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  • 2 日前
Japanese folk tales
トランスクリプション
00:00昔々、ずーっと昔のお話でして、日本には十二子なんてものがございましてな。
00:17あいつめ、イノシシだからどうも無骨気が強くていけねえ、なんてことを言います。
00:23今もこの何年生まれなんてな、しょっちゅう使われておりますようで。
00:27時間とか方角のことになるってえと、最近はあまり持ちいないようですな。
00:32昔は時間も方角も、みなこの十二子を持ちいましたようで。
00:37真夜中の十二子を寝のこく、お昼の十二子を馬のこくなんて言います。
00:42正午とか午後なんていうのもここから来ましたようで。
00:45また北のことをね、南のことを馬と言いますな。
00:50ところで、今日これから出てまいりますのは、なぜか十二子にも入れてもらえなかったっていう、
00:57キツネとクマですな。
00:59このキツネとクマが、深い深い山の奥にトーンと大昔住んでおりましたそうな。
01:06いやー、クマさんこんにちは。相変わらずお元気そうで何よりでやんす。
01:11毛並みなんかもツヤツヤしよって、もう敷物にでもすればさぞかし。
01:15お、お、と、と、と、これは失礼。
01:17いや、その、いや、その、その、なんですな。
01:20あたしなんざそれに引き換える奥なものは食べてないんで、まあ見てくださいよ、ほれ。
01:25毛なんざパサパサしちゃって。
01:27おらだって最近はさっぱりいうものは食ってねえよ。
01:31おや、まあそうでやんすか。それならクマさんどうでやんさ。
01:34足と一緒に畑でも作りやせんか。
01:37畑じゃと、動物の裏たちがか。
01:40そうですとも、動物だって近頃は働かなきゃ生活はなかなか楽にはなりやせんよ。
01:46と、まあそういうわけで狐の方から話を持ちかけましてな。
01:50さっそくその土地へやってまいります。
01:53クマさん、ここは一つこういうことにしやしょう。
01:56お前さんはなんせ力が強い森でも一番の力持ちだ。
02:01で、畑はクマさんお前が作る。
02:03で、その代わりあたしはちょっくら里まで行って種を持ってきましょう。
02:07ね、で、できたものは半分ずつ。これでいいですね。
02:12まあ、もともと根っから働き者のクマさん、それならそうしようってんで、
02:18一人しゃかりきりになって働いておりました。
02:22ところで、一方、狐の方はってえと、
02:25これがものすごい勢いで里まで一っ端。
02:27もともと金なんぞ持ってる気遣いはございませんでな。
02:31早い話が種泥棒、放火無理なんぞして、あらよってなもんで。
02:35いやー、クマさん、クマさん、ところでどうでやんすよ。
02:40後々揉めないように誰がどっちを取るかを今のうちに決めといた方が良いと思うでやんすがね。
02:45誰がどっち取るかっていうとどういうこと?
02:49つまり、土の上の方を取るか下の方を取るかってことでやんすよ。
02:54そうさねー。今回はクマさんにずいぶん働いてもらったから、
02:59あっしゃ、土の下の方でいいでやんす。
03:01てーと、ほら、土から上?
03:05と、まあそういうわけで、大根はどんどん大きくなってまいります。
03:10やがて、青々とした大根が見事に実った。
03:13うわー、うまそうだなー。
03:17ちっへー、約束だから仕方ねーや。
03:19さあ、クマさん、早いとこ、土から上を取って持ってった持ってった。
03:23後悔なんだか悪いみてえだなー。
03:26てなことで、クマさん、その日は大喜びで、
03:30大根の葉をむしゃむしゃ食べておりましたが、
03:33これが一日経つってと、
03:35なんせ、大根の葉っぱのこと、みーんなしおれて食べられたもんじゃござんせ。
03:41クマさんもしょんぼり。
03:44ところがところが、土の下の方を頂戴したキツネはってと。
03:48輪切り千切りトントントンと。
03:52うわー、な、な、な、なんだい、クマさん来てたのかい?
03:55これ、なんだい、うまそうだな、これ。
03:59もしかすると、土の下のもんじゃないのか?
04:02そんなんじゃないよ。
04:03なんだかたくさんあるじゃないか。
04:06いやいやいや、ま、ま、それはまあ。
04:08オラにも少し分けてくれねえかな。
04:10だだだ、だめだよ。最初にちゃんと約束したでやんしょ。
04:14それよりどうだい、これから蒔く種があるんでやんすがどうしやす?
04:19なら、今度は絶対オラの方が土から下の分をもらうだぞ。
04:23わかったな。
04:25というわけで、クマさんまたしゃかりきになって働いております。
04:30そして、夏。
04:31よーよー、クマさんお久しぶりでやんす。
04:35今日伺ったのは他でもない。
04:37あしらの畑に植えたもの見事に実ってやんすよ。
04:41あたしは先ほど土の上の分だけ先に取り入れを済ましときましたですがね。
04:46クマさん、胸弾ませて畑へ行ってみましたが、これが根っこの先っちょばっかし。
04:53いやー、いやー、クマさんどうぞ。はい。土の下の分はいかがでやんしたか。
04:58ああ、それイチゴでねえだか。赤くてうまそうだな。オラにも少し分けてくんの。
05:04だだだだだ、だめですよ。ねえ、約束は約束。
05:09うーん、よくもオラをだましたな。オラはいつも食えねえ方ばっかりだ。
05:14ああ、おめえの面なんぞ。もう二度と見たくねえ。
05:19と、まあ、こういうわけでさすがのクマさんも今度ばっかちはカンカンに怒って帰ります。
05:27クマさーん、クマさーん。
05:30いやー、どうもどうも。その説は失礼さんでやんしたところで、クマさん。
05:36今日は一つ罪滅ぼしに伺いましてな。
05:39罪滅ぼし。
05:40そうでやんすよ。蜂蜜でやんすよ。
05:43へへへへへへ。それもたっぷりとねえ。
05:47おめえ。
05:50どこなんじゃよ、その蜂蜜の杏仁は。
05:55そうそう、それそれ、その木の陰に。ね、大きな蜂の酢でやんすよ。
06:00うーん、これはうまそうだ。
06:03うやー、これはもうたまらに蜂蜜いただくぞ。
06:08ところがところが、これが蜂蜜の酢ならよかったもの、くまん蜂の酢だったざらたまらに。
06:15うげてて、うげえ、なにそんなにもちくしょう。
06:19おぉー。
06:33それ、そっで、この間に蜜の方だけ頂戴するとしやすか。
06:37とまぁその夜はクマさん夜同士の大騒ぎ
06:44森の動物たちもおちおち眠れたもんじゃござんせんで
06:47とその時
06:49もしもしクマさんよ一体全体どうしたい
06:53先ほどから聞いてるってえとお話が穏やかじゃねえな
06:57とこう声をかけたのが近所のご隠居さん
07:00じゃなかったミミズ君のおじいさん
07:03このおじいさんがこの界隈での知恵者でしてな
07:06いろいろ動物たちの相談を引き受けております
07:09このじいさんがクマさんの話を聞きまして
07:12なになに
07:14ほうほうそいつはいけねえ
07:17そいつは狐のほうがいけねえ
07:19クマさんこいつは一つお祓いをしなくちゃいけませんよ
07:23てんでミミズ君のじいさま何やらクマさんに策を授けます
07:28さあそれとは知らない例の狐
07:32いやーやークマさんいやいやいやこれはこれはクマさんお久しぶり
07:39なにやらいい匂いがしてるんでやんすな
07:42ぎょぎょぎょこれはささ桜でねえでやんすか
07:46桜じゃとこれは馬の肉だぜ
07:49馬の肉のことを桜と言うんでやんす
07:52あっしゃこれに目がなくってねついでに耳もない鼻もない
07:56まあまあこれでいっぱいやりなよ
07:59へーへーこりゃまあどうも
08:00うめえこりゃうめえ
08:04俺はもうこいつにはもう食い飽きたぐれえだよ
08:09うめえな
08:09たまにゃあ大根の葉っぱか
08:12いちごの根っこでサラサラっと
08:15うめえぐれえだよ
08:17へへへへ悪いご冗談ばっかしところでなんでやんすよ
08:22こんなおいしい桜肉どこで仕入れたんでやんすか
08:26昔のヨシミで教えてくれてもいいでやんしょ
08:29ほうめえうめえ
08:32これを取るのはわけねえだよ
08:35ん?ほほんと?でででどこ行けばいいんでやんす
08:39さささすぐ案内しておくんなさい
08:42とまあそういうわけで2匹がたどり着いたのがもう夕暮れでしてな
08:48でこれからどうすればいいんでやんす
08:51あいつら結構でかいでやんすよ
08:54いやいやキツネさんこの仕事はな
08:57わしのように大きい体をしとるもんより
09:00お前のようなちっこい体をしとるもんの方はやはりいいんじゃよ
09:04ほうそうでやんすか
09:06まずうまそうな馬に目をつけるのじゃ
09:09そしてその馬が眠りかけたかな
09:12という時に後ろから近づいて馬の後ろ足にガブッと噛みつく
09:18だだだだだだだいじょうぶでやんすか
09:21そんなことして
09:22だいじょうぶだよ馬っていうのは
09:25後ろ足が急所でそこを噛まれると自然に死んでしまうんだ
09:29だから死んだところでおらがお前の家まで引っ張っていってやるよ
09:35それはまあありがていってんでまあ
09:37賢いようでそこはちきしょうの浅ましさ
09:41もう馬の肉が食いていっしんで
09:44バーッと走っていったかと思うととびっきり大きい
09:48馬の後ろ足にかけてガブッ
09:50思いっきり噛みついたからたまらない
09:52馬はもう目を白黒
09:54ひぃひひひひ
09:56ぱんぱか
09:57ぱーん
09:58とう思いっきりキツネを蹴飛ばしました
10:02キツネの野郎がどっちの方角へ飛んでいったかって
10:06さあ馬に蹴られたんだからどうせ馬の方角だろう
10:11なんてことを森の動物たちは話しておりましてな
10:15まああんまり意地の悪いことばっかりしておると
10:20ついにはこうなるというのが話のうちのようでして
10:23ご視聴ありがとうございました

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