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  • 3 か月前

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ショート
トランスクリプション
00:00少女時代の不幸な過去を背負って成長した雪村千代は
00:06やがて石をもて終わるるごとく生まれ故郷の佐渡を後にした
00:11だが千代には未来に託した夢があった
00:18東京へ出て一流のデザイナーになる
00:21それが幼い頃からの千代の夢であった
00:25そして新しいデザイナーユリアサミの行為で
00:31ようやく希望の第一歩を踏み出した時
00:34思いもかけぬ試練が千代を襲った
00:38何にあの煙は
00:45光月さんの舞台翔が
00:50誰がアイロンをつけっぱらしい人だとは
00:59なんてことしてくれたんだ君は
01:07光月光のコンサートは今日なんだぞ
01:10しかも一番大事なフィナレオの衣装
01:12申し訳ありません
01:14申し訳ないで済むと思ってるの
01:16アイロンの扱いには
01:19あれほど注意しなさいって言ったでしょ
01:22でも
01:22今さら言い訳なんかするな
01:24すべてが
01:27あの幼い日の出来事と同じであった
01:31返せ
01:32危ない
01:35塵一つつけまいと
01:41身長の上にも身長に厚かった衣装である
01:44決して一人でに倒れるはずはなかった
01:48だがそれを証明してくれるものは誰もいない
01:52一瞬千代は己の運命を呪った
01:58申し訳ありません
02:03すべて私の不注意が原因です
02:07そんな言い訳を聞きたいんじゃない
02:08ゆり先生
02:09僕は今度のコンサートにすべてをかけていたことは
02:13あなたもよくご存知のはずだ
02:15それなのに今になってフィナレオの衣装を焦がしてしまったなんて
02:19待ってください
02:20確かに姉が責任者かもしれませんが
02:22でも姉がいちいちアイロンまでかけてるわけじゃないんです
02:25今直接の責任者に謝罪させますから
02:28君だったのか
02:36申し訳ありません
02:37すべて私の責任です
02:39謝って済む問題じゃないだろ
02:41この野郎
02:42どうしてくれるんだ
02:44
02:45なんとか言えよ
02:47一体何があったんだ
02:50今日のこのコンサートは俺が
02:56この光月光が新しく生まれ変われるかどうかの勝負の時だった
03:00それがこんな惨めな
03:05もうだめだ
03:08もう絶望だ
03:10光月さん
03:11出てけ
03:14お前の顔中二度と見たくない
03:16出てけ
03:19待ちなさい
03:21出ていく必要はない
03:24父さん
03:25光月
03:26何をそんなに慌てふためいているんだ
03:30お前の仕事は何だ
03:33歌手じゃないのか
03:35歌手の仕事とは何だ
03:38お客さんの前で精一杯いい歌を聴かせることが仕事じゃないのか
03:45たかが衣装一枚焼けたくらいでその様は何だ
03:51綺麗な衣装を着なければ歌が歌えないのか
03:56客を感動させることができないのか
03:59そんな自信もない奴にコンサートなんかやる資格はない
04:03歌手なんかさっさとやめしまえ
04:07どうぞ
04:23ちょっと遅れてるようです
04:25何かあったんでしょうか
04:27
04:36始まるわ
04:37奥様
04:39あの衣装はゆりあさみのデザインです
04:42そんな訳は
04:44男なんて
04:45奥様
04:47臭病なだけなのさ
04:49窓がらさ
04:51叩いた
04:53ルミ色のリアリング
04:58唇に押し当てて
05:02奥様
05:03あの衣装はユリアサミのデザインですか
05:07そんなわけは
05:23笑ってる
05:24Again, again, again
05:30さよならから再び
05:35Again, again, again
05:39大事なことは何して気が付く
05:44情けないことだけど
05:49もう一度だけ
05:51始めたいこの俺さ
05:54いろいろとありがとうございました
05:57いやいや、私こそ
05:59せっかくのあなたの老作を
06:01無駄にするようなことを言いまして
06:03どうかお許しください
06:04いいえ、おかげさまで
06:06いい勉強させていただきました
06:07歌は心で歌うように
06:10私たちの仕事も
06:11決して形からじゃなく
06:13心から入っていかなきゃいけないことを
06:15改めて教えていただきました
06:17本当にありがとうございました
06:21私たちの仕事も
06:51あげん
06:54わがままばかり
06:56ぶつけあった日を
06:58やさ
06:59しさに
07:00変えてくれ
07:02やばまま
07:05心まで濡らしてる
07:07あげん
07:09あげん
07:11さよならから
07:14ぶつけあった日を
07:16あげん
07:17あげん
07:18あげん
07:19あげん
07:21大事なことはなくして気がつく
07:26情けないことだけど
07:30もう一度だけ
07:32始めたいこのレター
07:35情けないことだけど
07:39ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
08:09ではなくありのままの自分を見てもらいたいとかこの間駅のことを言いまして それで
08:16大受けでしたよ 残念ながら大成功と認めざるを得ません
08:25いつの間にか客の心を掴む術を完全に身につけやがった
08:32舞台所を焼けたと聞いた時は締めたと思ったんですよね
08:39ひょっとしてあれはあなたが仕掛けられたんじゃ
08:44何をバカみたいなこと言ってるんです 私は誰だと思ってるの
08:49これどうも失礼しました
08:52光月光が普段身で舞台を務めたということはつまり
08:58ユリアサミの衣装は一着も着なかったということですね
09:03それじゃあ私の方も大成功だわ
09:08あ?
09:09こっちの話よ
09:10あなた
09:18今うちの先生がどんな立場に立たされているのか
09:22本当に分かってるつもり
09:26姉さん 下手するとデザイナー協会 除名になるかもしれんな
09:30除名?
09:31失礼します
09:34久子さん おばさん
09:37おばさん?
09:38私 この子のおばでございます
09:41どうもよろしくお願いいたします
09:44この恥さらしが
09:48佐渡で散々迷惑をかけて飛び出した上に
09:51今度はこちら様にまで飛んだご迷惑を
09:54一体どこまで人に迷惑をかければ気が済むの
09:59お前みたいな人間がうちの一族だと思うと
10:03私たちまで身が縮まる思いがしますよ
10:05まったく
10:07千代ちゃん 私ね
10:09あなたがこちらで働かせていただくようになったと聞いた時
10:12本当に良かったなって思ったのよ
10:15だけど正直言って
10:17昨日ほどあなたと血の繋がったいとこだったことを
10:20恨めしく思ったことはないわ
10:22美咲子さん
10:24そりゃ光月さんの舞台は素晴らしかったわよ
10:28感動したわ
10:30だけどね
10:31私たちにとってこちらの先生がデザインなさった舞台衣装を見るのも
10:36楽しみの一つだったのよ
10:38それが大事な衣装をダメにした超本人があなただとした時
10:43私も息が詰まりそうに驚いたわ
10:45何をぼんやりしてるのよ
10:48どけ出して謝ったらさっさと荷物をまとめて出てくのよ
10:51人気歌手にとって命とも言うべき大切な衣装を
11:01こともあろうにアイロンの不始末で焼いてしまうとは何事ですか
11:06お客様の大切な衣装を一体何と心得てるんです
11:11申し訳ございません
11:13謝って済む問題じゃありませんよ
11:17朝見さん
11:18あなたの今回の失態はデザイナーとしては死刑にも相当する重罪なんですよ
11:26そのことをあなた少しは自覚しているの
11:30聞くところによれば
11:34光月光さんはフィナーレ用の衣装を焼かれてしまったことに腹を立てて
11:40他の衣装も一切身につけなかったというじゃありませんか
11:44いえそれはデザイナーにとってこれ以上の屈辱はありません
11:49それだけじゃありません
11:52今回の事件はデザイナー界全体にとっても
11:57計り知れないマイナスイメージを与える結果となりました
12:02あなたはこちらにいらっしゃる先生方のお顔にも泥を塗ったんです
12:07この責任どう取るつもりですか
12:11あ先生お帰りなさい
12:28姉さん教会のどうだった
12:30ええしっかり油絞られちゃったわ
12:33笑ってる場合じゃないだろまさか乗命なんてことは
12:36大丈夫よ取りなしてくださる先生方もいて厳重注意だけで済んだわ
12:41そうかそれよかった
12:43あらあなたまだいたの
12:49すいませんあの先生に一言だけご挨拶がしたくて
12:55ご挨拶?
12:58ゆきむらさんあなたまさか辞める気じゃ
13:01はいあの今度の責任を取るには辞めさせていただくしかないと
13:07許しませんよそんなこと
13:10昨日も言ったはずです
13:12全責任はこのあたしにあると
13:14でも
13:15いいえ行けません
13:17第一あなたここを辞めたらどこへ行くの?
13:21佐渡へ帰る気?
13:22いいえそれは
13:24それは
13:25じゃあどうするの?
13:27姉さんいいじゃないか本人が辞めたいって言ってるんだから
13:31そうですよ
13:32何も無理に引き留めることは
13:34ダメです
13:35ゆきむらさん
13:38ここに居づらい気持ちはよくわかるわ
13:41でもねこんなことどこに行っても必ずあることなのよ
13:45行く先々でちょっと辛いことがあるからってやめてたんじゃ
13:49一生落ち着く場所なんて見つかりっこないわ
13:52それともあなた
13:56デザイナーの夢はもう捨ててしまったの?
14:00いいえ
14:01その夢だけは絶対に捨てたくありません
14:04だったらここで頑張りなさい
14:06先に辞めてしまった田代香里さんの分まで
14:09あなたが頑張るのよ
14:11先生
14:13いいんですか?
14:14本当にここで働いてもいいんですか?
14:16もちろんよ
14:18あなたに田代さんと同じ思いだけはさせたくありませんからね
14:22先生
14:24本当にありがとうございます
14:26私頑張ります
14:28死んだ気になってここで働きます
14:30ゆうすけさん
14:40ゆうすけさん
14:52どうしても佐渡へ帰ってくる気はないのか?
15:10千代ちゃん
15:12俺のこと嫌いか?そんなに嫌いか?
15:16好きよ
15:18だって島にいた頃私に優しくしてくれたのは
15:22おじさんとゆうすけさんぐらいだったもの
15:24そんな意味で聞いてるんじゃない
15:26俺の嫁さんになる気があるのかどうかだ
15:28待って
15:30ゆうすけさんの気持ちはとても嬉しいわ
15:32でも今の私には結婚なんて遠い遠い先の話としか思えないの
15:38今私の頭の中にあるのは
15:42一日も早く一人前のデザイナーになることだけなの
15:46デザイナーになることは小さい頃からの夢だったわ
15:52その夢がやっと現実のものになったのよ
15:56そりゃまだヒヨコにもなっていない卵かもしれないけど
16:00でも私この夢に一生をかけるつもりなの
16:04千代ちゃん
16:05お願い分かって私たどやは帰りません
16:09この東京で石にかじりついてでも頑張り抜いてみせるわ
16:21分かった千代ちゃんの気持ちはよく分かったよ
16:25でもこれだけは受け取ってくれ
16:33これは?
16:34婚約指輪のつもりで買ったんだ
16:36私こんなものは?
16:38ダメだ
16:39どうしても受け取ってもらう
16:40ゆうすけさん
16:41受け取れ
16:42受け取らない限り
16:44俺はここを一本動かんぞ
16:54それは今までに見たことのないゆうすけの一面であった
17:00一瞬千代の背筋に旋律が走った
17:03放っておけばこの一途な若者は何をしでかすか分からない
17:09そう思ったとき千代の手は
17:12己の意思とは関係ない動きを見せていた
17:15分かったわ
17:17良かったわ
17:18一応お預かりします
17:22千代ちゃん
17:26だがこの行動が
17:28後に千代をますます窮地に落とし入れることになるのだ
17:33残念ながら今度の計画は
17:37成功したとは言えないわね
17:40もちろんあなたはよくやってくれたわよ
17:43ですからお約束通り
17:47きちんと報酬は支払います
17:50でもその前にもう一つやってもらいたいことがあるの
17:54そうよ
17:56今度こそゆりあさみの息の根を完全に止めてやるわ
18:00藤崎昭恵の陰謀がなおもひそかに進行していることに気づかぬまま
18:18ゆりデザインルームでは次の発表会へ向けての準備が進められていた
18:25先生
18:26光月光さんが
18:28はいお邪魔しまーす
18:30どうも
18:31光月さん
18:32いやどうも
18:33光月さん先日は飛んだご迷惑をおかけしまして
18:36いいんですよもうすんだことは
18:38それより今日はこれを預かってもらおうと思って持ってきたんです
18:40何ですのそれ
18:43この間のリサイタルで着なかった衣装です
18:46キャンセルですか
18:47よしよ
18:48分かりました
18:49引き取らせていただきます
18:51誰が引き取ってくれと言いました
18:53僕を預かってほしいと言ったんですよ
18:56この前僕が先生の衣装一枚も着なかったのは
19:00親父の説教で目が覚めて
19:02もう一度裸になってやり直そうと思ったからなんです
19:05それじゃあフィナレ用の衣装を焼いたのは原因じゃ
19:07もちろんです
19:08この衣装は僕が本当の意味のエンターテイナーと認められるまで
19:13取っておきたいんです
19:15この衣装を着るにふさわしい人間になったとき
19:18初めて着るつもりでいるんです
19:21光月さん
19:23それまで
19:24預かっていただけますね
19:25いいえ
19:26お預かりできませんわ
19:31どうしてですか
19:32光月さん
19:33あなたにもう一度私のデザインした衣装を着ていただくときが来たら
19:39私ももう一度あなたのために心を込めてデザインし直しますわ
19:44何年先のことか分かりませんけど
19:47それまでにあなたはきっと一回りも二回りも大きくなってらっしゃるでしょう
19:53私もそれまでにデザイナーとしてもっともっと大きく成長していたいんです
19:58先生
20:08ゆり先生にも参ったな
20:11この衣装はもう過去のものですか
20:15そうなんだよな
20:16俺たちはまだまだ後ろなんて振り向いちゃいけないんだ
20:20そうだろう
20:23だから君ももう
20:25僕の衣装を焼いたなんてことは気にしないで仕事頑張ってくれ
20:29ありがとう
20:30ありがとう
20:34本当言うとさ
20:36ゆり先生のとこで君を見かけたとき
20:38なんで東京なんかに出てきたんだ
20:40すぐ佐渡へ帰れって
20:42怒鳴りたい君だった
20:44でも考え直したよ
20:46俺がどうしても歌手になりたいって今日までがむしゃらにやってきたように
20:51君は君の望んだ道を真っ白に進むべきなんだ
20:54そいつを止める権利は誰にもない
20:57君には君の
20:58君には君の
21:00俺には俺の人生があるんだからな
21:03光月さん
21:05光月さんっていうのはちょっとよそよそしいな
21:08光って呼んでくれ
21:12光…さん
21:15あ、それでいい
21:19ねえ、ちょっと悪いけど先帰っててくれ
21:25うん、わかった、ごめんねえ
21:28ごめんねえ
21:32全国ツアー
21:34ああ、北海道から沖縄までの縦断コンサートやるぞ
21:38あの、出発はいつなんですか?
21:41明日
21:43明日?
21:45しばらくは会えないけど、元気でな
21:47うん、元気だな
22:00じゃあ…
22:18ゆうすけさん
22:21せっかくのお申し手ですが、私はどうしてもこの指をいただくわけにはいきません
22:26ですから、どうか私のことは忘れて
22:30受け取れ
22:33受け取らない限り、俺はここを一歩も向かんぞ
22:36うまくこう一歩も向かんぞ
22:47はい
22:51カオリ…
22:59へえ、ずいぶんきれいにしてんじゃん
23:01私が住んだところとはまるで別の部屋みたい
23:05ねえ、カオリ、一体どこ行ってたの?
23:08心配してたのよ
23:09あ、ごめんごめん
23:10でも心配することないのよ
23:12私は私なりにちゃんとやってるから
23:15それより千代、ゆり先生んとこ勤めたんだって
23:19ええ、よく入れたわね
23:22それで今、どんなことしてんの?
23:24よろず雑用引き受け係よ
23:26やっぱり…
23:28意地の悪いのがいるでしょう
23:29西山よし子とか、あの先生の弟とか
23:33それほどでもないわ
23:35本当?
23:36本当よ
23:38ねえ、それよりゆり先生があなたのこと心配してたわよ
23:46もう少し辛抱してくれたらよかったのにって
23:49先生には悪いことしたと思ってる
23:52ねえ、もう一度戻ってくる気はない?
23:54私からも先生にお願いしてみるから
23:56無理よ今更
23:57でも…
23:58いいのいいの
24:00私には…
24:01私の生き方があるんだから
24:03Going my wayよ
24:06香里…
24:08じゃあ、また来るわ
24:10ねえ、もう帰っちゃうの?
24:12今夜、おそばんなんだ
24:14おそばん?
24:15喫茶店に勤めてるの
24:16喫茶店に勤めてるの
24:18じゃあね
24:20待って
24:22ねえ、そこのお店の電話番号だけでも教えて
24:25こっちから連絡する
24:27香里!
24:29千代、頑張ってね
24:32私ができなかったこと
24:34さよなら
24:37香里!
24:41美沙子さん
24:44いらっしゃいませ
24:46コーヒーちょうだい
24:47はい
24:49どうしたの?
24:50元気のない顔して
24:52ええ…
24:54分かった
24:56ホームシックでしょう
24:58実は…
25:00光さんの舞台紙を焼いてしまったの
25:02いとこなんです
25:04何ですって?
25:05それも…
25:07過失だったらまだ許せるんですけど
25:09ちょっと…
25:10それ…どういう意味?
25:13話してちょうだい、美沙子さん
25:16おばさま…
25:18私の足、ちょっと不自由なことをお気づきでしょう?
25:22ええ…
25:24子供の頃、そのいとこに崖の上から突き落とされたのが原因なんです
25:29まさか!
25:30嘘じゃありません
25:32大人が誰も見てなかったんで、うやむやに終わったんですけど
25:35突き落とされたことは、こんな私が一番よく知ってます
25:39なんて子なんでしょう?
25:42雪村千代って言うんですけど
25:44その子、父親が誰だかわからないんです
25:48お母さんも早く死んじゃったし
25:50それでかわいそうだと言うんで、うちで引き取ったんですけど
25:55小さい頃から日が日っぽくて
25:58幸せそうな人を見ると、何か嫌がらせをしないと気が済まないたちで
26:02ちょっと、それじゃ何?
26:04その子、うちの光にも嫌がらせをしようと思って
26:07舞台衣装に火をつけたっていうの?
26:09いえ、証拠は何もありません
26:12それに、私だって、仮にも血の繋がってるいとこを
26:16そんな風には思いたくないんですけど
26:17でも、もしそうだとしたら
26:23私、二度とおばさまや光さんに会わせる顔がないと思って
26:28そんな、あなたには何の罪もないわよ
26:32それに、今聞いたお話じゃ、あなたも被害者の一人じゃないの
26:36そんな変な気兼ねはよして、いつでも遊びに来てちょうだい
26:42ありがとう、おばさま
26:44でも、光さんは
26:47光が、どうかしたの?
26:50昨日、千代ちゃんと一緒のところを
26:53何ですって
26:54何ですって
27:12あの、ごめんください
27:14雪村千代です
27:15どうぞ
27:18はい
27:24わざわざ来ていただいたのは、他でもありません
27:28光とのお付き合い、今後一切やめていただきます
27:34あなたが今までなさったことについては、一切水に流して差し上げます
27:41その代わり、光に近づくのは
27:43待ってください
27:45私、何か光さんにいけないことをしたんでしょうか
27:48なんてずずしい
27:51何をしたか、ご自分の胸に聞いてごらんなさい
27:54光さんの舞台衣装を焼いたことは、いくらお詫びをしてもお詫びしきれないということは分かっています
28:01でも、光さんは
28:02これだけで十分です
28:04あなたにはうちの息子と交際する資格はありません
28:10随分大きな声だな
28:12あら、あなた
28:15いつお帰りになったんですか?
28:17ああ、たった今だがね
28:19母さん
28:21この子を責めるのは、筋違いというもんだよ
28:24筋違い?
28:26ああ、それ確かに
28:28光の衣装を台無しにしたのは、この子の責任かもしれない
28:32しかし何もわざとやったわけじゃ
28:34いえ、どうだかわかったもんじゃありません
28:38いや、それじゃあ聞くけどな
28:40あ、まあ、座りなさい
28:45光の衣装をダメにして、一体この子に何のメリットがあるっていうの?
28:50それは…
28:52光のコンサートは成功したんだ、それでいいじゃないか
28:55それに、光はもう大人だ
28:58誰と付き合おうと本人の意思に任せたほうが
29:01いいえ、とは参りませんわ
29:03光はあたしたちにとって大事な一人息子です
29:07父親が誰だかわからないような娘と付き合わすわけには参りません
29:11何だって?
29:13だいたいあなたは無責任すぎます
29:16無責任?
29:17そうじゃありませんか
29:19普段は何にもしないくせに、いざという時だけ出てきて、いい顔ばっかりして
29:24あなたのような無責任な方に、光を任しておくわけには参りません
29:30昔、あなたが家出をした時、あたしが小さな光を抱えて、どんなに苦労したかご存知なんです
29:38あれは家出じゃない、私は記憶喪失だったんだ
29:42わざとお前たちを捨てたわけじゃない
29:45記憶喪失
29:48ああ、もう20年近くも前のことだ
29:52当時私は関西方面で、ある大きな建設事業に携わっていた
30:00危ない!
30:01幸運にも、命は取り留めたが、それから約2年、私は完全に記憶を失っていた
30:14その2年の間、私は最初に収容された病院を抜け出して、方々をさまよい歩いていたらしい
30:23そして、気がついた時には、私はこの家に戻っていた
30:29あなたは金沢にいらしたんですよ
30:33金沢?
30:35ああ、そうなんだ
30:37私の持ち物の中に、誰が撮ってくれたのか知らないが、賢禄園で写した写真があった
30:45それと、どこかの病院の中庭らしい場所で撮った写真もあった
30:51病院?
30:53ああ、バックに看護婦さんや患者さんらしい人物が写っていたからね
30:57どうやら私は、その病院に記憶喪失の患者として収容されていたらしい
31:06だが、記憶を取り戻した私は、今度はその2年間の記憶を失って
31:12その病院がどこの病院だったか、どうしても思い出すことができなくなってしまっていた
31:17千代の体を電流にも似た衝撃が走っていた
31:28光の父、光月信行の記憶喪失が、彼女の父の謎と重なったのである
31:35どうしても父親のことが知りたいのか
31:45いいだろう、話してやろう
31:49静が、お前の母親が若い頃金沢で
31:54総合病院の看護婦をしていたことは前にも話した通りだが
31:57ある日、突然看護婦を辞めて里へ帰ってきたときには
32:04お腹の中にもうお前がいたんだよ
32:07父親は誰なんだと、何度聞いたことか
32:13腹立ち紛れにぶん殴ったこともある
32:16しかし、言えばその人に迷惑がかかると、どうしても答えようとしなかった
32:22それが、どこからともなく入ってきた噂で
32:29相手はその病院の患者らしいということが分かった
32:34患者さん?
32:36そう、傷はね、その頃
32:40若い記憶喪失の患者と親しくしていたそうだ
32:45記憶喪失?
32:47え?
32:48そう
32:50ところが、シズが死んだ後、私が病院へ行ったときには
32:56もうその患者はいなくなっていた
33:00じゃあ、その人が私のお父さん
33:03シズは、ひょっとするとその男の素性を知っていたのかもしれないな
33:09だから、黙ってたの?
33:13ああ、もしその男が家族持ちだったりすると、迷惑がかかると考えたんだろう
33:22お母さん
33:27シズは、そういう女だったよ
33:34ふん
33:36いつでも自分のことより、人のことばっかり考えた
33:41しずはその頃、記憶喪失の若い患者と親しくしていたそうだ
34:00あれは家出じゃない、私は記憶喪失だったんだ
34:03お前の母親が、金沢の総合病院で働いていたことは、前にも話した通りだ
34:10どうやら私はその病院に、記憶喪失患者として収容されていたらしい
34:16記憶喪失の若い患者と親しくしていたそうだ
34:19完全に記憶を失っていた、記憶喪失の若い患者と
34:22光の父、光月伸幸が自分の父親かもしれない
34:33恐怖に似た感情が千代の体を貫いた
34:38もし、それが事実であるとすれば、光と自分は兄と妹ということになる
34:45その時、千代は、密かに光を愛し始めている自分に初めて気づいたのだ
34:57第1話
35:05じゃあ、指輪を渡したという噂は、本当なんだね
35:10ええ
35:11で千代は、受け取ったのか?
35:14もちろんですよ、受け取るに決まってるじゃないですか
35:17ゆうすけくん
35:18おじさん、俺は絶対に千代ちゃんは諦めませんよ
35:22誰が何と言おうと、絶対に千代ちゃんは俺の嫁さんにしてみせます
35:27ちょっと、何してるのよ、早くしなさい
35:38すいません、ゆきむらさん
35:42あなた、どこか体の具合が悪いんじゃないですか
35:47ちょっと、何してるのよ、早くしなさい
35:52すいません、ゆきむらさん
35:54お母さん、あなた、どこか体の具合が悪いんじゃないの?
35:58いいえ、大丈夫です
36:01どうも、すいませんでした
36:06はい、ゆりデザインログです
36:09あ、先日はどうも
36:11ええ
36:13はい、少々お待ちください
36:16ゆきむらくん、君に
36:18はい
36:20もしもし、お電話帰りました
36:25やあ、俺だよ
36:27ひかりさん
36:29今、千代まで来てるんだ
36:31ああ、1回目の公演がちょうど終わったところだね
36:34す、そうですか、ええ
36:36ええ
36:38もしもし、どうしたんだよ、元気のない声をして
36:41いえ、別に
36:43あの、それで、ご用件は何でしょうか
36:48用がなければ電話しちゃいけないのか
36:50そうじゃないんですけど、あの、今お仕事中ですから
36:54あ、そうかい、忙しいとこ悪かったね
36:58なんだよ、人がせっかく電話したのに
37:01光月さん、元気だった?
37:05はい
37:07どうぞ
37:09光月さん、元気だった?
37:11はい
37:15どうぞ
37:17光さん
37:20みさこさん
37:22どうしたんだ、こんなところへ
37:24人中未満よ
37:26はい、これ
37:27バンドの皆さんにも分けてあげてね
37:30それと、これはお母様からであなたの着替えです
37:34こんなものまでいいんだよ、間に合ってるんだから
37:37だいたい君何なんだ、学校どうしたんだ?
37:41学校をサボってくるような奴に用はない、帰ってくれ
37:46随分ひどいこと言うのね
37:49学校はお休みよ
37:52休み?
37:53創立記念日なの
37:55それに、お母様がどうしても行ってきてちょうだいっておっしゃるから
37:59それなのにひどいわ、あんまりよ
38:03いいわよ、お使いはもう終わったから
38:07私すぐ帰ります
38:09板子さん、俺が悪かった
38:12乱暴なこと言ってごめん
38:13新幹線の時間、大丈夫かな?
38:30大丈夫よ、最初にはまだ時間があるから
38:32ねえ、みんなあなたのことに気づいたいみたいよ
38:39出よ
38:43すごい、アビックだらけだわ
38:57見るんじゃないよ
38:59分かってるわ
39:00お茶でも飲みに行こうか
39:11いいなあ、千代ちゃん、婚約者がいて
39:15婚約者?
39:16あら、知らなかったの?
39:19千代ちゃん、田舎に婚約者がいるのよ
39:22坂田ゆうすけさんと言って
39:26私もよく知ってる兄元の息子さんだけど
39:29そりゃもう千代ちゃんに夢中なの
39:31母の話だと、この間、ゆうすけさん、千代ちゃんを追いかけて
39:47東京まで出てきたんですって
39:49その時、婚約夢を渡したらしいわ
40:01秋への卑劣な計画は、着々と進行していた
40:06彼女はいかなる手段によって、ゆりあさみを葬ろうとするのか
40:28素敵ね、今度の作品も
40:30ほんと、この方なんて先生独特のものね
40:33そうよ、他の人には絶対真似できないわね
40:36何油売ってるの?
40:38まだお仕事残ってるでしょ
40:40じゃあ、姉さん、見に行くつもり?
40:42もちろんよ
40:44こうやって招待状も送ってくださったんですもん
40:46先生、それ藤田先生の?
40:48そうよ、いつなんですか?
40:50うちのコレクションの3日前だ
40:52勝ちはなくてよかったよ
40:54招待状は2通なんだけど、誰か一緒に来ます?
40:58僕はごめんだね
40:59私たちもまだお仕事残ってますから
41:02そう
41:03どうしたの?キョロキョロして
41:08どうしたの?キョロキョロして
41:11私、こんな華やかなところ、生まれて初めてですから
41:15いい?しっかり見て、よーく勉強するんですよ
41:17はい
41:18どうしたの?キョロキョロして
41:21どうしたの?キョロキョロして
41:23私、こんな華やかなところ、生まれて初めてですから
41:27いい?しっかり見て、よーく勉強するんですよ
41:30はい
41:32はい
41:33はい
41:34良い?
41:35はい
41:36はい
41:37はい
41:38はい
41:39はい
41:41はい
41:42ご視聴ありがとうございました
42:12先生これは
42:29盗まれている
42:32ユリアサミのデザインは完全に盗まれている
42:42藤崎昭恵の悪なき陰謀は
42:49デザイン盗用という卑劣な手段となって
42:52その全貌を表したのだ
42:55ご視聴ありがとうございました

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