00:00昔、あるところに村から村へ 崩禄を売って歩く一人ものの若者がおりました
00:19崩禄、崩禄、崩禄がいられたね
00:30ある日のこと、一休みしようと崩禄売が 湖のそばへやってくると、娘たちが水浴びをしているのに出会いました
00:41ははは、気持ちよさそうじゃの
00:49崩禄売がふと目の前を見ると、松の木の枝に 目も覚めるような美しい着物がかけてありました
00:58これはまた、なんときれいな着物じゃろう
01:04着物からはなんとも言えない 良い香りが漂っていて
01:09崩禄売はこの珍しい着物が どうしても欲しくなりました
01:14そこで、娘たちが気づかないのを幸いに 一人分の着物をすばやく取っていってしまったのでした
01:28そして、その日の夕方、仕事を終えて、 男が先の湖のほとりを通りかかると、 娘が一人裸のまま、しくしくと泣いておりました
01:45娘さん、一体どうしたのかねぇ
01:52水浴びをしているうちに、 着物を盗まれてしまいました
01:57あの着物がなくては、 私は帰ることができないのです
02:08帰れない?
02:11はい?
02:16男は、娘が気の毒になって 着物を返してやろうかと思いましたが
02:21この今まで見たこともない美しい娘を 一目で好きになっておりましたから
02:27帰れねぇんだったら、オラの家に来て 一緒に暮らしてくれ
02:32と、家に連れて帰り、 嫁様になってもらったのでした
02:38男は、嫁様にとても優しくしたので 嫁様も、ほおろこりのことを好きになりました
02:49ほら!ほら!ほら!ほら!ほら!ほら!ほら!
02:53やがて、二人の間に子どももでき、 親子3人、仲良く暮らしていましたが
03:00ある日のこと
03:01ねんねん
03:10カロリア
03:14カロリア
03:21はて何の包みだろう
03:30不思議に思った嫁様が
03:35はしごをかけてその包みをおろし
03:38中を開くと
03:42まっ
03:43あの人は私も着物を盗んで
03:46今まで隠していたんだわ
03:49嫁様は男を恨みました
03:53でもあれからずっと優しくしてくれている
03:57男のことを思うと
03:58その気持ちもやがて薄らいでゆきました
04:02嫁様は着物を素早く着替えると
04:07子供を抱えて外へ飛び出しました
04:10すると
04:12お前何をしとる
04:16そんな着物なんか着てどこへ行こうというのじゃ
04:20私は本当は天女です
04:24羽衣を取られてしまったのでここで暮らしていましたが
04:29羽衣が見つかった今
04:32天の国へ帰らなければなりません
04:35待ってくれ
04:39お前にいてもらいたいから着物を隠したんじゃ
04:43戻ってくれ
04:46戻ってくれ
04:48私に会いたかったら
04:53わらじを千足編んで竹の根元に植えてください
04:58竹が伸びたらその竹を伝わって
05:02登ってきてください
05:04その夜から男は
05:27早速わらじを作り始めました
05:30毎日毎日
05:33男は朝から晩まで
05:36わらじを作り続けて
05:39やっと999足のわらじが出来上がりました
05:43そうしてあと一足で千足というところまで来たのですが
05:48男は嫁様には会いたくて会いたくて
05:52もう我慢できなくなってしまいました
05:55嫁様で言うた通りじゃ
06:07これで天の国へ行けるぞ
06:10ところがあと少しで天の国へ着くという
06:14それっきり竹が伸びなくなってしまいました
06:17おーい
06:28おーい
06:32おーい
06:38おーい
06:40まあ
06:41嫁様には
06:45男がわらじを一足足りないままに登ってきたことは
06:50すぐにわかったのでしたが
06:51男をかわいそうに思って
06:54手を差し伸べてあげたのでした
06:56おー
06:59お父様
07:02お母様
07:04この人がその子の父親です
07:08今
07:09下の国からこの国を訪ねてくれたのです
07:13嫁様のお父さんとお母さんは
07:17自分たちの許しを得ないで
07:20娘を嫁にしてしまった男を
07:22心よく思っていないのでした
07:24そうしてある日のこと
07:28お父さんは
07:29男にザルで水を汲んでくるように
07:32言いつけました
07:33お父さんはいつもわざとできないような仕事
07:37言いつけるのです
07:39男が困っていると
07:41嫁様が
07:42ザルに
07:44油紙を敷いてくれました
07:47はあ
07:50ふん
07:51人間にしてはなかなか知恵があるわい
08:02ふう
08:03よし
08:05褒美に売りをやろう
08:07畑へ行って好きなだけ食べるがよい
08:10ただし
08:11売りは
08:12縦切りにしてな
08:14珍しいこともあったもんだ
08:18あのお方が褒美をくださるなんて
08:22うっと
08:24縦切り縦切り
08:27天の国では
08:40売りを決して縦切りにしてはならないのでした
08:44やち vaak Así
08:45あははははははははは
08:50はあははははははは
08:53おおおおお
08:54大漁
08:55きったおりからふきだした水は
08:58天の川となって男は
09:00どんどん遠と流されてやりました
09:02おー
09:04大漁
09:05おどろいて嫁様は大声で叫めと
09:09なのか、なのかに会いに来てくださーい
09:16なに、ななな、どうしたー
09:20なな、なのか、なのかですよー
09:25なな、なのかですよー
09:30その日から、嫁様は、毎月7日の日には、天の川のほとりへ来て、男の来るのを待っていました
09:45ところが、いくら待っても、男はやってきませんでした
09:53男が、天の川へやってきたのは、7月7日のことでした
10:06嫁様が、なのか、なのかと言ったのを、男が、7月7日と聞き違えたために
10:19こうして、二人は、年に一度、7月7日にしか、会えなくなったということです
10:27そうして、それが、七夕様の始まりだということです