04:03こんなよくてにすみませんが、あまり寒いので、ちょっとないだ。
04:13火に当たらせてください。さあ、早く、火にお当たりなさい。さあ、早く。
04:21ばあさんは、娘の手を取ってびっくりした。まるで、氷のようだった。そのとたん、今までの吹雪がピタリと止んだ。
04:35ばあさん、どなたじゃな。
04:38さあ、いろりのそばに生きなされ。すみません。
04:46しかし、娘でよう寝とるな。
04:50さあ、心ゆくまで、あたたまりなせよ。はい、ありがとうございます。
05:00こんなに遅く、どこまでおいでですか。
05:04はい、私は春になると、もっと北の国へ行かなければならないんです。
05:11それは、またなぜ。
05:14一人で行かれるんですか。はい。
05:19と言ったきり、あとは何を聞いても、首を横に振るばかりじゃった。
05:30それから、じいさんとばあさんは、自分たちの一人娘の話を聞かせた。
05:37ばあさんが娘の嫁に行く日の話をしたとき、娘の目から一粒の涙が落ちた。
05:45そして、その涙が手の上に落ちると、粉雪になって散った。
05:59でもな、春になったら娘は、わしらのところに来てくれます。
06:07二人は、この娘が、なんとなく自分たちの娘のような気になった。
06:13ばあさん、ゆでぐりでもご馳走してやれ。
06:17そうじゃ、あの、おばあさん。それは結構です。
06:23それはまた、どうして。
06:25じゃあ、あったかい芋が湯でも作ろうか。
06:28いいえ、結構です。そろそろおいとまいたします。
06:33おかげさまで、体もすっかり温まりました。
06:39これからまた、北の国に出かけなければなりません。
06:44いろいろ楽しいお話や、ご親切、ありがとうございました。
06:50それでは、ちょっとお待ちください。
06:54こんな夜更けに、もうどこにも行けません。
06:58粗末な家ですが、今夜はどうか泊まって行ってください。
07:04それはできません。
07:06そんなことをすれば、娘さんは帰れなくなります。
07:10それはなぜ?
07:12それは、私がいては、春はやってきません。
07:19じゃあ、もう少し。
07:21じいさんが、娘の手を握ってびっくりした。
07:25娘の手は、まだ凍りつくほど冷たかった。
07:31すみません。おじいさん。
07:35その時、今まで収まっていた吹雪がまた荒れ出した。
07:41そうして、いろりの火が消えた。
07:44その途端、どこからともなく冷たい風に乗って雪が家の中に入ってきた。
07:51おりゃあ、どうしたこと。
07:54おじいさん、おばあちゃん、ありがとうございます。
07:58これから毎年、冬になって、娘さんが来られないときは、きっとお慰めに娘さんの代わりに時々参ります。
08:09どうしても、出て行くのかい、それが私の定めなのだ。
08:17その時、一層強い影が吹いて娘を包んだかと思う。
08:23娘は、見る間に雪に変わり、やがて煙のようになって、天井の煙出しからスーッと消えてしまった。
08:34いやあ、不思議なこともあるものじゃ、今のは夢だったのか?
08:46いや、違います。夢なんかじゃありません。
08:51だったら、きつねやたぬきのいたずらか?
08:55いや、きつねやたぬきじゃありません。
08:59あれは子供の頃から聞いていた、雪娘じゃ。
09:04雪娘じゃと?
09:07まあじゃ、はじめっから分かっていました。
09:12昔から雪娘を火に当てると、北風が迎えに来ると聞いてました。
09:19だから雪になって、あの煙穴から出て行ったんじゃ。
09:25それに、雪娘の手は氷のように冷たいんじゃ。触ると凍え死ぬそうな。
09:32じゃあ、なぜお前止めたんじゃ。
09:35そりゃ、手に触っても死にませんでしたて。
09:40それに、あまりにも娘に似てたもんじゃ。
09:55なあ、ばあさん。わしは明日、娘が訪ねてくるような気がする。
10:01私もそんな気がしますよ、おじいさん。
10:10一夜明けて次の日、夕べとはうってたわったあったかい日がやってきた。
10:31ばあさん。娘がやってきたぞ。
10:37ご視聴ありがとうございました。
10:39ご視聴ありがとうございました。

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