餓死・孤立死をどうかんがえるか:尾藤廣喜弁護士

  • 12 年前
「餓死」「孤立死」といわれる悲惨な事件の発生が相次いる。

 なぜ、このような「餓死」「孤立死」が多発しているのか。
 これらの事件の多発の背景には、(1)家族の変化、(2)地域社会の変化、(3)社会保障の劣化、そして、何よりも大きく、また、それぞれの事件に共通する要因として、(4)貧困の拡大があげられる。
 そこで、その各要因を考えてみると、まず、第1の家族の変化では、孤立状態にある高齢者や高齢者夫婦世帯が急増していることがあげられる。
 高齢者のいる世帯は、昭和58年には、全世帯の25%であったものが、平成20年には、36.7%にまで増加している。そして、高齢者のいる世帯のうち、単身の高齢世帯が、昭和58年には、11.3%であったものが、平成20年には、22.7%と倍以上の割合となり、高齢者のいる夫婦世帯が、昭和58年には、16.7%であったものが、平成20年には、28.1%と大幅に増加しています。高齢世帯の「孤立化」が進んでいる。
 また、第2の地域社会の変化では、高齢者が多い地域として、いわゆる過疎地域とか限界集落と言われる地域とともに、東京都や大阪市などの大都市地域があげられる。このうち、過疎地域とか限界集落と言われる地域では、地域の関心や見守りが、ある意味で、比較的高いレベルにあるため、「餓死」や「孤立死」の発生は、今回は、それほど問題とはなっていない。しかし、大都市地域の社会的つながりの喪失や「きずな」がなくなる状況は、極めて深刻だ。
 そして、第3の社会保障の劣化は、高齢や障がいに対する年金の額が少なく、失業した場合でも、失業給付を受けることができる人の割合が20%程度しかなく、国民健康保険でも、2010年6月1日現在で保険料滞納世帯が436・4万世帯、全体の20.6%にものぼるという状態にあるなど、住民の生活を支える社会保障の仕組み自体が崩壊の危機に瀕していることを示している。
 また、今回の事件の発生の最も大きな、そして深刻な原因となっているのは、「貧困」の広がりがある。低所得者の割合を示す貧困率が平成21年には16%と最悪の数字を示しているほか、生活保護制度の利用者が、平成23年7月には、過去最多の205万人となるなど、住民の多くの人が、何らかの生活上のつまずきがあれば、「餓死」や「孤立死」に直結しかねない生活状況となっている。

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