00:21私には旅先でいつも癖がある
00:25観光案内を読むより先に一本脇道へ入ってみる
00:29ことだ
00:30その街が本当はどんな顔をしているのか
00:35それは名所ではなく何気ない道が教えてくれる
00:40今回は愛知県豊田市安家町を歩く
00:44紅葉で知られる街
00:46けれど私が歩いてみたいのはその少し先に続く時間である
00:58歩き始めると最初に目に入るのは山だった
01:03その山々の間を一本の道が縫うように伸びている
01:08私はその道を見ながら考えていた
01:11道とは誰かが目的地へ向かうためだけに作るものでは
01:15ない
01:16そこを歩いた人々が少しずつ街を育てていく
01:21そうして道そのものが街になる
01:24アスケはまさにそんな場所だった
01:27かつて三河と新州を結ぶ街道では
01:31塩をはじめとする物資が運ばれ
01:34この街で積み替えられ
01:36アスケ塩とも呼ばれて広く流通したという
01:41私はこの坂道を登った人々は
01:44何を話していたのだろうと思った
01:47秋内のこと
01:49家族のこと
01:50それとも今日の空模様だったのか
02:03街には表通りがある
02:07そして本当の街がある
02:09私は迷わず細い路地へ入った
02:13白い漆喰
02:15黒い板壁
02:16古い石垣
02:18静かな暗
02:20人影は少ない
02:22けれど不思議なことに寂しいとは思わなかった
02:26建物は誰もいなくても人の暮らしを覚えている
02:31万輪工事へ入る
02:33時間まで細くなったような
02:35そんな気がした
02:37歩く速度が遅くなる
02:39街が少しずつ話しかけてくる
02:46古い街は美しい
02:48だが美しい街ほど悲しみを隠している
02:53私は古い商家の床柱に残る刀傷を見つめた
02:57天保七年
02:59鴨一期
03:01暮らしに耐えかねた人々がこの街へ押し寄せた
03:05刀傷は傷跡ではない
03:08生きようとした人々の叫びなのだ
03:11私は歴史とは教科書ではなく
03:14木の中にも残るものなのだと思った
03:20街を歩いていると山が呼んでいるように思えた
03:24私はアスケ城へ向かう
03:27汗をかきながら登る
03:29風が変わる
03:31鳥の声も変わる
03:33小さな城だった
03:35しかし戦国の武将たちは
03:37何度もこの城を奪い合った
03:40理由は城ではない
03:43道だった
03:44道を守る者が国を守る
03:47それだけのことだった
03:50私は矢倉から街を見下ろした
03:53500年前も同じ景色だったのだろう
03:59高蘭圏へ向かう
04:01赤い楓が揺れている
04:03美しい
04:04けれど私はこの景色は自然だけが作ったものではないと知って
04:10いる
04:11高尺寺の三栄予賞は願いを込めて一本一本楓を植
04:16えたという
04:17一本では風景にならない
04:20二本でもまだ足りない
04:22何百本
04:24何千本
04:26人の願いが積み重なって
04:28やがて谷は赤く染まった
04:31私は風景とは人の時間なのだと思った
05:04私は日本を追落なければなりそうな
05:25夕暮れ 飛鳥川 橋の上 私は振り返る
05:31この街で見たものは古い建物ではなかった
05:35一本の道だった
05:37その道を何百年もの人が歩き
05:40街を育てまた次の旅人へ渡していった
05:45旅とは知らない場所へ行くことではない
05:49誰かが歩いた時間をほんの少し借りて歩くことなの
05:53だ
05:54アスケを離れてもきっと私はまた道を探すだろう
05:59道の先にはまだ知らない物語が待っている
06:06ご視聴ありがとうございました
06:07ご視聴ありがとうございました
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