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  • 2 日前

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テレビ
トランスクリプション
00:00:23大正6年7月14日
00:00:26ケンジとカナイは2人だけで岩手山に登った
00:00:532人は山頂で夜明けを迎えた
00:01:03岩手山頂にして真っ白なる
00:01:09空に火花の湧き散れるかも
00:01:192人が交わした銀河の誓い
00:01:24それはケンジにとって
00:01:26これから生きていくべき道を照らす
00:01:28松明となるはずだった
00:01:35同じ年の7月の夏休み
00:01:38ケンジは旅先の種山ヶ原で見た
00:01:41伝心柱を短歌に読んで
00:01:44アザリア3号に乗せた
00:01:49寄り添いて
00:01:51赤き腕着を連ねたる
00:01:54夏草山の伝心柱
00:02:03ケンジはなぜ伝心柱などを短歌に読んだのだろう
00:02:08
00:02:13これはカナイが甲府中学時代に書いた伝心柱である
00:02:19伝心柱を絵の題材に選ぶというのは極めて珍しい
00:02:27カナイのこの絵に刺激されて
00:02:30ケンジは伝心柱の絵を描いた
00:02:33そしてこの短歌に読んだと思える
00:02:40寄り添って立つ2本の伝心柱は
00:02:43ケンジとカナイである
00:02:50同じ年の12月
00:02:52ケンジとカナイは
00:02:54小祝い農場近くの七つ森へ遊びに行った
00:02:58ケンジの誘いであったようだ
00:03:02この時のカナイの歌が残されている
00:03:08夕闇の伝心柱
00:03:11隔たりて
00:03:13広野の雪と2人の若者
00:03:18伝心柱隔たりて
00:03:20というところに
00:03:22この時期のカナイの微妙な心の揺れが現れている
00:03:30大正7年3月
00:03:32カナイは同人誌アザリアで
00:03:35引っか事件を起こし
00:03:36退学処分を受け
00:03:38森岡を去って山梨へ帰った
00:03:41以後カナイとは手紙だけの付き合いとなった
00:03:47再会までの3年4ヶ月の間に
00:03:50ケンジがカナイに宛てた手紙は
00:03:5256通に上った
00:03:55我を捨てるな
00:03:57という
00:03:57ケンジの悲痛な言葉も記されている
00:04:01岩手山での2人の誓いを
00:04:03カナイが守らないのではないかと
00:04:06ケンジは不安になったのだろう
00:04:22そして大正10年
00:04:24ケンジは
00:04:25双子の星と題する童話を書いている
00:04:30天の川のほとり
00:04:31向かい合った水晶の宮殿に
00:04:34双子の兄弟が仲良く暮らしている
00:04:37兄の名はチュンセ
00:04:38弟の名はポーセという
00:04:422人の仕事は
00:04:43毎晩宮殿の階段に座って
00:04:46星巡りの歌を横笛で吹くことだった
00:04:51書かれた時期を考えると
00:04:53この双子の星には
00:04:55ケンジのカナイへの思いが
00:04:57託されているような気がしてなりません
00:05:04結局2人は
00:05:057月18日
00:05:07上野帝国図書館で
00:05:09再開することになった
00:05:12上野帝国図書館は
00:05:1410階建てであったが
00:05:153つの閲覧室は
00:05:17天井を高くしたため
00:05:2010階の高さの部屋が
00:05:213階となっていた
00:05:26再開の場所は
00:05:28その3階の閲覧室であった
00:05:34ケンジは
00:05:35先に来て待っていた
00:05:36カナイを
00:05:38ダルンへという名前にして
00:05:40再開の様子を
00:05:42詩やエッセイに書き残している
00:05:47今度こそ
00:05:47もう会えるのだ
00:05:51俺はなんだか
00:05:53胸のどこかが
00:05:54熱いか溶けるかしたようだ
00:06:00大きな扉が半分開く
00:06:03俺はスルッと入っていく
00:06:11部屋はガランと冷たくて
00:06:15猫背のだるけが
00:06:16額に手をかざし
00:06:19大きな窓から
00:06:21西空をじっと眺めている
00:06:29この後
00:06:30ケンジは
00:06:30カナイの姿を描写するのだが
00:06:34それが何とも不可解なのである
00:06:41ダルゲは
00:06:42陰気な灰色で
00:06:44腰には
00:06:45厚いガラスのミノをまとっている
00:06:49ダルゲは
00:06:49少しも動かない
00:06:57我は
00:06:58だるけを名乗れる者と
00:07:00冷たく最後の別れを交わし
00:07:04閲覧室の山外より
00:07:06その地下室に降り来たり
00:07:09片身に
00:07:10湯と水とを飲めり
00:07:13かくてぞ我は
00:07:15その踏みに
00:07:16だるけと名乗る鉄人と
00:07:19永遠の別れをなせるなり
00:07:27大正10年12月
00:07:29ケンジは
00:07:30花巻の冷え抜き農学校の教師に職を得た
00:07:36科学や農業実習の担当だった
00:07:41そして
00:07:42新しい年を迎えた
00:07:48大正11年4月
00:07:50ケンジは
00:07:51花巻から汽車で森岡に出
00:07:54そこから徒歩で
00:07:56外山高原に向かった
00:07:59ケンジは
00:08:00詩人として
00:08:02新しい人生を始めようとしていた
00:08:09初めての詩の題名は
00:08:11ハルト・シュラだった
00:08:15その試作の現場に選んだのが
00:08:17外山高原だった
00:08:31ああ見えた見えた
00:08:33あれか山が見えた
00:08:36岩手山
00:08:38ああ
00:08:41まだ雪がかかってんだな
00:08:47ここですねきっと
00:08:51ケンジが
00:08:52アルト・シュラを
00:08:53書いたのは
00:08:58怒りの苦さ
00:08:59また青さ
00:09:014月の寄贈の光の底を
00:09:05椿氏
00:09:06はぎしり行き来する
00:09:11俺は
00:09:12一人のシュラなのだ
00:09:35俺は一人のシュラなのだ
00:10:06マコトの言葉は失われ
00:10:09雲はちぎれて空を飛ぶ
00:10:14ああ
00:10:15高焼きの4月の底を
00:10:17はぎしり
00:10:18燃えて行き来する
00:10:22俺は一人のシュラなのだ
00:10:27気相をいよいよすみ渡り
00:10:29火の木もしんと
00:10:31天に立つ頃
00:10:34草地の小金を過ぎてくるもの
00:10:37ことなく人の形のもの
00:10:41ケラをまとい
00:10:42俺を見るその農夫
00:10:46本当に俺が見えるのか
00:11:14草地の小金を過ぎてくるもの
00:11:18そう
00:11:19ことなく人の形のもの
00:11:21コトの小金を過ぎてくるもの
00:11:32その農夫
00:11:42本当に俺が見えるのか
00:11:50本当に俺が見えるのか
00:12:05本当に俺が見えるのか
00:12:22眩い危険の海の底に
00:12:24悲しみは青々深く
00:12:28誠の言葉はここになく
00:12:32シュラの涙は土に降る
00:12:48フレッド
00:12:49ジャンス
00:12:49コトの小金を過ぎてくる
00:12:49コトの小金を過ぎてくる
00:12:49私は震えられに
00:12:50良い本気が起きてくる
00:12:50ユーチを山から
00:12:57見えるのか
00:12:57私は震えられに
00:13:05新しく空に行き着けば
00:13:09ほのじろく肺は縮まり
00:13:19この体
00:13:21空のみじんに散らばれ
00:13:29釈迦は言う
00:13:31無限に広がるこの三千大世界
00:13:34すなわち宇宙は
00:13:35みじんによって作られているのだと
00:13:39みじんとは科学の言葉で言えば原始である
00:13:43この宇宙のあらゆるものは
00:13:45みじんからなりみじんに変える
00:13:48その意味でこの世に存在するすべてのものは
00:13:51たとえそれが同性を肯るようなものであっても
00:13:56それは宇宙の一部なのであり
00:13:58自然の一部なのだ
00:14:00すなわちすべては私の子なのだ
00:14:07その一ヶ月後
00:14:09賢治は森岡から西へ12キロの小祝い駅に降り立
00:14:14って
00:14:14小祝い農場へ向かった
00:14:18大正11年5月21日
00:14:22この時書かれた詩が小祝い農場である
00:14:28その最初の一行はこう始まっている
00:14:35私はずいぶん素早く汽車から降りた
00:14:43私はずいぶん素早く汽車から降りた
00:14:47賢治はこの度に何か明確な目的があって
00:14:50そしてそれを成し遂げるために
00:14:52並々ならぬ決意を持ってこの度に臨んでいるようです
00:14:57そして2行目はこうなっています
00:15:01そのために雲がギラッと光ったくらいだ
00:15:05空の雲がその賢治の強い決意を読み取って
00:15:08頑張れよと励ますようにギラッと光ったというのです
00:15:12もちろん空の雲が光るということはなく
00:15:15これはおそらく賢治特有の例の心象スケッチです
00:15:20では賢治がこの度に秘めた目的
00:15:23そしてそれを成し遂げるために持った
00:15:25強い決意とは何だったのでしょうか
00:15:33あそこはちょうど曲がり目で
00:15:36継がれの草穂も揺れている
00:15:44死にはこれからゴリも歩くのだし
00:15:48倉掛山の下のあたりでゆっくり時間も欲しいのだ
00:15:52とあります
00:15:54おそらく賢治は小祝農場を通り抜けて
00:15:57約20キロほど先にある倉掛山の下のあたりで
00:16:01ゆっくり時間も欲しいある何かをしようとしているのです
00:16:06小祝農場という死はとても長いので
00:16:08いくつか割愛しながら先を急ぎます
00:16:14ひばりひばり
00:16:17銀のみじんの散らばる空へ
00:16:20たった今昇ったひばりなのだ
00:16:24黒くて素早く金色だ
00:16:41もう入り口だ
00:16:43小祝農場
00:16:46いつもの通りだ
00:16:47紺田野原や明日の矢部
00:16:52なんというたくさんの鳥だ
00:16:54鳥の小学校に来たようだ
00:16:59ぎうつくぎうつくぎうつくぎうつく
00:17:07賢治が本部の気取った建物と書いているこの洋館が
00:17:12小祝農場管理本部である
00:17:19賢治が見た風景がそのまま現在まで残っているのに
00:17:24誰しもが感動する
00:17:29賢治はこの管理本部を過ぎて
00:17:32さらに網張街道を行く
00:17:40市小祝農場は590行の長編市である
00:17:46風景や心象の描写が延々と続くが
00:17:49取り立てて何かが起こるわけでもない
00:17:54しかし460行目に至ったとき
00:17:57突然異様な人物が現れる
00:18:04畑の終わりのスカイライン
00:18:06グラグラの空のこっち側を
00:18:10少し猫背で精の高い
00:18:12黒い街灯の男が
00:18:14雨雲に銃を構えて立っている
00:18:21あの男がどこか気が変で
00:18:23急に鉄砲をこっちへ向けるのか
00:18:31この男は一体誰なのか
00:18:36その男は今度は
00:18:38唐松林のあたりに現れるのです
00:18:46唐松の目のクリソプレース
00:18:49駆けていく雲のこっちの射手は
00:18:52またもったいらしく自由を構える
00:18:59そしてこの不思議な男は
00:19:02その後こう描かれるのです
00:19:08自由射手は銀の空
00:19:12その男が今度は空中に浮かんでいるというのです
00:19:17それが何を意味するのかは
00:19:20私の想像力ではとても追いつきません
00:19:25その後
00:19:26ケンジは二人の友人らしき男と
00:19:29一緒に歩く幻想に囚われる
00:19:34ユリアが私の左を行く
00:19:39ペンペルが私の右にいる
00:19:44そう言った後
00:19:45ケンジはさっきの男についてこう記す
00:19:52
00:19:53さっき横へそれた
00:19:56あの唐松の列のとこから横へそれた
00:20:02幻想が向こうから追ってくるときは
00:20:06もう人間の壊れるときだ
00:20:10私ははっきり目を開いて歩いているのだ
00:20:13ユリア
00:20:14ペンペル
00:20:16私の遠い友達よ
00:20:22ケンジとユリアとペンペルと銃を持った男
00:20:27幻想の中の登場人物は四人組である
00:20:32明らかにケンジは同人誌アザリアの四人組を
00:20:36思い出している
00:20:39銃を持っている男が家内であろう
00:20:44なぜなら家内だけが兵役を体験しているからだ
00:20:50銃を持つ男はさっき横へそれた
00:20:55まさしくいなくなった家内である
00:21:03ケンジが目指していたのは倉掛山という山でした
00:21:06今後ろに岩手さんが見えていますが
00:21:09その手前にある馬の背のようになっている低い山があります
00:21:13あれが倉掛山です
00:21:17思い定めてきた言葉を吐き出すときが来た
00:21:22それは恋愛とは何なのかという問いへの答えであった
00:21:28ここでのケンジの言葉は難解である
00:21:30あえて噛み砕いてお伝えする
00:21:35この大宇宙の中で
00:21:37自分と愛する相手の人と
00:21:40そして世の中のすべてのものと一緒になって
00:21:44最高の幸福になろうとすること
00:21:48それを宗教的上層
00:21:50すなわち最上の精神と呼ぶことができる
00:22:00この世の人のことも
00:22:02この宇宙のことも忘れ
00:22:05自分ともう一人の相手とだけで
00:22:09どこまでも永久に生きようとする
00:22:14それを世間では恋愛と言っている
00:22:21そして精神的な結びつきもないのに
00:22:24相手と結ばれようとする
00:22:27それを性欲というのだ
00:22:31これがケンジの恋愛論である
00:22:34そしてケンジは言う
00:22:37人間は性欲から始まっても
00:22:39そこから恋愛へ
00:22:42そして宗教的上層という
00:22:44高みにもたどり着けるのだと
00:22:50性欲という言葉がいきなり出てきたのには
00:22:53とても驚きました
00:22:55ケンジはこの詩
00:22:56小祝い農場を書くことで
00:22:58自分なりの恋愛論を打ち出して
00:23:00そして自分の人生を区切り
00:23:02新しい一歩を踏み出そうとしていたのではないでしょうか
00:23:08大正11年7月
00:23:15体調を崩して自宅で伏せていた
00:23:18妹の俊子が
00:23:20ここ下猫桜にあった
00:23:22宮沢家の別荘で療養することになった
00:23:27別荘は現在は
00:23:29花巻農業高校の敷地内に
00:23:32移築されているが
00:23:33映像の上で当時に戻せば
00:23:37このように立っていた
00:23:441階に2間
00:23:452階に1間
00:23:48風呂付きだった
00:23:56ケンジと2歳違いの妹
00:23:58敏子は
00:24:00幼い時から成績が良く
00:24:02性格も控えめで
00:24:05花巻高等女学校を
00:24:06主席で卒業して
00:24:08東京の日本女子大学校に入学
00:24:12その後
00:24:13花巻高女の教師となったが
00:24:15病気のため退職していた
00:24:34トシコは
00:24:361階のこの八丈間に置かれていた
00:24:38木製のベッドの上で
00:24:40糖病生活を送ることになった
00:24:46ケンジは実際には
00:24:472階で寝泊りしていたそうなので
00:24:49行ってみようと思います
00:24:54暑い
00:24:56ここです
00:24:58失礼します
00:25:06結構広いですね
00:25:108階ですか
00:25:28ここに移ってすぐのことです
00:25:30トシコがケンジにこう訴えたと言います
00:25:36ほら
00:25:37あど死んでもいいはんて
00:25:40あの林の中さえぐだい
00:25:45動いて熱は高くなっても
00:25:49あの林の中でだら
00:25:51本当に死んでもいいはんて
00:25:58後で私は
00:25:59死んでもいいから
00:26:01あの林の中に行ってみたい
00:26:04動いて熱が高くなっても
00:26:06あの林の中でなら
00:26:08本当に死んでもいいのだから
00:26:12ケンジは
00:26:14自分の忙しさにかまけて
00:26:16トシコのこの願いを
00:26:17叶えてやることはしませんでした
00:26:23トシコが別荘で療養生活を始めてから3ヶ月後
00:26:28トシコをめぐって
00:26:29何か重大なことが起こったことを示す詩が
00:26:33ケンジによって書かれている
00:26:40タイトルはマサニエロという奇妙なものだった
00:26:46タイトルの意味は説明されることはなかった
00:26:50その詩はこう始まる
00:26:57城の鈴木の波の上には
00:27:00イタリア製の空間がある
00:27:05花巻城の天守閣のあったあたりに
00:27:09イタリア製の空間があるとケンジは言うのだ
00:27:16マサニエロというのは
00:27:18イタリアのナポリを舞台にした
00:27:20歌劇のタイトルであった
00:27:23オペラ好きのケンジは
00:27:25マサニエロ序曲のレコードを持っていた
00:27:2917世紀のナポリを支配していた
00:27:31スペインの総督が住んでいた
00:27:34館が過激マサニエロの舞台であった
00:27:42ケンジは花巻城の城跡に
00:27:45スペインの総督の館を重ね合わせたのだ
00:27:51なぜ花巻城がナポリの総督の館に見えたのか
00:27:56そもそもこのマサニエロというオペラは
00:27:58どういう物語なのか
00:28:00実はある兄と妹の物語なんです
00:28:03そしてその兄の名前がタイトル通り
00:28:06マサニエロ
00:28:08今回はそのマサニエロをケンジに
00:28:10そしてマサニエロの妹を
00:28:11ケンジの妹をトシコに置き換えて
00:28:13紹介してみたいと思います
00:28:18マサニエロはナポリ近郊の
00:28:20漁村の漁師であった
00:28:25マサニエロには美しく聡明な妹
00:28:29フェネンラがいた
00:28:33ナポリの総督の息子が
00:28:35マサニエロの妹に一目惚れし
00:28:38甘い言葉をかけてきた
00:28:43妹はその言葉を信じ
00:28:46総督の息子を愛してしまった
00:28:53総督の息子は彼女のミサオを奪って
00:28:57館の中に閉じ込めた
00:29:00実は総督の息子には
00:29:02婚約者がいたのだった
00:29:05マサニエロの妹のことは
00:29:07世間に知られてはならなかった
00:29:13マサニエロの妹フェネンラは
00:29:15隙を見て館を逃げ出し
00:29:19兄に告げた
00:29:21兄は激行し
00:29:23漁師の仲間たちと組んで
00:29:25反乱を起こし
00:29:28総督の館から
00:29:30スペインの支配者を追い出した
00:29:35妹は命乞いをしてきた
00:29:37総督の息子を
00:29:39マサニエロに頼んで
00:29:40逃がしてやった
00:29:45こうしてマサニエロは
00:29:46妹のために
00:29:48復讐を果たしたのである
00:29:56反乱は成功したのですが
00:29:58漁師たちの間で仲間割れが起こってしまい
00:30:01マサニエロは殺されてしまいます
00:30:03そしてその事実を知った妹は
00:30:05ショックのあまり自ら身を投げて
00:30:07海に身を投げて死んでしまいます
00:30:10これがマサニエロという
00:30:13兄と妹の物語です
00:30:15そしてこのマサニエロは
00:30:17ケンジが大正11年10月10日に書いていますが
00:30:20なぜその日にケンジは
00:30:22このマサニエロを書かなければならなかったのか
00:30:25実はですね
00:30:26その契機となる出来事が
00:30:28ある直前に
00:30:28ここで起こったとされています
00:30:32今私が持っているのは
00:30:34妹のトシコさんが書いた手記です
00:30:37なぜ手袋をしているかというと
00:30:38実はこれは本物で
00:30:40実際にトシコさんが
00:30:41ここに書いたものです
00:30:45妹のこの手記を読んだことが
00:30:48ケンジにマサニエロという詩を
00:30:50書かせたのだと思われます
00:30:53トシコは手記の中で
00:30:55こう語り始めています
00:31:00思いもよらなかった
00:31:02自分の姿を
00:31:04自分の内に見ねばならぬ時が来た
00:31:08最も触れることを恐れていた事柄について
00:31:13触れねばならぬ時が来た
00:31:18トシコが手記で語っていたこととは
00:31:21一体何だったんでしょうか
00:31:29宮沢賢治記念館に
00:31:30一丁のバイオリンが展示されている
00:31:35トシコが
00:31:36花巻工場4年生の春
00:31:40新しく赴任してきた音楽教師に
00:31:42バイオリンの個人指導を受けるために
00:31:45わざわざ東京から取り寄せたバイオリンである
00:31:54男女のことに無知ゆえに
00:31:56トシコは教師に対して
00:31:59奔放で危うい行為を
00:32:01重ねるようになっていったのだ
00:32:07トシコの初恋にはライバルがいた
00:32:11アルファベットの王という同級生である
00:32:15彼女は美貌で音楽にも引い出ていた
00:32:18しかしトシコはめげなかった
00:32:25私の行為は
00:32:27芸術的な感動を与えてくれる人に対する
00:32:31当然の義務なのだ
00:32:37大正4年3月
00:32:39地元市が音楽教師と2人の女子生徒の
00:32:43三角関係の恋愛事件を
00:32:46匿名ではあるがスキャンダル記事にした
00:32:50記事は3日間の連載だった
00:32:56トシコを思わせる女子生徒は
00:32:58次のようにからかわれていた
00:33:02学術優等貧困法制と
00:33:05冷々しく書き記された
00:33:07幾枚かの症状を重ねて
00:33:10人からは
00:33:11後ろ指一度刺されたことのない女子生徒も
00:33:15一丁恋い焦がれた先生に
00:33:18思い詰めた心の届かぬのみか
00:33:21あわれ片思いに終わってしまったのである
00:33:26この記事が出てから
00:33:27相手の教師は
00:33:29自らの身の保全のため
00:33:31トシコを避けるようになった
00:33:35傷ついたトシコは
00:33:37ふるさとを追われるように東京へ出て
00:33:40日本女子大学校に学ぶ道を選ばざるを得なかった
00:33:51手記は
00:33:53それからの五年間にわたる
00:33:55自らの苦しみ
00:33:56悩みを記したものだった
00:34:02私は
00:34:03過去の自分を
00:34:05静止しなければならない
00:34:08悪びれずに
00:34:16私の意識が
00:34:18神を求め
00:34:19祈りに燃えていると思われる時にも
00:34:23光の届かぬ
00:34:24暗い部分が
00:34:26ありはしなかったか
00:34:31この部分こそ
00:34:34今は恐れなくいよう
00:34:36この部分こそは
00:34:38私の
00:34:39生に関する
00:34:41意識の住処であったのだ
00:34:49この手記を初めて検事が見た時
00:34:53どう思ったのでしょうか
00:34:55あの温厚だったと言われる検事が
00:34:58その裏切った先生や
00:35:00そのことを記事にした新聞記者に対して
00:35:04強い憎しみや
00:35:05復習心さえ抱いてしまうようになったのです
00:35:12大正11年10月10日
00:35:15検事は農業実習の授業の後
00:35:18花巻城跡に向かった
00:35:22初恋事件の頃
00:35:23検事は森岡に下宿して
00:35:26森岡高等農林学校への受験勉強に励んでいた
00:35:31トシコの身に何があったか
00:35:34手記で初めて知ったのである
00:35:38トシコ
00:35:40人の名前を何遍も風の中で繰り返して
00:35:44差し支えないか
00:35:48人の名前とはマサニエロのことだ
00:35:52検事はマサニエロのように
00:35:54復習の気持ちを抑えかねていた
00:36:10マサニエロ
00:36:14マサニエロ
00:36:18マサニエロ
00:36:23大正11年11月27日
00:36:30トシコの病室は離れの8畳だった
00:36:35隙間風よけに屏風が立てられ
00:36:38茅が吊られ
00:36:40火鉢に炭火が燃え
00:36:42鉄瓶で湯が沸かされていた
00:36:46花巻はその日みぞれだった
00:36:50土地の言葉では
00:36:52みぞれは雨湯樹という
00:37:01雨湯樹
00:37:04どうして知っていけんじゃ
00:37:12雨湯樹
00:37:16とって知ってきんじゃ
00:37:25雨湯樹を取ってきてください
00:37:29トシコのその言葉を聞いて
00:37:31ケンジはトシコが自らの死期を悟って
00:37:37最後に冷たい雨湯を口に含もうとしているのだと思った
00:37:53今日のうちに
00:37:55遠くへ行ってしまう
00:37:58私の妹よ
00:38:01みぞれが降っていて
00:38:04表は変に明るいのだ
00:38:09雨湯樹
00:38:13とって知ってけんじゃ
00:38:19薄赤く
00:38:21一層陰酸な雲から
00:38:24みぞれは
00:38:25びちょびちょ降ってくる
00:38:31雨湯樹
00:38:33とって知ってけんじゃ
00:38:38ああ
00:38:39トシコ
00:38:41死ぬという今頃になって
00:38:44私を一生明るくするために
00:38:47こんなさっぱりした雪の一晩を
00:38:50お前は私に頼んだのだ
00:38:54ありがとう
00:38:55私のけなげな妹よ
00:39:00本当に
00:39:01今日お前は別れてしまう
00:39:05ああ
00:39:06あの閉ざされた病室の
00:39:08暗い屏風やかやの中に
00:39:11優しく青白く燃えている
00:39:15私のけなげな妹よ
00:39:23生まれてくる
00:39:25だって
00:39:27今度は
00:39:30ゴーダーには
00:39:32りゃのことばかりで
00:39:35苦しまないように
00:39:40生まれてくる
00:39:47お前が食べる
00:39:49この二晩の雪に
00:39:51私は今
00:39:52心から祈る
00:39:55どうかこれが
00:39:57天井のアイスクリームになって
00:40:00お前と
00:40:01みんなとに
00:40:03清い資料をもたらすように
00:40:07私の
00:40:09すべての幸いをかけて
00:40:12願う
00:40:25ここは東北温泉の花巻駅です
00:40:29ケンジは妹のトシ子が亡くなった
00:40:31次の年
00:40:32大正12年の7月31日に
00:40:35青森行きの夜行列車に乗って
00:40:37カラフトを目指します
00:40:39カラフトは現在では
00:40:40ロシア寮のサハリン州と
00:40:42呼ばれている場所です
00:40:45そしてその列車の中で
00:40:46ケンジは
00:40:46青森万華という詩を作ります
00:40:49実はこの青森万華の中では
00:40:51後の
00:40:52童話銀河鉄道の夜に出てくるような
00:40:55銀河の中を
00:40:55予議者が走るイメージが
00:40:57初めて登場するのです
00:40:59当時は今と違って
00:41:00蒸気機関車が列車を
00:41:02引っ張っていましたが
00:41:03その姿を
00:41:04記録映像の中で
00:41:05ご覧いただくことができます
00:41:07ではその映像を
00:41:08ご覧いただきながら
00:41:09青森万華をお聞きください
00:41:27こんな闇夜の野原の中を
00:41:29行くときは
00:41:30客車の窓は
00:41:32みんな
00:41:33水族館の窓になる
00:41:38乾いた電信柱の列が
00:41:40せわしく映っているらしい
00:41:44記者は
00:41:45銀河系の
00:41:46レイローレンズ
00:41:48大きな水素のリンゴの中をかけている
00:41:53リンゴの中を走っている
00:42:10青森万華は
00:42:11亡くなってしまった
00:42:12妹の敏子を悲しむために生まれた
00:42:14死だったのです
00:42:16自分の悩みを誰にも打ち明けることができずに
00:42:19孤独になくなってしまった妹の敏子
00:42:22そしてそれに対して
00:42:23何もしてあげることができなかった賢治
00:42:26その後悔や悲しみから生まれたのが
00:42:28この青森万華や
00:42:29あの英傑の朝だったと思われます
00:42:32つまりこの青森万華に出てくる
00:42:34銀河鉄道のイメージは
00:42:36亡くなってしまった妹
00:42:38敏子の万華として生まれたのです
00:42:43私たちが死んだと言って泣いた後
00:42:47敏子はまだまだこの世界の体を感じ
00:42:51熱や痛みを離れた
00:42:54ほのかな眠りの中で
00:42:57ここで見るような夢を
00:42:59見ていたかもしれない
00:43:05妹敏子との魂の交信を求めての旅だったが
00:43:09その願いは叶わなかった
00:43:14ケンジは自分と敏子をモデルにした短い童話を
00:43:23書いた
00:43:27兄の名はチュンセ
00:43:29妹の名はポーセと名付けられた
00:43:33あの童話双子の星の双子の童子の名前と同じだ
00:43:37った
00:43:41妹ポーセは兄チュンセが取ってきた飴雪を食べて死
00:43:46んだ
00:43:47兄は死んだ妹がどこへ行ったのかと探し回るが見
00:43:51つからない
00:43:53その時お釈迦様とお母式ある人が
00:43:56コーチュンセに言う
00:44:00チュンセがポーセを探すことは無駄だ
00:44:04なぜならどんな人もみんなみんな
00:44:07鳥や魚や獣や虫と
00:44:09昔からのお互い兄弟なのだから
00:44:14妹ポーセは死んだ後他の兄弟になっているか分からないの
00:44:18だから
00:44:19探しても無駄だ
00:44:22もしチュンセが勇気のある本当の男の子なら
00:44:26大きな勇気を出して
00:44:28すべての生き物の本当の幸せを探さなければいけない
00:44:34なぜそこへ向かってまっしぐらに進まないのか
00:44:40この言葉に押されるように
00:44:42ケンジはみんなの幸せを求めて
00:44:46銀河鉄道の旅へ出かけるのです
00:44:52道は銀河鉄道の夜の誕生である
00:45:01そのあらすじは少年ジョバンニと親友カンパネルラが
00:45:05天の川沿いに走る銀河鉄道に乗って旅をする物語
00:45:10である
00:45:13ケンタウル祭の星祭りの夕方
00:45:17少年ジョバンニが町の近くの丘に登っていると
00:45:22どこからともなく
00:45:24銀河ステーションという声が聞こえ
00:45:27気がつくと銀河鉄道に乗っていました
00:45:32目の前の席には
00:45:34親友のカンパネルラが乗っていました
00:45:39銀河鉄道は幻想大四次元の世界を走っていて
00:45:44ジョバンニやカンパネルラは
00:45:46地球という第三次元世界から来た乗客であった
00:45:51客車には幻想大四次元世界に住む
00:45:54鳥を捕る人や東大森などが乗っていた
00:45:58地球からはカトリックな雨さんも乗っていた
00:46:04途中から10歳ぐらいの姉と弟
00:46:08そしてその二人の家庭教師の青年が乗ってくる
00:46:12三人は大きな客船の乗客だったのだが
00:46:15船が氷山にぶつかった時
00:46:17他の人を助けるために救命ボートに乗らず
00:46:21船と共に海に沈んで死者となって乗ってきたのだ
00:46:27実は地球からの乗客のほとんどは
00:46:31他人の命を救うために
00:46:33自分の命を失った人たちだった
00:46:40サザンクロス駅に着いた時
00:46:42ほとんどの乗客が降りて行った
00:46:46そこは天国への入り口だった
00:46:52ジョバンニがカンパネルラに
00:46:55僕たちは二人っきりになったね
00:46:58僕きっとみんなの幸いを探しに行く
00:47:02僕たちどこまでも一緒に行こうね
00:47:05と言って振り返ってみると
00:47:06カンパネルラの姿は消えていました
00:47:11ジョバンニは泣き叫びました
00:47:19気がつくと元の丘の上にいたのでした
00:47:24ジョバンニが町へ降りて行くと
00:47:26カンパネルラは川で溺れた同級生を救って
00:47:30水死した
00:47:32と知らされたのでした
00:47:35カンパネルラは死者だったのです
00:47:41これが銀河鉄道の夜のあらすじである
00:47:49銀河鉄道の夜の原型ができたのは
00:47:53大正13年の12月頃だと言われています
00:47:56実際その頃ケンジは親しい友人たちを招いて
00:47:59銀河鉄道の夜の読み聞かせをしていました
00:48:03そして年が明けた1月5日
00:48:05ケンジは突然旅に出ます
00:48:08その旅の目的地は陸中海岸でした
00:48:11ですがその陸中海岸の旅の目的は
00:48:14未だに何だったのか分かっていません
00:48:21大正14年が明けて早々の1月5日
00:48:26ケンジは突然旅に出る
00:48:29いくつかの約束をキャンセルしての急な旅立ちだ
00:48:33った
00:48:34旅の目的は何だったのだろうか
00:48:39ケンジは花巻駅から東北本線で北上し
00:48:44現在の青森県八戸駅で八戸線に乗り換えた
00:48:51八戸線は南に下って再び岩手県に入る
00:48:56終点は種市駅だった
00:49:00当然ケンジは種市で降りた
00:49:04当時八戸線は種市までしか通っていなかった
00:49:10種市から二十数キロ南の九字駅から
00:49:13鉄道は再び始まり釜石に至る
00:49:19種市で降りたケンジは
00:49:21九字までの二十数キロを徹夜で歩き通した
00:49:261月6日の明け方
00:49:28九字の侍浜の海岸で詩を書いている
00:49:33行宮への嫉妬である
00:49:48バラ奇跡や雪のエッセンスを集めて
00:49:53光気高く輝きながら
00:49:58その精霊なサファイア風の惑星を
00:50:02溶かそうとする明け方の空
00:50:08サファイア風の惑星とは土星のことである
00:50:12ケンジは土星を溶かしてしまう明け方の空に嫉妬
00:50:16している
00:50:18ケンジはこの土星についてこう書いている
00:50:23僕があいつを恋するために
00:50:29ケンジは土星に恋しているというのだ
00:50:34そして死はこう締めくくられている
00:50:39百の岬が今明ける
00:50:43万葉風の青海原よ
00:50:52その後ケンジはシーらしい詩を作らず
00:50:561月9日に花巻に戻った
00:51:02一体ケンジの陸中海岸への旅の理由は何だった
00:51:06のだろう
00:51:14寒い
00:51:22今回は八戸線に乗って種市駅に来ています
00:51:28ということでここは岩手県の種市です
00:51:33大正14年1月5日午後5時18分の到着の最終
00:51:40日に乗って
00:51:40宮沢ケンジはここに降り立ったと思われています
00:51:45ご覧のとおり真っ暗です
00:51:461ボスから1時間ぐらいですかね
00:51:50冬の夜なので
00:51:52終電できた5時18分以降は結構暮れていたんじゃないかと
00:51:57あとはやっぱり大正時代ですので
00:52:00こういう街灯だったり
00:52:01駅前にあるコンビニみたいなものは当然なかったので
00:52:04もっと暗くてもっと星は見えていたんじゃないかなと
00:52:09想像できます
00:52:12そして普通考えると
00:52:15終電できたということはこの種市で一泊して
00:52:18次の日歩いて向かうということが考えられると思うんですが
00:52:22なんと不可解なことに
00:52:25その距離を
00:52:271月という冬の中
00:52:29しかもまあ
00:52:30雪もちらついていますが
00:52:32今日は天気がいいですけど
00:52:35雪が残る中
00:52:38夜の雪道を夜通し歩いていったと
00:52:44寒い
00:52:51凍ってるなもん
00:52:52危ない
00:52:56ふぅ
00:52:57ふぅ
00:53:01種市駅を出て
00:53:02真っ暗な太平洋が見えた時の心象を
00:53:06検事は糸への出発に書き留めている
00:53:15ガクシュたちは
00:53:17青ざめて死に
00:53:19エイジは水色のもやに生まれた
00:53:26ガクシュたちが海に沈んで死んだというのは
00:53:30明治45年4月のタイタニック号遭難の折
00:53:35演奏しながら船とともに沈んでいった
00:53:39楽団員たちを想起させる
00:53:45乗客2200名を乗せて
00:53:47イギリスからアメリカニューヨークに
00:53:49航行していた巨大客船タイタニックが
00:53:53カナダの沖合で氷山に衝突した
00:53:58救命ボートの数が足りなかったため
00:54:01女性と子どもが優先的にボートに乗せられ
00:54:05乗員乗客のうち1500名を超える成人男子たちが
00:54:11賛美歌、主よ身元に近づかんの演奏を聴きなが
00:54:15
00:54:15沈んでいったエピソードは世界中に報じられた
00:54:21あ、聞こえる聞こえる
00:54:30波の音が聞こえますね
00:54:33あ、見えた見えた
00:54:35海が見えますね
00:54:37うんうん
00:54:39あ、あそこが船着き場になってますね
00:54:43ここからでもよくわかる
00:54:44堤防があるんで、まあ港ですね
00:54:50うん、よく見えますね、ここからは
00:54:52あそこには船もあるし
00:54:56ここが一番木もないし
00:55:01すぐ近くに海があるんで、水平線もおそらく遮るも
00:55:04のはないと思うので
00:55:07ちょっとまあ、星が見えるといいんですけど
00:55:11あと土星ですよね
00:55:14土星が見えて、その土星と何が見えるか
00:55:20それを見に
00:55:22賢治は
00:55:24ここだと思うんですけど、まあ
00:55:27ここじゃなかったにしても、おそらく見たかった方角と景色は
00:55:31きっと一緒なので
00:55:33100%ここではなかったとしても、ほぼ同じ景色を見ることが
00:55:37できる位置にいると
00:55:40いう確信はあります
00:55:45私たちは、侍浜の海岸で夜明けを待つことになったのです
00:55:49
00:55:51水平線の上には、厚い雲がかかったままです
00:56:08大正14年1月5日から6日の朝にかけての
00:56:12空の様子を見る方法はないか
00:56:16私たちは、東京三鷹の国立天文台のプラネタリウ
00:56:21ムを訪ねた
00:56:27迎えてくれたのは、武蔵野美術大学映像学科の三浦仁
00:56:32教授である
00:56:33よろしくお願いします
00:56:34先日、ちょっとある星空を見に、岩手県の方に行ったんですけど
00:56:39ちょっと曇ってて、雪も降ってて、見えずに
00:56:42それで、大正14年の1月5日から6日にかけての星空を
00:56:48こちらで再現して見れると伺ってきたんですけど
00:56:51見させていただけますか
00:56:53はい、大丈夫です
00:56:55じゃあ、こちら
00:57:05では、大正14年ということですので
00:57:081925年、日にち変わりまして
00:57:111月6日の0時からお見せしたいと思います
00:57:16すごい、こんなにいっぱい
00:57:19この時間、まだですね、こちらの西の方に月が残ってますね
00:57:24はい、そして星座の1月ですから
00:57:27この辺りにオリオン座とかきれいについてますね
00:57:30オリオン座なんか見えたんですよね
00:57:32その横にはですね、これシリウスっていう
00:57:34空の一番明るい光線なんですね
00:57:37これが光ってますね
00:57:39じゃあちょっと時間を…
00:57:41はい、少し時間を進めてみましょう
00:57:43そろそろ2時半ぐらいですかね
00:57:47土星が…
00:57:48そうですね、こちらに見えてますね
00:57:50もう見れるんですか?
00:57:51見れますね
00:57:54はぁ…
00:57:57なるほど
00:57:59だんだん上がってきます
00:58:02それで、動かしてください
00:58:04そろそろ出てきました
00:58:05ちょっと止めてもらって…
00:58:08ケンタウルスも見える?
00:58:11そうですね、ケンタウルス見えますよ
00:58:14ケンタウルスって夏の星座で
00:58:17上半身だけ南の方に見えるっていう…
00:58:20そうですね、よくご存じ
00:58:21冬、これだって1月ですもんね
00:58:231月なんですけど、時刻がもう朝方に近いので
00:58:28夏の星座も見えるんですよ
00:58:30夏の星座も冬に見えるんですね
00:58:33はいですね
00:58:36地球は1年365日をかけて太陽を一周する
00:58:41夏に図の示すところにいた地球は、半年後の冬には真反
00:58:46対の位置にいる
00:58:48地球は24時間かけて自転している
00:58:52夏の昼から夜にかけての夕方に地表から見える星座は
00:58:57冬の夜から朝にかけての明け方に地表から見える星座
00:59:01と同じなのである
00:59:05ちょうど4時ぐらい、4時前後に…
00:59:08ケンタウルスと土星が一応…
00:59:09そうですね、並んで見えて…
00:59:11並んでこう、出会っている瞬間…
00:59:13そうですね…
00:59:15あ、じゃあこう…そうか…
00:59:17ケンタウルスと土星がその…
00:59:20出会っている状態っていうのは2時間ぐらいですか?
00:59:24そうでしょうね…
00:59:25ケンタウルスが待ててきてから…
00:59:27はぁ、その2時間…
00:59:30ケンジが使っていた星座早見版でも…
00:59:33ケンタウルスが冬の夜明けに見えることが確認できる
00:59:37
00:59:38ケンジは、冬でもケンタウルスが見えることを知っていたは
00:59:43ずだ…
00:59:49あの旅の目的は…
00:59:51ケンタウルスと土星が出会うのを確かめるためだ
00:59:54ったのではないか…
01:00:00私たちは、改めて…
01:00:03ケンジとケンタウルスの関係を最初から洗い直して
01:00:07みることにした…
01:00:09ケンタウル祭をどのようなものと考えていたかを示す手
01:00:13がかりが…
01:00:14銀河鉄道の夜の下書き口にあった…
01:00:19最初に書いたケンタウル祭の文字を一旦消して…
01:00:23西洋祭としようとしたことが分かる…
01:00:27西洋祭とは星祭り…
01:00:29すなわち七夕のことである…
01:00:33七夕とは、7月7日…
01:00:36彦星と織姫が天の川を渡って出会う夜である…
01:00:41ケンジはケンタウル祭に七夕のイメージを重ねて
01:00:45いたのだ…
01:00:47ちなみに、1月6日の半年前は…
01:00:507月7日…七夕である…
01:00:54ケンジが1月6日にこだわって旅をしたのは…
01:00:58その日が冬の七夕だったからなのかと気づかされる…
01:01:04そして、1月6日の明け方の様子を読んだ…
01:01:07ケンジの文語誌が…
01:01:09ケンタウル祭とは何かを解き明かす…
01:01:12決め手となりました…
01:01:16ヤブレス少年の歌えるです…
01:01:26君にたぐれる、かの星の…
01:01:30今、溶けゆくぞ、悲しけれ…
01:01:34君だと思って見ていたあの惑星が…
01:01:37今、夜明けの光に溶けていくのが悲しい…
01:01:42さながら君の言葉もて…
01:01:46我をこととい、燃えけろ…
01:01:49まるで君が私に声をかけようと訪れてきて…
01:01:53炎のように輝いていたのに…
01:01:58土星が家内であるならば…
01:02:01僕はケンタウルスです…
01:02:03その土星が消えた…
01:02:05ヤブレス少年というのは…
01:02:07明らかに恋にヤブレス少年…
01:02:10つまり、失恋の歌です…
01:02:13ケンタウルサイとは何かという謎が解けてきたようである…
01:02:20ケンタウルサイ…
01:02:22それは、ケンタウルスと土星が出会う夜であり…
01:02:25ジョバンニとカンパネルラが出会う夜のことであり…
01:02:29ケンジと家内が出会う夜のことだったのです…
01:02:33ケンジは、家内をサファイア色に光り輝く土星
01:02:37にたとえ…
01:02:38そして、横島な修羅である自分を…
01:02:42半人半馬の怪物…
01:02:44ケンタウルスに重ね合わせていたのです…
01:02:52童話銀河鉄道の夜は…
01:02:54大阪家内に捧げられた物語である…
01:02:58という視点から…
01:02:59改めて物語を見直してみよう…
01:03:06イタリアとおぼしき町に住む…
01:03:08少年ジョバンニは…
01:03:10ケンタウルサイの日の夕方…
01:03:12町の近くの丘にやってくる…
01:03:18すると、どこかで…
01:03:19不思議な声が…
01:03:22銀河ステーション…
01:03:24銀河ステーションという声がしたと思うと…
01:03:29いきなり目の前が…
01:03:31パーッと明るくなって…
01:03:35気がついてみると…
01:03:38銀河鉄道の乗客になっていて…
01:03:41すぐ前の席に…
01:03:43性の高い子供が…
01:03:45窓から頭を出して…
01:03:47外を見ているのに気がつきました…
01:03:51それは…
01:03:52カムパネルダだったのです…
01:03:57こうして、ジョバンニとカムパネルラは…
01:04:00銀河鉄道の旅をすることになる…
01:04:07やがて、3人の乗客が乗り込んでくる…
01:04:15青年は…
01:04:16女の子と男の子の家庭教師である…
01:04:20青年と姉と弟は…
01:04:24イギリスから大きな客船に乗った…
01:04:32その船が氷山にぶつかって…
01:04:35いっぺんに傾き…
01:04:37もう沈みかけました…
01:04:41ボートには…
01:04:43とてもみんなは乗り切らないのです…
01:04:47ボートまでのところには…
01:04:49まだまだ小さな子供たちや親たちがいて…
01:04:53とても押しのける勇気がなかったのです…
01:05:02このまま神の見舞いに行くほうが…
01:05:05本当に…
01:05:06この方たちの幸福だとも思いました…
01:05:10このまま神の見舞いに行くほうが…
01:05:13このまま神の見舞いに行くほうが…
01:05:28このまま神の見舞いに行くほうが…
01:05:32こうして…
01:05:333人は銀河鉄道の乗客となり…
01:05:36天国へ向かうのです…
01:05:39やがて…
01:05:41銀河鉄道はサザンクロス駅に近づきます…
01:05:45そこは…
01:05:47天国の入り口でした…
01:05:52青年と姉と弟は…
01:05:55他の乗客と一緒に…
01:05:57汽車を降りて行きます…
01:05:59皆…
01:06:00他人の命を助けて…
01:06:03自らの命を失った人たちなのでしょう…
01:06:08しかし不思議なことに…
01:06:10同じような理由で死者になったカンパネルラは…
01:06:13降りないのである…
01:06:16カンパネルラが死者であることを知らないジョバンニは…
01:06:20カンパネルラに話しかける…
01:06:24カンパネルラ…
01:06:26また僕たち…
01:06:27二人きりになったね…
01:06:29どこまでも…
01:06:30どこまでも一緒に行こう…
01:06:35やがて…
01:06:36綺麗な野原が見えてきました…
01:06:39すると…
01:06:40カンパネルラが…
01:06:42突然叫ぶのです…
01:06:46ああ…
01:06:48あ…
01:06:48あそこの野原はなんて綺麗だろう…
01:06:51あそこが…
01:06:52本当の天井なんだ…
01:06:54少年…
01:06:571…
01:06:58カンパネルラは…
01:06:59そっちを見ましたけれども…
01:07:01そこは白く煙っているばかりでした…
01:07:06分野りそっちを見ていましたら…
01:07:092本の電信柱が…
01:07:11ちょうど両方から腕を組んだように…
01:07:14赤い腕着を連ねて立っていました
01:07:21カムパネルラ僕たち一緒に行こうね
01:07:28ジョバンニがこう言いながら振り返ってみましたら
01:07:33カムパネルラの形は見えず
01:07:36ジョバンニは鉄砲弾のように立ち上がりました
01:07:45そして窓の外へ体を乗り出して
01:07:49力いっぱい泣き出しました
01:07:54もうそこらが一変に真っ暗になったように思いました
01:08:07ふと気づくとジョバンニは元の草農家に戻っていました
01:08:14町へ行ってみると
01:08:15カムパネルラは川で溺れた同級生を助けて
01:08:21水死したことを教えられたのでした
01:08:29銀河鉄道の夜は何度も書き直されたが
01:08:33結局未完成のまま終わっている
01:08:42カムパネルラが突然いなくなってしまいましたが
01:08:45一体どこに行ったのでしょうか
01:08:48カムパネルラは野原のような場所を指差して
01:08:51あそこが本当の天国だと言いました
01:08:55そしてその野原には赤い2本の腕着の電信柱が
01:08:59こう腕を組むように立っていたのです
01:09:02つまり賢治はその場所こそが
01:09:04カムパネルラにとっての天国だと伝えたかったのです
01:09:07そしてもしかしたらそれは
01:09:10賢治の願望だったのかもしれません
01:09:16大正14年6月25日
01:09:20賢治は家内に手紙を出した
01:09:29来診は私も教師を辞めて
01:09:33本当の客庄になって働きます
01:09:47私もとありましたが
01:09:49実は家内はすでに勤めていた新聞社を辞め
01:09:52実家に戻って農業を始めていました
01:09:55おそらくそのことを賢治にも伝えていたのでしょう
01:09:58賢治はその家内に応じて
01:10:01賢治もここにあった別荘に一人移り住んで
01:10:03農地を耕す生活を始めました
01:10:06実際には北上川の川岸にあったそうなんですけど
01:10:12見えますかね
01:10:13あの白い柱が立っている
01:10:15あの辺りが賢治の畑だったそうです
01:10:22すぐそこに北上川が流れています
01:10:25そしてここは賢治
01:10:26自公の地ということで
01:10:28昼間は賢治はここで農作業をしていましたが
01:10:31賢治が生まれて初めて
01:10:32本気で百姓になろうと決意した
01:10:35その場所でもあります
01:10:42そして夜は地元の人たちを集めて
01:10:44この場所に集まって
01:10:45音楽会や公演を開いていました
01:10:48まさに賢治が今までやりたかった
01:10:50農業と芸術の融合を図っていました
01:10:53その活動の拠点として
01:10:55その組織に名付けたのが
01:10:57ラス知人協会でした
01:10:59まさにこの場所が
01:11:00そのラス知人協会の拠点となった場所です
01:11:04しかし残念ながらその頃になると
01:11:08賢治は欠格に侵され
01:11:10病床に伏せることが多くなりました
01:11:14昭和6年に雨にも負けず
01:11:17風にも負けない丈夫な体になって
01:11:20苦しむ人々を救いたい
01:11:22という詩を手帳に記し
01:11:24昭和8年9月
01:11:2737歳の生涯を閉じたのでした
01:11:32病床にありながら
01:11:34賢治は農民のために
01:11:35何十枚という肥料設計を書いて
01:11:38初心を貫きました
01:11:44一方穂坂家内は
01:11:46大正14年に結婚し
01:11:49翌15年
01:11:51青年訓練所の山梨地方の養殖に就き
01:11:54以来一貫して
01:11:56若者の農業指導に携わり
01:12:00昭和12年2月
01:12:0241歳で
01:12:03がんのために亡くなった
01:12:07二男一女の父だった
01:12:12生前家内は
01:12:13子供たちにも詩人にも
01:12:16宮沢賢治という詩人は
01:12:18自分の親友であると話していたという
01:12:25生涯
01:12:25賢治からの手紙を大事にしていた
01:12:29自分からも賢治宛に
01:12:31多くの手紙を出している
01:12:35二人の心の交流は
01:12:37一生続いていた
01:12:51
01:12:51未完成のままの銀河鉄道の夜の原稿が
01:12:56私たちに残されている
01:13:01賢治は
01:13:03死者としての家内を
01:13:04二本の伝心柱の立っている天国に行かせた
01:13:08とするならば
01:13:10賢治は
01:13:11自分が死んだ後
01:13:13家内のところへ行こうとしたのではないか
01:13:15
01:13:16私たちは考えた
01:13:24その手がかりが
01:13:25童話銀河鉄道の夜に残されているのではないか
01:13:30私たちは
01:13:31童話銀河鉄道の夜を
01:13:34読み直してみることにしました
01:13:42そして
01:13:43物語の終わり近くで
01:13:45二つの奇妙なエピソードに気づいた
01:13:51まず
01:13:52男の子と女の子が
01:13:54突然論争を始める
01:14:00あれ
01:14:00きっと双子の星のお宮だよ
01:14:05双子のお星様のじゃないわ
01:14:07きっと別の方だわ
01:14:11僕も知ってない
01:14:13双子のお星様が野原に遊びに出て
01:14:15カラスと喧嘩したんだろ
01:14:18嫌だわターちゃん
01:14:19そうじゃないわよ
01:14:21それは別の方だわ
01:14:25今見えているお宮は
01:14:27双子の星のお宮なのか
01:14:30それとも
01:14:30別の誰かのお宮なのか
01:14:32と二人は言い争っている
01:14:37このエピソードは
01:14:38突然プツリと終わる
01:14:44そしてもう一つ
01:14:45奇妙なエピソードが挟まれる
01:14:52向こうとこっちの岸に
01:14:54星の形と
01:14:55ツルハシを描いた
01:14:57棒が立っていました
01:15:03両岸に立っていた旗を
01:15:06ケンジは
01:15:07棒と書いている
01:15:10棒は
01:15:10ヤクという動物の
01:15:12尻尾の毛を飾りとした旗のことである
01:15:17日本にはない旗だ
01:15:22あれ何の旗だろうね
01:15:25さあわからないね
01:15:27鉄の船が置いてあるね
01:15:30橋を架けるとこじゃないでしょうか
01:15:35ああ
01:15:36あれ
01:15:37後兵の旗だね
01:15:38過境演習をしているんだ
01:15:41けれど
01:15:41兵隊の形が見えないね
01:15:45後兵隊が
01:15:46天の川に橋を架けようとしている
01:15:49ケンジは
01:15:50一体何のために
01:15:52この二つのエピソードを
01:15:54書き込んだのだろうか
01:15:58大お気づきになられた方も
01:15:59いらっしゃるでしょう
01:16:03男の子は
01:16:04車窓から見えているお宮は
01:16:06双子の男の子の
01:16:08春世とポーセのだ
01:16:09と言っている
01:16:12それに対して女の子は
01:16:14そうじゃない別の方
01:16:16すなわち
01:16:17兄と妹の
01:16:18春世とポーセのお宮だ
01:16:20と主張しているのです
01:16:23つまり
01:16:24ケンジは天の川のほとりに
01:16:27別々にお宮があると
01:16:28想定しているということになります
01:16:31言うまでもなく
01:16:32春世はケンジです
01:16:34そして
01:16:35双子の弟ポーセは
01:16:36家内
01:16:38妹ポーセは
01:16:39俊子ということになります
01:16:43さあ
01:16:44ここまで来ると
01:16:45ケンジが何を目論んで
01:16:48お宮と公兵隊のエピソードを
01:16:50書いたのか
01:16:50お分かりでしょう
01:16:53そうです
01:16:54ケンジは
01:16:55妹と住むお宮と
01:16:57家内と住むお宮を
01:16:59天の川の領岸に建て
01:17:01その間を
01:17:02いつでも往来できるように
01:17:04天の川に
01:17:05橋を架けようとしていたのです
01:17:08それにしても
01:17:10橋を架けようとしていたのは
01:17:12どこの公兵隊なんでしょうね
01:17:15そのヒントは
01:17:16領岸に建てられたという
01:17:18棒という旗にある
01:17:22幕末の文化8年
01:17:25朝鮮からやってきた
01:17:26朝鮮通信誌の一行が
01:17:28掲げているのが
01:17:29その棒である
01:17:32その様子を描いた
01:17:34版画を見た
01:17:34ケンジは
01:17:35こんな詩を書いている
01:17:39チャルメラや
01:17:41ドラを伴い
01:17:43木の棒や
01:17:45矛を従え
01:17:48棒の前後を
01:17:50にぎやかな朝鮮通信誌の
01:17:52軍学隊が行進している
01:17:54当時岩手県には
01:17:55朝鮮半島から
01:17:57多くの人々が
01:17:58働きに来ていた
01:18:00その人たちへの思いを
01:18:02ケンジは伝えたかったのであろう
01:18:06この番組でいろんなところを
01:18:08旅してきましたけど
01:18:11正直に言うととても
01:18:12意外な結末だったなと
01:18:14個人的には思います
01:18:16この天の川に
01:18:17北上川ですけど
01:18:20橋を架けるという結末になるとは
01:18:22思っていなかったんですけど
01:18:25とてもそれはロマンチックにも
01:18:27捉えられるかもしれないですけど
01:18:28ともすればそういう欲望や
01:18:30願望が入り混じった
01:18:32すごいその
01:18:34気持ちのこもった作品ばっかりだったのは
01:18:36そういうことだったのかなと思いますし
01:18:38ケンジが実際誰に会おうとしていたのか
01:18:40親友だった穂坂香菜やのか
01:18:43孤独に死んでしまった妹の
01:18:45敏子だったのか
01:18:46それとも違う誰かの出会いを
01:18:48駆け橋を作ることで
01:18:50その出会いを助けようとしていたのか
01:18:52それは分かりませんが
01:18:53そういうエッセンスが
01:18:54いろんな作品に散りばめられて
01:18:56だからこそ力強い作品になったのかなと
01:18:59思いますそしてもし
01:19:01天の川が見えるような日があれば
01:19:03耳を傾けてみてください
01:19:06シャルメラや
01:19:07ドラの音が聞こえるかもしれません
01:19:15賑やかな軍学隊に囲まれて
01:19:18今夜もケンジは棒を持って
01:19:21橋を渡っているのだろう
01:19:24みんなの幸せとは何かという
01:19:26大きなテーマとともに
01:19:29ケンジは好きな人と一緒に暮らしたいという
01:19:33自分の幸せについても
01:19:35密かに恥ずかしそうに語っていたのである
01:19:42さてそれでは
01:19:43ケンジ本人はどんな人間になり
01:19:46どんな生き方をしたかったのでしょうか
01:19:49それを示すのが
01:19:51あの雨にも負けずだと思います
01:19:54病のために
01:19:55志を果たせなかった無念の思いが伝わるとともに
01:20:00ケンジの命への祈りが伝わる詩です
01:20:04最後にこの詩をお届けして
01:20:07終わりとします
01:20:11雨にも負けず
01:20:13風にも負けず
01:20:15雪にも
01:20:16夏の暑さにも負けぬ
01:20:18丈夫な体を持ち
01:20:22欲はなく
01:20:23決して怒らず
01:20:26いつも静かに笑っている
01:20:32一日に玄米四合と味噌と少しの野菜を食べ
01:20:38あらゆることを自分を感情に入れずに
01:20:41よく見聞きし
01:20:43分かり
01:20:45そして忘れず
01:20:47野原の松の林の陰の
01:20:50小さなかえぶきの小屋にいて
01:20:55東に病気の子供あれば
01:20:57行って看病してやり
01:21:01西に疲れた母があれば
01:21:03行ってその稲の束を追い
01:21:08南に死にそうな人あれば
01:21:10行って怖がらなくてもいいと言い
01:21:15北に喧嘩や訴訟があれば
01:21:18つまらないからやめろと言い
01:21:23日出りの時は
01:21:25涙を流し
01:21:27寒さの夏は
01:21:29ほろほろ歩き
01:21:32みんなに
01:21:33デクノボウと呼ばれ
01:21:38褒められもせず
01:21:43苦にもされず
01:21:47そういうものに
01:21:51私は
01:21:53なりたい
01:22:03ご視聴ありがとうございました
01:22:08ご視聴ありがとうございました
01:22:36ご視聴ありがとうございました
01:23:06ご視聴ありがとうございました
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