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ショートトランスクリプション
00:00この広大なキャベツ畑で事件は起こった
00:05彼女の名前はジング・ウジ・ヨーコ リン・ワン警部である
00:11エモリ君 被害者の身元は?
00:14はい 死亡したのはこの畑の持ち主で農作業をしていた
00:19手塞ヶ原豊さんと スカイダイビングをしていた岡玲子さん
00:23死因は二人とも頭部の打撲によるものです
00:27こちらが今日 岡さんと一緒にスカイダイビングをしていた大谷さんです
00:33岡君は先日クラブに入ったばかりの新人でした
00:37僕が今日 岡君をスカイダイビングに誘ったんです
00:42上空へ行って 岡君が先に飛行機から飛び降りて
00:49その後に僕が飛んだんです
00:51いつも通りスカイダイビングをし
00:54予定通りのコードで 僕のパラシュートが開いたんですが
00:58彼女のパラシュートが壊れてて開かず
01:02そのまま 墜落してしまったんです
01:08僕がついていながら こんな事故が起きてしまうなんて
01:13パラシュートの故障で墜落してしまった岡さんが
01:19下でたまたま農作業をしていた 勅使河原さんに激突した
01:22偶然に偶然が重なった 不幸な事故ですね
01:27それにしても こんな悲劇的な事故が起こるなんて
01:31確かにこの現場の状況からは 事故に見える
01:34え? 事故に見えるって警部 事故以外考えられないじゃないですか
01:41これは事故なんかじゃない 間違いなく巧妙なトリックを使った殺人
01:48ん? ヘルメット?
01:56この服 湿っている
02:02これで全てが 全てが繋がった
02:07繋がったって警部
02:09結論から言うわ これは地上にいる 勅使河原さんを狙った恐るべき殺人事件
02:15狙った? ということは ひょっとして岡さんが
02:21自分の身を犠牲にして 勅使河原さんをめがけて飛び降りた
02:25つ、つまり 神獣ってことですか?
02:31違うわ エモリ君
02:33え?
02:34上空4500メートルから 地上にいる人に狙いを定めて飛び降りても
02:38空気の抵抗や風の影響で 目標に正確に落ちることなんてまずできない
02:44そうですよね 大谷さん
02:47ええ まあ 不可能に近いですね
02:50それに 亡くなった二人 勅使河原さんと岡さんには何の関係もない
02:56おそらく お互いに顔すら見たこともなかったでしょうね
03:00つまり 岡さんには 勅使河原さんを殺す理由がない
03:04じゃあ 一体 この事件は?
03:06岡さんは 勅使河原さんを殺すために利用された
03:10利用された? 誰が利用したんですか?
03:13それは この殺人事件の犯人
03:15犯人?
03:16そう この殺人事件の犯人は
03:19大谷さん あなたです
03:26待ってください 警部さん
03:28一体 なんで僕が 勅使河原さんを殺さなくちゃいけないんですか?
03:32どう見たって これは事故じゃないですか?
03:34大谷さん あなたは 勅使河原さんから多額の借金をしていたそうですね
03:40その返済に困って この殺人を計画した
03:45一見不幸な事故に見せかけた この事件のキーワードは5つ
03:50大谷さん それが あなたが この殺人事件の犯人であることを証明してくれます
03:56キーワードその1 曇りの日のスカイダイビング
04:01曇りの日?
04:02大谷さん あなたは曇りで風のあまり吹いていないこの日に
04:07新人農家さんを急遽 スカイダイビングに誘う
04:10初心者同然農家さんを なんでわざわざこんな日に誘ったのかしら?
04:15確かに 雨が降っていたら スカイダイビングはやりません
04:19でも 普通 多少曇っていても スカイダイビングはやるもんです
04:23何の不思議もありません
04:26警部 どういうことですか?
04:28曇りの日が この事件に 何の関係があるんです?
04:32エモリ君 足元を見て
04:34足元?
04:36地面ですか?
04:38警部 よくわからないんですけど
04:41エモリ君 曇りの日と晴れた日の決定的な違いは 影よ
04:47そうか 影がない
04:51そう 今日のような曇りの日には 影ができない
04:55つまり 上空から落ちてくる人の影も 地面に映ることはない
05:00影ができなければ 農作業に集中していた 手志河原さんが 上空から落ちてくる岡さんに気づくことはない
05:09確かにそうですが
05:12そうだ それが何の証明になるんです? それだけでは これが殺人事件だとは言えませんよ
05:20キーワードその2 大きめのパラシュート
05:23大谷さん あなたは先ほど 岡さんとは別々にダイビングしたと言ってましたよね
05:29確かに言いました でも それはどうしたっていうんですか?
05:33あなたは今日 2人1組になって飛ぶための 大きめのパラシュートを用意したそうですね
05:39大きめのパラシュート?
05:41そう スカイダイビングには 1人用のパラシュートと 2人用のパラシュートがある
05:48大谷さん あなたは本当は 岡さんと2人1組になって 飛んだのではないんですか?
05:55何を言ってるんですか?
05:59そうですよ 警部 飛行機には パイロットが乗ってるじゃありませんか?
06:04そんな嘘をついたら すぐバレちゃいますよ
06:07そのパイロットに聞いたんですが 今日に限ってあなたは
06:11飛行場との連絡を 真面目に取るように指示したそうですね
06:15ええ しましたよ
06:17でも 天候や風向きなどの情報を 飛行場から得るのは
06:21スカイダイビングの時には 必要なことなんです
06:24普通 飛行機のパイロットは 操縦に集中するために
06:29後ろのことには あまり気が回らない
06:32さらに今日は あなたに言われて いつもより細かいことまで
06:36飛行場と行進した
06:38無線での行進は ただでさえ ノイズ混じりで よく聞こえないことが多い
06:43つまり パイロットの意識は 無線に集中することになり
06:48後ろにいる あなたと岡さんのことまでは 気が回らなくなる
06:51行進を豆にさせたのは あなたが 岡さんと二人一組になって飛ぶことを
06:56パイロットに気づかれないように したかったからよ
07:01面白いことを言う 刑事さんだ
07:04じゃあ 仮に僕と岡君が 二人一組で飛び降りたとして
07:08それでどうやって 勅使河原さんを 殺せると言うんです
07:12大谷さん あなたは 岡さんと一緒に 飛行機から飛び降り
07:17脳下げをしている 勅使河原さんの上空で パラシュートを開い
07:22そして 地上の勅使河原さんめがけて 岡さんの体を投げつけたの
07:27投げつけるって そんなことが できるんですか
07:31あきれたね よくも そんなとっぴな話を 思いつくもんだ
07:36だいたい 岡君が何の抵抗もせずに 黙って落とされるはずがないでしょ
07:41岡さんが抵抗しなかった理由を 説明しましょう
07:45それが キーワードその3 ヘルメットについた血
07:50警部 どういうことですか
07:54岡さんと勅使河原さんは 頭からぶつかったわけですから
07:58ヘルメットに血がついていても 不思議じゃないですよ
08:02その血が 手志河原さんの血だったらね
08:05え?
08:06鑑識の結果 この血液は 岡さん自身の血だということが
08:11分かりました
08:12え? どういうことですか 警部?
08:15上空から落ちてきて 死亡した岡さんの血が
08:19ヘルメットの外側に ついてるのは おかしい
08:22つまり この血は 手志河原さんと激突したときに
08:25ついたのではない むしろ 飛行機からの血が
08:27むしろ飛行機から飛び降りる前に
08:29岡さんがヘルメットで 頭を殴られたと考える方が自然
08:34そうか だからヘルメットの外側に 岡さんの血がついていたんだ
08:38え? ってことは
08:40そう 岡さんは手志河原さんと 激突して死んだんじゃない
08:44飛行機の中ですでに 殺されていたのよ
08:46え?
08:47大谷さん あなたは パイロットの注意を 無線機に引き付けておいて
08:54岡さんをヘルメットで
08:56なぐり殺した そしてそのヘルメットを 岡さんにかぶせた
09:06ヘルメットなら 狂気を 飛行機の中に残すこともないし
09:12頭部の打撲は 激突したときの傷に 見せかけることができる
09:16大谷さん あなたは岡さんを殺して その死体を
09:20手志河原さんを狙う狂気に 仕立て上げたのよ
09:24し 死体を狂気に?
09:28ふざけるな
09:29ヘルメットの血だけで なんでそこまで生きれるんだ
09:32それを証明するのが キーワードその4
09:36壊れていたパラシュート
09:39大谷さん このパラシュート ここが切れてますよね
09:43当たり前だ パラシュートが壊れていたから この事故が起こったんだ
09:48この部分は 自動解散装置
09:51自動解散装置?
09:54これは ダイバーが空中で 気を失ってしまったときでも
09:57自動的に パラシュートを開く 安全装置なの
10:04しかも 衝突なんかで 切れるようなものじゃない
10:09いくら初心者といえど これが壊れていれば 必ず気づくはず
10:14つまり 生きてる人間が こんな壊れた パラシュートを背負うはずがない
10:20これが 岡さんが殺されていた 何よりの証拠
10:25大谷さん あなたは事故に見せかけるために
10:28わざとこの装置を壊し そのパラシュートを死んだ岡さんに背負わせた
10:34いい加減にしてくれ もうたくさんだ
10:37あんたたちは何も分かっちゃいない
10:39いいか? たとえ上空から落とすときに 岡君が死んでいたとしても
10:44体が折れ曲がったりして まっすぐ落とすことなんか できるわけないだろ
10:48確かにそのまま落としたのでは 狙ったところにまっすぐ落とすことは難しい
10:53でも あなたは ある方法を使って それを可能にした
10:57それが キーワードその5 湿った服
11:01オカさんの服は 水分を含んで湿っていった
11:08大谷さん 岡さんの着ている服の生地は あなたのものとは違いますね
11:14普通スカイダイビング用の服は あなたが着ているようなナイロン地のものが多い
11:20でも 岡さんの着ている服は 綿でできていて しかも分厚い
11:25スカイダイビングの服装に 特に決まりはない
11:28何を着たっていいんだ
11:30でも 初心者のオカさんに スカイダイビング用の服を着せなかったのは どういうことかしら?
11:36そ、それは…
11:38あなたは オカさんが初心者であるのを いいことに この服を着せた
11:43いえ 着させる必要があった
11:46え? どういうことなんですか 警部?
11:50大谷さん あなたは 殺したオカさんに パラシュートを背負わせた後
11:56オカさんの遺体に ポリタンクに入った水をかけた
11:59綿でできていて しかも厚手の服なら 水をたっぷり含む
12:04水を? それは何のためですか?
12:08そうしておいて 彼女の遺体と一緒に 飛行機から飛び降り
12:12だから どういうことなんですか?
12:17気温よ
12:19ん? 気温?
12:21上空4500メートルともなれば たとえ夏でも その気温はマイナス10度
12:28水をたっぷり含んだオカさんの服は たちまち凍りついてしまう
12:32あなたは 農作業をしている テシガワラさんの上空で パラシュートを開き
12:40テシガワラさんの頭上30メートル つまり ビルの10階ほどの高さまで降下した
12:48そしてあなたは テシガワラさんを狙って 凍ったオカさんの遺体を投げつけたのよ
13:02凍りついて棒のようになった オカさんの遺体は 空気の抵抗や風に影響されることなく
13:09まっすぐに テシガワラさんにぶつかった
13:12水を含んで重くなった オカさんの遺体は ぶつかった衝撃も大きい
13:19そうか それで オカさんの服が濡れてたのか
13:22大谷さん あなたは テシガワラさんを殺す道具にするためだけに オカさんを殺害した
13:32これが この殺人事件の全容です
13:35あ… オカさんの事件は 事故なんだ
13:42事故にできたはずなのに 完璧な計画のはずだったのに
13:47このかつてない 凶悪な事件は こうして
13:52その事件は 山合いにある この小さな旅館で起きた
13:56マナベさん マナベさん しっかり知ってください
14:00誰が 誰が 警察官数 どうしたんですか
14:03マナベさん マナベさん
14:06彼女の名前は 神宮寺陽子
14:12今回出張で たまたま訪れた地方の街で この事件に遭遇したんだ
14:17エモリ君 被害者の身元は?
14:21ああ はい
14:23えー マナベ文雄 54歳 商店街の会長を務めていました
14:28事故の時に 一緒におられたのが こちらの袴田さん
14:33マナベさんと同じ商店街で 書店を経営されています
14:36私は 体を洗っている時に 後ろで何かが ぶつかるような鈍い音がしたんで 慌ててくれかえたら
14:46マナベさんが 岩に頭をぶつけてて
14:49マナベさん かなりお酒を飲んでまし
14:52ただ 足を滑らせて 岩に頭をぶつけたんじゃないかと
14:56じゃあ 事故って事ですよね
14:59ん?
15:00これは…
15:08警部 髪の毛が どうかしたんですか?
15:11シャンプーも まだ残ってる
15:16おそらく これは事故を装った 殺人事件
15:21エモリ君 被害者の死因は 特定できたの?
15:24はい 傷口の状態から 推測されるのは
15:29直径2センチくらいの 固くて丸い棒のようなもので
15:33後頭部を強打したことによる 脳挫傷らしいです
15:37固くて丸い? 例えば鉄パイプとか?
15:40ええ ただ そんなものは この浴場から 見つかっていません
15:44とすれば 袴田さんは 明らかに嘘をついている
15:49え? 警部?
15:51それじゃあ 事故じゃないんですか?
15:54僕がこの浴室に飛び込んだ時には 彼は タオル一枚の裸だったんです
15:59鉄パイプどころか 人を殺せそうな道具は 何も持っていませんでした
16:03どうやって 真鍋さんは 殺せるんです
16:07浴場にある唯一の窓は 開かない構造になる
16:13狂気を外に投げ捨てることができない
16:17つまり 狂気は必ず この浴場の中にある
16:22そういえば エモリ君
16:26あなた この旅館に着いた後 温泉に入りに行って すぐ帰ってきたわよね?
16:32ええ あの時はですね
16:34一風呂浴びようと思って 浴場に来たら
16:37清掃中の札が出てたんです
16:40だから 一旦 部屋に戻ったんですよ
16:42エモリ君 旅館のご主人を 呼んできてちょうだい
16:46清掃中の札? うちの旅館には そんな札ありませんよ
16:50え?
16:53あるはずのない清掃中の札
16:59あら?
17:07どうしたんですか?
17:08見て このシャワー 壊れた
17:11壊れたシャワー
17:13エモリ君 ここひどくビール臭いわね
17:21え? そうですか?
17:23フローに入る前に 一杯やってたんじゃないですかね
17:27ただ飲んだだけで こんなに飲もうかしら
17:30こんなに飲もうかしら
17:34ん?
17:44洗面台のビールの匂い そして大量の空き缶
17:48でももう一つ 何かが欠けている
17:53ハンガー
17:55このハンガー 妙に歪んでいる
17:58これで全てが繋がった
18:02どうしたんですか?
18:10結論から言いましょう
18:13マナベさんを殺害したのは 袴田さん あなたですね
18:17え? バカなこと言わないでください
18:21マナベさんが死んだ時 私は裸だったんですよ
18:25一体どうやって殺したっていうんですか?
18:29人が通ることができるのは あの出入り口だっけ
18:34事件の後 そこから出て行った人物はいない
18:38それは エモリ君が証言している
18:41では 最初からお話しします
18:44この事件のキーワードは5つ
18:46それが あなたをこの殺人事件の犯人であることを証明してくれます
18:52キーワードその1
18:56あるはずのない清掃中の札
18:59あなたはまず マナベさんと2人でこの浴場に来た
19:03そしてマナベさんが浴室に帰った
19:07前もって自分で用意してきた 清掃中の札を浴場の入り口にかけた
19:12普通 清掃中と書かれた札が下がっていれば
19:16それがたとえ偽物の札でも 客は信用して入ってはこない
19:21清掃中の札 これがこの脱衣所の棚の奥に隠してありました
19:27ご主人 これはこの旅館のものですか?
19:31いえ うちはお客さんのあまりお入りにならない時間帯に掃除をしますので
19:38そういったものはないんです
19:40袴田さん これはあなたが用意したものですね
19:44でも なんでわざわざそんなものを用意する必要があったんですか
19:49それは この浴場に誰も入ってこられないようにしたかった
19:52キーワードその2 被害者の髪の毛に残ったシャンプー
20:02普通 シャンプーの途中で歩き回る人はいない
20:06シャンプーが真鍋さんの髪に残っていたということは
20:11真鍋さんがシャンプーをしている最中に殺されたということの証明
20:19袴田さん あなたは清掃中の札を入り口にかけた後
20:24真鍋さんがシャンプーをし始めたのを見計らい
20:27浴衣の袖からあるものを取り出し
20:31シャンプーをして真鍋さんに近づいた
20:35シャンプーをしている時というのは
20:39人間が最も無防備な状態になっている時
20:42人に背中を向けているし目もつむっている
20:46誰かが近づいてきてもシャワーの音で気づかない
20:50あなたはその時を狙い
20:52木を狙い 真鍋さんの後頭を
20:56狂気で殴った
21:00袴田さんが真鍋さんを殺すのに
21:03真正面から向かっていってもまず叶わないでしょうね
21:06力で叶わない真鍋さんを殺害するには
21:10あなたにはこの時しかなかった
21:14キーワードその3
21:16壊れたシャワー
21:18まさか シャワーで殴り殺したんですか?
21:21違うわね
21:23被害者は直径2センチの丸い棒のようなもので殺されたのよ
21:27シャワーの形状では傷口とは合わない
21:30それにプラスチック製の軽いもので
21:33人一人を殴り殺せると思う?
21:35袴田さん
21:37真鍋さんを殴り殺したあなたは
21:40事故死に見せかけるために死体を引きずっていき
21:44あたかも酔って足を滑らせ
21:45岩に頭をぶつけたように見せた
21:48その後
21:50洗い場から浴槽までの床についてしまった
21:53真鍋さんの血をシャワーで洗い流した
21:56しかし思いのほか遠くについてしまった血を
21:59慌てて洗い流そうとして
22:01シャワーを壊してしまった
22:02なるほど
22:06でも警部
22:08狂気は一体どこへ行ったんですか
22:10この事件の狂気は直径2センチの固くて丸い棒のようなものなんです
22:15この浴場からはそんなもの見つかってないじゃないですか
22:19それに僕が浴室に入った時には彼は裸だったんですよ
22:24そうだ
22:26狂気が発見できなければ犯行を証明することはできない
22:30狂気はどこにある
22:35狂気のヒントはここにあるわ
22:39キーワードその4
22:41妙に歪んだ歯
22:43え?それが狂気なんですか?
22:46そ、そんなものが何だというんだ
22:49ご主人?
22:51これはこの旅館のものですか?
22:54うちのものじゃないですね
22:56どなたかお客さんが持ち込んだんじゃないですか?
23:00く、狂気は直径2センチの鉄パイプじゃなかったのか
23:05そう、しかしここをこうすれば
23:11キーワードその5
23:13洗面台のビールの匂い
23:16そして大量の空き�
23:18ま、まさか中身の入った缶ビールでマナデさんを殴り殺したんですか?
23:25違うわエモリ君、缶ビールでは被害者の傷口と形状が合わない
23:30じゃ、じゃあ一体狂気は何なんですか?
23:33それはこれよ
23:38ビールの空き缶の数はおよそ50本
23:42これを全部50円玉で買ったとすると
23:45その数は300枚近くにある
23:48それをすべてこのハンガーに通せば
23:50直径2センチの鉄パイプと同様の狂気が完成する
23:54そして、これはマナデさんの後頭部の傷口の形状とも一致する
24:00この狂気で、マナデさんを殺される
24:04え?でも警部、そんな大量の50円玉を
24:13中本さんは一体どこに隠したんですか?
24:16マナデさん殺害の後、彼はハンガーから50円玉を外し
24:21次々と自動販売機に入れ、大量のビールを買い込んだ
24:27つまり、狂気の50円玉を全て自動販売機の中に隠した
24:32そして、その缶ビールの中身を洗面所に流し
24:37空き缶をゴミ箱へ捨てた
24:40そして、ハンガーを元の形に戻し、脱いかもに入れる
24:45そうすれば、現場に狂気らしきものは残らない
24:49あとは、清掃中の札を外すわ
24:52マナデさん!マナデさん!しっかりしてください!誰が!誰が!誰が!
25:08どうしたんですか!
25:09事故に見せかけたかったあなたは、わざと人を呼び、自分が狂気を持っていないことを証明させた
25:18これが、この事件の全容です
25:21エモリ君、自販機を開けてみて
25:25あ、はい
25:30警部、ありました!
25:32それを鑑識に回して
25:35たぶん、ほとんどの50円玉から、血液反応と彼の指紋が検出されるはずよ
25:40あいつが、マナデが、低かったんです
25:48私たちの商店街の権利を、勝手に企業に売り払えやがって
25:55こうして、事件は終わった
26:01しかし、この世に事件がある限り、神宮寺陽子の戦いは続く
26:06ここは、都内の総合病院
26:11警備員が、停止の見回りを行っていた早朝の出来事であった
26:18お、なんだこの暑さ!
26:20そこで彼が見たもの
26:34それは、サウナのように熱くなっていた部屋で殺されていた男の死体であった
26:38そして、さらに驚くべきことに、その死体の奇跡が、折れた割り箸が突き刺さっていたのである
26:50警視庁上北署の敏腕警部、神宮寺陽子が、通報を受け病院に駆けつけたのは、真冬の早朝のことであった
26:57殺人が行われた現場は、病院の中庭に建てられている特別室、通称ビップルームと呼ばれ、厳重なセキュリティシステムが敷かれている部屋だった
27:08ああ、神宮寺警部、ご苦労様です
27:14おはよう
27:16ねえ、森君、ちょっと暑くないこの部屋
27:19暖房を利かさすぎじゃないの?
27:21いえ、暖房はとっくに切ってあります
27:24まだ涼しくなった方ですよ
27:27最初、現場に入った時と言ったら、まるでサウナ状態でした
27:31そう、で、被害者は?
27:34ああ、はい、こちらです
27:36ひどいわね
27:38被害者は大沢二郎、50歳
27:41表向きは不動産会社の社長ということになっていますが、裏ではかなり悪いことをしていたようです
27:47なるほど
27:50ん?これは、割り箸?
27:53ええ、死体発見時から刺さってました
27:56たぶん犯人は、割り箸を使って、被害者を腐った
28:01え、森君、馬鹿なこと言わないの
28:04傷口見てごらんなさい
28:05割り箸の傷口にしては大きすぎると
28:08確かに
28:11今回の事件、単なる視察事件ではないわ
28:15おそらく私たちの想像を超えた、とんでもないものが狂気に使われているはず
28:19昨夜、この建物にいた人物は3人
28:23事件の第一発見者で、特別室の専任警備員をしている、梶原雄三
28:28被害者の専任監獄だった、武部香里
28:34そして、この特別室の専任府長、伊藤芳恵である
28:38梶原さん、あなたが死体を発見した時、怪しい物音を聞いたのか、不審な人物を見かけたことはありませんでしたか?
28:48ありません。この特別室は、万全のセキュリティシステムが設置されていますからね
28:53外から誰かが近づこうものなら、すぐに警報器が反応して、本館の警備室に知らせる仕組みになっているんです
29:01昨夜、警報が鳴った形跡は?
29:03おりません
29:05ということは、外部からの侵入者はなかったってこと?
29:09それに、夜間には電子ロックがかかって、この建物から出ることもできないようになっておりますから
29:16出ることもできない?
29:17そうよ
29:18だから犯人は、この中の誰かしか考えられないのよ
29:23こんな、こんなことが起こるなんて、これまで気づいてきた病院の診療が…
29:32府長さんは、少し休んでいただいた方が良さそうね
29:36竹部さん
29:37はい
29:38あなたは、昨夜、どこで何をしていらしたんですか?
29:41はい、私はずっと、このナースステーションにいました
29:45一晩中
29:46はい
29:47あ、そういえば夜中に、大沢さんから、部屋が寒いから温度を上げてくれって言われて
29:54それはいつ頃…
29:56確か、夜の1時過ぎてたと思います
30:00そうですか、分かりました
30:03監視カメラの映像を調べてみましたが、やはり外部からの侵入者はいないそうです
30:09そうすると、やっぱりあの3人のうちの誰かが犯人ということになりますね
30:14でもエムリ君、犯人を特定するためには証拠が必要よ
30:193人の容疑者は、昨夜からこの建物の外へ出ていない
30:23ということは、被害者を殺した狂気は必ずこの建物のどこかに残っているはず
30:28なるほど、分かりました
30:31至急捜査開始します
30:33こうして、全捜査員による狂気探しが始まった
30:37しかし、建物内のどこを探しても、傷口に遭う狂気は発見されなかったのである
30:43ハサミやネスといった病院内にある刃物では、傷口と一致しない
30:49窓から投げ捨てようにも、電子ロックがかかっているため不可能
30:53そしてゴミの中にも、それらしきものは発見できなかった
30:57消えた狂気
31:01この謎が今回の時間の最も大きな鍵を握っている
31:06ちくしょう!こんなにいろんなものがあるのに、肝心の狂気が見つからないなんて
31:12ん?
31:16確かにいろんなものがあるわね
31:19ほら、こんなものまで
31:22ひびの入ったシャンパングラス
31:24シャンパングラス?どうしてそんなもの?
31:26そう、こんなものがナースステーションにあるのは不自然ですよね
31:31でも、でも?
31:33もしかしたら、患者さんの忘れ物、ということもありません?
31:37その可能性は薄いでしょ
31:39えっ、どうしてですか、警部
31:41ここを見て
31:43これは?
31:45普通、ひびの入ってるグラスをわざわざ保存するなんてことしないわ
31:49これはおそらく犯人が、今回の事件で使ったもの
31:52医療棚の奥に置いてあったのは、たぶんゴミ箱に捨てるより
31:57ガラス容器の浮いてあるこの玉のほうが、ごまかせると思うんでしょう
32:02なるほど
32:04ひびの入ったシャンパングラス
32:08警部、一体何を探してるんですか?
32:11ん?何って、消えた凶器の手がかりよ?
32:14それなんですけど、僕、ひらめいたんです
32:17ひらめいた?
32:19消えた凶器の正体ですよ
32:21これしか考えられません
32:23伺いましょう
32:25それはですね、氷ですよ
32:27氷、前に小説で読んだことがあるんです
32:29つまり犯人は、氷で鋭いツララを作り、それで被害者を刺し殺した
32:33その後、暖房の温度を上げておけば、凶器のツララは溶けてなくなる
32:40だからあんなにも、部屋が暑かったんです
32:44そうね、凶器が溶けてなくなるという説には、あたしも分かった
32:49でしょ?
32:51ただ、ツララではないわね
32:53今は氷やドライアイスが凶器に使われた場合、水分や成分が残ったりして、すぐに乾式で分かるはずなの
32:59でも、その痕跡は全くなかった
33:03そ、そうですか
33:04元気出しなさいよ
33:06凶器が溶けたって説には、あたしも同感だって言ったでしょ?
33:10つまり、こうは考えられないんですよ
33:13犯人は、水ではない何か全く証拠が残らないものを凍らせて凶器を作り出した
33:20水じゃない、何かですか?
33:22そう、問題はそれが一体何だったかということ
33:26ん?
33:28やっぱり思った通りだわ
33:31なるほど
33:34エモリ君、監視カメラの映像、もう一度チェックするわよ
33:38ほぉ
33:41今のところ、戻して
33:45見つけたわ、犯人が残した最後のキーワード
33:49あたりの注意、懐中で
33:51エモリ君、関係者を病室に集め、急い
33:56はい
33:58犯人が起こした5つのキーワード
34:01これで全てが、繋がった
34:08ケーブル、全員揃いました
34:12ありがとう
34:14さて、皆さんに集まっていただいたのは他でもありません
34:17この奇妙な殺人事件の謎を明らかにするのです
34:21ということは、分かったんですね、犯人が
34:23ねぇ、そして、冷えた狂気の謎もね
34:28一体何だったんですか、狂気は
34:31それを、これからご説明しますわ
34:34今回の事件の謎は、狂気が煙のように消えてしまったことにありました
34:38しかし、現場を調べていくうちに、その謎を解く5つのキーワードが浮かび上がってきたのです
34:455つのキーワード?
34:47キーワードその1、指の入ったシャンパングラス
34:52キーワードその2、傷口に残っていた割り箸
34:56犯人は、この2つのものを使って、容器を作り出した
35:01皆さん、このグラスに液体を入れ、凍らせたらどんな形になると思いますか?
35:06えーと、ツララ、そうだ、ツララの形だ
35:12そう、そしてこの形は、被害者の傷口と一致する
35:17で、でも警部、狂気はツララじゃないって、さっき警部ご自身が
35:22ええ、確かに言ったわ
35:24でもね、エモリ君、犯人が作り出したのは、ただのツララじゃないの
35:29ただのツララじゃない?
35:31凍らせることのできる液体は、何も水だけじゃないのよ
35:34そして肝心なのは、ここから
35:382つ目のキーは、割り箸
35:41これはおそらく、こう使われたんでしょう
35:44そうか、取っ手
35:46凍った凶器をグラスから引っ張り出す取っ手として、割り箸を使った
35:49その通り、アイスキャンディーと同じね
35:53こうすれば、シャンパングラスから凍った凶器を簡単に取り出すこともできる
35:58しかし、犯人はここで単純なミスを犯したい
36:02それは…
36:03このヒビよ、これは何かにぶつけてできたものじゃない
36:07おそらく急激にグラスを冷やしたためにできたヒビ
36:11きっと犯人は、グラスから凍った凶器を外した後、割り箸も抜いてしまうと考えているはずよ
36:18でもガチガチに凍ってしまった凶器から、割り箸を抜くのは至難の技だった
36:22そうか、それで無理に引き抜こうとして、割り箸が折れて残ってしまった
36:28そう、犯人としては誤算だったけれども、それが我々の捜査を惑わすめくらましになっていた
36:35そして次に犯人は、その凶器を監視カメラに映っても大丈夫なある場所に隠して持ち込もうとした
36:42それが、キーワードその3、明かりのついていない懐中電灯
36:48懐中電灯?
36:49犯人は凍らせて作った凶器を、懐中電灯の電池が入る部分に隠して現場に持ち込んだの
36:56洋服の中やポケットに隠すと、溶けた凶器がシミになり、証拠が残ってしまうと考えたのね
37:02ほら、この部分に
37:04なるほど、そこなら凶器がきれいに収まるし、凶器が溶けたとしても、外にはこぼれない
37:11明かりのつかない懐中電灯を持って無事凶器を病室に持ち込んだ犯人は
37:16凍ったつらら状の凶器で大沢さんを刺し殺した
37:22そしてその後、部屋の暖房の温度を上げ、現場から凶器を溶かして消し去った
37:28それがキーワードその4、サウナのように暑かった部屋の真相
37:32ということは、懐中電灯の明かりをつけて無かった人物が、大沢さんを殺した犯人
37:39そういうこと、そしてその明かりをつけて無かった人物は
37:43そこは
37:48竹部香織さん、あなたよ
37:55この警備が厳重な特別室で犯行を行ったら、すぐに容疑者として自分の名前が上がってしまう
38:03そこであなたは、犯人と特定されないために、跡形もなく凶器を消してしまうことを考えた
38:11こんな手の込んだ方法で凶器を作ったのも、すべてそのために
38:16あの、すいません、警部、どうしても分からないことがあるんですが
38:22なに、エモリ君
38:24さっき警部は、ただのツララじゃないとおっしゃいましたけど、それって一体どういうことなんですか
38:29エモリ君、この世に一つだけ、溶けた後でも全く痕跡を残さない液体がある
38:36そ、それは一体
38:38キーワードその5
38:40現場に残されていた赤い輪っか
38:43赤い輪っか
38:45この赤い輪っかは、こうやって出来たの
38:49ああ、ぴったり
38:52竹部さん、あなたは薄暗くて見えなかったでしょうけど
38:54海中電灯の中で溶けた凶器が液体になって、蓋の部分に付着していたの
39:01海中電灯をつけることが出来なかったのが、恨みになったわね
39:06そしてその輪っかこそ、何の功績も残さず消えた凶器の正体
39:11警部、それって一体何ですか
39:14それは、
39:15塩
39:19まさか
39:20そう、そのまさか
39:22竹部さん、あなたは大沢さん自身の血液でツララ状の凶器を作り、大沢さんを刺し殺したのよ
39:28ここは病院
39:33輸血用の血液を冷凍する強力な冷凍庫もある
39:37そして何よりも、自分の担当している患者であれば、検査といって血液を抜き取ることなど簡単なこと
39:44しかも、もともとは被害者自身の血液を、傷の中に溶けて混ざれば狂気は消えてしまう
39:50さすがね、看護婦さんでなければ思いつかないトリックだわ
39:56その後の調べで、竹部は父親を大沢に殺されていたという事実が判明した
40:05こうして病院を舞台にした前代にも、機械な事件は、その幕末の下の部屋
40:11その事件は、東京発北海道行きの寝台特急流星の一番後ろの車両で起こった
40:21その列車の最高部デッキで被災を撃ち抜かれて死んでいたのは、尾野光雄61歳
40:38東京で宝石町を営んでいる男であった
40:45ん?
40:49そうか、分かったぞ
40:51どうしたの、エモリ君
40:53警部、これは殺人事件ではありません
40:57どういうこと?
40:58見てください、ガラスの破片が列車内に散らばっていますよね
41:02ええ
41:03つまり、それは列車の外から撃たれたという証拠です
41:05確かに、外から撃たれた時に限り、窓ガラスは内側に散らばるわね
41:12でも、かなりのスピードで走っている列車の中の人間を、外から正確に撃ち抜くなって
41:18警視庁所属の特殊部隊でも無理な事です
41:21ですから、これは殺人事件ではなく、事故って事なんです
41:27事故?
41:28ええ、つまり、こういう事です
41:31この列車が山間部を走っている時に、線路脇の山で、漁師が獲物を狙っていた
41:38そして、その漁師の撃った流れ玉が、偶然この列車内に飛び込み
41:43不幸にも敵で電話をしていた、被害者に当たってしまった
41:48という訳です
41:49どうですか?
41:51確かに、被害者は、走っている列車の外から撃たれている
41:57でも、これは、事故なんかじゃないわ
42:01え?
42:05これは間違いなく殺人事件
42:08しかも、犯人はこの列車に乗っていたのに
42:11そして、そこには、とてつもないトリックが仕掛けられている
42:15ん?
42:18お父さん、ど、どうして?
42:21事件現場に駆けつけたのは、石井ひろゆき、30歳
42:25被害者の娘の夫、つまり、ギリの息子である
42:28そして、石井は、この寝台特急流星の運転手でもあったのだ
42:33自分が運転していた列車で、父が狙撃されたなんて
42:38父を!
42:40さあ、もういいでしょう
42:42行きましょう
42:43あの運転手さん、ちょっと変ね
42:46え?どうしてですか?
42:48だって彼、今、狙撃されたって言ったわ
42:51自分が運転していた列車で、父が狙撃されたなんて
42:56死因はまだ公表されていないはずよ
42:59そうか、どうやって殺されたかは、犯人しか知らないこと
43:03じゃあ、あの石井がこの事件の犯人ですね
43:06ところが
43:07警部、だめです
43:10いくら調べても、運転中に石井が運転席から離れた形跡が全くないんです
43:15ということは、犯行が行われた時、石井と被害者はこの列車の運転席と最高部という最も離れたところにいたことになります
43:24つまり、石井は犯人ではないということです
43:28そうかしら
43:30え?
43:31犯人は石井に間違いないわ
43:33列車を運転していた石井が、最高部デッキに見る人間を一向こうと、きっと何かいるか
43:39なぜ運転席を?
43:42父が殺されたのは、一番後ろの車両ですよね
43:46ん?
43:48これは釣竿のケース?
43:50ええ
43:52あら?
43:53事件のあった昨日、何かいつもと違ったことはありませんでしたか?
44:02んー、あ、そういえば湖の近くのトンネルに入る前に、妙に長い汽笛が鳴りました
44:09トンネルの手前で鳴った長い汽笛
44:13これで全てが、全てが繋がった
44:17列車を運転していた人間が、同じ列車の最高部デッキにいた人間を打ち抜く方法
44:24一体そこには、どんなトリックが隠されているのだろうか
44:29あのー、一体どこへ行こうって言いますか?
44:34あなたが義理のお父さんを殺害した場所です
44:38私が父を殺した?
44:40いい加減にしてくださいよ
44:41石井さん、あなたは何でも頭ごなしに決めつけてしまう義理のお父さんを、心よく思ってなかったようですね
44:49あなたは同僚の人とお酒を飲むたびに、殺してやるって口走っていたのか
44:56まあ、酒の好きですから、そんなことを言ったかもしれませんね
45:00でも、何度も言いますが、私は父が殺された時、その列車を運転していたんですよ
45:06どうやったら私が、同じ列車の最高部のデッキにいた父を殺すことができるんですか?
45:12それを今から説明しましょう
45:15この事件には5つのキーワードがあります
45:19キーワードその1
45:21あなたが手配した最高部座席の切符
45:25確か、お父さんの座席の切符は、あなたが手配したとおっしゃいましたよね?
45:31ええ、父に頼まれましたから
45:33でも、なぜその時、最高部車両の席にこだわったんですか?
45:38え?
45:39聞くところによると、他の車両はいくらでも空いていたのに
45:43あなたはどうしても最高部の車両にしてほしいと、発見係の人に頼み込んだそうですね
45:50ふっ、それはなぜです?
45:53そ、それは…
45:54それは、この計画を成功させるためには、被害者である義理のお父さんに、一番後ろの車両にいてもらわなければならなかったから
46:06そうですね
46:08あなたは一体、何を言っているんですか?
46:10さらにあなたは、一番後ろのデッキ部分に、お父さんを誘い出す必要があった
46:17それが、キーワードその2、死体が握っていた携帯電話
46:22あなたは運転席から、お父さんの携帯電話に電話をかけた
46:26客車内での携帯電話の使用は禁じられているから、当然被害者は、最高部のデッキに出ることになる
46:36そしてあなたは、お父さんとこんな会話でも交わしたのでしょう
46:41すいません、お休みのところ
46:49どうしたんだね、こんな朝早く
46:51実は、ちょうど今走っているところが、この路線で一番景色がいいところなんですよ
46:57おお、どれどれ?
46:59お父さん、もうしばらく外を見ていると、素晴らしい景色が見られますよ
47:04この湖を背景に、朝日が昇る時間なんです
47:07そうか、そりゃ楽しみだな
47:09そう、あなたはお父さんが最高部デッキの窓に近づく、この時を待つ
47:16おお、面白いですね
47:22それで私は何をしたと言うんですか?
47:25ぜひ聞きたいですね
47:27キーワードその3、大きめの釣竿のケース
47:31今度は釣竿のケースですか?
47:33あなたは普段も釣竿を運転席に持ち込んでいますよね?
47:36ええ、おっしゃる通り、私は釣りが趣味なんで、地方に行くときはいつも持ち歩いているんです
47:44ただ、あの日に限って、いつもより大きめの釣竿のケースを持ち込んでいた
47:48それは、運転席にあるものを持ち込むためだったんじゃないですか?
47:55その証拠に、運転席にあった釣竿のケースの中は隙間だらけだった
48:00アルノフを持ち込んだって、一体何を持ち込んだって言うんですか?
48:06あなた、いろんな趣味がおありなんですね
48:10射撃は学生時代からの趣味だそうって
48:14それがどうしたって言うんですか?
48:16しかも、国体に出場したほどの腕前だそうですね
48:20じゃあ、あの釣竿ケースに入っていたのは?
48:23そう、おそらく、ライフル銃
48:29釣り好きで有名なあなたが、大きめの釣竿ケースを運転席に持ち込んでも、誰も怪しまない
48:37こうしてあなたは、義理のお父さんを殺害するための狂気を、ごく自然に運転席に持ち込んだ
48:44じゃあ、何ですか?
48:46私はそのライフル銃を持って、運転席から最高部車両まで移動して殺したと?
48:51こうおっしゃりたいんですか?
48:53いいね
48:54残念ながら、あなたが最高部車両まで移動したという証拠は、一切出てこないんです
49:01そうでしょう、列車内は先頭車両から最高部まで一本道と同じ状態だな
49:07もし私が列車内を移動したら、必ず列車の中ほどにある売店の前を通るはずです
49:14私がそこを通ったかどうかは、売店の人に来れば分からない
49:19あの売店は24時間営業ですからね
49:21ええ
49:22ええ、おっしゃるように、あなたは売店の前を通っていません
49:27だったら…
49:28そうか、外、外からだ
49:30あんたは列車の屋根を伝わって最高部車両が連携、屋根から上半身を乗り出して被害者を撃った
49:38だから窓ガラスの破片は列車内に散らばっていたんだ
49:41それも違うわ
49:44犯人にとってそんなリスクの高い方法を使う必要はなかった
49:49というより、むしろ被害者であるお父さんには、なるべく離れた場所にいてほしかったはずよ
49:54え、なるべく離れた場所って
49:58列車内で最も離れた場所は、運転席と最高部です
50:04あなたはその運転席でライフル銃の引き金を引いた
50:10張ってくださいよ、何を言っているんですか
50:13キーワードその4、トンネルの手前で鳴った奇跡
50:17まずあなたは銃声を消すため、奇跡を鳴らした
50:21そういうことは、奇跡が鳴った場所が被害者が撃たれたところということになる
50:26それはどこだっけ、レモリ君
50:29確か、トンネルの手前ですか
50:32ちょ、ちょっと待ってくださいよ
50:34私に父が狙えるはずないじゃないですか
50:37運転席からさ、狙いたくても最高部デッキの父の姿が見えないんですから
50:43キーワードその5、トンネルの手前の地形
50:47あなたはこの地形を利用して、不可能と思われる狙撃を成功させた
50:52え?地形を利用して狙撃を成功させた?
50:57警部、トンネルの手前ってあの、民家も何もないところですよね
51:02そうよ、あなたが先頭車両で運転をしながら
51:06最高部車両の被害者を狙うためには
51:09どうしてもあのトンネルの手前の特殊な地形が必要だ
51:13石井さん、さっきあなたは運転席にいては
51:17最高部デッキのお父さんの姿が見えるはずがないっておっしゃいましたよね
51:23ところがあるんです
51:26先頭の運転席にいるからこそ、最高部デッキの被害者の姿が
51:31見える瞬間
51:35ど、どういうことですか?
51:36エモリ君、思い出してごらんなさい
51:40トンネルに入る手前の線路は湖に沿ってどうなっていたかしら?
51:44これはどうにだって普通のトンネルですよ
51:48で、警部!トンネルの外に何かあるって言うんですか?
51:52エモリ君、見てごらんなさい
51:54あの場所は、たしか、湖に沿って大きなカーブを描いてました
52:00そう、あれだけ長くて大きなカーブが続くところなんてそう滅多になるわね
52:06その特殊な地形、つまりあの大きなカーブがこの事件で最も重要な役割を果たしたのよ
52:14おお
52:16ちょうどそのカーブに差し掛かったようでは?
52:19エモリ君、その運転席の窓から後ろを見てごらんなさい
52:23お、おい
52:25ん?
52:27け、警部!これは!
52:29最高部のデッキの窓が、この運転席から一直線で見ることができます
52:34しかも、これだけのスピードで走っているのに、最高部デッキにいる警官の姿は全く揺れていません
52:41この状態なら、警察学校で射撃を習っただけの僕にでも簡単に狙えそうです
52:46見えないはずの最高部のデッキが見える
52:49石井さん、あなたが待っていたのはこの時ですね
52:57被害者から最も離れたところから狙撃をすれば、絶対に自分は疑われない
53:07そのためにあなたは、運転席から狙撃する方法を考えた
53:14最高部のデッキが前に自分は避難するような難しい
53:22地球大統領的な音楽
53:24第1話 石井さん、これが列車の運転席から最高部のお父さんを狙撃するためのトリックの全貌だと言うことです。
53:49その後、トンネルを抜けたところを流れる川の底から石井のライフル銃が発見された。
54:02こうして寝台特急を舞台にした奇想天外な狙撃事件は幕を下ろした。