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ライフスタイルトランスクリプション
00:00日本人の顔
00:27土俗的な風景
00:29大胆に切り取られた伝統建築
00:34芸術家としての本能のままに
00:40日本の原風景にレンズを向けた岡本太郎の作品は
00:44戦後の日本を独自の目で映し出しました
00:47芸術家岡本太郎の写真世界に迫ります
00:59新日曜美術館です
01:05今日は岡本太郎の世界を写真という
01:09これまであまり知られてこなかった側面から迫っていこうと思います
01:13花さん岡本太郎というと太陽の塔ということを
01:17練習される方が多いんですけれども
01:18花さんの場合はどういうイメージを生きますか
01:20昔テレビに出た時にすごく面白い方だなと思って見ていたんです
01:25すごく爆発だという印象ですね
01:26すごく印象深いですよね
01:28それで私たまたま2年前に知人から
01:31この今日の芸術という岡本さんが書かれた本を読ませてもらったんですけど
01:38これを読んでいていろいろな意味で勇気づけられたんですよ
01:42例えばどういうこと
01:44岡本さんもそうだったんですけど
01:47絵を描いたりエッセイを描いたり写真を撮られたり
01:50いろんな形をとって自分を表現するということをされてたんですけど
01:55私もこの岡本さんの言葉を読んでいて
01:58もっと自由に自分を表現するという意味で
02:01いろいろな勇気を与えられました
02:03そうですか
02:05さあ今日のゲストです
02:06作家で画家そして中古カメラが大好きで
02:10路上観察学会の会員でもいらっしゃいます
02:12他方面で活躍されている赤瀬川玄平さんです
02:15よろしくお願いします
02:16赤瀬川さんは岡本太郎さんとどんな出会いをされたんですか
02:22えっとね僕も最初はその本なんです
02:25でも最初は僕は美術の方に行こうとしてたんで
02:29存在はもちろん知ってたんですけどね
02:31ちょうど僕が高校を出て
02:33武蔵野美術学校っていうところに入った頃に
02:36この本が出たんですよね
02:37それでなんかみんなが読んでるらしいんで
02:41僕も読んでみたら
02:42もう全く原さんのさっき言われたことと同じで
02:45要するに勇気づけられたっていう
02:49例えば絵は下手でいいんだみたいなことは
02:53それまで誰も言わないんです
02:54今でこそ下手馬とかね
02:56そういう見方があるんだけど
02:59それで下手で
03:00背負うのはヘッポコ絵描きだとか
03:02あれはね
03:03すごくショックでしたね
03:07それでいいのかっていう感じで
03:09すごく何ていうかね
03:11前が広がったって感じしますね
03:13心が自由にされるんですよね
03:15岡本さんの言葉を読んでると
03:17それはほとんど僕らの時代はもう現役で
03:21それを若者はだいたい読んで
03:23みんなほとんどの人が影響を受けてると思いますね
03:26岡本太郎がこういう写真をね
03:29こんなにたくさん撮ったってことはご存じだったんですか
03:31いや僕は全然全然っていうか何かその後は雑誌の連載で日本の縄文とかいろいろやってるらしいということは何となく知ってはいましたけどね
03:41それ特に注目はしてなかったですね
03:44知らなかったですねほとんど
03:45写真を撮ってるこんなに撮ってるっていうことはどうですかこの写真ご覧になっていやショックでしたねショックっていうかちょうどたまたま僕もそのくらいの年代になって自分で撮るのが好きになってきたんです写真を物を作るよりも何か撮るのが好きになってそうするといちいちぴったりきますね太郎さんの写真っていうのはどういうふうに言っていいのか僕もこういうふうに撮るだろうなっていう先はもう行ってるっていう感じで
04:15さあじゃあその辺をですねどういう岡本太郎が世界をねカメラを通して見ていたのかをじっくりご覧いただこうと思います
04:241956年に岡本太郎が撮影した縄文土器
04:33この写真はそれまで考古学的資料に過ぎなかった縄文土器の造形美を最初に発見するものとなりました
04:41強烈な照明に浮かび上がる文様
04:46クローズアップで捉えた奔放な造形
04:50太郎のレンズは縄文土器の魂までも映し取ろうとしています
04:58古学資料の飾ってある場所があったんで
05:02ふっとその部屋入ってみたらその隅の方にねあっと思うようになった
05:07何だろうってガタガタってこう引きつけられてね行って
05:14そうやってみたらね縄文土器って書いてあるんですよ
05:17縄文なんていうの名前も聞いてない
05:20びっくりしちゃってああと思って感動してね
05:26それで僕は家へ帰ってから原稿書いたんです
05:29それについてどんどんどんどん
05:30それを発表したその時にあの写真を写真家有名な写真家にね写真を撮らせたらね
05:37全然しょうがないこの光ライティングをまっすぐ当てるからね
05:41せっかく縄文のこうなっているところがね
05:45平たく映っちゃう
05:47で僕はじゃあ俺が映って自分でねカメラ持ってって
05:50でライティングを横から当てて
05:53でこう動くところがね生々しく出てくるように映したんですよ
05:58太郎のにじり寄るような視線そのままに
06:04大胆なクローズアップで捉えられた縄文土器
06:07そこからは縄文人の息遣いさえ伝わります
06:18この時から太郎にとって写真は
06:21大正に潜む生命力を一瞬のうちに生け捕りにする道具となったのです
06:27太郎の秘書を50年間勤めた岡本敏子さん
06:34敏子さんは博物館や大学の研究室を回っては
06:39縄文土器を撮影する太郎の姿を鮮明に記憶しています
06:44壊さないでください
06:48カヤの顔してねもう本当にね邪魔にされながら
06:52こそこそとね窓庭に持ってて写真撮ったんですよ
06:55それで面白いのよ
06:57これなんてね上切っちゃってるのね
07:00土偶って言ったら誰だって顔をまず見るものでしょ
07:04これ顔もちゃんとあるのよ
07:07このおっぱいこのおなかの生々しさね
07:11こういうふうに岡本太郎はその土偶を見たわけ
07:14この上の顔はいらないのよ
07:16見てる時にね
07:18だからちゃんと切って取ってる
07:19縄文土器の撮影によって写真に開眼した岡本太郎
07:31その独自の写真世界はあくまで前衛芸術家としての感性の表現でした
07:38岡本太郎は1911年漫画家岡本一平
07:51作家岡本かの子の長男として生まれました
07:54芸術家の両親のもと本邦に育てられた太郎は
08:00画家を志し18歳でパリに渡ります
08:04パリ時代の代表作痛ましき腕
08:09傷口をあらわにした腕と色鮮やかなリボン
08:15当時パリでは中小絵画や知るリアリスムなど
08:24新しい芸術運動が沸き起こっていました
08:29太郎はそのただ中にあって
08:31中小とも偶小ともつかない独自の絵画を開花させたのです
08:36同時に太郎はパリ大学で3年間
08:44民族学の研究に没頭します
08:46著名な民族学者マルセル・モースの下
08:51世界の民族文化や儀式・習俗を研究した太郎は
08:56人間の営みの原点を見つめる目を養います
09:00しかし1940年
09:08パリはナチスの侵攻によって陥落
09:11太郎は最後の引き上げ船に乗って帰国します
09:154年間の軍隊生活を経て
09:19戦後太郎は日本美術界に花々しくデビューします
09:241949年に発表された作品
09:29銃工業
09:30原色が激しくぶつかり合う画面は
09:35大きな反響を呼びました
09:36密閉された工場の中
09:42怪物のようにそびえ立つ機械
09:45機械に翻弄され振り回される人間の姿
09:50ここで太郎は伝統文化を失い
09:56機械文明の奴隷と化した戦後の日本人を告発しています
10:00作品森野を着て
10:05中央に描かれた赤い怪獣は
10:08巨大な権力を象徴しています
10:10怪獣にはファスナーが付けられ
10:15巨大な権力の中身は空虚であることを
10:19象徴的に示しています
10:25精力的に政策を続けながら
10:28太郎は戦後の日本で失われていく人間性や
10:32軽薄な商業主義文化に対する意気通りを
10:35募らせていきました
10:37太郎がパリで研究した民族学の目を通じて
10:46日本文化の源流
10:48縄文土器の造形美を見出したのはこの頃でした
10:51それは戦後日本の欧米化する文化の大局にあるものでした
10:57縄文土器の写真を発表した翌年
11:05太郎は美術雑誌に芸術不動器と題した
11:09ルポルタージを連載します
11:1646歳の岡本太郎はここで
11:19日本の文化や風俗にレンズを向けることを思い立ちます
11:24太郎はカメラを手に日本中を旅します
11:30太郎が旅の中で撮影した膨大な写真が
11:37岡本太郎美術館に保管されています
11:40こちらが岡本太郎さんが撮られた写真の密着プリントになります
11:486000枚を超える写真は
11:53太郎と日本との格闘の奇跡です
11:56太郎は連載の意図をこう述べています
12:00私は今度は現在に体当たりしてみたいと思った
12:06最も三分的であり非芸術的であると決められ
12:11詐欺すまれほとんどまともに顧みられていない
12:15現代日本のありのままの姿から
12:18芸術の問題を掘り起こすこと
12:20生き甲斐をもってたくましく人間が息をし
12:25生活する場所にはどこでも第一級の芸術があり得る
12:31芸術のセンターは何もパリやニューヨークじゃなく
12:35世界中あらゆる場所にあるのだ
12:45旅の始まりは秋田でした
12:48太郎は土地の風土性はその最も厳しい季節にこそ現れるという
12:55民族学の経験から冬の秋田を選んだのです
12:59秋田駅に到着するなり太郎はシャッターを切り始めます
13:06太郎の目がとらえた素顔の秋田の人々
13:12太郎のレンズは土地に生きる人々にまっすぐに向けられます
13:17朝早く駅に着いたの
13:23したらかく巻きかぶった女の人たちがね
13:25こうやってね朝早かったんだけどみんな言ってね
13:28それがいい顔してるのね
13:31もう惚れちゃってね
13:33夢中になって撮ってましたよ
13:35それ現日本人の顔なのよ
13:38で遠くから撮ったり寄って撮ったり色々してますよね
13:45あの方ねシャイでね恥ずかしがりだからね
13:49そばに行って撮れないのよね
13:51だから遠くの方からコスコスと撮ってるんだけどね
13:54それがもうね
13:56ちゃんと望遠にしたりね色々して撮ってますよ
14:00秋田駅で女性が太郎に向けた一瞬の眼差しを捉えた作品
14:11望遠レンズが捉えた表情
14:14そこに太郎は玄関の土地に懸命に生きる人間の確かな存在感を見出します
14:21その後も太郎は町で見かけた人々に夢中でシャッターを押します
14:34太郎は秋田の人々が暮らしの中で見せる豊かな表情や
14:58立ち入る舞いの存在感に日本人の原型を見出します
15:02島根の旅では太郎のレンズは出雲大社に向けられました
15:13日本最古の神社の一つと言われる出雲大社
15:21高さ24メートルの本殿は日本で最も大きなものです
15:29ここを初めて訪れた太郎はその古代的造形に感動し夢中でシャッターを押します
15:37目の前に黒黒とそびえる有根な神殿地下をてっぺんにブスリと太太とした柱を地上に突き立てている
15:52たくましい梁を組み上げ早朝でいながら空間的な切れ味である
16:00ぐるぐる周囲を回ってみると
16:07簡素な部分部分と壮大な全体の重さ
16:11その均衡が素晴らしい
16:14この野蛮な凄み迫力
16:19日本の過去の建築物でこれほど私を惹きつけたものはなかった
16:24本殿はもともと現在の2倍の高さを持つ巨大なものだったという言い伝えがありました
16:35当時信じる者が少なかったこの伝説に太郎は興味を惹かれます
16:41学問的根拠はともかく
16:46強大な地上の権力であり
16:48また祭司でもあった古代の王の宮殿が
16:52そのくらいの規模であっても一向構わない
16:55この見上げるような神殿には胸も使えるばかり
17:02まるで登ることを拒否するような
17:05急旬な木座橋が雲をつく高みまで駆け走っていたと想像するのだ
17:11美学的にも力学的にもピタリと来るし
17:16イメージとして豊かだ
17:18だからそういうものは実際に触れないと
17:24ただ本読んだり頭でやったんじゃダメでしょ
17:28ましてあの人はナモミの人ですからね
17:31直感力の人ですからね
17:34パッと見た途端にもそれが見えちゃうのね
17:37おととし出雲大社の本殿近くで工事が行われたときに
17:47大きな発見がありました
17:543本の杉を束ね直径3メートルとした巨大な柱の一部が出土したのです
18:00それは伝説の巨大神殿が実際に存在した可能性を示しています
18:07発見は太郎の直感を裏付けるものでした
18:12従来の建築写真では考えられない大胆な構図
18:20それは太郎が出雲大社の持つ古代的な造形の力を直感することによって
18:28初めて撮ることのできた写真でした
18:30太郎のレンズは古代の巨大な本殿の姿に迫るかのように
18:40大正に肉薄していきます
18:421957年6月
18:51太郎は再び東北の地を訪ねました
18:55岩手では土着の風俗や芸能にレンズを向けます
19:02この旅には同行者がいました
19:04村上義男さんです
19:06当時24歳
19:09森岡出身の新進の画家でした
19:12尊敬する太郎が自分の強度をどのように捉えるのか
19:17その興味から案内役を買って出たのです
19:25村上さんは撮影する太郎の姿にまず驚かされたといいます
19:31こんな感じかな
19:38いずれその道歩いてて見つけたんで
19:43立ち止まって見たような気がするんですね
19:46何だったのかな
19:49これ本当に
19:50私は当然
19:52カカシを取るために降りたと思ったんですけど
19:56現場で物とぶつかって撮りたいと思うんだろうと思うんですよ
20:03ただ私
20:06これもちょっと彼に冷やかしたことがあるんですけど
20:08強く押せば強く撃つわけではないんですね
20:12シャッターは
20:13だけど激しくこう押すときがあるんですよね
20:17それはやっぱり激しい写真が撮れるのかなって
20:21僕は本当に面白かったですね
20:25一生懸命押してるっていうか
20:29岩手の旅の中で太郎の心を最も捉えたのは
20:37伝統芸能の獅子踊りでした
20:39悪霊を払い
20:42母国豊穣を祈る獅子踊りは
20:44古代の土俗的な手術信仰を色濃く残しています
20:49太郎は
20:52鹿の仮面をかぶり激しく舞い踊る踊り手の姿を
20:57自らも踊るようにして撮影しています
21:00水平を傾けたダイナミックな構図は
21:04獅子踊りの躍動を生々しく伝えます
21:07ジャズだって言いましたよ
21:16ジャズの出だしだって言いましたね
21:19もう興奮しちゃって
21:20太郎さんカメラ持って近づいて
21:23太郎さん自身が踊ってるように
21:25向こうからどっちまで
21:26駆けずり回って撮ってたもんですからね
21:28つまり自分自身が踊ってたんですよ
21:31ここで
21:31太郎さんなのか師匠だのか
21:33わからなくなっちゃったんですね
21:34人間
21:39動物
21:40どっちだかわからない
21:42その凄み
21:44人間が動物を食い
21:48動物が人間を食った時代
21:51あの暗い
21:52太古の血の交換
21:54残酷で
21:56燃えるような宇宙的な情熱が迫ってくる
22:00すっかり嬉しくなってしまった
22:03日本の土とともに働く者のエネルギーは
22:07黙々と必要に
22:10民族の命の証を守り続けてきた
22:13形式ではなく
22:16その無意識の抵抗に
22:18私は日本文化の新しい可能性をつかみたい
22:23大地に躍動する獅子踊りを
22:29ダイナミックに捉えた太郎の写真
22:32それは獅子踊りの自術的なエネルギーを
22:42全身で受け止めることによって生まれたものでした
22:44太郎はカメラを手に
22:54体ごと日本の様々な風土にぶつかっていきました
22:57太郎の直感と目は一瞬にして
23:04目の前にある日本の神秘をフィルムに定着したのです
23:0850年代の日本がいろいろな角度から映し出されていましたけど
23:19私がどの写真を見ても思ったのが
23:22やっぱり岡本太郎さんがいたから
23:24あの瞬間が生まれたんだなと思いました
23:27もちろん私はこの時代にまだ生まれていなかったんですけど
23:31赤瀬川さんがこの時代を見た時に
23:35同じような景色を見ましたか
23:37岡本太郎さんの写真に
23:39見てましたけどね
23:42まだ目がそちらに向いてなかったって言いますか
23:46僕らは
23:47それで今の見てて
23:50やっぱり縄文から始まったっていうのは
23:52すごく分かりますね
23:54だからパリに行って
23:56いろいろ前衛芸術の活動をやってて
23:59早めに僕らより先でやっちゃってるんですけど
24:01それで日本に帰ってきて
24:05知らないものがあるっていう
24:08当時縄文
24:09今でこそ縄文美術っていう風に言うけど
24:11全然無視されてたんですよね
24:13変ななんかものがあるということだけど
24:15それを見つけたのはやっぱり太郎さんでしかなかったんじゃないかなと思うんですよね
24:20そこから写真
24:22要するにカメラが始まったっていうのはすごく面白いですね
24:24でカメラが始まったし
24:27目が日本に向いてきたんですよね
24:29そういう意味でやっぱり日本ってなんかつまんないっていう意識が
24:33僕らはやっぱりどうしても西洋に目が行きますからね
24:36それがあったのが一気に破られたっていう気はすごくしますね
24:40その岡本太郎が撮った写真がね
24:43普通の写真とどう違うのかっていう
24:45ここなんですけどね
24:47えっとまあ無心っていうか無意識に撮ってるって感じて
24:53感じたままって言えばそうなんですが
24:55好奇心そのままで撮ってるっていう感じなんですよね
24:58それが素晴らしいと思うんですよね
25:00例えばこのなんかその裏上天主堂を撮った写真ですけどね
25:04これはもう戦後もちろん戦後ですよね
25:07原爆で壊されて
25:10でこれは僕は写真としても好きですね
25:14日本の農家がありますよね農家っていうか畑があって
25:19そこにこの西洋赤レンガのものが
25:23しかも残骸が切り立っているっていう
25:25そのハレーションみたいな感じが
25:28うん輝きがすごいんですよね
25:30コントラストって言いますかね
25:31単に光と影っていう黒と白だけじゃなくて
25:34そういう時代のコントラストだとか
25:36風土のコントラストとか
25:38なんかコラージュっぽいですよね
25:39そうですよね
25:40それは現実にあるっていう
25:41これはやっぱり感動した太郎さんのあれは
25:44そのまま伝わってきますよね
25:45こっちに
25:46私が太郎さんの写真の中でも
25:49これが好きな一枚なんですけど
25:52これいいですね
25:53僕が好きですね
25:53長崎の方の旗竿なんですが
25:57で一瞬あれ鳥が電柱か中で止まってるのかなと思いきや
26:04よく見るとイカが干してあるんですよね
26:07イカとかお魚とか
26:09畑のあるところに染むのがあるっていう
26:13いいのかなと思っちゃうんですよ
26:16多分この民家の方はこれが一番なんだろう
26:19自分にとってこう
26:20下のしやすい状況なんだよね
26:23そうなんですよ当たり前普通の生活の一部なんでしょうけど
26:27きっと岡本さんとか私の目から見ると
26:29ちょっとユーモアがある
26:31そうなんですよね
26:32一目でそれ感じたんでしょうね
26:34生活的な感じとかいろんなものがきっと一目で見て
26:39まさに赤坂さんがおやりになる
26:40路上観察の精神と重ねている
26:42そうですね僕なんか今それをやってるんですけどね
26:46本当にそういうことを最初にやったんでしょうね
26:49写真っていうとある価値観があって
26:52立派なものとか五重の塔とか
26:54なんかそういうことで決まってるんだけど
26:55そうじゃない面白いものをとどめる
26:58道具として太郎さんが使ってるって
27:01これはすごくピーンときますよね
27:02さあ今日はですね芸術不時の旅で
27:06岡本太郎が撮った写真のこのベタ焼き
27:09ネガを焼き付けたファイルですね
27:10これをお借りしてまいりました
27:12こちらがそうなんですが
27:13秘書の岡本敏子さんが整理された
27:16もう分厚い貴重な資料なんですけどね
27:19何千枚もあるんでしょうねきっと
27:22これをねめくって
27:24駒をねじゅんぐりに終えるわけですよね
27:28そうですねこれはね
27:29本当に貴重なんですよね
27:31写真家のトップロの写真家の人は
27:34なかなかこういうものは公表しないんですけどね
27:36全部こう見えてしまうわけですから
27:39興味の持ち方ですよね
27:42それが面白いですよね
27:44それでここにですね
27:46僕も大好きな写真なんですけど
27:49通天閣の上から撮った
27:51小井の森の
27:52こうねが全部はないんですけどね
27:55これ番号こっちからなんですよね
27:57ずっと行ってね
27:59上からのあのカットは2カット撮ってるんですよね
28:01最初下が焦点をずっと撮ってて
28:05あの通天閣が外から下から見てて
28:08まず下から見て
28:09それであの通天閣にこれ小井のぼりをかけてる
28:13やった人も面白いんですけどね
28:15大阪らしいですね
28:17これはちょっとそばに行きたいって言うんでしょうね
28:21上って2カット撮ってて
28:22やっぱり最初のカットがいいんですよね
28:24これちょっとなよっとして
28:25でもう1回転で撮ったのは
28:27一番いい形を撮ってるけど
28:30ちょっと良すぎてね
28:31風いっぱいはらんでるんですけどね
28:35なんかそういうことが分かるんですね
28:36ちゃんと自分の足でいろいろ発見していってるのが分かりますよね
28:41花さんは1つ引かれたものがあるんですよね
28:44私はいろいろ秋田の写真をたくさん撮られていたんですけど
28:48その中でも
28:50これなんかお菓子なんですよね
28:54多分落眼だと思うんですけど
28:56なんかそんな小さいお菓子でしょうね
28:58そう手に乗せたら多分本当すごく小さなものを
29:01これだけこの時代にクローズアップで撮って
29:04しかもその1つ1つの形がとても可愛らしくて
29:09なんかこう甘いピントの合わせ方がまたそれをさらに感じさせて
29:14だから身近にこの物一時形は見ないですね食べる人は
29:19そんなにはね
29:20そういうごく身近にあって見えてないものっていうものにすごく
29:25情報なんてまずそのシンボルなんですけどね
29:27それで身の回りにあるんだっていうことで
29:31夢中になったんじゃないですかね
29:32しかもなんかこれの口に入れたら
29:34多分一瞬で溶けてしまうかしいからね
29:37まさにこう私だったら絶対永久保存したくなるから
29:40同じように写真撮ってたと思いますけど
29:43スピード感を感じますもんね
29:45そうですね
29:45それで当時の今のカメラ事情と違うから
29:48これコースアップで撮るの難しかったと思うんですね
29:51だからその証明つけるわけでもないでしょうし
29:55計測をする機会があるわけでもないでしょうしね
29:58まさに太郎さんの感性がみたいな
30:00もうほとんどそうですね
30:01感で一番いい点に道具を持っていってるんですよね
30:06自分から聞き寄っていってたんでしょうね
30:09そうですね
30:09さあこの芸術不動機の後もですね
30:14岡本太郎カメラを手に日本への旅を続けていきます
30:181959年
30:25岡本太郎は沖縄の旅に出ました
30:28旅の中で太郎は生涯忘れることのできない経験をします
30:33沖縄本島の南部
30:36沖合5キロにある久高島でのことでした
30:40周囲8キロ
30:45200人の人々が暮らす静かな島
30:48ここは琉球神話にも登場する神々の島として知られています
30:54敏子さんは太郎の旅に常に同行し
31:04太郎の言葉をノートに書き取ってきました
31:07しかし沖縄だけは他の旅と様子が違っていました
31:12普通はみんなこういうノートを持って行くんですけどね
31:17沖縄に行くときはね
31:19今度は本当の骨休めでね
31:21遊びだぞって言うからノートを持って行かなかったの
31:24でいろいろ喋り出したでしょ
31:27だからしょうがないから
31:28これみんなあれですよ
31:30ホテルの便箋ですよ
31:32最初はねいろいろ見せて
31:36案内されて見てたんですけどね
31:39出したもんないねえなって言ってたんですよ
31:41でも久高島に行ってね
31:44ノロに会ったときにもうね
31:45もう惚れちゃったのね
31:48ノロの写真いいでしょ
31:50あのおばあさんね
31:51ノロは島で太古から続く祭りの主催です
32:00遺財宝と呼ばれる重要な祭りは
32:03島の女性たちが巫女になる儀式で
32:0612年に一度行われます
32:08ノロは儀式を司る最高位の巫女です
32:14久高ノロ安本牛さん
32:17当時88歳
32:19太古の香りを込めた風貌に感動したという太郎は
32:25気品あふれる肖像写真を残しています
32:29久高ノロ安本牛さんの家
32:41孫の年男さんは92歳で亡くなった祖母の姿を今も覚えています
32:54非常にあの
33:03戒律というのかな
33:05これ非常に厳しかったですね
33:07おばあさん
33:08だけど孫たちに対してはまたもう
33:12とっても甘かったです
33:14嫌がるというのはあまり見せなかったですね
33:18うちのおばあさん
33:20いつもなんていうか
33:24これだけの祭りを司る人ですから
33:28何かやっぱりいつも頭の中はそれでいっぱいだったと思うんですよ
33:34太郎は安本さんの父親に島を案内されました
33:43そして神聖な儀式が行われる場所に出会います
33:48そこは巫女が祭儀を取り行い
34:05神が降臨する宇宅と呼ばれる場所でした
34:09男子金星の宇宅に太郎は特別の許可を得て入ります
34:14そこで太郎は魂を揺さぶられるような衝撃を受けます
34:21森の中のちょっとした何でもない空き地
34:28そこにうっかりすると見過ごしてしまう
34:35粗末な小さい四角の切り石が置いてあるだけ
34:39その何もないということの素晴らしさに私は驚嘆した
34:44清潔で無条件である
34:48だから逆にこちらから前例を持って見えない世界に呼びかける
34:53神聖感はひどく身近に強烈だ
34:57おそらく我々の祖先の信仰
35:00その日常を支えていた感動
35:03絶対感はこれと同質だった
35:06日本人の血の中伝統の中に
35:11この何にもない清らかさに対する共感が生きているのだ
35:16太郎は宇宅という神聖な空間の気配を直感的に感じ取り
35:29その空気を映し込むようにシャッターを切っています
35:33岡本太郎はそれでねピリピリっと来ちゃったの
35:42それでそれまで沖縄って何もないじゃないかと思ってたのがね
35:47あれこそ沖縄の本質なんだってことがね
35:52ビーンと来たのね
35:54それからもあらゆるものが面白くて面白くて
35:58見えてきちゃったの
36:00ものとしての形を取らなくても
36:07神秘はあまねく存在する
36:09そう分かった時
36:11世界は別の輝きを帯びて
36:14太郎のレンズの前に立ち現れます
36:17太郎は後に沖縄に着いて
36:42一つの恋のような体験だったと
36:45十回しています
36:46沖縄の旅の後
36:56太郎はその画風を一変させます
36:591960年代から一気に抽象的な画面になってきます
37:06例えばここにある両覧という作品ですけど
37:10全く何を描いているんだろうって
37:15分からないような作品になってきます
37:16こうした変化を考えますと
37:19その50年代の日本各地
37:22特に沖縄の1959年に行った
37:25九高の歌記
37:27そこでの感動
37:28そういったことがですね
37:30かなり岡本太郎さんの内面を
37:33変えていったんじゃないかと思います
37:34そしてやはりもっと日本人の
37:37心の中の根源的な
37:39神秘感みたいな
37:40神聖感みたいなものを表現するためには
37:42どうしても自分の中の
37:44自分しか分からない
37:46岡本太郎さんしか分からないような
37:48神秘的な何かマジックというか
37:50充実というんですかね
37:52そういったサインを使ってきたんじゃないかと
37:55いわゆる同じ時期には
37:57写真をたくさん撮ってますけど
37:59それと絵画とは全く違う方法で
38:02何かその神聖な日本の原宗教であるとか
38:06原生日本の形を神秘感を表現したい
38:10そういったところでこういった作品が
38:11出てきたんじゃないかと私は考えます
38:14絵画と写真
38:24太郎にとってそれらは
38:27共に目に見えない神秘や
38:29魂の感動を捉えるための手段でした
38:32見るってそんな生っちょろい目だけのものじゃありません
38:47本当に体当たりよ
38:48体ごとぶつかって
38:50触れ上がって
38:53うわーすごい見るって
38:55見るよ見るよすごいじゃないか
38:56いいねーって言ってね
38:58本当にそう言って撮ってました
39:01大正に裸の目と魂で向き合った
39:08岡本太郎
39:12その写真は1950年代
39:16失われつつあった
39:18日本と日本人の原初の像を
39:21一瞬のうちに捉えました
39:22それは一人の芸術家と風土との
39:29カメラを媒介にした幸福な出会いでした
39:36最初の頃の岡本太郎さんの写真では
39:42形とか人とか建築とか
39:44結構目に見えるものを写し出してたんですけど
39:46沖縄に行って突然神秘を写し出そうとしたり
39:52形のない空気を写真に写したりして
39:55また写真のあり方が変わってきましたね
39:59博士川さんは岡本太郎さんが行った
40:04九田ヶ島にはいたこと
40:05行きました
40:06問題前ですけどね
40:08取材ということで行ったんですけどね
40:12いや僕は太郎さんが初めて行って
40:16何もないことに打たれたっていうのは
40:18すごく分かりますね
40:20分かるっていうか
40:21すごいなと思いますね
40:23僕なんかある程度そういうことを
40:25知った上で行くことにどうしてもなりますよね
40:28それで僕もそばまで行ってみたんですけど
40:33本当に片透かしを行くっていう感じが
40:37普通何か大げさなものを期待しますよね
40:41でもそれが何もないけど
40:43みんなが敬ってるんですよね
40:45その場所を
40:46それはちょっと言いようがない感動がありますね
40:50要するにみんなの共同意識の中にあるわけで
40:53ものではないんですよね
40:54それをカメラに収めようっていう
40:57これはすごいんですよね
40:58これはやっぱりカメラを
41:01もうそれまでずっと撮ってきてますよね
41:03だからやっぱりシャッターをしたくなるんでしょうね
41:09ただ難しいんですよね
41:10空間何もないものですから
41:11映像にできる方がないっていう
41:15だから余計そこからまた
41:16細部に目が行くんじゃないですかね
41:20何もないものは撮れないから
41:21それを支える末端の粒子って言いますかね
41:24何かそういうものを見て歩くっていうことが
41:26ますますなっていくんじゃないかなと思うんですよね
41:29今日これまでも随分写真見てまいりましたけれども
41:32こうやって見てるとね
41:33非常にこう太郎さんが初めて出会ったものに
41:36一生懸命レンズ向けているんですけれども
41:39決してアート作品のトロなんて
41:40そんなんじゃないんですね
41:41そんなんじゃないんですよね
41:42ただもうやむにやまれずっていう感じなんですよね
41:45やむにやまれず
41:46だから体ごとぶつかっていく
41:50としこさんが言ってられましたね
41:52ある時僕太郎さんがスキー始めたっていうのを
41:55ニュースで昔ね
41:56えっと思ったんだけど
41:5840代に入ってから
41:58そうなんですよね
41:59僕も1回だけスキーやってみてね
42:01それ直感しましたね
42:03あれは体を投げ出さないと曲がって
42:06滑っていけないんですよね
42:07そういう勇気のいることで
42:09勇気にして立場ごとを持っていかないと
42:11ダメなんですよね
42:11だから太郎さんがスキーをすぐに好きになって
42:15どんどん行ったっていうのはすごく分かりますね
42:17だからこういう写真を撮って
42:18全国歩くのと同じことなんですよね
42:20書いてあることじゃ頼りにならないということで
42:24自分から行って自分の目で見たら
42:27いろいろ見えてくるっていうことに
42:31ずっとそのエネルギーで生きてたんでしょうね
42:33でも嬉しいでしょうね
42:35そのスピードの中で
42:37太郎さんがこうやって1枚の写真を撮られてくれると
42:40その一瞬がずっと残るから
42:42こっちはそれを感じることができるし
42:45太郎さんが見た見方がこっちに伝わってくるんですけどね
42:49それがやっぱり一番すごいですね
42:51私思うのはこれをね
42:52一人で方がどう見ようとやったという
42:56当時誰もいなかったと思いますよ
42:59僕らは路上観察学会とかいろいろな仲間がいますけどね
43:02それはやっぱりすごいことですね
43:04しかももう何十年も前ですか
43:06初めてやったわけですね
43:09そういう誰もいないところに
43:10いるんだけど見てないところに行ってみるっていう
43:13その意味ではまさにオリジナリティであり
43:16アートの原型ですよね
43:18そうなんですよね
43:19そこから何かが生まれるって
43:20その元のところですよね
43:21しかしこの半世紀近く前にですね
43:24岡本太郎はこうした写真を撮った
43:27この写真が今見てもその古さを感じさせない
43:30全然そうですね
43:31この現代性はどういうふうに感じますか
43:33だからやっぱり新しいものを求める目っていうのは
43:36いつの時代も同じなんだなっていうふうに思いますね
43:38それは自分自身でも昔の感覚と今の感覚と
43:42本当に何か欲しいっていう感覚では
43:45同じなんですね子供の時と
43:46だから人間の目ってそういうものなんだなって思います
43:51だから頭ではなくて体が向きたくなるものといいますかね
43:55花さん岡本太郎の写真をね
43:59今日は媒体にして見てきたんですけど
44:01決して古い昔の人じゃないでしょう
44:03全然違いますね
44:05本当に言葉を読んでも写真を見ても絵を見ても
44:09昔っていう感じは全然しませんね
44:12なんかまた自分でも本当に写真を撮りたくなったり
44:16絵を描いてみたくなったり
44:18そういう小さな気持ちがまた今日は生まれてきました
44:20どうもありがとうございました
44:23ありがとうございました
44:24ありがとうございました
44:24ありがとうございました
44:26ありがとうございました
44:27ありがとうございました
44:56ありがとうございました