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#nana56b


Synopsis

Outside the window of the overnight train,
everything was shrouded in deep darkness. The
steady, rhythmic clatter of the train—clack,
clack—swallowed up the sighs of the passengers who
couldn’t fall asleep.

That night, the old man who appeared before me
looked as if he were carrying the earth itself on
his back.

Holding a large furoshiki-wrapped bundle as if it
were a treasure, a faint scent of damp earth and the
fresh scent of green grass wafted from his body.
The deep wrinkles on his sun-weathered face, his
gnarled fingertips—at a glance, I could tell he was
a man who had spent his long life working the fields.

“Um, is this… the right spot?”

The old man showed me his ticket and bowed deeply,
over and over again. His assigned berth was on the
lower bunk across the aisle. He sat down gently,
paying the utmost attention to his surroundings.

He took off his well-worn tabi socks and neatly
arranged them beneath the berth. Every one of his
modest gestures revealed the sincerity of the life
he had led.

During the ticket inspection, even though I hadn’t
asked, the old man began to tell me, bit by bit,
about his life.
His son, who had moved to the city, had just
welcomed his first grandchild.
“I’m going to see that little face, just once,”
he said, his eyes shining like a young boy’s. He
explained that the contents of his furoshiki were
vegetables he had carefully cultivated in his own
garden.
“I want to feed my grandchild real, delicious
food—the kind with a bit of dirt still on it,”
he said, his face breaking into a crinkled smile
that overflowed with the joy of having counted down
the days for this moment for weeks.

As he gazed out the window into the darkness, his
profile looked a little lonely—he wished he could
have shown this grandchild to his wife, who had
passed away a few years earlier—but he quickly
returned to his gentle smile.

However, that warm atmosphere was shattered in an
instant.

Seated on the berth across from the old man was a
well-dressed middle-aged woman. She wore a fine coat,
and a large gem sparkled on her finger. The scent of
her expensive perfume clashed violently in the narrow
aisle with the smell of the soil the old man had
brought.

The woman grimaced openly and pressed a handkerchief
to her nose. She ignored the old man’s nod and
looked away as if she were seeing something filthy.

After lights out, as I was making my rounds, her
sharp voice broke the silence.

“Excuse me, conductor. Please switch my seat.”
“What seems to be the problem?”
“Can’t you see? There’s no way I can sleep all
night next to someone covered in mud like that. The
earthy smell is unbearable. How could you possibly
have seated someone like this next to me?”

Her voice echoed cruelly clearly through the train
car late at night.
I could tell the old man…

カテゴリ

📺
テレビ
トランスクリプション
00:03夜行列車の窓の外は深い闇に包まれていた。
00:08ガタン、ゴトンと規則正しく刻まれるリズムが、眠りにつけない乗客たちの吐息を飲み込んでいく。
00:14その夜、私の前に現れた老人は、まるで大地そのものを背負っているかのようだった。
00:21大きな風呂敷包みを宝物のように抱えたその体からは、湿った土と、青い臭い切れの匂いがふわりと立ち上った。
00:27日に焼けた顔の深い死は、不しくれだった指先。 一目で、長い歳月を田畑と共に生きてきた人だと分かった。
00:37あの、これ、ここでよろしいんでしょうか。老人は私に切符を見せながら、何度も、何度も深々と頭を下げた。
00:46指定された寝台は、通路を挟んだ下の段だった。彼は周りに細心の注意を払いながら、そっと腰を下ろした。 吐き慣れた直旅を脱ぎ、寝台の下に来たりと揃える。
01:01そのつつましやかな所作の一つ一つに、彼の歩んできた誠実な人生がにじみ出ていた。検察の際、老人は聞きもしないのに、ぽつりぽつりと身の上を話してくれた。都会へ出た息子に、初めての孫が生まれたこと。
01:09その顔を、一目見に行くんだ。そう語る老人の目は、少年のように輝いていた。 風呂敷の中身は、自分の畑で丹精込めて育てた野菜だという。
01:23孫に、土のついた本物のうまいもんを、食わせてやりたくてな。 くしゃりと顔を崩して笑うその表情には、何日も前から指折り数えて今日を待っていた喜びが溢れていた。数年前に先立った妻にも、この孫を見せたかったと。
01:31窓の外の闇を見つめる横顔は、少しだけ寂しげだったけれど、すぐにまた柔らかな笑みに戻った。
01:42しかし、その温かな空気は、一瞬で切り裂かれた。 老人の向かいの寝台には、みなりの立派な中年の女性が座っていた。上等なコートを羽織り、指には大きな宝石が光っている。
01:50彼女がまとう高価な香水の香りが、老人の運んできた土の匂いと、狭い通路で激しくぶつかり合った。
02:04女性は露骨に顔をしかめ、ハンカチで鼻を押さえた。 老人の営釈を無視し、まるで汚らわしいものを見るかのように目をそらす。消灯後、私が見回りをしていると、彼女の鋭い声が静寂を破った。ちょっと、車掌さん、席を変えてちょうだい。
02:07いかがなさいましたか?見ればわかるでしょう。 あんな泥だらけの人の隣で、一晩中眠れるわけがないじゃない。土臭くてたまらないわ。
02:17よくもまあ、こんな人を私の隣に座らせたものね。
02:43彼女の声は、深夜の車内に残酷なほどはっきりと響き渡った。向かいの寝台で、老人がその言葉をすべて聞いているのがわかった。彼は言い返すことなどせず、ただ膝の上の風呂敷包みをぎゅっと胸に抱き寄せた。申し訳なさそうに体を小さく縮め、自分がそこに存在すること自体を浴びているようだった。さっきまであんなに輝いていた老人の笑みが、完全に消えていた。私の胸の奥で、熱いものがこみ上げた。
03:07孫のために丹精込めた野菜を抱えるこの人の、一体どこにはビル理由があるというのか。悪いのは匂いではない。人を外見だけで切り捨てる。その心のはずだ。しかし、若かった私は、どう動くべきか判断できず、白髪の車掌庁に相談しに行った。彼は長年この夜行列車を見守ってきた。寡黙だが情に熱い人だった。事情を聞き終えた車掌庁は、静かに頷いた。
03:12わかった。あのご老人を、空いている個室の寝台へご案内しなさい。え
03:13?個室、あの一番上等な席ですか?あ、何かあれば私が責任を取る。ああいうお客様にこそ、一番いい席で休んでいただきたいじゃないか。車掌庁の穏やかな、しかし毅然とした眼差しに、私の迷いは消えた。
03:56私はあの車両へ戻った。女性は勝ち誇ったような顔で私を待っていた。だが、私は彼女を素通りし、老人の前で深々と頭を下げた。お客様、どうぞこちらへ。個室の寝台をご用意いたしました。隣の席があんな方では、さぞお休みになれないでしょう。車掌庁が特別に手配いたしました。あんな方という言葉が誰を指すか気づいた瞬間、女性の顔はみるみる赤くなった。彼女は何かを言いかけ、けれど言葉にならず、逃げるようにカーテンの奥へ消えた。
04:24周囲の寝台から、声にならない安堵の気配が漏れた。誰かが拍手の代わりに、毛布をポンと軽く叩いた。その音が、冷えた車内に暖かく響いた。いや、わしのようなものが、そんな、と恐縮する老人を促し、私は彼の重い風呂敷包みを抱えて先に歩いた。扉を開けると、老人は清潔な布団と枕元の小さな明かりを見て、目を潤ませた。こんなもったいない、生まれて初めてだ、こんな上等なところで寝るのは。
04:43震える声でそう言うと、老人は慌てて風呂敷を解き、中から真っ赤に売れたトマトを一つ取り出した。これ、わしの畑のだ。あんたにも、一つ食べて欲しいんだ。お孫さんへの大事なお土産でしょうと、私は断ろうとした。いや、あんたは、わしの恥を恥じゃなくしてくれた。
05:03その、まっすぐな言葉に、私は断ることが、できなかった。差し出された手は不しくれだって、土の匂いがして、とても温かかった。その夜、休憩室でかじったトマトの味を、私は一生忘れない。太陽の光と、土の豊かさと、誰かの一生分の慈しみが凝縮されたような、そんな味がした。
05:32あんなにうまいものを、後にも先にも食べたことはない。翌朝、終着駅のホームで、老人は何度も何度も頭を下げながら、人混みの中へ消えていった。その背中は、昨日よりもずっと晴れやかに見えた。きっと今頃、あの土の匂いのする手で、初孫を抱きしめているのだろう。あれから、40年が経った。私は、もう、列車を降りて随分になる。それでも、夏が来て、店先に赤いトマトが並ぶ旅、私は、あの夜を思い出す。
06:00人間の立派さは、決して同じではない。品格とは、来ているものではなく、その人の生き様や振る舞いにこそ宿る。あの夜、一番上等な席に、一番ふさわしかったのは、誰だったのか。そして、人にどう向き合うべきかを、私は、あの夜の車掌庁の背中から学んだ。見えるもので人を計らず、見えないものにこそ、敬意を払うこと。それが、40年、私が胸の奥で守り続けてきた、たった一つの誇りだ。
06:07ご視聴ありがとうございました。ご視聴ありがとうございました。
06:08ご視聴ありがとうございました。ご視聴ありがとうございました。
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