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医療費抑制の波紋「病院で死ねない」退院を迫られる高齢者

Marco Cavallo
6 年前|4.3K 視聴
心不全で入院していた80歳の男性。
歩くことはできませんが、病院から治療は終わったと言われ、自宅に戻りました。
男性は1人暮らし。世話をしてくれる人がいないため1日1回、介護ヘルパーが来ることになりました。

「自分一人じゃ何もできない」

医療費の抑制を推し進める国の施策。
今、高齢者が退院を迫られる事態が相次いでいます。現在、病院で亡くなる人は全体の8割。しかし、近い将来、およそ半数が病院以外で死を迎えると見られています。

「今日、おうち帰るんですよ」
「長くここの病院にもいられないからね、次々、救急車の人来るから」

病院を追われ、行き場を失う高齢者。どこで、どんな最期を迎えればいいのか。超高齢社会が直面する新たな課題です。

早く退院を” 救急病院の苦悩

横浜市立みなと赤十字病院です。
治療を終えたと判断した患者は、速やかに退院させています。1か月前、激しい下血で運び込まれた91歳の女性。

「リストバンド切っちゃいますね」

寝たきりの状態が続いていますが、下血は治まったため退院することになりました。

「“腸炎は治って、あとすることありません”とはっきり言われちゃったので。
もう少し元気になって、心配のない形で退院させてもらうのが、一番ありがたいと思うんですけど」

みなと赤十字病院は、地域医療の中核を担う救急病院です。
救急車の受け入れ回数は、年間1万2000件を超えています。入院患者のおよそ半数が65歳以上の高齢者。次々と運び込まれる患者を受け入れるため、早期の退院を促しています。
「はい、じゃあ、お大事に」
「どうもありがとうございます」

退院する患者をサポートする看護師の佐伯沙羅さんです。

「長くここの病院にもいられないからね、次々、救急車の人来るから」

12人のスタッフを率いて、退院後の行き先を探すなど、毎月およそ150人に対応しています。

この日、82歳の母親が大腸の手術を受けた家族に退院が迫っていると伝えました。

「入院は歩いて入ってきてるんですよね、母は。
手術したらまるっきり歩けなくなっちゃた、歩けなくするのが医学じゃない…」
「リフレッシュして全部というのは、ちょっと見きれません。いま、国の制度では」

女性は母親をこのまま入院させてほしいと訴えます。

「私一人しかいないので、介護するのが。
だから、私一人がどっぷりつかっていくのかなとか、何よりも心配しているのが、受験期の息子がいるから。なるべく長くいさせてもらって、少しでも元気に…」

「現実的には難しいと思います」
「難しいってどういうこと?」

「日本がこれだけの超高齢化で、医療費もどんどん膨れあがって、介護保険も破たん寸前と言われる中で、現実的に保険だけで、格安の費用で、お世話が受けられるところなんかないんですね。現実なんです、これが」

この病院では、入院直後から患者を早く退院させることを検討します。
そこまで力を入れる背景にあるのが、国の医療制度改革です。

国は病院が長期入院患者を抱えるほど、受け取る診療報酬を少なくしています。
みなと赤十字病院の場合、年間、数億円規模の減収につながるといいます。

さらに、退院後の受け入れ先も見つからなくなっています。
受け皿となってきた病院でも、国がベッド数を削減しているからです。
費用の安い老人ホームなど、公的な介護施設の数も不足したままです。
病院に残された選択肢は、患者を自宅に帰すことしかありません。

●不安な退院 ひとり暮らし高齢者
しかし、実際には自宅へ戻すべきかどうか迷うことのほうが多いといいます。

高岡義人さん、72歳。
先月(2012年4月)上旬、腎不全で入院しました。

「自分でゆっくり立ってみる?」

高岡さんは50年以上、ずっと1人暮らし。年金もなく、僅かな貯金があるだけです。

「ゆっくり、ゆっくり」
「今はどうです?ある程度よくなって」
「不安よ、先々が」
「うーん、そうね」
「自分の部屋でね、火事でもいったらさ、完全にアウト」
「下の人が火事でも起こしたらってこと?」
「おれが死んじゃうわ、逃げられないからね」

ことしになってから、自力で歩けなくなったという高岡さん。
佐伯さんの勧めでリハビリを始めました。
しかし、退院は7日後に迫っていました。

今月(2012年5月)初め。
高岡さんは予定どおり退院となりました。

「右足出してみましょうか」
「さっ、行こう」
「サンダルみたいな。滑ったら危ない」

「ここなんだよな、よいしょ」
「ここが狭くなるのが危ないね」
「ここまで来ればね、ずっと行くんだけど」

「よいしょ」
「はい、お疲れさまでした」

1日2回、食事や排せつの介助を受けることになりました。
「じゃあ、私も帰ります、高岡さん」
「はい、すみません」
「また来週、来ますね」
介護ヘルパーたちが帰ったあとも、高岡さんはずっと同じ場所に座り込んだままでした。

「年とると、やっぱり考えますよ。
自分の命が減ってくから」

佐伯さんが退院を促す高齢者のおよそ半数は1人暮らしや、夫婦2人だけの世帯です。
自宅へ戻すことが困難なケースは年々増えています。

「本当に目の前で、家へ帰ったら何食べよう、階段上れるかな、家までたどりつけるかなっていう人たちと、毎日毎日、接して。
どうすんだろう、本当にどうしようもないですよね。
どうしようもない。どうにもなんない、本当に」

以下:http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3205_all.html

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