00:08たおやかインターネット放送がお送りする絵本の時間
00:13小川美名作 古いハサミ
00:20どこのお家にも古くから使い慣れた道具はあるものです
00:27そしてその割合にみんなからありがたがられていないものです
00:33Aちゃんのお家の古いハサミもやはりその一つであり
00:38ましょう
00:41Aちゃんの一番上のお姉さんが小さいときに
00:45そのハサミで折り紙を切ったり
00:47またお人形の着物を作るために
00:51赤い切れや紫の切れなどを切るときに使いな
00:56されたのですから
00:58考えてみるとずいぶん古くからあったものです
01:02その自分にはこんな黒い色でなくピカピカ光っていました
01:09そして歯もよくついていて
01:12うっかりすると指先を切ったのであります
01:17よく気をつけてお使いなさい
01:19おててを切りますよ
01:21とお母さんがよくご注意なさったのでした
01:28お姉さんは落ち着いた性質で
01:31お勉強もよくできた方ですから
01:34めったにこのハサミで指先を切るようなことはしませんでした
01:41使ってしまえば箱の中にちゃんとしまっておきました
01:49お姉さんがまだ10日11の頃です
01:54ある日のこと
01:56あれ何?とふいにお母さんに聞きました
02:02何ですか?とお母さんはお分かりになりませんでした
02:08赤木谷谷谷って
02:12ああ、あれですか
02:14はさみ、ほうちょう、かみそりとぎという
02:18とぎ屋さんですよ
02:20とお母さんはお笑いになりました
02:25私の持っているハサミ、といでもらっていい?
02:29とお姉さんが聞きました
02:33この時の赤木谷谷谷谷が
02:37いつまでもおうちの笑い話の種となりました
02:42ほら、赤木谷谷谷谷が来ましたよ
02:46と、とぎ屋さんがまわってくると
02:49お母さんが笑っておっしゃいました
02:54それからいくたびこのハサミは
02:57とぎ屋さんの手にかかったでしょう
03:03お姉さんは女学校を卒業なさると
03:07おはりの稽古にいらっしゃいました
03:11その時には
03:13このハサミはもう役に立たなかったので
03:17新しいもっと大きなハサミを
03:19お求めになりました
03:23そして、今までのハサミは
03:26ふだんうちの人の使いようとされてしまいました
03:31けれど、ちょうどAちゃんの上の兄さんが
03:35いたずらざかりであって
03:37このハサミでボール紙を切ったり
03:40また、竹などを切ったりしたのです
03:45けれど、ハサミは不平を言いませんでした
03:50ある時は、えんだいの上に置き忘れられたり
03:54また、冷たい石の上や
03:57窓先に置かれたままでいたことがありました
04:02そんな時は、さすがに寂しかったのです
04:08早くお家へ入らないと
04:10知らぬ人に連れられていってしまうかな
04:15と、星の光を眺めて
04:18心細く思ったことがありました
04:25また、ハサミが見えませんが
04:26どこへ行ったでしょう
04:28と、あくる朝
04:30お母さんが爪を切ろうとして
04:32ハサミが見つからないので
04:34こうおっしゃいました
04:37きのうまで
04:38箱の中に入っていたんですよ
04:41また、太郎さんが使って
04:43どこかへ置き忘れたのでしょう
04:47姉さんは、ほうぼをお探しになりました
04:51そして、子供たちが遊ぶ
04:53五門の石の上に置いてあったのを
04:56見つけなさいました
05:00まあ、こんなとこに置いてあって
05:02よく人に拾われなかったこと
05:07そう言って、お姉さんは
05:09子供の自分からのハサミを
05:11懐かしそうにご覧なさいました
05:15すると、過ぎ去った日の記憶が
05:18次々と目に浮かんできたのです
05:23長くあるハサミね
05:25大事にしなければならないわ
05:29お姉さんは、なくならないように
05:31赤いひもをハサミにおつけになりました
05:37しかし、ハサミはもう年をとって
05:40大した役には立ちませんでした
05:46切れないハサミだなぁ
05:48と、太郎さんが感触を起こして
05:51畳の上へ投げ出しても
05:53ハサミは、自分の切れないのを
05:56よく知っていましたから
05:58我慢をして、諦めていたのであります
06:03そして、この頃は
06:05下駄の花を立てたり
06:07爪を切ったりするときだけにしか
06:10使われなかったけれど
06:12年取ったハサミは
06:14若い頃、お嬢さんが
06:16人形の着物を作るときに
06:19美しい千代紙や折り紙を切ったり
06:23また、お母さんが
06:25お仕事をなさるときに使われた
06:28いくつかの華やかな思い出を
06:30目に浮かべて
06:32せめてもの慰めとしていたのでした
06:37あるときのことです
06:39いつものとぎやさんがやってくると
06:43赤城谷谷谷谷が来た
06:45ハサミ研いでもらっていいでしょう
06:48と、太郎さんはお母さんに言いました
06:53とぎやさんのことを
06:55いつか赤城谷谷谷としてしまったのでした
07:02お母さんがいいとおっしゃったので
07:04とぎやさんに頼むと
07:07おじいさんは
07:08しみじみとハサミをながめて
07:12もう古くなって
07:14腰が弱くなりましたから
07:17といでも
07:18そう切れませんよ
07:21と言いました
07:23にんげんとおなじように
07:25はさみの
07:26こしがまがって
07:27よわってしまったのでした
07:32ちょうどそのじぶん
07:34いちばんちいさいAちゃんが
07:36がっこうにあがりました
07:39そして
07:39がっこうで
07:41しゅこうに
07:41はさみがいることになりました
07:46Aちゃんがもっていくのに
07:48ちょうどあぶなくなくて
07:50このはさみがいいでしょう
07:52と、お母さんが
07:54赤いひものついている
07:56はさみをおだしになりました
08:01はさみはまた
08:03ふでいれのなかにいれられて
08:06その後、Aちゃんのおともをすることになりました
08:11おうちのひとは
08:12このはさみなら
08:14と、みんなあんしんしていました
08:19なんでも
08:20すべて古くからのものには
08:23こうした
08:23あいとあんしんと
08:26したしみがあるものです
08:31おしまい