00:07爺ちゃんはいつだって俺を猫可愛がりしたガキの頃いじめられて鼻血を出して泣きながら帰ると爺ちゃんは劣化のごとく怒った
00:16俺の大事な孫に誰が手出しやがった普段は腰が痛いと言っているくせに愛用の杖をぶん回して学校まで怒鳴り込んでくれた
00:21あの時の俺をかばうように立つ広い背中が誇らしくて何より心強かった
00:31遠足や運動会周りの家が豪華な散弾銃を持ってくる中爺ちゃんが持たせてくれたのは破れそうなくらいパンパンに詰められたでっかい稲荷寿司だった
00:38男はくわにゃ力が出ねえからな少し酢が効きすぎたその味は不器用な爺ちゃんの愛情そのものだった
00:45一番古い記憶は熱を出した嵐の夜だ大丈夫だ爺ちゃんがついてるからな意識が朦朧とする中
01:00か爺ちゃんの背中のぬくもりだけを覚えている車も通らない田舎道 町の医者までの4キロもの道のりを当時すでに若くなかった爺ちゃんは俺を背負って必死に走ってくれた首筋に滴り落ちたのは雨だったのかそれとも爺ちゃんの汗や涙だったのか
01:07その背中で聞いた激しくでもどこか安心する心臓の音を俺は一生忘れない
01:18そんな爺ちゃんと俺の血がつながっていないことがわかったのは爺ちゃんの葬式の時だった 線香の匂いがまだ薄く残るがらんとした今爺ちゃんの葬儀を終えたばかりの家は驚くほど静かだった
01:31俺は一人仏壇の前に座り込み爺ちゃんの家を見つめていた膝の上に置かれた古い戸籍等本 そこに記された残酷な事実は俺のこれまでの20数年の時間を根底から揺さぶった
01:33爺ちゃんは生涯独身だった 俺は林家に住んでいた夫婦の子供で彼らが借金まみれで夜逃げをした際赤んぼだった俺だけがまるでゴミのように置き去りにされたのだという
01:56それを見兼ねて俺が育てると名乗り出たのが親戚でもなんでもないただの隣人の爺ちゃんだった もし今この声が届くなら爺ちゃんに聞いてみたいよ血の繋がりもない他人の俺をどうしてここまで身をこにして育ててくれたの
01:59だけどそれ以上に伝えたいことがあるんだ
02:09ありがとう俺にとって爺ちゃんは世界でたった一人の最高の家族でした親がいない寂しさなんて一度も感じたことがなかった
02:23大学まで行かせてくれて立派にスーツを着て働く社会人にまでしてくれた今の俺があるのは全部爺ちゃんのおかげなんだ 今度生まれたばかりの娘を連れて墓参りに行くよ誰が何と言おうとこの子はあんたの暇子だ
02:29俺が爺ちゃんにしてもらったみたいに次は俺がこの子に無償の愛を注いでいくから
02:38見ててくれよ爺ちゃん俺は震える手で家の前にあのでっかい稲荷寿司を備えた涙でにじむ視界の先で爺ちゃんが
02:41追うしっかりやれよと笑ったような気がした
02:45おやすみなさいおやすみなさい
02:46おやすみなさい
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