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  • 2025/5/13
トランスクリプション
00:00大阪千里丘陵の緑の中に
00:07ひときわ異彩を放ってそびえる太陽の塔
00:11太陽の塔はかつてこの地で開かれた
00:21日本万国博の輝かしいモニュメントであるとともに
00:25岡本太郎が残した代表作の一つである
00:28大地を突き破って立ち上がり
00:38大空に向かって腕を広げる高さ70メートルの巨大な姿
00:44目を向いて現代を睨む太陽の顔
00:54未来に向かって開く黄金の顔
00:57そして祭りを見守る黒い太陽の顔
01:05岡本太郎はその独自の哲学と表現をかけて
01:14日本万国博の理念に立ち向かった
01:17昭和45年1970年3月14日
01:44日本万国博は大阪千里の会場で盛大な開会式を迎えた
01:50日本でそしてアジアで初めてのこの万国博には
01:57世界の77カ国をはじめ多数の国際機関や企業団体が参加
02:03183日間にわたる会機が華やかに幕を開けた
02:08この日岡本太郎はテーマ館プロデューサーとして
02:18開会式の進行を見守っていた
02:21岡本太郎はこの日本万国博のことを
02:29あえて第一回万国博と呼んでいる
02:321851年のロンドン万国博以来続いてきた
02:37産業や科学技術を誇示する万国博ではなく
02:41全人類が大統に集う神聖な祭りであるべきだと考えたのだ
02:46シンボルゾーンのお祭り広場で盛大に繰り広げられた開会式は
02:56岡本太郎が願っていた
02:58全人類が集う祭りの始まりでもあった
03:01そしてお祭り広場を覆う大屋根を貫いて
03:06高く力強くそびえる太陽の塔は
03:09岡本太郎の願いを鮮明に形に表したシンボルだった
03:16日本万国博の開催が正式に決定したのは
03:23開会式から4年6ヶ月前の昭和40年9月のこと
03:28会場となる千里丘陵にはまだ一面に竹林が広がっていた
03:35開催決定を受けて設立された日本万国博覧会協会は
03:48統一テーマを人類の進歩と調和とし
03:52この万国博を成功させるための様々な準備に着手した
03:57昭和42年3月
04:07千里丘陵では古式にのっとったおごそかな気候式
04:11本格的な会場作りが始まった
04:18500キロメートル離れた東京の首相官邸から
04:29工事開始のスイッチ
04:31日本万国博は全国民の夢と期待を担った
04:40まさに国を挙げての祭りだった
04:43岡本太郎にテーマ館プロデューサーへの就任を要請する
04:51働きかけが始まったのもこの頃のことである
04:54会場には日本万国博のテーマを力強く訴える
04:59テーマ館を建設することが決定していた
05:02その展示構想を立案し演出指導するプロデューサーには
05:07誰がふさわしいか
05:13適任者として国際的に知名度が高く
05:17斬新な発想力と力強い表現力を兼ね備えた
05:21岡本太郎に白羽の矢が立った
05:23この時岡本太郎は56歳だった
05:27組織や権威を嫌う岡本太郎は
05:32その要請を拒み続けたが
05:34心の奥には万国博はどうあるべきか
05:38好想が芽生えていた
05:40開会まであと1000日となった
05:58昭和42年6月
06:00この頃大阪で開かれた万国博教室での講演で
06:06岡本太郎はこう語っている
06:08万国博は祭りだ
06:12祭りとは無償で無目的な行為である
06:16万国博ではおよそ進歩したものを否定してかからなければダメだ
06:21本当の調和は徹底的に対立し
06:24戦うことによってもっと高いところに生まれる
06:28それから間もなく岡本太郎はテーマ館プロデューサーへの就任を表明した
06:38私は組織が大嫌い
06:41いつも孤独の中で仕事をしてきた
06:43しかしよく考えてみると
06:46誰かが傷つかないと大事業はできない
06:48こういう場合私は逃げない
06:51進んで傷つくのが私の哲学だ
06:53会見の翌日
06:59岡本太郎は前もって計画していた中南米旅行に出発
07:03折からカナダで開かれていたモントリオール万国博を急遽視察し
07:08その感想をこう語った
07:10博覧会は教室ではない
07:13大きくて無邪気な驚きをぶっつけて
07:16もっと理屈抜きに膨らみたい
07:183年後の大阪
07:20世界中の現職がギラギラ輝いて
07:23無条件に開き
07:25引き裂かれていく姿を
07:27みんなで猛烈に楽しもうじゃないか
07:29モントリオール万国博に
07:35物足りぬ思いを抱いて帰国した岡本太郎は
07:39直ちにスタッフを集め
07:40テーマ館の基本構想の立案に着手した
07:44造成工事が進む千里丘陵にも足を運んだ
07:57現地に立った岡本太郎は
08:07その瞬間に高さ70メートルの塔のスケールを実感したという
08:12アトリエでの製作が精力的に始まった
08:28岡本太郎の頭の中にすでに出来上がっていた
08:46太陽の塔のイメージは
08:48一気に形を表し
08:50わずか半月後には
08:5150分の1スケールの原型が完成した
08:54しかし実際の太陽の塔は
09:06高層ビルにも匹敵する巨大な建造物である
09:10この塔をどのような構造と方法で建設すべきか
09:14技術的な検討が並行して進んだ
09:17テーマ館の展示プランは
09:30小松佐郷、川添昇、千葉和彦、平野茂尾の4種をサブプロデューサーに
09:36当時機影の美術家音楽家が参加して
09:40岡本太郎のコンセプトを具体化していった
09:43機関施設プロデューサーとして
09:53シンボルゾーンの設計を担当していた
09:55丹下建造師との細部にわたる
09:58入念な打ち合わせ
09:59こうしてテーマ館の器と中身がともに固まった
10:16この年の12月、日本万国博協会で行われた
10:19テーマ館基本計画の中間報告会
10:22この時初めて太陽の塔の模型を見た
10:27石坂太蔵会長はじっと見入った後、こう語ったという
10:31これさえあれば、もう万博は成功です
10:35あとは何もなくてもよい
10:46開会まであと1年
10:48戦利の会場には参加各国や企業団体のパビリオンが
10:54姿を現し始めた
10:55夏にはシンボルゾーンの大屋根のリフトアップ開始
11:02金属製のパイプをつないだ
11:11巨大なトラスト構造の大屋根が
11:13ジャッキで少しずつ押し上げられていく
11:161ヶ月後、大屋根は地上30メートルの高さに据えられた
11:25そして、並行して進んでいた太陽の塔の骨組みも
11:31大屋根の中央を貫いて立ち上がった
11:35開会まであと4ヶ月となった
11:42昭和44年11月13日
11:45太陽の塔の最上部に
11:47黄金の顔を取り付ける日を迎えた
11:51顔の直径は11.6メートル
11:58厚さ3メートル、重さ12トン
12:03岡本太郎が見守る中で
12:05黄金に輝く巨大な顔は
12:07ゆっくりと上昇を始め
12:09高さ68メートルの塔の頂に
12:13しっかりと固定された
12:30昭和45年春
12:32色とりどりのパビリオンが咲きそろった万博会場
12:41空高くそびえる太陽の塔は
12:44立ち上がったその日から
12:46日本万国博のシンボルとして
12:48人々の人気を集めた
12:52183日間の開期中に
12:54日本万国博を訪れた人は
12:566422万人
12:59その誰もが太陽の塔を見上げて
13:02万国博に来た喜びを感じたことだろう
13:10人々が最初に足を運ぶ
13:12調和の広場には
13:13人間の尊厳とたくましい生命力を表す
13:16太陽の塔
13:18優しさと豊かさを表す母の塔
13:22若々しい躍動と生きる喜びを表す
13:26青春の塔
13:30岡本太郎はテーマ感のすべてに
13:33無限に無邪気に膨らんでいく
13:35人間の生命力への
13:37強い願いを込めた
13:42テーマ感の地下に広がる
13:44過去、根源の世界
13:48迷路のような空間には
13:55自然と対決し
13:57神や聖霊に祈りを捧げて生き抜いてきた
14:00人間の営みと
14:02命の神秘が満ちていた
14:04そしてここにも
14:17もう一つの太陽があった
14:20混沌の世界を象徴する
14:22地底の太陽である
14:29太陽の塔の内部を
14:30地底から天空に向かって貫く
14:33生命の木
14:40太古の昔にアミーバから始まり
14:42やがて人類に到達するまでの
14:45長い道のり
14:48その悠久の時間が
14:50たくましい生命力をみなぎらせて伸びる
14:53樹木となって表現された
15:03大屋根のトラスに作られた
15:10未来、進歩の世界
15:12地底から生命の流れに沿って上昇してきた人々が
15:17ここで出会ったのは
15:18未来の生活への夢と提案だった
15:22そして、再び地上に降りてきた人々を
15:29現在、調和の世界が迎えた
15:36写真展示、世界を支える無名の人々
15:40世界の様々な場所で
15:42人種や国籍や肌の色の違いを超えて
15:46黙々と生きている名もない人々
15:49そうした人々の日常のさりげない姿を
15:58世界の隅々から集めて
16:00今、この時を共に生きる
16:02全ての人々への熱い思いを語りかけた
16:10それは、岡本太郎が
16:12日本万国博に賭けた思いでもあった
16:16人間は全てその姿のままで
16:18宇宙に満ち、無邪気に輝いているものなのだ
16:23太陽の塔が両手を広げて
16:25無邪気に突っ立っている姿は
16:27その象徴のつもりである
16:30すっぱだかの心で
16:32太陽と宇宙と合体する
16:35日頃のコセコセした自分を抜け出して
16:39祭りの喜び、生きる喜びがそこに生まれる
16:48今もなお、千里丘陵にそびえる太陽の塔
17:00岡本太郎が独自の哲学と
17:03爆発的な創作力を傾けて作り上げた太陽の塔は
17:07日本万国博を超え、時代を超えて
17:11私たちに熱いメッセージを発信し続けている
17:16ご視聴ありがとうございました
17:28ご視聴ありがとうございました

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