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  • 2 か月前
Japanese folk tales
トランスクリプション
00:00バグンは
00:01昔々あるところに
00:05一軒の小さな傘屋がありました
00:09傘を作るというのは大層根気のいる仕事でした
00:16それでも傘職人の親父さんと
00:29奉公人の小僧さんとで
00:31毎日傘を作っておりました
00:33疲れた
00:37これ小僧そんなに休んでばっかりおらんで
00:42もっと頑張るんじゃ
00:44もうすぐ梅雨だ
00:46そしたら毎日雨が降って
00:48傘はいくらあっても足りんようになる
00:51傘屋は梅雨時が一番のかき入れ時だからな
00:54わしはちょっと出かけてくる
00:57怠けずに仕事をしておるんだぞ
00:59はーい
01:01ここのとこずっと夜遅くまで
01:07働き詰めだからな
01:09眠いな
01:10それにしても焼き物の婆様羨ましいな
01:15この焼き物の婆様はここの親父様が最近古道具屋で見つけてきたものでした
01:24そんなわけでこの婆様はタンスの上にポツンと座り
01:29日がない一日笠屋の仕事ぶりを眺めて暮らしておったのでした
01:34その夜小僧さんはうたた寝した分たくさんの仕事が残ってしまいました
01:44ありゃー
01:57いつの間にこんなにもつれたんじゃろう
02:01ありー
02:03あれー
02:05早くおしまいにしたい小僧さんは焦りました
02:08しかし焦れば焦るほど糸はもつれてしまいました
02:13あーだめだー
02:16糸屋の婆さん
02:18糸屋の婆さん
02:20こんがなかった糸ばほどいてくだされ
02:24小僧さんはいつもそうするように気持ちを落ち着けるため
02:28おまじないを唱えながら糸をほどき始めました
02:32糸屋の婆さん
02:34糸屋の婆さん
02:35こんがなかった糸ばほどいてくだされ
02:38糸屋の婆さん
02:40糸屋の婆さん
02:42あーだめだー
02:44ますますこんがなかった
02:45小僧
02:49小僧
02:50あれー
02:53タンスの上の焼き物の婆じゃよ
02:56糸屋の婆の代わりにこんがなかった糸ばほどいてやっからな
03:02いいかこぞ
03:03一生懸命糸をまくんじゃぞ
03:06それ負けやれ負けどんなもつれも
03:13バーバーバーほどけばするするほどける
03:18エッサエッサやーサやーサ
03:22それ負けやれ負けどんなもつれも
03:26これでしまいじゃ
03:28このバーバーほどくのがうまいじゃろ
03:31そういうと焼き物の婆様は何事もなかったかのように
03:39元のところに収まったのでした
03:41翌朝小僧は夕べのことを親父様に話そうかと思いましたが
03:54夢でも見たんでねーかと笑われるような気がして黙っておりました
03:59おい小僧
04:02傘を干し終わったら
04:05お家屋の御作のとこに雨傘を届けてくれー
04:09おっと
04:09オラが行ってくる
04:11お家屋のツルちゃんに用事があるだで
04:14あーそうか
04:16じゃあ遊びすぎないで早く帰ってこいや
04:19うん
04:21じゃあ行ってくる
04:22これ気をつけていくんだぞ
04:26あいつもいつの間にか役に立つようになった
04:30ところがもう日も暮れようというのに
04:35娘はまだ帰ってきませんでした
04:38こんなに遅くなったのに帰ってこんなんて初めてじゃ
04:43お家屋のツルちゃんは昼には帰ったって言ってました
04:48使いなどさせねばよかった
04:51掘りにでもハマっとらねばよいが
04:54お前もう一度そこらへんをよーく探してきてくれ
04:58わしも近所の者に頼んでくる
05:01はっ
05:06ん?
05:07ん?
05:11おっとただいま
05:13お前いつの間に帰ってきた
05:16それよりこんなに遅くまでどこへ行っていたんじゃ
05:20遊んでたら焼き物のばあさまが来て
05:23町田連れてってくれるって言うんで
05:26一緒にいろんなもの見てきただ
05:28おもしろかった
05:30でたらめ言うでね
05:32うそじゃねってばあ、もう
05:38なあばあさま
05:40それから幾日かしたある夜のこと
06:00ちこと
06:07へっへえへへっへ
06:09てぃ
06:13てぃ
06:14あれ?
06:28傘が脳鳴っとる
06:30あんなに積んだのに
06:32おかしい
06:44おかしいの
06:46さっきから置いているのにちっと向け
06:57しかしおかしいの
07:00いひ!なんたれじゃ
07:03おかしいの
07:04だーれもらん
07:06しかし俺がさっきから置いている傘が全部あそこに映っとる
07:11なーか気味の悪い家じゃ
07:14行けね
07:20一万乗りじゃ
07:21朝になってしまうた
07:23ああ
07:26こうしてばあさんのおかげでどろぼうは
07:29一本の傘も取らずに逃げていってしまいました
07:36それから幾日か経ったある日のこと
07:39おけやのごさくが遊びにきました
07:43よく降る雨だなや
07:46風が吹けばおけやが儲かり
07:48雨が降ればかさやが儲かるか
07:52ところでおめえさんとこの娘っ子が
07:56変わったばあさまの置物があるって言ってたが
07:59パーッと死ねおきものだなあ
08:05おらの家には同じ年寄りでも立派なあじいさまがおるど
08:10なんせだいだいつたわったもんで槍を持って立っている姿なんど
08:14ほれぼれするぐれいだ
08:16とおけやのおやじは自分とこの焼き物の自慢話を長々と話し始めました
08:27かさやのおやじはまた長話になると聞き流しておったのですが
08:34焼き物のばあさまはその焼き物のじいさまのことを一心に聞いておる様子なのでした
08:41そして次の朝
08:48なにおらんとこのばあさまがおけやにいっとる
08:53いやこれ不思議なこともあるもんじゃ
09:00朝起きてみたらほれこの通りおまえんとこの焼き物のばあさんがうちのじいさんの横にちんまり座ってるでねえか
09:10バカっこくでねえおまえが欲しくなって持ってきたんでねえのか
09:15なにおらんとこのじいさまだってこんなばあさまに来られてさぞ迷惑しとるじゃろ
09:23早く持ってけれ
09:25ああ言われなくても持って帰るわ
09:32なんじゃ
09:34なんじゃそんなもんも持ち上げられんのか
09:38ところが二人がいくら持ち上げようとしても焼き物のばあさんはまるで根っこでも生えたように動かないのでした
09:53ばあさんはよっぽどこのじいさんのそばが気に入ったのでしょう
09:58笠屋の親父はばあさんをこのまま置いていってやるべえと言って持ち帰るのをあきらめて帰って行きました
10:07この話を聞いて小僧さんと娘っ子はさみしい気持ちになりましたが
10:13それでも時々おケアの家へ行くと
10:17じいさまの脇でうれしそうに座っている焼き物のばあさんを見て
10:22娘っ子も小僧さんもきっとこれが一番良かったのじゃろうと
10:28そう思うよ
10:30そう思うよ
10:32とんにく

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