- 14 時間前
カテゴリ
📚
教育トランスクリプション
00:03小説の嘘は 人が隠した本音に
00:08まっすぐ手を伸ばすことがある
00:12これからも この命続く限り
00:18全力の嘘で 人を欺き
00:24その嘘で 真実の輪郭を描く
00:33そして 嘘つきのまま 死んでいきたい
00:40ありがとうございました
01:09あの 芹沢先生 東文社の江藤です
01:15ああ 君か
01:17ご挨拶が遅くなり 失礼致しました
01:20さっきの話 君はもう 聞き飽きたでしょ
01:24いや そんな お伺いするたびに 発見があります
01:29手紙 読んだよ
01:31えっ ありがとうございます
01:35まだ 誰も開いたことがない 私の新しい世界か
01:42失礼を申し上げて すいません
01:45弊社としては 先生の原稿をいただけるのであれば
01:48人生の決定的な1ページは 書いているときには気づけ
01:55ない
01:56僕自身 何度も思い知らされたよ
02:02江藤さん
02:04はい
02:05あなたにとって 決定的な1ページはいつだと思いますか
02:11決定的な1ページ…
02:14それが今だと信じられるなら 僕は喜んで書きますよ
02:24ありがとうございます お願いします
02:33しかし 私のもとに 新作の原稿が届くことはなかった
02:44あの式典の直後
02:46長い長い階段からの転落事故により
02:50小説家 セリザーカンは死んだ
03:00それから1年後
03:02見せたいものがあると 奥様から連絡をもらった私は
03:07久しぶりに セリザー先生の家を訪ねた
03:34すいません
03:36すいません
04:00ああやってたまに穴を掘って埋めるの
04:04一度にたくさん埋めるから次掘った時に出てきちゃうん
04:08じゃないかと思うんだけど
04:09すっかりなくなってるのよ
04:13あれならきっと何を埋めてもきれいさっぱり土に変えるでしょう
04:18ね
04:22草とかですかね
04:26あとは生ゴミとか
04:30ネズミが掘り返したりしないように深く深くね
04:55失礼します
04:58セリザー先生の日記ですか
05:01そうみたいね
05:06失礼します
05:12これって誰にも見せてないけどあなたしつこいから
05:17すいません
05:19でも興味ある死んだ人間の日記なんて
05:23はい
05:24もちろん奥様がよろしければですが
05:29ありがとうございます
05:58ありがとうございます
06:00どうか外出たらっけ
06:01はい
06:01セリザー先生のところに
06:04え?セリザー館?
06:06今までも通ってはいたんですけど
06:09あんまり時間かけんなよ
06:11今回は向こう奥様からご連絡あったのに
06:15そうか
06:17しかしあの時はえらい詐欺だったよな
06:20結局うちも原稿最後まで取れなかったし
06:24ああそうだ
06:25明日朝一で時間もらえるかな
06:28はい
06:29了解です
06:35太陽
06:37再生
06:39金星
06:40地球
06:41火星
06:45あっという間
06:50本日は発売前に中版が決まった話題の本
06:54子で戦う時代の仕事論の
06:57パパ!
06:58パパだよ
06:59お越しいただいています
07:00よろしくお願いします
07:01お願いします
07:02もうすっかりこの番組の上映になっていただいて
07:06パパだね
07:07こちらこそありがとうございます
07:08ありがとうございます
07:09パパの本お手出るの?
07:12うーんみたいだね
07:14パパがお手伝いした本ね
07:16元気?
07:17元気?
07:18元気だよこの間もあったじゃん
07:20ほらもう年寝
07:21といて
07:23なるほど
07:24本を作るにもAIが関わっているっていうことなんですね
07:28そうなんです
07:29これね面白いんですけど
07:31今クリエイティブ領域にも
07:33ぐんぐんとAIが進出してきてるんです
07:35うーん
07:37AIによって誰もが質の高いコンテンツを作れてしまうなら
07:41ば
07:42今後ますますね
07:43作家の名前
07:45はい
07:46そしてその人だけが持つ物語
07:47はい
07:48これがねとても重要になってくると思うんですよ
07:50あーなるほど
07:51はい
07:52でこの本はですね
07:53特にその辺を掘り下げてまして
07:55はい
07:55こでた
08:01管理部?
08:02うん
08:03移動するとしたらってことなんだけど
08:07それは決まりですか?
08:08いや
08:09お伺いっていうか
08:12えとうさんは頑張ってやってくれてると思うよ
08:16お子さんも一人で育ててるのに
08:20それはいろいろ迷惑をおかけしてると思ってます
08:23いやいやそうじゃなくて
08:25だからこそ今はそういう働き方のほうが合ってるんじゃないかなって
08:30いやそれって
08:31管理部だって出版社に必要な仕事だよ
08:34いやそれは分かってます
08:36でも私は編集の仕事を続けたくて
08:40俺だってそうだよ
08:42田辺京平くらいまでなれば話が違ってくるかもしれない
08:49あーごめん
08:50元旦那の名前出しちゃって
08:58俺たち編集者ってさ
08:59どうしたってお互いの担当者本で相手見るとこあるじゃない
09:05名刺代わりっていうか
09:08江藤さん
09:10君にとって決定的な1ページはいつだと思いますか
09:19いやまぁ時期とか公認についてはまた
09:23もう少し待ってもらえませんか
09:28先生の家から原稿が見つかったんです
09:31え?
09:33芹沢観念
09:35本当に?
09:36日記なんですけど
09:38日記?
09:41なんだ小説じゃないのか
09:43読んだことのない芹沢観です
09:45小説と違って文章に温度を感じるというか
09:48とにかく新しい魅力があります
09:51でも出せるもんなのそれ
09:52奥様の協力も得られました
09:565000万部売った男の本音ね
10:01根気中に出せそう
10:03これから確認します
10:05でももう原稿はありますから
10:08よし
10:09わかった
10:102週間待つ
10:11確認できたらすぐ見せて
10:14移動の話はその後
10:30芹沢観の小説って生活を感じないんですよね
10:37そう?食べ物とか家の中とかかなり丁寧に描かれてると思うけど
10:43それだってミステリーに必要なものしか描かれてないし
10:48そういう読み方もあるかもね
10:53それがなんか安心するんだよな
10:59どれだけ売れても人って孤独なんだなって
11:04好きだったんだね芹沢先生の小説
11:07小説読むなら一応通りますよ
11:10素直じゃないな
11:12私は昔からファンだったけどね
11:15死んだ後も家に通ってるくらいですしね
11:21荒木君
11:24私が今何考えてるか分かる?
11:29仕事をしろ
11:30正解
11:452月17日
11:47行きつけの喫茶
11:49夕凪にて
11:50夜のパーティーで話すことについて考えながら
11:54いつものナポリタンを食べる
11:56薄切りのハム
11:58ピーマン
11:59玉ねぎ
12:01スナップエンド
12:03名前にナポリと関しているが
12:06しかしこれは立派な日本料理である
12:11いらっしゃいませ
12:13どうぞ
12:20何します
12:22すいません
12:23ナポリタンって
12:24夏しかやってないんですよ
12:26冷やし中華みたいでしょ
12:28去年もそうでしたか
12:30うちのナポリタンは
12:32うちのナポリタンはピーマン
12:33玉ねぎ
12:33ズッキーニ
12:34全部夏が旬の野菜だから
12:37夏しかやらないんです
12:39スナップエンドは
12:42入れてないけど
12:45そうですか
12:53すいません
12:55お邪魔した上に食事まで
12:57一人分も二人分も一緒だから
13:01あの人にそう言われると
13:02カチンときたけどね
13:06何かをお手伝いできることはありますか
13:09いいわ
13:11でも座ってるのが落ち着かなくて
13:16じゃあこれお願い
13:18あ、失礼します
13:22こういう時先生って
13:25めったに部屋から出てこない
13:28出てきたら出てきたで
13:30何を手伝えばいいか
13:32具体的に教えてくれればやるって
13:35どこも同じですね
13:39息子に作ると
13:40そこらじを真っ赤にしちゃうんですよね
13:43おじさんも同じ
13:45シャツに飛んでるのも気づかない
13:49先生もお好きだったんですね
13:51ナポリタン
13:53小説にかけても作れないくせにね
13:59奥様のナポリタンが好きだったんじゃない
14:03違いなんて分かってなかったと思うけど
14:11日記にも
14:13行きつけの喫茶店でナポリタンを食べたって書いて
14:16ました
14:17そうなの?
14:19私は一緒に行ったことがないから
14:23ちょっとこだわりが強そうな店長で
14:26もう行ったの?
14:30でもそこの喫茶店ちょっと変わってて
14:35夏しかやってないんですよ
14:37ナポリタン
14:41変ですよね
14:43日記には2月にナポリタンを食べたって書いてあったの
14:47に
14:47あの人の思い違いじゃないの?
14:49いや行きつけですし間違えることはないと思います
14:55本当のことばかり書いてるわけじゃないでしょ
14:57小説家なんて嘘つきなんだから
15:01大きな嘘はついても小さな嘘はつくな
15:06先生インタビューで言ってました
15:09小さな嘘だけはついちゃダメな嘘だって
15:15食べてからにしない
15:17先生の小説を読んでると
15:19一文字単位でこだわりを感じます
15:21漢字、ひらがな、カタカナ
15:23もちろん日記と小説は違う
15:27でも
15:27言いたいことがあるなら、はっきり言ったら
15:34これ
15:37本当に先生が書いた日記なんですか?
15:41それを私に聞いてどうするの?
15:43編集者として知る義務があります
15:48あなたたちは
15:50芹沢勘の名前で本が出せれば何でもいいんでしょ?
15:55死んだ後まで押しかけて何か残ってないかって
16:01それは
16:03別に興味ないんでしょ?
16:05本当のことなんて
16:10じゃあ何で私に見せてくれたんですか?
16:16私奥様のことが気になってきました
16:20何?
16:22奥様には先生がどう見えてたんですか?
16:26先生の小説のことどう思ってたんですか?
16:35おかしな人
16:42私ね
16:46元は夫の小説のファンだったの
16:56あの人の小説の中に
16:59私との生活を感じると
17:01最初は素直に嬉しかった
17:06もう読んでるのか?
17:09なかなかよくできてるよ
17:13それは良かった
17:16マリコ
17:18花に詳しいよな
17:20あなたが知らなすぎるだけでしょ
17:25ちょっと教えてくれないか?
17:28昔は小説の話をたくさんした
17:32テーマを決めて
17:33お互いの物語を発表しあったりもした
17:39ある時
17:42私が話したことが小説の一節になった
17:48一度や二度じゃなくなった
18:10だからだんだん怖くなったの
18:14あの人の小説に
18:16私が飲み込まれていくみたいで
18:29それは夫が死ぬまで変わらなかった
18:34私には本当の夫がずっと分からなかった
18:47あの人と一緒に燃やすつもりだった
18:51でも金具が付いているから
18:52棺には入れられないって
19:02ひょっとしたら
19:03私の知らない夫がここにいるんじゃないかって
19:08書き写し始めたの
19:18それで先生の手帳を?
19:22庭に埋めた
19:28本当よ
19:30信じてもらえないと思うけど
19:36そうですか
19:40仕返しの気持ちもあった
19:45そのうち
19:46夫の気持ちを想像したり
19:49私の覚えていることとつながったり
19:52気が付くと
19:54自分で文章を書き足してた
20:05がっかりしたでしょ
20:07セリザー勘の書いた文章じゃなくて
20:13驚きました
20:15ごめんなさいね
20:17面白かったから
20:21小説とは違うけど
20:23文章に生活の温度があって
20:26新しい先生の一面が見えた気がしたんです
20:33マリコさん
20:34何?
20:36私と一緒にセリザー勘を書きませんか?
20:41この日記は面白いです
20:43先生が書かなかった
20:45いや、書くのを避けてきたものが
20:47書かれている気がする
20:48だから続きを書いて本にするんです
20:52本気で言ってるの?
20:54妻として近くで見てきたマリコさん
20:56先生の本を担当するはずだった私
20:59二人で書けば
21:00完璧なセリザー勘の日記が作れるんじゃないですか
21:03あなた誤解してる私は夫のことなん
21:05小説に書かれた仕返しなんですよね
21:07だったらマリコさんが思うセリザー先生を書き切って
21:11みませんか
21:12そんなの作り話じゃない
21:16作り話だからこそ
21:18真実が書けるんじゃないですか
21:30日記
21:31まず街の明かりで頭だけ載せたらどうかな
21:34うちのウェブマガジンですか
21:36うん
21:37セリザー勘とはいえ今回日記だろ
21:40読者の反応わかんないと何とも言えないからな
21:44分かりました
21:46掲載する文章は私が選びます
21:48うん
21:51で、その日記いつまで書かれてるか分かった?
21:55読者が一番読みたいのは死の直前だと思うんだよな
21:59健康自体は亡くなる直前まであります
22:02本当?じゃあ早く読ませてよ
22:05はい
22:06ええ
22:35ご視聴ありがとうございました
22:59チャンネル登録よろしくお願いします
23:06人は誰かに話したくなるものですね
23:26今日からあなたは小説家のセリザワカンです
23:31彼になりきって私と話をしてください
23:39ミステリー小説家のセリザワカン
23:42それはつまりブラックユーモアと謎を交えながら
23:45ウィットに富んでちょっとひねくれた会話をしてほしいってことですか
23:49いいでしょう
23:51やりますよ
23:57こんにちは
23:58こんにちは
24:00こんにちは
24:02こんにちは
24:05私はあなたセリザワカンの妻です
24:10これからはそのつもりで話してください
24:14いきなり夫婦関係を捏造するとは
24:17なかなか大胆なトリックじゃないか
24:20そんな規定烈な設定嫌いじゃない
24:32ありがとうございます
24:35原稿を読ませていただきました
24:37面白かったです
24:38食べてからにしてくれない
24:401個いいですか
24:422025年2月24日
24:45ジャガイモ人参玉ねぎ牛肉を鍋に入れて煮ている
24:48カレーだと思うかもしれないが実際は肉じゃがである
24:53これは本の処方だがミステリー小説は書かれていない
24:56ことまで
24:56全てを巻き込んで読者は欺く
25:00作りもしないくせにそういうへりくつは書きそうだから
25:05まあ確かに先生言いそうですよね
25:12でもマリコさんには
25:14マリコさんにしか書けない先生を自由に書いてほしいんです
25:20先生らしい文体には私が直しますから
25:24頼もしいわね
25:29すいません
25:43日記なんですよね
25:45ん?
25:47瀬里沢勘の原稿
25:49林さんから聞いたの?
25:51最近それにかかりっきりですね
25:55まあ根気中に間に合わせたいからね
26:00本人がいないのに何を確認するんですか
26:04それはまあいろいろ
26:08日記だし出せるところと出せないところがあるからさ
26:13カフカは自分が死んだら書いたもの全部燃やせって言った
26:18らしいですね
26:25燃やされてたら今頃カフカは読めてないけどね
26:31まあ
26:41また瀬里沢勘のところですか
26:44そうだけど
26:47なんかまだ生きてるみたいですね
26:54怖いこと言わないでよ
26:58冗談ですよ
27:07まずあなたはそんな風にベラベラ喋りません
27:12面白い
27:13どう答えるか教えてくれ
27:17あなたはお願いをするとしょうがないなです
27:23ずいぶんそっけない返事だ
27:25違うでしょ
27:26お願いをしたら
27:28しょうがないな
27:30だな
27:31すまない
27:33素直すぎるのよね
27:39で
27:41去年の2月25日はどこで何をしてた
27:45しょうがないな
27:47普段通りなら午前中は執筆をして
27:51午後は気晴らしに散歩に出かけているだろうな
27:55本当に
27:58嘘をつく理由がどこにあるんだ
28:02本当のことなんて滅多に言わなかったから
28:06それは心外だな
28:08心外
28:10あなた
28:11そもそも心なんてあるの
28:14そんな曖昧なもの
28:15あってもなくても関係ない
28:26編集者ってこんなことまで手伝ってくれるのね
28:30いつも椅子に座りっぱなしなんでちょうどいいです
28:34忙しいのに悪いわね
28:37いいえ
28:46ああ
28:47あの
28:51原稿には
28:53亡くなる直前の1週間の日記がまだありませんよね
29:01その時の先生
29:03何書こうとしてたんですかね
29:06それは私には分からない
29:12あなたに書くって言ってた小説は
29:15何か話をしなかったの
29:17いや
29:22ああでも
29:23ありきたりでいかにもの舞台とか設定を逆手に取る
29:28みたいな話はしてたんですよね
29:34去年の3月
29:36あなた何を書こうとしてたの
29:39分からないな
29:41おそらく新作の準備だろう
29:47新婚旅行で泊まったホテルがあるの
29:49どこか分かる?
29:51あなたは知らないと思うけど
29:56新婚旅行
30:01崖の近くにあるホテルだったか?
30:04覚えてたんだ
30:07忘れるはずない
30:09ずいぶん風の強い場所だったよな
30:13そう
30:14ミステリーなら事件が起きそうな場所だねって言った
30:17ら
30:18あなた何て言ったと思う?
30:21さあ
30:22きっと強ざめするようなことを言ったんだろう
30:26こんな崖
30:26三流しか使わない
30:28出来すぎてるって
30:31よく覚えてるな
30:33君には敵わない
30:35事件は起きそうにない場所で起きるから面白いって
30:41そんなことも言った気がする
30:44また行きたいか?
30:49一緒に行きたい
30:52しょうがないな
30:54もう行けないでしょあなたは
30:58そうだな
31:00君を一人にしてしまった
31:03すまない
31:05やめてよあなたが謝るなんて
31:15異動の話
31:16とりあえず一旦取り消しな
31:18人事には話しておいたから
31:21ありがとうございます
31:22あれ?
31:23もうちょっと喜ぶと思ったらに
31:24いやいや
31:25ほっとしてます
31:27反応いいってな
31:28セリザワ先生の日記
31:30閲覧数も伸びてるし
31:31ネットでも評判いい
31:33荒木君から聞きました
31:34いろいろ情報集めてくれてて
31:37その荒木の後任なんだけど
31:39えっ?
31:41えっ?
31:42本人から聞いてないの?
31:44はい
31:45急に辞めるって言い出したんだよ
31:47えっ?
31:49なんでですか?
31:51この仕事は僕には向いてませんって
31:53若いよな
31:54まあ
31:55アルバイトとはいえ
31:57前もって言って欲しかったよな
32:07ん?
32:11しずる
32:12もう遅いよ
32:14何ですよ
32:15宇宙のやつ見る?
32:17ええ
32:18もう100回見たでしょ
32:201億回見る?
32:22しずる
32:26はい
32:27もう
32:28じゃあ1回だけだよ
32:30はい
32:34水星
32:36太陽に一番近い
32:38一番小さな惑星
32:41いつも明るい太陽のそばにいて
32:44地球からはとても見づらいんだ
32:48でも日食の時は別
32:50いつもは見えにくい水星が見えることがあるよ
32:54空の端っこをよーく見てみよう
33:02先日先行公開された日記ですが
33:05反応も大きく
33:06資料にあります通り大変好評でして
33:11グラタンってやっぱり食べた後が本番よね
33:17先生の生活が垣間見えて
33:19セリザー小説をまた読み返してみようと思った
33:24死んだ作家の日記を本人の許可なく公開してもよい
33:28ものだろうか
33:31死後の日記の発表さえもセリザーは勘が仕組
33:34んだことではないか
33:36いろいろ言われてるけど
33:40まあやっぱりそういう意見も出てきますよね
33:43すっかり話題になって
33:46あなたの望みどおりじゃないの?
33:50いやそれを言われると
33:54私
33:57夫が死ぬ前より夫と一緒にいる気がする
34:03毎日あの人に話しかけてる気分
34:06この日はどんな日だったの?
34:08どんなこと考えてたの?って
34:13生きてる時もこんな風に話せたのかな
34:45うん
34:46ねぇもうちょっとだからね
34:48ねぇもうちょっとだからね
35:22シズルは本当にお絵かきが好きだねぇ
35:25シズルは本当にお絵かきが好きだねぇ
35:26ママ
35:29お仕事だから
35:32僕、お絵かき
35:53あなた、階段から落ちて死んだのよね?
35:57ああ、君にはすまないことをしたと思ってる
36:01そういうのはいいの
36:03なんで死んだの?
36:0660代の男が階段下で死亡している場合
36:10その死因としてまず事故、自殺、多殺
36:14いずれのケースも考えられる
36:17具体的には
36:191、事故、多殺や自殺を疑わせる
36:232、自殺、事故と区別しにくい
36:283、多殺、偽装工作や計画的犯行など
36:354、その他の特殊ケース
36:37一言みたい
36:41事故や自殺に見せかけた多殺かもしれない
36:46どれを選ぶかで物語の方向性が変わる
36:50当初から電話の数が違います
36:57こられたね
36:58えぇ、おもしろそう
36:59ちょっと、千鶴
37:05はい
37:09おい、色々やばいことになってる
37:12え?
37:13まちのあかりだよ
37:15日記が載ってるページに新規投稿があった
37:17先生の日記が偽物だって告発されてる
37:22え、どういうことですか
37:24俺が聞きたいよ
37:26編集部の人間誰も知らない
37:28朝一で担当が気づいてすぐ削除したけど
37:31スクショがどんどん広まってる
37:33今送ったから
37:34ご丁寧に先生の小説まで引用して
37:37とにかく早く出社しろ
37:41わかりました、すぐに出社します
37:47小説こそが
37:49創作こそが真実を伝える
37:52ひるがえって
37:54小説以外のセリザー間の文章は
37:57全くの偽物である
38:02男は眠っていた
38:04長いこと眠っていた
38:07やがてその長い眠りから目を覚ますと
38:11男の姿形
38:13子は色
38:15そのすべてが変わり果てている
38:19枕元に季節外れの揺りが咲いていた
38:24男は自分を丸ごと書き換えられたような
38:28絶望と怒りに我を忘れた
38:34編集部以外はログインできないはずですよね
38:36パスワードがあるからな
38:39午前0時ぴったりに投稿されてる
38:42今日セリザー先生の命日だろ
38:44趣味悪い
38:47ただのいたずらですよね
38:49だとしてもうちのサイトに乗っかったら信用に関わ
38:52る
38:53それは
38:56問題はまだある
39:00江藤さんの字だろ
39:02SNSでも拡散されてる
39:04これ見たら日記も偽物だって思うだろうな
39:08申し訳ありません
39:11小説と一行ずつ比べてる奴もいる
39:15セリザー勘ほどの作家なら
39:17江藤さんよりも読み込んでる読者は山ほどいるだろうし
39:24申し訳ございません
39:25はい
39:30申し訳ございません
39:32はい
39:34はい
39:37おいもう入手になってんぜ
39:39もう出てます
39:41どうするんすか
39:48この日記あなたらしいと思う
39:53これがセリザー勘らしいかどうかは
39:57君がそう思えるかどうかで決まる
40:01しかし君が違うと思った瞬間に
40:05それは君の言葉になる
40:09ねえ
40:11あなた小説書いてて楽しかったの
40:16楽しかったと思う
40:19君が楽しそうにしてくれたから
40:25なんかツルツルした言葉
40:28鏡みたい
40:30鏡か
40:31ああそうかもしれない
40:35私は君が写したものしか返せない
40:39僕の言葉がツルツルしているのは
40:42君の言葉を傷つけずに返したいだけなんだと思う
41:12マリコさん
41:24ちょうどよかった
41:34週刊誌の記事読みました
41:37もう出たな
41:39わざわざ
41:40うちまで取材に来たのよあれ
41:43一気
41:45全部マリコさんが書いたって
41:47だってそうでしょ
41:49あなたが一番知ってるじゃない
41:51いやでもそれは私が
41:52またサボってる
41:55ごめんなさい
42:03正直こうなってほっとしてる
42:08分かりたいから書いたのに
42:10ちょっと近づきすぎた
42:15あなたに読んでもらってやっと気づいたの
42:21一生分からないってことが分かった
42:28あなたは何で私だったんですか
42:44あなたは何で私だったんですか
42:50誰も開いたことのない新しい芹沢館の世界を読んでみたいって
42:57ああ書きました
43:0040年書いてる作家に無茶言ったよね本当
43:06すいません
43:19ちょっとこれ失礼します
43:31え?これ本物の先生の日記じゃないですか
43:35そうだけど
43:36え?埋めたって言ってたじゃないですか
43:39あなた山ほどミステリー読んできたんでしょ
43:43埋めたって言ったら埋めてないってこと
44:00いいんですか
44:02今度は本当に埋めて
44:07そこにはもういないって分かったから
44:24もうすっかり春ね
44:28草むしりで忙しくなりそう
44:34あなたはこれからどうするの?
44:43私みたいな編集者
44:47もう誰も信じないと思います
44:53人の名前とか言葉を借りて
44:58自分まで創作したような気になって
45:03結局書くことを侮辱した人間なんです
45:37マリコさん?
45:45彼は新しく書こうとしてた
45:49それはあなたの言葉があったから
45:55私がこうして話してるのもきっと同じ理由よ
46:03これは本当の話
46:33私たちの言葉を言ってきて
46:39私の料理どうだった
46:42美味しかった
46:47それはきっと美味しかったと思う
46:50塩の量とか火加減より
46:53食べてもらおうとしてる気持ちの方が味に出る
46:58私はそれを食べられないが
47:00君が美味しいと思ってほしいと思ってることは
47:04ちゃんとわかる
47:12あの人はそんなことは言わない
47:17すみません
47:18よく聞き取れませんでした
47:27早く早く
47:30楽しみだね
47:33うん
47:43小説は所詮作りもの
47:47現実では役に立たない
47:50世間では
47:51そう言われることもある
47:58しかし私は信じています
48:04小説の嘘は
48:06人が隠した本音に
48:08まっすぐ手を伸ばすことがある
48:24これからも
48:25この命続く限り
48:28全力の嘘で人を欺き
48:32その嘘で真実の輪郭を描く
48:36あのー
48:38あのー
48:54Nowhere could die
49:25ご視聴ありがとうございました
コメント