00:0840年もの間俺はこの古びた神社の境内で金魚救いの屋台を出し続けてきた俺には幼い頃に亡くした二つ下の弟がいた
00:17家は貧しく米さえ満足に食べられない日々だった病弱で外に出られない弟をたった一度だけ夏祭りに連れて行ったことがある
00:25泣けなしの小遣いでやらせた金魚救い弟はたった一匹だけ救えた金魚を一生大事にすると言って笑った その翌年の冬弟は言った
00:40棺の中には彼が一番の宝物だと言ったあの金魚の亡骸も一緒に入れた 以来俺にとって金魚救いは誰かのかけがえのない記憶を守るための儀式となったその晩も境内は身動きが取れないほどの人で溢れていた
00:51人ごみを縫うようにしてやってきたのは色のあせた服を着た兄弟だった10歳ほどの兄と7歳くらいの妹 2人のサンダルはすり切れ鼻をも今にも溶けそうだった
00:53妹はそっと兄のシャツの裾を引いた 男の子は1回300円と書かれた木の札を何とも言えない顔つきでしばらく見ていたがやがて妹の顔を見てこくりと小さくなずくと
01:12おじさん1回と言った差し出された3枚の100円効果は少年の手のひらの熱でしっとりと湿っていた
01:13それが彼にとってどれほど重い300円か
01:15俺には痛いほどは勝った 自分は我慢し妹のために用意したお金なのだ俺はわざと手が滑ったと嘘をつき
01:31水に濡らしただけの新しいポイを少年に手渡した2人に楽しんで欲しかったのだ 少年は目を輝かせ慎重に水面に手を伸ばしたしかしその時だった
01:39隣で夢中になっていた妹が足をもつれさせ兄の腕にぶつかったのだ少年のポイはあっけなく破れた
01:42金魚は逃げ妹は泣き出しそうな顔で立ち尽くした
01:59少年は手の中の破れた髪とまだ無傷ない妹のポイを交互に見つめたそして迷うことなくまだ使える方のポイを妹に手渡したほらお前がやれよ俺はあっちを見てくるから彼は強がって笑い人混みの中へと消えていった俺は見ていた
02:11離れた場所で金魚を救う妹の歓声が響くたび少年の背中が嬉しそうに揺れるのを彼は何も買わずただポケットに手を入れたまま妹の嬉しそうな顔を遠くから見守っていた
02:37俺はたまらない気持ちになり兄の分として2匹の金魚をこっそり袋に足してやったそれから8年の月日が流れたある夏の夜一人の青年が屋台の前に立った日焼けした顔に作業着姿あの時の少年だったおじさんあの時はありがとうわざと髪を濡らしてくれたこと本当は気づいてたんだ彼は照れくさそうに笑った二人は早くに両親を亡くし身を寄せ合って生きてきたという
02:53彼は中学を出てすぐに働き妹を高校へ通わせたあの金魚が俺たちの最初の家族だったんだあいつ毎日大切に世話してさ本当に辛い夜もあったけどあの金魚を見るとあの日のおじさんの優しさを思い出して頑張れたんだよ
03:22青年はそう言って再び300円を差し出した今度は自分のために効果はやはりあの夜と同じように温かかったさらに1年後青年は白いワンピースを着た女性を連れてきたお腹を少しふっくらさせた妹さんだった彼女の結婚が決まり真っ先に俺に報告に来てくれたのだというお兄ちゃんが初めてワンピースを買ってくれたんですそう言って微笑む彼女の隣で青年は照れたように笑いながら空を見上げた人は誰かを思う時
03:44自分の中にある一番温かなものを手渡すあの夜10歳の少年が妹に譲ったのはただの遊び道具ではない一生消えない愛されているという証拠の品だったのだそして俺は今もこの屋台に明かりを灯し続けている水槽を覗き込む子供たちの向こうに亡き弟の面影とあの兄弟の幸せな背中を見つめながら