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  • 2 日前

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トランスクリプション
00:01私が生まれ育った町からは富士山が見えた
00:06富士は大きくて美しくて私を爽やかな気分にしてく
00:10れた
00:12そうやってずっと富士山を眺めていると私は家に帰るのが
00:16嫌になった
00:20父は自宅の一階で小さな焼肉屋を経営している
00:26家の中は薄暗くて油にまみれている
00:32柱や壁家具に至るまできちゃけた油がべっとり付着
00:38していた
00:39不死家庭のため掃除は行き届かず
00:42押入れの布団にも常にじっとり油が染み込んでいた
00:47衣類はいくら洗濯してもすぐ油が染み込んだ
00:52おまけに父はひどい油症でいつも油切って独特の
00:56匂いを放っていた
00:59私には二つ年上の兄がいた
01:02とても隠室な性格で父のいないところで私をねじね
01:07じといじめた
01:09また兄には奇妙な癖があって
01:12時々厨房に忍び込んではサラダ油をうまそうに飲
01:17んだ
01:18はぁっ
01:23見たなユイ
01:26いいか父ちゃんには黙ってろよ
01:28バラしたらどうなるか分かってんだろうな
01:38ベトつく壁も胸の悪くなる父の匂いや油のように隠室
01:44な兄も大嫌い
01:47そして私はどんどん油に敏感になっていった
01:51そのうち私は部屋の空気の中に含まれる油の濃度
01:56まで感じ取ることができるようになった
01:59
02:00私は空気中の油の蒸気の濃度をそう名付けた
02:05ピンポンポンポーン
02:07ただいまの部屋の油は50%
02:11火の元にはくれぐれもご注意ください
02:16ただいまの油度60%
02:19ただいまの油度60%
02:26兄が思春期に入るとその額にニキビができ始めた
02:32手ニキビは顔中に広がった
02:42おいゴロ
02:43近寄るんじゃねえこのカッカさんやろ
02:47バカ野郎
02:48おめえの油がついちまったじゃねえか
02:51クリーニング代払え明日までに5万円持ってこいよいい
02:55
03:01おいユイ
03:02お前笑ってたんだろ
03:04いい君だと思ってたんだろ
03:06やめんかゴロ
03:08離せおやじ
03:10俺がこんな顔になったのはおやじのせいだ
03:14俺の体は薄汚い油に汚染されちまったんだ
03:18どう責任とってくれるんだよ
03:20よせ
03:20やめろ
03:25それから兄は家に引きこもるようになり毎日のように油を
03:30飲んだ
03:32ユイ
03:33ユイ
03:34ユイいないのか
03:36なにお兄ちゃん
03:38油だ
03:40油を買ってこい
03:41それから新しい布団もだ
03:44この布団ジメジメして気持ち悪いんだよ
03:46そんなこと言ったってお父さんお金出してくれないわ
03:51うるさい
03:52どっかにあるだろ
03:55もうイライラする
04:00気持ち悪い
04:03
04:05気持ち悪いって言ったが
04:08そうか
04:10俺の油がそんなに気持ち悪いか
04:13じゃあ思い切り味合わせてやる
04:15じゃあ思い切り味合わせてやる
04:42お前を殺してやる
04:44気持ち悪いって言ったばつな
04:49気持ち悪いって言ったばつな
05:07すまんごろ
05:12えっ焼肉だるま?
05:14ダメでしょ
05:16店内汚いし
05:17いやそれがね
05:20この前行ったらいい肉出たんだよ
05:23油が乗っててさ
05:24そうなの?
05:26いらっしゃい
05:28おやじさん
05:29例のおいしい肉お願いね
05:32この前のやつ
05:35すいません
05:36あの肉はあいにく昨日でなくなってしまいまして
05:40そうなの?
05:43はい
05:44ただいまの油と70%
05:4770%
05:49私が奇妙な夢を見るようになったのはその頃からだった
05:58私は夢の中で富士山を眺めていた
06:14
06:16これは油だ
06:21あっ
06:23現在の市内の油は90%
06:27油は90%
06:30火の元には十分ご注意ください
06:37気分が悪い
06:42飲め
06:44飲むな
06:45ううっ
06:46うっ
06:47うっ
06:50なにさんの
06:51ユイ
06:53起きていたのか?
06:54いやすまん
06:55お腹を空かせてるかと思ってちょっと油をな
06:59もしかして最近ずっと飲ませてたの?
07:03うっ
07:03いや
07:04ねぇ
07:05飲ませてたんでしょ?
07:07バカな
07:07お父さんもう寝るからな
07:13そうだ 絶対そうだ
07:15ここ数日お父さんは ずっと私に油を飲ませていたんだ
07:21それ以後私は用心した
07:24下手に眠るのは危険だ
07:41やめとやめと
07:43何が焼肉だ
07:46父の油症はますますひどくなり
07:48父に誓えると ムンムンと湯度が上がった
07:55父の入った後の風呂の残り湯には 油の膜が張り
08:01押入れの布団には 以前より多く油が染み込んだ
08:06そしてアルバン
08:09何の音だろう
08:22滴り落ちているのは 血ではなく大褐色の油だった
08:29ただいまの湯度100%
08:33湯度100%
08:35それほど最大の音量で おどの音量が伝えれば
08:40水晶度100%
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