00:00久名湖の丘を制圧した後、豊国軍はさらに東にある稲葉という地に進み、現在の白都神社を建てたのであった。
00:09新婚神社の高台から東出雲の領土を見渡すその子は、真珠に不安を抱えていた。
00:16彼女は出雲王、大彦の末娘として、17代続いた出雲王国の尊厳を背負って育てられてきた。
00:23しかし今、その出雲王国が存亡の危機に瀕していた。
00:27姫様、こちらにおいでください。王様がお呼びです。
00:31側近の春日が静かに告げた。
00:34その子は深く息を吸い、父の待つ王宮へと足を向けた。
00:39大広間では、父大彦王と大将軍、アレイが険しい表情で地図を囲んでいた。
00:45父上、お呼びでしょうか。
00:47その子よ、来たか、座れ。
00:49大彦王は疲れた顔で娘を見つめた。
00:53六十を過ぎた王の顔には深いシワが刻まれていた。
00:57キビからの死者が戻った。
00:58モノベの軍勢はすでにキビ王国の半分を制圧したとのことだ。
01:03モノベの本体はキビにいるが、
01:05土地根率いる別同隊がこちらへ向かっているとの報告も入った。
01:09アレイ将軍が低い声で捕捉した。
01:11彼は出雲王国最強の武人として知られ、
01:14三十年以上、王国の守りを固めてきた。
01:18どれほどの兵力でしょうか。
01:20五千。
01:21いや、それ以上かもしれる。
01:22我らの兵は三千人満たない。
01:25しかもカイロからの侵攻ならば、
01:27相手国の土地根は作死だ。
01:29正面から攻めてくるとは思えん。
01:31そうだな。
01:32我が伊豆もも、
01:33七百年の歴史に幕を閉じる時が来たのかもしれぬ。
01:37そのようなことを、
01:38我らの祖先は、
01:40神々の時代から続く高貴な血筋です。
01:43簡単に物述べなどに屈するわけには、
01:45その子、血は高貴でも、
01:49力なくば滅びるのみ、
01:50歴史とはそういうものだ。
01:52王は立ち上がり、
01:53窓から遠く東の海を見つめた。
01:56カスガ。
01:56はい。
01:57預言者、
01:58鶴目を呼べ、
02:00最後の策を狙わねばならん。
02:03同じ頃、
02:04東の海では、
02:06物述べ土地根の戦団が静かに
02:07出雲の海岸へと近づいていた。
02:10あれが新婚の丘か。
02:11土地根は選手に立ち、
02:13遠くに見える出雲の聖地を眺めていた。
02:1640代半ばの彼は、
02:18物述べ氏の中でも特に地略に長けた将である。
02:21出雲の地に足を踏み入れるのは初めてから。
02:24隣に立っていた若武者、
02:25高取が問いかけた。
02:27彼は20歳そこそこながら、
02:29土地根の右腕として頭角を表していた。
02:32あ、だな。
02:34もはや知り尽くしたも同然だ。
02:36土地根は懐から巻物を取り出した。
02:39それは出雲の地図であり、
02:41王宮の工場、
02:42兵の駐屯地、
02:44さらには秘密の抜け道まで詳細に記されていた。
02:47内通者からの情報は正確だが。
02:50はい。
02:51出雲に不満を持つ者は多い。
02:53特に古い艦船に縛られた統治に反発する。
02:56若い貴族たちはなおさら。
02:58若者の野心は実に使いやすい。
03:00さて、
03:01計画通り進めるぞ。
03:03主力は表から見せかけの攻撃を仕掛ける。
03:06その間に我らは裏の抜け道から王宮に忍び込む。
03:09出雲を生け捕りにするのですか。
03:11いや、
03:12王は殺す必要はない。
03:14我らが欲しいのは土地と民だ。
03:16王家は降伏させ、
03:18物辺の下で使いさせればよい。
03:21出雲の神なのも、
03:22もはや古い。
03:23新しい時代は我ら者での神の時代だ。
03:27戦団は夜の闇に紛れて、
03:29出雲の東端にある小さな入江へとへ先を向けた。
03:32その頃、
03:33出雲王宮では非常事態に向けた準備が進められていた。
03:37兵は三方に分けよ。
03:38主力は王宮の守りを固める。
03:40第二隊は海岸線の警備。
03:42第三隊は南の熊野への避難路を確保せよ。
03:45アレイ将軍は部下たちに厳しく命じていた。
03:49その場に立ち会っていた園子は、
03:50何か役に立ちたいという思いに駆られていた。
03:54将軍、私にもできることがあるはずです。
03:58姫様は神事に通じておられる。
04:01神々に加護を祈願していただきたい。
04:04その子は反論しようとしたが、
04:06そこに預言者、鶴瓶が現れた。
04:08白髪の老女は杖をつきながらも、
04:11凛とした威厳を放っていた。
04:13この老婆の預言を聞きたいというのか。
04:16ああ、頼む。
04:18この危機をどう乗り切ればよいか。
04:20鶴瓶は目を閉じ、しばらく動かなかった。
04:23やがて、その唇が震え始めた。
04:26見えるぞ。
04:27血の川が流れる王宮は炎に包まれる。
04:31しかし、王家の血肉はたたれに。
04:34南へ、南へ逃れよ。
04:36熊野の森に神々の間がある。
04:38老女の言葉を聞いた王は思い、決断を下した。
04:41分かった。万が一に備え。
04:44熊野へ逃れる準備をせよ。
04:46しかし、それまでは最後まで戦う。
04:49出雲の誇りに欠けて。
04:52牛の時、出雲の海岸線は異様な静けさに包まれていた。
04:57警備の兵士たちは眠気と戦いながら、
05:00松明の明かりを頼りに見張りを続けていた。
05:03何も動きはないか?
05:04巡回に来た隊長、足盛りが問いかけた。
05:07はい。海は穏やかで。
05:09兵士の言葉が途切れた瞬間、闇の中から矢が開いし、彼の喉を貫いた。
05:15敵襲だ。
05:15足盛りが叫ぶ間もなく、海岸線に無数の松明が灯り、
05:20物述べの兵士たちがおたけびを上げながら押し寄せてきた。
05:23向かい撃て。
05:24足盛りは素早く剣を抜き、最前線に飛び出した。
05:28鉄と鉄がぶつかる音、疑名、路合が入り混じる中、
05:32彼は必死に部下たちを鼓舞した。
05:35退くな。ここが出雲の最前線だ。
05:37しかし、物述べ軍の攻撃は激しく、出雲ゲイは徐々に押されていった。
05:43足盛りは顔に血を浴びながらも、必死に戦い続けた。
05:47隊長、数が多すぎます。
05:49かまわん。一歩も引くな。
05:51その時、足盛りは不審な動きに気づいた。
05:54物述べ軍の一部が、メインの戦線から離れ、森の中へと姿を消していくのだ。
06:00あれは軍団作戦か。これは囮だったのだ。
06:03メインの攻撃で、出雲軍の注意を引き、真の目的は別にあった。
06:08伝令。応急に急防を。
06:11足盛りは近くの兵に命じたが、その伝令も森の中から飛んできた矢に倒れた。
06:16クック。
06:17足盛りは傷を抑えながら、自ら走り出そうとした。
06:20だが、前方から現れた一人の武者により、その道を阻まれた。
06:26どけ。
06:27一瞬の間に間合いを詰め、足盛りの懐に入り込んだ若武者、タカトリは、探検を足盛りの脇腹に突き刺した。
06:35出雲の勇者よ、よく戦った。
06:37タカトリは倒れゆく足盛りの目を見つめ、敬意を込めていった。
06:42だが、時代は変わる。これが運命だ。
06:45裏切り者、内通者がいるのだな。
06:47戦とは地略。勝つためには手段を選ばぬ。
06:51海岸での激戦がさらに激しさを増す中、土地で率いる精鋭部隊はすでに森の中の秘密の道を通り、王宮への侵入を始めていた。
07:02王宮では、前線からの断片的な情報に基づき、警戒態勢が敷かれていた。
07:08しかし、海岸線での戦闘報告に気を取られ、裏手からの侵入に気づくのが遅れた。
07:14姫様、神殿へを逃げください。
07:17廊下の向こうでは、すでに戦闘の音が聞こえていた。
07:20父上は?
07:22アレイ将軍は?
07:23王様は大広まで軍議中です。将軍は前線へ向かわれました。
07:27二人が中庭を横切ろうとした時、突如として矢が春日の背中を貫いた。
07:33その子は倒れた側近を支えようとしたが、春日はその子を押しのけるように言った。
07:38逃げて。
07:39その時、中庭に十数人の物の部兵が姿を現した。
07:44戦闘に立つのは鷹取りだった。
07:46あれが出雲の姫か。捕らえよ、人質として使える。
07:51させぬ。
07:51突如老婆の声が響き、鶴目が杖を掲げて現れた。
07:56神々の名において命じる。
07:58退きなさい。
08:00鶴目は奇妙な呪文を唱え始め、杖を地面に突き立てた。
08:04すると不思議なことに、地面から濃い霧が立ち上がり、中庭を覆い始めた。
08:10姫様、こちらです。
08:11鶴目はその子の手を取り、霧の中へと消えた。
08:14鷹取りの命令も虚しく、霧の中では方向感覚を失い、兵士たちは混乱した。
08:22一方、大広間では大彦王と物部とちねが対峙していた。
08:27よくぞここまで来たな。物部の将。
08:30大彦王は毅然とした態度で剣を構えていた。
08:33その周りには、王に忠実な数人のこのえげが守りを固めていた。
08:38出雲王、無駄な抵抗はやめよ。
08:41すでに王宮は我が軍に包囲された。
08:43降伏すれば命は助ける。
08:46700年続いた出雲の王が、簡単に膝を屈するとでも。
08:51時代は変わる。
08:53神並みの時代は終わり、人の時代が来る。
08:56大彦王は剣を振り上げ、とちねに向かって突進した。
09:00しかし、若かりし頃の勇猛さはもはやなく、
09:04とちねはその動きを容易に読み、王の攻撃をかわした。
09:08老いたな、出雲王。
09:10とちねの剣が大彦王の肩を貫く。
09:13くそ。
09:15王は膝をつき、血を流しながらも剣を手放さなかった。
09:19殺せ。
09:20王はこの衛兵たちに命じた。
09:23しかし、次の瞬間、予想外の展開が起きた。
09:26この衛兵の一人が突如として他の味方兵を襲ったのだ。
09:31何をする。
09:31驚く王に、裏切ったこの衛兵は冷ややかに言った。
09:36新しい時代に古い王は不要です。
09:38内通者の裏切りにより、残りのこの衛兵たちも次々と倒された。
09:43大彦王は絶望的な状況の中、最後の力を振り絞って立ち上がった。
09:49物部よ、覚えておけ。
09:51出雲の呪いは七代続く。
09:54我が国を滅ぼした報いは必ず受けるであろう。
09:57栃根はその言葉に動じることなく、剣を大彦王の胸に突き刺した。
10:02呪いなど恐れぬ。新しい時代は我らが作る。
10:06王宮の一角で、園子は鶴目に導かれながら、秘密の通路を通って逃げていた。
10:11急ぎなさい、姫様。南の熊野へ向かわねば。
10:16父上を置いて。
10:17王の意思です。
10:19血脈を守るのが姫様の使命。
10:22走る二人の背後では、すでに王宮が炎に包まれ始めていた。
10:26物延軍は略奪と破壊を始め、700年の歴史を持つ出雲王宮は、その尊厳を失いつつあった。
10:35出雲の東の守りが崩れた知らせを受け、
10:38アレイ将軍は残りの兵を率いて反撃に出ていた。
10:42全軍、突撃。
10:44アレイの声に応え、出雲兵たちはおたけびをあげながら、王宮に迫る物延軍に突撃した。
10:51アレイ自身も最前線に立ち、大斧を振るって敵を薙ぎ倒していった。
10:56出雲の誇りを見せてやれ。
10:58彼の勇猛な戦いぶりに、一時は物延軍も押し返された。
11:02あれが噂のアレイか。
11:04彼は十数人の旧兵を集め、命じた。
11:07一斉に狙え。
11:09あの将を倒せば、出雲軍の指揮は崩れる。
11:12旧兵たちは一斉に弓を引き、アレイめがけて矢を放った。
11:16将軍。
11:18部下たちが駆け寄るが、アレイは倒れながらも叫んだ。
11:22下がるな。戦え。
11:24鷹取は隙を見てアレイに接近し、一対一の戦いを挑んだ。
11:29出雲の猛将、一たちいただこう。
11:31若造がなめるな。
11:32アレイは傷を抑えながらも大斧を振るい、鷹取に襲いかかった。
11:38しかし、若さと俊敏さで勝る鷹取に対し、重傷を負ったアレイはもはや立ち打ちできなかった。
11:45時代は変わる。老いた勇者よ。
11:47鷹取の剣がアレイの喉を貫いた。
11:49それがアレイの最後の言葉だった。
11:55将軍の死を目の当たりにした出雲兵たちの士気は急速に崩れ、物延軍はさらに暴行を仕掛けた。
12:02王宮の炎上と将軍の戦死。
12:05この2への打撃に、出雲軍は完全に混乱し、統制を失っていった。
12:10全軍撤退。南へ向かえ。
12:12残った指揮官が命じたが、すでに遅かった。
12:16物延軍は退却路を断ち、出雲兵を包囲していった。
12:20残された選択肢は幸福化しのみ、多くの兵士が武器を置き、膝をついた。
12:26700年続いた出雲王国の軍は、こうして事実上解散したのであった。
12:33園子と鶴目は、数人の忠実な家臣と共に南へと逃れていた。
12:37一人、また一人と、忠臣たちは園子を守るために命を落としていった。
12:43森の中を三日未満、食料も尽き、疲労の曲にある園子と鶴目。
12:49しかし、熊野の森が見えてきた時、2人は希望を見出した。
12:53あれが熊野の聖地です。あそこまで行けば。
12:57しかし、その時、森の中から現れた一団が彼女らの前に立ちはだかった。
13:02鷹取率いる追跡部隊だった。
13:04よくぞここまで逃げ延びた。出雲の姫、もう終わりだ。降参しろ。
13:10鶴目は置いた体に鞭打ち、園子の前に立ちはだかった。
13:14姫様、私が時間を稼ぎます。熊野へ。これも運命。私は預言者。自らの死さへ予見していました。
13:24鶴目は懐から小さな布の袋を取り出し、中の粉を空中に撒いた。
13:30すると、辺りに再び濃い霧が立ち込め始めた。
13:33行きなさい。
13:35鶴目の声に背中を押され、園子は泣きながら熊野へと走り出した。
13:40霧の中、鶴目の悲鳴が聞こえ、園子は振り向くことなく走り続けた。
13:45やがて、熊野の神域に足を踏み入れた時、不思議なことに追手の足音は消えていた。
13:51熊野の森には古くから神々の加護があるとされ、敵意を持つ者は近づけないという言い伝えがあった。
13:57疲れ果てた園子は、熊野大社の前で膝をつき、涙を流した。
14:03父上、阿霊将軍、春日、鶴目、みんな。
14:08彼女は全てを失った悲しみに打ちひしがれながらも、出雲の血を引く最後の希望として生き延びる決意を固めた。
14:15熊野大社に身を寄せた園子のもとに、数日後、意外な訪問者がやってきた。
14:23それは物の部軍、栃根だった。
14:26よく来たな、物の部の将。
14:28姫よ、恐れることはない。私は講和を申し出に来た。
14:34講和?私の父を殺し、国を滅ぼしておきながら。
14:38園子の目に怒りの炎が宿る。栃根はそれを見据えながらも、平成を装っていった。
14:44時代は流れる。恨みを続けても何も生まれぬ。
14:49我らは出雲の民を殺すつもりはない。
14:52共に新しい時代を執行ではないか。
14:55何が望みだ?
14:57出雲国を除く広域の出雲王国の支配権を物部が受け継ぐ。
15:02王宮は私が使う。
15:04その代わり、姫の命と出雲の真珠は保障する。
15:08なぜ私を殺さない?
15:10賢明な質問だ。
15:11出雲の民は姫を敬愛している。
15:15姫を殺せば永遠の氾濫の種を撒くことになる。
15:18それより、姫に承認してもらった方が統治しやすい。
15:23政治的駆け引きか。
15:24現実だ。
15:26その子は長い沈黙の後、決断を下した。
15:29分かった。
15:31講和に応じよう。
15:32しかし条件がある。
15:34熊野の地に新たな館を建て、先祖を祀ることを許せ。
15:39承知した。
15:41こうして、出雲王国とモノベの間で講和条約が結ばれた。
15:45形式上は平和的な国譲りという形を取ったが、実際は武力による征服だった。
15:51その子は熊野の地に新たな館を構え、出雲の神々と先祖を祀った。
15:57彼女は正式に見事なり、出雲の神聖な血脈を守り続けた。
16:01数年後、そこには国譲り神話として、出雲の神々が自ら大和の神々に国を譲ったという物語が記された。
16:11しかし真実は、700年続いた日本最初の王国が、第17代目の王で幕を閉じたこと。
16:18それは自発的な国譲りではなく、モノノベ、豊国連合軍の猛攻撃により滅ぼされた史実だった。
16:25熊野大社に立つその子の子孫は、代々その真実を胸に秘めながらも、表向きは神話に従い、平和な世を願い続けた。
16:34滅びた王国の記憶は、やがて神話の中に溶け込み、出雲の埃高き700年の歴史は風化していった。
16:41しかし、熊野の森の奥深くに立つ古い祠には、今もなお真実の歴史が刻まれている。
16:49そして時折、嵐の夜に、出雲最後の王、大彦の呪いの言葉が、風のように聞こえると言われている。
16:57出雲の魂は不滅なり。
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