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  • 1 日前

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教育
トランスクリプション
00:12オレは都会のベランダ
00:15それ以上でもそれ以下でもない
00:21そろそろ梅雨が心配になる季節だが
00:24オレは違う
00:27むしろ水やりの手間が省けるし
00:30雨ごときでダメになるやわな奴らは
00:33この都会で生きていく資格はない
00:44植物も人間と同じで
00:46甘やかすとろくな奴にならない
00:51オレの背中を見て勝手に育ち上がれ
00:56それがオレのモットーだ
00:59どうやら
01:08何かと思ったら
01:10誕生日のお祝いにと
01:12別れた神さんの子供
01:14つまり
01:15オレの息子から
01:17借役をプレゼントされた
01:21息子と言っても
01:23今は離れて暮らしているので
01:26温身不通みたいなものだが
01:30珍しいこともあるもんだ
02:01ご視聴ありがとうございました
02:18ボタンカの多年草
02:20借役
02:23部屋に置けば極上の香りが広がり
02:27花びらの塊に触れるとは
02:30その柔らかさは
02:32あたかも
02:33ビロードのようだ
02:41立てば借役
02:42座ればボタン
02:44歩く姿は百合の花
02:47という美人のたとえにもあるように
02:50そのあで姿
02:52麗しい
02:53の一言に尽きる
03:00ゴージャスな花と
03:01野生実を帯びた葉
03:04その二つを兼ね備えた植物を前に
03:08オレは
03:09言葉を失う
03:21シャルニダンス
03:23強いて言えば
03:24
03:26美しき獣
03:28オレは断言する
03:32胴体の先に秘めた
03:33獣の重みと柔らかさ
03:37あるいは
03:38獣にはありえない
03:39その美しさこそが
03:42灼薬という植物の魅力なのだ
03:46
03:54ビビった
03:56さっきから何やってんの
03:58そこに立っていたのは
04:01別れた神さんの子供
04:03つまり
04:04オレの息子だった
04:08久しぶり
04:12
04:12
04:23名前は
04:23樹木の樹と書いて
04:25五木
04:27二十歳
04:28現在浪人中の
04:30予備校生だ
04:34ところでお前
04:35どうやって入った
04:37前に合鍵くれたじゃん
04:39いつでも来ていいからって
04:42そうだっけ
04:43うん
04:44そうだよ
04:46そうか
04:49ああ
04:50借約
04:51ありがとな
04:52覚えててくれたんだ
04:54父さんの誕生日
04:55いや
04:56全然忘れてた
04:58大体今月かな
05:00ぐらいで
05:02ああ
05:04あっそう
05:09昔からこいつはこうだ
05:12何事にも無関心で
05:14好きなものといえば
05:15音楽を聞くことくらいしかない
05:21母さん元気か
05:25うん
05:30そうか
05:33これ以上
05:34会話が続かなくなった
05:38突然
05:39家に来たということは
05:40何か相談事でもあるのだろうか
05:46俺は
05:47この冷めた空気を打破すべく
05:49プライベートな会話をして
05:51緊張を解き起こす作戦に出た
05:55うん
05:58彼女はいるのか
06:00先週振られたばっか
06:03その話やめてくれる
06:05まだ回復してねえから
06:07ああ
06:08ごめん
06:10秒殺だ
06:17えっとじゃあ
06:22予備校の書き講習はいつからだ
06:27今度はどうだ
06:30いつと触れば今でしょ
06:32と返してくるに違いない
06:36それで場が和むという寸法だ
06:39しかも予備校のという伏線も貼っている
06:45書き講習
06:48まだ日程出てねえな
06:50とか
06:51だいたいその振り去年だじゃん
06:56逆に行ける
07:00これだから人間の崖はダメだ
07:04そこへ行くと植物は
07:07こんな憎たらしい態度を取ることはない
07:13父さんちょっと出かけるか
07:16どこ行くの
07:19いいだろうどこだって
07:22隠すことないじゃん
07:26花屋だよ
07:29花屋
07:32暇だから俺もついてっていい
07:33だめだそれは
07:36なんで
07:37行ったらまずいことでもあんの
07:40そんなことあるわけないだろ
07:50こうして俺は息子と花屋に行く羽目になった
07:55今日ばかりはカッコ悪いところを見せるわけにはいか
07:59ない
08:01早送り
08:28ここだ
08:29やっぱめっちゃ食物あんじゃ
08:33どうだ
08:35すごいだろ
08:36ここは俺が馴染みにしている花枝だ
08:39まあ品揃えがいいから通ってやってんだけどな
08:44いらっしゃいませ
08:47なんだよそれ
08:49なんだってなんだよ
08:52これでは親のメンツが丸つぶれだ
08:56あのこちらは
08:59息子です一応
09:01一応って
09:03初めまして木下楓です
09:06五木です父がお世話になってます
09:11じゃあ俺あっち行ってよかな
09:13うん
09:15ぐっくり
09:17何言っても
09:21息子さんいらっしゃったんですね
09:24ええ
09:25はい
09:27息子と言っても今離れて暮らしてますんで
09:31その別れた女房のところで
09:34あそうだったんですか
09:36すみません
09:38あいえ
09:39いいんです
09:41などと
09:42罰一中年男の哀愁を醸し出しながら
09:46俺の両目はある植物に
09:50釘付けとなっていた
09:54カルセオラリアである
09:57鮮やかな色と風船のように膨らんだ花が
10:02微力的だ
10:06これ
10:08カルセオラリアですよね
10:10はい
10:10先週入ったばっかりで
10:13ああそうですか
10:22どうかされましたか
10:24ああああああああ
10:25なんか
10:26ハエが飛んでたみたいで
10:27ははははは
10:29
10:32仲がいいんですね
10:34
10:34全然ですよ
10:37もう
10:37肉たらしいばっかりで
10:39うん
10:41なんか
10:42羨ましいです
10:44
10:44小さい時に
10:45父を亡くしてるので
10:47お父さんのことあんまり
10:49よく覚えてなくて
10:52
10:52気にしないでくださいね
10:54お二人があんまりにも
10:55楽しそうだったので
10:56ああ
10:57いや
10:59そんな
11:02カイデちゃん
11:03ちょっと
11:04あっちお願い
11:05はい
11:06失礼します
11:07失礼します
11:08近々また
11:11いい息子さんですね
11:13あいつがですか
11:15はい
11:16さっきちゃんと挨拶してくれましたよ
11:18挨拶ぐらい
11:19犬だってしますよ
11:22店長
11:22お子さんは
11:23中学生の男の子が一人
11:26またこれが生意気で
11:27毎日喧嘩ばっかり
11:29うん
11:32でもそうやって
11:34喧嘩できるだけ
11:35羨ましいです
11:37僕なんか
11:37久しぶりに会ったせいか
11:39何話していいんだが
11:41正直
11:41よく分かんなくて
11:45すぐに
11:46話せるようになりますよ
11:49だといいんですけど
12:01なに
12:02あの人に惚れてんの
12:03
12:03なに言ってんだお前
12:07大丈夫
12:08お母さんに内緒にしといてやるから
12:09関係ないだろ母さんは
12:14笑いすぎだ
12:15俺は分かっている
12:19こんな感じではしゃいでるときは
12:22大抵悩んでいるときだ
12:25素直じゃないところは
12:27俺譲りか
12:31じゃあ
12:33帰ろっかな
12:35ああ
12:37あのさ
12:40なんだ
12:48いや
12:50なんでもない
12:52じゃ
12:58悩みでもあるんじゃないのか
13:01その一言が
13:03言えなかった
13:22ただいまと
13:29全く俺ってやつは
13:31植物には強気なのに
13:33人間には
13:34辛っ騎士だ
14:00一人で食べる夕食は
14:03こんなにまずかったか
14:29ともあれ
14:31俺のベランダに
14:32カルセオラリアがやってきた
14:42表が赤で
14:44裏が黄色
14:47丸みを帯びた風船状のフォルムが
14:50なんとも愛らしい
14:56触ってみると
14:57ペコッとへこん
15:02小さな穴から息を吹き込むと
15:05元に戻る
15:12落ちた花はしばらく膨らんだままで
15:16その姿は金魚を思わせる
15:23なんだか
15:24なんだか陸にあげられたようで
15:25不憫に思った俺は
15:27グラスの中で泳がせてみる
15:34水に浮いた花は時折揺れ
15:37まさに
15:38ゆうゆうたる魚の風情である
15:48俺はしばらくの間
15:49その様子を
15:50ぼーっと眺めていた
16:15ご視聴ありがとうございました
16:16ご視聴ありがとうございました
16:25モニターに映っていたのは
16:27別れた神さんの子供
16:29つまり
16:31息子だった
16:37今日はどうした
16:39別に
16:41近くまで来たからさ
16:44そうか
16:53植物面白い?
16:58どうした急に
17:00いや別にいいじゃん
17:03なんで植物育ててんの?
17:06そりゃお前
17:07そこに植物があるからさ
17:11真面目に聞いてんだけど
17:12ああ
17:13ごめん
17:18一言で言うなら
17:22生命の神秘だ
17:24生命の神秘?
17:26スケールデカ
17:30植物ってやつは
17:31人間の常識が通用しない
17:34どんなに一生懸命
17:36世話しても
17:36枯れるし
17:38いい加減にやっても
17:40咲くことがある
17:42つまりだな
17:45うまくいかないことの方が
17:46多いんだ
17:49あれ
17:51何の話だっけ今
17:53何かよく分かんないけど
17:56いいよな
17:58打ち込めることがあって
18:02こないだ花屋行った時も
18:03めちゃくちゃ嬉しそうだったもんな
18:14おー
18:17ビールでも飲むか
18:20え?
18:30じゃあ乾杯
18:31乾杯
18:44うわー
18:45初めてビール飲まいと思った
18:47そうか
18:48うん
18:53そういえばお前とこうやってビール飲むの
18:55初めてだったな
18:57そうだっけ
18:59そうだ
19:02まさかこんな日が来るとはな
19:24お前
19:26何か悩みでもあるのか
19:39実はさ
19:45俺何のために勉強してるのかよく分かんないんだよね
19:52予備校にも一応通ってるけど
19:55上の空っていうか
19:59もし大学入ったとしても
20:03別にやりてえこととかねえし
20:06将来何になりてえとかもないし
20:12すか今の俺何者でもないっていうかさ
20:24そうか
20:28植物であれば
20:29コカブは自らの生命力で
20:32土に根を張り生きていく
20:37だが
20:37人間はそうはいかない
20:41ここは一つ
20:43親の威厳を見せたいところだが
20:47さて
20:48どういったもんか
21:01これな
21:03カルセオラリアって言うんだけどな
21:05面白い形してんだろ
21:08金魚みたいな
21:09これなんで膨らんでんの
21:12これな
21:14空気が入ってんだよ
21:16へえ
21:18そういえば
21:20お前が小さいから
21:21縁日かなんかで金魚救いがしたいって言って
21:24泣いたことがあったな
21:27そうだっけ
21:29それでやってみたら全然取れなくて
21:32また泣いて
21:34思い出した
21:37最後の一回だからって言われてやったら
21:39一匹だけ釣れたんだよね
21:44あの時嬉しそうだったな
21:46お前
21:48めちゃくちゃ嬉しかった
21:53この花が落ちたらな
21:55水に浮かべてやるんだ
21:57そうするとまるで金魚が泳いでるみたいに見えるんだ
22:11いい大学入れとか
22:14立派な大人になれとか
22:16俺は偉そうなことは言えない
22:20でもな
22:22遊びでもなんでも
22:23とにかく目いっぱいやってみたらどうだ
22:28この花みたいに空気いっぱい吸い込んで
22:31風船でも金魚でも
22:34何にでもなれるように準備だけはしとけ
22:38それでいざやりたいことができたら
22:41それをガーって吐き出せばいい
22:46決まった
22:49とっさのアドリブだったが
22:51今俺はカルセオラリアに絡めて
22:55いいことを言った
22:58あいつはきっと感動して
23:00泣いているに違いない
23:04俺は誇らしげに息子の方を見た
23:09あれ
23:12え?
23:13今何か言った?
23:15ああいや
23:17何でもない
23:18あそ
23:29あそ
23:30あるけ
23:46なあ
23:49お母さん自分だって言ってたよ
23:52まあ正確に言えば半々だな
23:55半々ってなんだよ
23:58いやお母さんがジュリーのファンだな
24:02俺は当時から植物好きだったから
24:06それでジュと書いてイツキにした
24:10なんだよそれ
24:12だいたいジュリー俺世代じゃねえし
24:17でもちゃんと意味はあるんだよ
24:20将来大きくなって
24:23葉をいっぱい空に向かって広げてほしい
24:27そんなでっかい人間になってほしくてな
24:34そうなんだ
24:41じゃあ帰るわ
24:44そうか
24:46またいつでも来ていいからな
24:50わかった
24:53じゃ
25:12おやじ
25:19俺いっぱい空気吸ってみるよ
25:24いっぱい
25:28いっぱい空気吸って
25:32でっかい人間になるから
25:37じゃあな
25:38じゃあな
25:46あいつ
25:50気をつけて帰れよ
25:58分かってるよ
25:59もがくじゃねえし
26:10また
26:11また会えるというのに
26:12俺たちは大声を出し合った
26:17永遠の別れでもなかろうに
26:27あいつは見えなくなるまで
26:29一度も振り向かなかった
26:35それでいい
26:38前に向かって走るんだ
26:41人には優しくできるのだから
26:47さよならだけでは
26:55寂しすぎるから
27:02愛するあなたへ
27:10贈ること
27:14俺は家に帰り
27:15ベランダで一人乾杯した
27:22カルセオラリアの赤い花が
27:24気持ちよさそうに
27:27いつまでも風に揺れていた
27:37これから始まる暮らしの中で
27:43誰かがあなたを愛するでしょう
27:49だけど私ほどあなたのことを
27:56深く愛したやつはいない
28:05遠ざかる影が
28:11人ごみに消えた
28:17もう届かない
28:26贈ることは
28:30もう届かない
28:39贈ることは
29:01植物男子ベランダ
29:03嫌ならね
29:04他の店行って他に
29:05生酢だよ
29:06やりたくてやりたくて
29:08うずうずしてるんだろ
29:09総合26日夜11時半
29:12お楽しみに
29:13ご視聴ありがとうございました
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