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  • 23 時間前
Japanese folk tales
トランスクリプション
00:00昔、昔、北国では降り続く雪が、まだ本当に白い色ではなかったそうです。
00:22そんな北国の大きな商屋さんのところに、遠い村から女の子が奉公に出されてきました。
00:41ただいま、あののですか。早く入ってこう。
00:47遠いところ、夜を来たの。今日からここが、お前の働くところじゃ。
00:58おい、返事をするだ。
01:13今日からお前はここでご奉公するだ。うまんまんもちゃんと食えるし、火鉢になって働れるぞ。ちゃんとおかみさんにご挨拶しん。
01:25一生懸命働くだで。よろしくお願いします。
01:31そこにおるんが、お前と一緒に働く姉さんたちだ。ご挨拶しろ。
01:38姉さんたち、よろしくお願いします。
01:43娘っ子はよく働きました。おまんまもちゃんと食えるし、時たまですが火鉢にもあたらしてもらえる。朝の水くみ、水地洗濯はつらかったが、村にいるときを思えばずっと楽なのでした。
02:03あんで、若いだけあって、つやつやの肌じゃ。
02:11この在所じゃ、おかみさんが一番の器量良しと言われとる。そこらあたり、よう心得とかにはいかん。
02:23その日は、近代の者を招いて宴会を開こうと。
02:29下働きの者たちは、朝から料理の下ごしらえに大変でした。
02:35遅い、昼の食事をとっていたときのことです。
02:45すみません。わずかなもので結構です。何か食べ物を恵んでもらえないでしょうか。
02:53そこに立っておったのは、ぼろぼろのみなりをした旅の坊さんでした。
03:03北の国の冬に、人様に恵むほどの食べ物なんだ。あるわけなかろう?
03:11すまねがよそ言ってくれろ。
03:15ごうさま、ごうさま、待ってくれろ。
03:21ごうさま、ごうさま、待ってくれろ。
03:35娘っ子にとっても大切なご飯でしたが、
03:41坊様のことを思うと、食べてしまうことはできませんでした。
03:45娘っ子は、坊様の後を追って、握り飯を差し出しました。
03:51旅の途中で何もないが、握り飯の御礼です。
04:03きれいなきれいに、かわいい鈴。ありがとう。
04:09やがて、宴会も終わり、招かれた人々が帰って行きました。
04:33どうも働きすぎで、腰が痛くなっちまっただ。
04:41若いってはいいことだな。
04:49あれ?
04:51汁の中に入った布が、不思議なことに少しも汚れていませんでした。
04:57その上、布の落ちた茶碗だけピカピカになっておりました。
05:02あれ?不思議なことだ。
05:07茶碗がきれいになってる。
05:09こっちの皿はどうだべ?
05:12娘は、別の汚れた皿を拭いてみると、布は汚れないのに皿はきれいになっておりました。
05:21そこで、思い切って宴会の後をすっかり片付けてしまったのでした。
05:28お父さんにもらったその布は、えらく柔らかくあったかで、ふくよかな香りさえ漂ってくるようでした。
05:43ちゃんとやってるかい?
05:46ありゃ、いつの間にきれいに片付いただ?
05:50お前!
05:54そこへ様子を見に来た姉さんは驚きました。
05:59ふれむいた娘っ子の顔が、やけに美しくなっていたからです。
06:04すっかりきれいになってしもうって、どうしただ?
06:09姉さんに言われて娘っ子は、井戸端に行って自分の顔を映してみました。
06:20あれま、本当におらなんだべか。
06:24娘は、お家の水に映った自分の顔をいつまでも眺めておりました。
06:33その話を聞きつけたおかみさんは、どうしてそんなにきれいになったのか、娘っ子を問いただしました。
06:41そうして、その布を娘っ子から取り上げてしまいました。
06:47本当にきれいな布じゃのう。
06:51このきれいな布と鈴は、おらんとこの飯でもらったもんじゃ。
06:57だからこれはわしがもらっとく。ええな。
07:11おかみさんのおかみさんのおかみさんは、シワだらけの顔になってしまいました。
07:40大変なことにしくさって、みんなお運命が悪いんじゃ。
07:55悪く思うなよ。
08:00おら、ここを出されたら生きていけねえだ。
08:04かんにんしてけろ。おねぎ枝なんでもするだけ置いてけろ。置いてけろ。
08:13家を追い出された娘っ子は、雪が降りしきる中、ぼんさんにもらった鈴を、チリンチリンと鳴らしながらとぼとぼと歩いていきました。
08:42おまえがおつくしゅうなって。なぜわしがこんな顔にならねばならんのじゃ。おまえの顔などみんなで、出ていけ。出ていけ。
09:01娘っ子は、山里の自分の家へ帰ろうとしたのですが、飲まず食わずでいくつもの山を越さねばなりませんでした。
09:12その上、この雪と寒さです。歩くたびに、チリンチリンと鳴る鈴のおねが、いつか途切れ途切れになっていきました。
09:25やがて、聖魂つき果てた娘っ子は、とうとう雪に埋もれるように倒れてしまいました。
09:36おー、さまー。
09:39不思議なことに、娘っ子の手元の布から、だんだんと白くなった雪が広がっていきました。
09:54白くなった雪は、どんどんと娘っ子の上に降り積もっていきました。
10:11キタゴリの雪が、本当に白い色になったのは、こんなことがあってからだということです。
10:26ご視聴ありがとうございました。

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