(マイナンバー汚職)就任直後に贈賄側が業務受注か(中安一幸) 2015年10月14日

  • 9 年前
就任直後に贈賄側が業務受注か

2015年10月14日 17時52分

マイナンバー制度の導入に向けた厚生労働省のシステム設計などの業務をめぐる汚職事件で、収賄の疑いで逮捕された室長補佐が、いまの立場に就いた1か月後に、贈賄側の会社が逮捕容疑の業務を受注していたことがわかりました。
警視庁は、室長補佐が専門的な知識を背景に、業者の選定に関わる立場を悪用していたとみて調べています。
この事件は、厚生労働省情報政策担当参事官室の室長補佐中安一幸容疑者(45)が、平成23年、マイナンバー制度の導入に向けた医療分野のシステム設計などの業務をめぐり、都内の情報関連会社に、
仕様書の原案を作成させる便宜を図った見返りに、現金100万円を受け取ったとして収賄の疑いで逮捕されたもので、14日検察庁に送られました。
警視庁は14日、およそ6時間にわたって東京・霞が関の厚生労働省を捜索し、関係資料を押収しました。
警視庁によりますと、中安室長補佐は、医療情報のIT化に関する知識をいかし、仕様書の作成など、業務の発注で中心的な役割を果たしていたということです。
さらに、中安室長補佐がいまの立場に就いた1か月後に、贈賄側の会社が逮捕容疑となった業務を受注していたことが警視庁への取材でわかりました。
警視庁は、室長補佐が、専門的な知識を背景に、業者の選定に関わる立場を悪用していたとみて、押収した資料などを分析し受注のいきさつを調べています。
逮捕された中安一幸室長補佐は、厚生労働省の中でも異色の人物として目立つ存在でした。
中安室長補佐は高校卒業後、平成3年、国立病院の事務職員として採用されたあと、平成17年に厚生労働省に異動してからは一貫して医療情報のIT化に関する政策に携わってきました。
通常は2、3年で部署を異動することが多い中、こうした人事は異例だということで、厚生労働省の関係者は、いわゆるノンキャリアの職員でポストが限られていた事情もあったのではないかとしています。
働きぶりはまじめで、医療情報のIT化に関する専門家として、複数の国立大学で客員准教授などとして教べんをとるなど、医療関係者や行政の間でも知られた存在だったということです。
一方で昨年度は半分ほどしか出勤しておらず、厚生労働省は外部での講演や会合に出席していた日があるものの、実態はよくわかっていないとしています。
厚生労働省の関係者は「医療情報のIT化は技術の進歩が早く対応できる人材が少ないため、中安室長補佐に頼ってきたのではないか。
派手な服装をしていることもあり、目立つ存在だった」と話しています。
東京・中央区にあるセキュリティーソフトウェア会社の「ハミングヘッズ」は、7年前の平成20年、「医療の情報化」というテーマで中安室長補佐にインタビューをして、その内容をホームページに掲載しています。
担当した記者の井上宇紀さんによりますと、当時、IT関係の著名人を中心にインタビューをしていて、新潟県で開かれた情報セキュリティーのワークショップに取材に行った際、中安室長補佐の説明が
分かりやすかったので、インタビューを依頼したということです。
インタビューの時間は、予定を1時間上回るおよそ2時間に上ったということで、井上さんは「医療を情報化することで、医療の効率化や医療費の削減につながるということを自分の言葉で熱っぽく話してくれた。
国をよくするんだという志の高さを感じる話し方で、仕事もできるのだろうと感じた」と話していました。
また、中安室長補佐に初めて会った時の印象について、井上さんは「派手なワイシャツとネクタイをしていたので、この方が官僚なのかという印象を受けた。服装も含めていい意味でも悪い意味でも型破りの人だと感じた」
と話していました。
一方、逮捕されたことについては「あれだけ熱心に仕事をされていたのに残念です」と話していました。