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スベトラーナ・アレクシエービッチ~こころの時代~「“小さき人々”の声を求めて」

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-06155160

喜正 佐藤

・・・チェルノブイリと福島は新しい顔をした戦場なのです・・・
<文字起こし・・・途中から>
・・・
 
 
 私は、福島の地で思いました。社会主義であれ資本主義であれ、国家は似たようなもの。国家と役人たちは自らの救済に忙しいのです。人間を救うのではなく、あの自殺してしまった男性も、十分な補償を受け取っていたなら、あの壁に「原発さえなかったら」と書くことはなかったでしょう。それに、あの男性一人ではありませんでした。飯館村には、おじいさんが自殺してしまった女性が居ました。あの女性は、裁判に訴えていました。「自分のおじいさんは自殺に追い込まれたのだ」と。
 私が、とても驚いたのは、彼女を支えようとする人が居る一方で、非難する人もいることでした。つまり、闘うという原則が、人々に無い、ということなのです。彼らはただ、いい役人や首相を待っているだけ。だから、闘うことができません。
 チェルノブイリ、福島、こんな巨大な事故は二回だけなので、人々には、どう抵抗すれば、の経験が無い。国家とどう闘うか、どう責任を取らせるか、と言う経験がありません。あの人たちは、社会と切り離され、除け者のようにされています。被災を免れた人たちは、「あの人たちは兄弟で同じ人間なのだ、自分の身にも起こり得たのだ」と実感できないのです。
・・・
・・・
 
 (福島に行って)一番大きな感想は、チェルノブイリの時と同じでした。国家は人間の命に対して、完全な責任は負わない、ということです。国家は最低限のことしかせず、あとは「好きにしなさい」です。また私は、日本社会における抵抗の無さに驚きました。私たちの社会もそうですが、日本社会には「抵抗の文化」がありません。
 私たちの社会では、日常の生活が、全体主義的であることと、結びついていますが、あなた方の国では、どうなのでしょう。
 プーチンは「あの戦争(アフガン)は正しかった、さもなくばアメリカが居座った」と言っています。今や「意識の軍国主義化」が起きています。ある種の新しい愛国主義です。「私たちには偉大なロシアが必要だ、犠牲もためらわない」というよいな。そして、見出そうとする活路は一つ、お決まりの軍事侵略です。
 今、民主主義が後退せざるをえない時代に、私たちは生きている、とさえ言えます。
 かっては、戦死した兵士の家に取材に行けば、何処へ行っても母親たちは、私に叫んでいた。「本当のことを書いて、真実を」と。しかし、今では、ある母親は、私と話すのを拒否するのです。ジャーナリストと話すのを拒否しています。なぜでしょう。「真実を話すと、息子の戦死による補償金がもらえなくなる。私はそのお金でアパートを買うのです」。つまり、国民の堕落が加わっているのです。
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 私は、30年以上ソビエトについて書いてきました。私たちは、百年間どう生きてきたのか。1990年代、我々はロマンチストでした。ペレストロイカ路線は、すぐ自由がおとずれると思っていました。みんな広場に出て、自由、自由と叫びました。でも、その意味は誰も知りませんでした。自由について話し、夢見ましたが、自由な人間はいませんでした。収容所の中に居た人間は、かえって、釈放されても、翌日からすぐ自由になることはできないのです。そして、プーチンがでてきて、あのロシア的な決まり文句を唱え始めました。「我々は偉大なロシア、そして誇りと地位を取り戻し、立ち上がろう」。そして、人々の86%が、プーチン支持おなった。
 私は、みんなに質問しました。「自由とは何ですか?」。これは私が必ずする質問でした。私たちのこの苦しみは、なぜ自由に変えられないのか、なぜ新たな世代になったのに、またもや過去と同じ道を歩むのか。どうして、この轍(わだち)から抜け出すことが、できないのか。
 私が思っているのは、現在の世界のナショナリズム、偏狭な保守主義の台頭は、小さき人々が、とても脅えてしまっていることと、結びついている、ということです。そして、この小さき人々は、トランプやプーチンのように、全ての問いに、すばやく答えてくれる人を求めるのです。
 これが、私たちが今いる現実です。
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 国家という問題では、私は、社会主義とか資本主義とかいうのは、チェルノブイリや福島の事故が起きる前の概念だ、と考えています。こちら側、あちら側という概念はもはや機能しません。それは、過去のものとなりました。でも、残念なことに人間は、未来でなく過去に救いを求めるようにできています。人々は、古き時代に、良き過去に思いを馳せます。
 こういう日本がかつてあった、とか、あるいは、トランプが勝ったのも、疾うに無くなっていたあの偉大なアメリカを、人々が欲したためなのです。人々は未来を恐れています。
 人々は、未来が過去とは似て似つかないものになる、とよくわかっている。そして、畏れる。未来には、私たちにとって未知の挑戦が、いくつも起きるだろうと。だから、みんな過去にのがれようとします。しかし、過去は私たちを、チェルノブイリから守ってくれません。
 つまり、人類は人生や社会の哲学を変えるべきだ、と思うんです。これまでの、利益優先、蓄財蓄積の道から、切り替えなければならない。多分、最小限で生きる、と言う哲学に。
 これからも自殺への道を選び、自分たちの文明の終わりに向かって、歩き続けるのか、地球上の最後の世代になってしまうのか、未来の予測はむずかしいけれど、今より良くなることを信じ、願い続けたいと思います。
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 私が思うに、今ようやく人間は、この世界が、作家が描くようなフィクションではなく、現実なのだと、理解し始めました。
 今や私たちは、境界線の縁に立っているんです。時代時代の大きな苦しみの数々は、必ず、小さき人々の身にふりかかる。しかし、いつの時代も、聞こえてこなかったのは、彼らの声でした。
 もし、あの世に最後の審判があるのなら、その時、神の御前に呼ばれる主だった証言者は、小さき人々でしょう。あたしは、そんな小さき人々こそ、信じています。彼らこそが、永遠の存在なのです。小さき人々は、永遠に続く鎖を断ち切り、自らを亡ぼすほど、人間は狂っていない、と祈りましょう。
 やはり歴史は前に進んでいる、と信じたい。道の途中で立ち止まったり、時には、道を逆戻りするようなことがあっても、とにかく、前進は続いているんだと、信じたい。すこしづつではあるけれど、前に進んで行くのだと、それを夢見ましょう。
                       (終)

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