00:00昔兵庫の丸山川沿いに
00:06それは見事に成長した柳の大木が一本あった
00:12柳様おはようございます
00:16今日も安城畑仕事ができますようお願い申し上げます
00:24村人たちは畑仕事の行き帰りには大抵この柳の大木の下で
00:32一休みして世間話をしたりお昼の弁当を食べたりしておった
00:38お暑いですな
00:41まあ休んでいきなさん
00:43おおこの柳の木は見事なものですが
00:47柳様と村の衆も呼んでおります
00:50そうですか
00:51村の自慢です
00:54また旅人は夏の暑い日など
01:01旅の疲れをここで休むことで癒やしたりしておった
01:07ところがある年の夏の過ぎた頃台風がやってきた
01:13本当に早く休んで
01:16うるさい
01:18乗ってねえか
01:20偉いことになった
01:24川が溢れるぞ
01:26裏の衆にしなすいよ
01:28うるさい
01:29乗ってねえか
01:30うるさい
01:31乗ってねえか
01:32うるさい
01:33乗ってねえか
01:35うるさい
01:36うるさい
01:37うるさい
01:38うるさい
01:39うるさい
01:40うるさい
01:41お気に入りする
01:42お気に入りする
01:43頂く
01:46ご視聴ありがとうございました
02:16台風は三日三晩荒れ狂い何人もの犠牲者を出し丸山川を氾濫させ村を壊滅状態にして去っていった
02:30ひどいもんじゃ
02:35村をさよう柳様が流されてどこにも見当たらねえ
02:46村の柱をなくしてしまった
02:50こないにめちゃくちゃに田畑を荒らされては明日から
02:54どうやって暮らしていったらええんじゃ
02:57私たち首をくぐらないか
03:00村をさわしらどうしたらええんじゃ
03:08角なる上はただ一つ
03:18ただ一つ
03:20丸山川の向こうの小田野高台の荒れ地を耕して
03:33台風が来て川が氾濫しても流されん田んぼをこさえることじゃ
03:40じゃが丸山川は深い
03:43橋を架けるにも今の我々にはどうにもならんほどじゃ
03:48そうじゃそうじゃ
03:50どうにもならん
03:52どうにもならん
03:53じゃがあの嵐じゃひょっとしてどこかに浅瀬ができているかもしれん
04:00みんなで探してみよう
04:01そうじゃ
04:03そうじゃ
04:04そしてみよう
04:05村人たちはどこかに浅瀬はないかと
04:09総出で探してみた
04:11すると
04:13川の少し下の方に
04:15やっと腰あたりの浅さになっておるところが見つかった
04:19村からはだいぶ遠く離れておったが
04:22やっと皆は活路を見いだした
04:25早速その浅瀬を通って川の向かい側の
04:30高台を開墾することにした
04:54村人たちは高台に田んぼを作ろうと一生懸命働いた
04:59あんまり夢中になって働いたものじゃから
05:02この日は帰る頃にはもうすっかり暗くなってしまう
05:06今日は皆陽性を出した
05:16本人
05:17なんとか頑張らねば
05:19田んぼができれば救われる
05:24おおすっかり暗くなってしまった
05:28皆の衆今日はこのぐらいで帰るとしようか
05:32来る時に渡った浅瀬じゃったが
05:36初めて渡ったところじゃったからつい場所が分からなくなってしまった
05:41こって浅瀬はどこやったろうな
05:47あの辺じゃなかったか
05:50うーん
05:53いやこっちだと思うが
05:59うっかり渡れば深みに足を取られないとも限らない
06:03その上とっぷりと日は暮れてしまった
06:08はてさて困った
06:12一体どうすればいい
06:19おっあれは何じゃ
06:23見ると指さす方の川のあたりがぽーっと明るく光っておった
06:30何かが光ってるよ
06:32これは何じゃろう
06:35とにかくあそこまで行ってみるべ
06:38おおっ
06:44おっ
06:46浅瀬じゃ浅瀬じゃ
06:48おい渡れるぞ
06:50おい
06:55そして村人が渡り終えると
06:57その光はスーッと消え失せて
07:00あたりは元の暗闇となった
07:04それにしても不思議なことはあるもんじゃ
07:09これは一体どうしたことじゃ
07:13村人はまるで夢を見ているような気持ちで家へと帰り着いた
07:18ところがこの不思議なことが翌日もそして次の日もずっと続いた
07:25まるで一日の仕事に疲れ
07:29暗い浅瀬を帰る村人をいたわるように
07:32毎晩浅瀬でぽーっと光を放っておった
07:36それがどうしてなのかは誰一人知るよしもなかった
07:40その光る浅瀬のおかげで
07:44織田の高台の田んぼづくりはどんどんはかどり
07:48やがて春が訪れる頃には石ころだらけで草ぼうぼうだった織田の荒れ地は立派な田んぼに変わっておった
07:58水がある日突然春の嵐が吹き荒れて川はまた大水になった
08:08村人たちはあの不思議な浅瀬が消えてしまうのではないかの気が来てはなかった
08:14数日が過ぎて水が引くと案じていた浅瀬はほとんど元のままじゃった
08:26よかったよかった
08:28ありがたいことじゃ
08:30おりゃあなんじゃ
08:32何だ
08:42川の底から妙な形をした柳の大かぶが半分姿を現した
08:48そのかぶは水面に顔を出して白くきれいに磨かれたようじゃった
08:54みんなは何かあたりに光を放つような不思議な木に見とれた
09:01こう
09:02これは
09:04柳様じゃ
09:07柳様じゃ
09:09柳様じゃ
09:11柳様が光を放ってわしらを導いてくだされたのじゃ
09:23小田の田んぼが開けたのはこの柳様のおかげじゃ
09:28わしらの守り神じゃ
09:30わしらの守り神じゃ
09:31ありがたいことじゃ
09:33ありがたいことじゃ
09:35大かぶを掘り起こすと村人たちはこの川のそばに丁寧に祠を建てた
09:45あくる年の秋には小田の田んぼにはこぼれるような稲穂が実った
09:52そして見事に実った稲穂を柳様の屋代に捧げて村中で秋祭りをして祝った
10:03そして村人たちは今度は力を合わせて立派な橋を作った
10:09神社に祀られた柳様はいつまでもこの橋を見守っておられ
10:15台風が来ても決して流されなかったそうじゃ
10:20そして今ではこの八代の柳様は
10:24柳大明神と呼ばれて
10:27人々の信仰を集めているということじゃ