歌会始
  • 11 年前
皇居で開かれた「歌会始」。天皇の「お歌」は、昨年11月に夫妻で訪れた沖縄県の景勝地「万座毛」についての思いを詠んだものだったが、そこにはメッセージが込められているように感じた。

「お歌」は「万座毛に昔をしのび巡り行けば彼方恩納岳(あがたおんなたけ)さやに立ちたり」というものだ。

沖縄戦のさい、「万座毛」の断崖絶壁からは、戦火に追われた民間人が多く海に飛び込んで犠牲となっている。もちろん「恩納岳」も戦場だったし、米軍占領後は155ミリ砲などを住民の頭越しに打ち込む実弾演習の標的となった。

「昔をしのび」というのは、かならずしも琉球王朝の当時だけをしのんだわけでもあるまい。そして「さやに立つ」とは「さやあて」などの「さや」、つまり戦争の犠牲者をいたみ平和を願う沖縄の人々のように山が立ちはだかっている様子を詠んでいるかのようだ。

憲法の下で「国事行為」以外の政治的発言はできない立場の天皇だが、かつては園遊会で、「日の丸」「君が代」は強制的でないほうがいいと述べたこともある。今日は新基地建設やオスプレイ配備を狙う小野寺防衛相が沖縄を訪問している。そんな時期の意味深長な「お歌」だった。