00:06離婚届の白さがこれほどまでに残酷なものだとは思わなかった佐藤健一が心血を注いだ小さな it ベンチャーは取引先の倒産という不可抗力によってあっけなくが返した残ったのは膨大な夫妻と愛想つかした妻そしてお父さんなんて嫌いという娘の泣き顔だけだった
00:29すべてを失った健一は故郷である北海道へと向かった たどり着いたのは人影もまばらな幻灯の駅ここで終われば誰にも迷惑はかからないだろうこのまま白い闇に溶けてしまいたかった
00:42駅の外に出ると吹きすさぶきた風が容赦なく健一の方を打つ感覚の消えゆく手足が帰って心地よかったその時車椅子に乗った女性の姿が目に飛び込んできた
00:46彼女は必死で凍りついた段差を乗り越えようとしていた
00:53車輪が空転し細い腕が小刻みに震えている 周囲には誰もおらずただ街灯だけが冷たく彼女を照らしていた手伝います
01:04健一の体は無意識に動いていた 氷の段差は想像以上に硬く滑りやすかったが渾身の力を込めるとガタンと音を立てて車椅子が平坦な道へと上がった
01:07ありがとうございます 彼女が振り返った吐息で白くなったマフラーの間から覗く顔は驚くほどまっすぐで澄んだ瞳をしていた
01:17吐息で白くなったマフラーの間から覗く顔は驚くほどまっすぐで澄んだ瞳をしていた私あそこの坂の上にある展望台に行きたくて
01:30今日どうしても見たいものがあるんですこの雪の中岡と健一はゼックした 聞けば彼女の名前は雛というらしい生まれつき足が不自由だが地元の風景を写真に収めるのが趣味なのだという危ないですよ
01:33健一は言った この時間帯が一番綺麗に撮れるんです
01:37と言って雛はくったくなく笑った 健一は何かに導かれるように彼女の車椅子を押し始めた自分の命を捨てる場所を探していたはずなのに
01:57今は一人の女性のために一歩ずつ雪を踏みしめていた展望台へと続く坂道は険しかった 霊気が早を射し足の感覚はとうにないしかし雛は道中楽しげに語り続けた
02:00見てください あの木雪の重みに耐えて春を舞ってるんですよこの雪の下にはちゃんと命が眠ってるんです白は何もない色じゃなくて何かが始まる前の色なんです健一の胸の奥で何かが小さく起死んだ事業に失敗し家族に捨てられ
02:22自分という人間には価値がないと思い込んでいた真っ白な離婚届は人生の終わりの象徴だと
02:52しかし彼女の瞳にはこの白銀の世界が希望の準備期間として映っているようやくたどり着いた展望台で風が止んだ雲の切れ間から満天の星空が姿を現した雪原に反射した星明かりが世界を青白く輝かせているこれを見せたかったんです雛は健一を見上げそっと手袋を外した赤く晴れた彼女の手が健一の美え切った手を包み込むその体温は驚くほど熱かった生きてさえいればまたこんなに綺麗なものに出会える
03:17お兄さんの手すごく力強くて温かかったですその手でまた誰かを助けられるはずですよ雛は健一の心の中をすべて見通しているようだった健一の目から熱いものがこぼれたそれは頬を伝うそばから凍りついていくようだったが止まらなかった娘に言われたお父さんなんて嫌いという言葉の裏にあったのは仕事ばかりで自分を見てくれなかった寂しさだったのではないか妻が去ったのは
03:34自分が一人で抱え込み彼女たちを頼ろうとしなかったからではないかすべてを失ったと思っていただがまだこの手は動く誰かの車椅子を押すことができる冷たい風の中で誰かのぬくもりを感じることができるもう一度やり直せるでしょうか
03:58もちろんです春は必ず来ますからひなの言葉は氷を溶かす陽光のように健一の心に染み渡った翌朝健一は駅のホームに立っていた昨日の猛吹雪が嘘のように空は澄み渡るような青だった懐から取り出した離婚届は相変わらず白いだが今の健一にはそれが新しい何かを書き込むための真っさらなキャンバスのように見えた
04:08ご視聴ありがとうございました
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