- 10 時間前
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ショートトランスクリプション
00:00銭湯、しかしこの銭湯にはある不思議な言い伝えがあったのです
00:07僕の名前は石原徹
00:16ある大手新聞社の新人記者だ
00:20新人は地方支局で鍛えるという会社の方針で
00:24東京出身の僕もこの街へとやってきた
00:27しかし仕事ではいつも怒られてばかり
00:32あげくにアパートのフローは壊れるしで
00:35踏んだり蹴ったり
00:37早く東京に戻りたいな
00:40あったあった
00:44ここか
00:46なんかボロっちい銭湯だな
00:49まあいいか
00:51贅沢は言ってられないし
00:54すいません
01:01すいません
01:04なんだよ
01:08誰もいないのか
01:10なんだ
01:14なんでこんなところに再銭箱があるんだ
01:18えっと
01:22なになに
01:24北
01:25入浴料をこの箱に入れるべし
01:29ただし
01:30文学は自由なり
01:33お前しせんと
01:34ここにお金を入れろってことか
01:37うーん
01:40再銭箱だし
01:42おい
01:43しかし
01:47おかしなところは再銭箱だけでもなかった
01:50この銭湯は変なとこだらけだったのだ
01:55え
01:58なんだこれ
02:00なんか気味悪いな
02:19とにかく
02:22お湯だけ使って
02:24先生も帰ろう
02:25なんだよ
02:35お湯入ってないじゃん
02:38なになに
02:43入浴の心へ
02:46入浴に際しての努力を惜しむべからさ
02:50恩返し銭湯
02:51いってどうなってんだよ
02:54この銭湯は
02:55でも
02:56家に帰っても風呂壊れてるしな
03:00自分でお湯を食べるか
03:03しかし
03:05お湯も水も出ず
03:07銭湯の外に出て調べてみると
03:10どうやら水道管に
03:12何かが詰まっているようだった
03:15あった
03:16これが詰まってたんだな
03:18あとは風呂が無いんだけど
03:21あれや
03:22こいつ居たら何でも無理か
03:25まあ
03:26しょうがないけどな
03:28うわ
03:38冷てえ
03:39結局僕は
03:42冷たい水で体を洗うことしかできなかった
03:45そして次の日
03:48ふんっ
03:49ふんっ
03:50ああ
03:52まいった
03:54今日は動物園に取材に行くことになってたのに
03:59ちっきしょ
04:01何が恩返し銭湯だよ
04:04恩返しどころかこれじゃ
04:06しっぺ返しじゃねえか
04:08次のニュースです
04:09え
04:10ふんっきしょ
04:11今日午前10時ごろ
04:12市内の道路で崖崩れが発生し
04:15数台の乗用車が巻き込まれる事故がありました
04:19崖崩れが発生したのは
04:22郊外の動物園に通じる指導
04:24この大雨によって地盤が緩んでいたことが原因と見られています
04:29現在道路の復旧に全力を注いでおりますが
04:33開通には少ない
04:35午前10時だって
04:36じゃあ予定通りに動物園に行ってたら
04:40何しかしたら僕も
04:42事故に巻き込まれていたかもしれない
04:45店頭が僕に恩返しを
04:48雨が上がると不思議なことに
04:51僕の熱も嘘のように聞いていた
04:54まさか
04:56本当にあの銭湯は
04:58翌日僕は再び恩返し銭湯に向かった
05:04水道を直しただけで
05:06あんなに良い事があったんだ
05:09もし本当にご利益があるなら
05:11湯船を掃除してお湯に入れば
05:14きっともっと良い事があるに違いない
05:17そう思ったのだ
05:20ちょっと少ないけど
05:24ま、入れなくはないよな
05:29ほう
05:31湯船に湯が
05:32これは久しぶりじゃ
05:35お若いの
05:37あんたかい
05:38この湯を沸かしたのは
05:41あ、はい
05:43そうですけど
05:45なるほど
05:47そういうわけか
05:49さすがは恩返し銭湯じゃ
05:52え、知ってるんですか
05:55この銭湯のことを
05:57うーん
05:58ここにはな
05:59もともと神社があったのじゃ
06:02神社?
06:04神社様じゃよ
06:06昔はどこにでもあった
06:08その土地土地の守り神じゃ
06:11その神社が大正時代の終わりに他のところに移ることになった
06:17そこで村の人々が残ったごしん坊や石などを使って銭湯を作ったんじゃ
06:25その頃にはどこの家にもお風呂などなかったからな
06:31銭湯はみんなのもんじゃった
06:34だから掃除をしたり
06:37釜を焚いたりするのも
06:39みんな交代でやったもんじゃ
06:42ところが
06:44そうやって掃除をしたり
06:46修理をしたりすると
06:48決まっていいことが起こるようになった
06:52長い間子だがらに恵まれなかった夫婦が赤ん坊を授かったり
06:58戦争で死んだと思っておった息子が無事に帰ってきたり
07:04それからじゃよ
07:06ここが恩返し銭湯と呼ばれるようになったのは
07:11しかし時代が進むにつれ
07:15銭湯に来るものも少なくなった
07:18自分で掃除をしてまで入りたいとは思わなくなってしまったんじゃな
07:24今日
07:27あんたが銭湯に入っていくのを見かけて
07:31わしも久しぶりに来てみたんじゃが
07:34やはり銭湯はいいもんじゃ
07:37それに
07:38あんたの話を聞くと
07:41まだまだこの恩返し銭湯のご利益も
07:44薄れていないようじゃな
07:46それならぜひこの湯船がいっぱいになるまで
07:51お湯溜めてみたいですね
07:53うん
07:54しかしそれは無理じゃ
07:57湯を沸かすには釜をたかねばならんが
08:02もう長いこと使っとらんから
08:05煙突はすすでいっぱいじゃ
08:07あれを掃除するのは相当大変なことじゃからの
08:12そっか
08:14残念だな
08:17でもこれでわかった
08:20この銭湯は本当に恩返し銭湯なんだ
08:25おはようございます
08:29どうしたんですか
08:38みんなは
08:39それが今日に限って
08:43みんな結婚式だろ
08:45取材だろでやらってるんだ
08:48その時の僕は
08:51それが特別に不思議なことだとは思っていませんでした
08:55ところが
08:58はい
09:02編集
09:03何
09:06ああわかった
09:08至急
09:09誰かを向かわせる
09:11どうしたんですか
09:12大ニュースだ
09:14市内の病院で5つもが生まれた
09:17医者ら
09:19今すぐ現場で取材してこい
09:22え
09:22新人の僕がですか
09:25あげろ
09:26他に誰もいないんだ
09:29ぐずぐずしてないで
09:31ちょっとの現場に行ってこい
09:33はい
09:35信じられないことだった
09:39新人の僕が書くことができるなんて
09:43いや
09:48まさか新人の石原が
09:51一面を担当することになるとは
09:54思いもしなかったよ
09:57これからも
09:59この調子で頑張れよ
10:01はい
10:02それからも僕は
10:04恩返し戦闘に通い続けた
10:07そして戦闘を直していくたびに
10:11僕は
10:11その後も次々と
10:14大きなスクープを物にしていったのであった
10:17そしてついに
10:19僕に待望の指令が届いた
10:22よく頑張ったな
10:25その若さで東京本社の社会部へ配属とは
10:30ありがとうございます
10:31市局長をはじめ
10:34市局の皆さんと
10:35あの恩返し戦闘のおかげです
10:38恩返し戦闘?
10:40お前まさか
10:42あんな迷信信じているんじゃないだろうな
10:45迷信じゃありません
10:47こうして僕が出世できたのも
10:50あの戦闘のおかげなんです
10:52ま
10:54信じるのは勝手だがな
10:57しかし
10:57あの戦闘も
10:59もう終わりだよ
11:00近く取り壊すことが決まったそうだ
11:03え?
11:04ほんとですか?
11:06ああ
11:07跡地にはショッピングセンターが立つそうだ
11:10俺も時代の流れだ
11:13考えてみたら
11:16僕は今まで
11:18この戦闘に助けてもらってばかりだった
11:21だからせめて
11:24一日だけでもいいから
11:26戦闘を
11:28昔の姿に戻してやりたい
11:29それが
11:31今の僕にできる
11:33たった一つの
11:34恩返しだと思ったのだ
11:36決意を固めた僕は
11:38翌日から仕事を休み
11:40町の人々に協力を求めた
11:42恩返し戦闘を
11:45元の姿に戻してあげましょう
11:46ご協力
11:48お願いします
11:49しかし
11:50町の人たちの反応は冷たかった
11:54そして
11:55そんなことをしている間にも
11:58戦闘の横の空き地には
12:00次々とショッピングセンターの資材が
12:02運び込まれていった
12:03そして
12:04ついに
12:05取り壊しの日がやってきた
12:07ちきしょう
12:08諦めないぞ
12:10絶対
12:11元の姿に戻してやるからな
12:14煙突さえ掃除すれば
12:21お湯が沸かせる
12:22僕は必死に煙突を登った
12:26高いな
12:33こんな高いところから
12:35お前はずっとこの町のみんなを
12:37見守ってきたんだな
12:39そして苦しんでいる人や
12:41困っている人たちのことを
12:44助けてあげてきたんだな
12:45待ってろよ
12:50どこまでできるかは分からないけど
12:52頑張ってみるよ
12:54でも本当に僕が煙突掃除なんて
12:59できるんだろうか
13:00やる前からこんなことを言うんじゃない
13:03え?
13:06支局長?
13:07なんで?
13:09恩返し戦闘は
13:10迷信だって言ってたじゃないですか
13:12ああ
13:13確かに
13:15しかしな
13:16俺も昔はこの銭湯に通っていたんだ
13:19いざ亡くなってしまうと思うと
13:22寂しくてな
13:23それに俺だけじゃない
13:25出てきてみろ
13:26下を見てみる
13:30な
13:33おじいさん
13:35こうして
13:41町の人たちの手によって
13:44恩返し戦闘は
13:45どんどんかつての姿を取り戻していった
13:48そしてついに
13:53まるで昔のまんまじゃ
14:05懐かしい
14:06本当に懐かしい光景じゃ
14:10よかった
14:11銭湯が元の姿に戻って
14:14そして
14:16町の人が帰った
14:18僕とおじいさんは二人きりで
14:21銭湯の湯船に浸かった
14:23これで
14:25この銭湯も
14:27この銭湯もなくなってしまうんですね
14:29しかしきっと
14:32お前さんに感謝してると思うよ
14:35いえ
14:36お礼を言わなきゃならないのは
14:38僕の方です
14:40僕が成功できたのも
14:43みんな
14:44この銭湯のおかげなんですから
14:46しかし
14:49二人が最後の湯を楽しんでいたその時
14:51銭湯の外では
14:53とんでもないことが起こっていた
14:55ずさんに置かれていた
14:59ショッピングセンター用の資材から火が出て
15:01銭湯に燃え移ってきたのである
15:04ご視聴ありがとうございました
15:34この銭湯の勢いが強すぎます
15:36弱音をはずな
15:37まだ中に人が残っているんだぞ
15:40もうダメじゃ
15:46逃げる場所はない
15:48おじいさん
15:49諦めちゃダメだ
15:51きっと
15:52きっと助かる方法があるはずです
15:54僕は
15:55必死にこの危機から脱出する方法を考えた
15:58くそ
16:01どうすればいいんだ
16:03ああ
16:05あれを見ろ
16:07ああ危ない
16:09何だ
16:11何か聞こえる
16:13船長が
16:16その時
16:32僕たちに向かって
16:34一陣の風が吹いてきた
16:36何だ
16:40この風は
16:42おじいさん
16:44大丈夫
16:45これは
16:48まさか
16:52そう
16:56僕たちに目の前に倒れたの
16:59それは紛れもなく
17:01恩返し銭湯の煙突だった
17:03そして
17:05映像は
17:05まるで僕たちに道を示すかのように
17:08疎開が続いていった
17:09暑くない
17:12おじいさん
17:14この中を通って
17:15行きましょう
17:16おじいさん
17:18おじいさん
17:34一緒だ。一緒だ。一緒だ。大丈夫か?何とか。
17:52煙突が古くなっていたお金は。違います。きっと、銭湯が僕達のことを助けてくれたんです。
18:08おわり。信じてくれなくてもいいんです。でも、僕はそう信じています。
18:18恩返し銭湯が、最後の最後に、自分の身を壊してまで、でっかい恩返しをしてくれたんですよ。
18:32こうして、恩返し銭湯は、その長い歴史に幕を下ろしたのだった。
18:39その後、銭湯の跡地には、予定通りショッピングセンターが完成した。
18:46しかし、その一角には、人知れず小さな記念器が立っています。
18:53そしてそこには、こんな文字が刻まれているんです。
18:58恩返し銭湯。この街を守り続けた素晴らしい銭湯に、ありがとうの気持ちを込めて。